2011/10/28(金) - 02:42
実質の総合順位を決定づける最終のステージとなった第8ステージは、アスタナの徹底コントロールにより総合2位につけていたヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)がステージ優勝し、総合順位でも首位に立った。
レースは長い旅路のすえ、三亜に戻ってきた
東方から第1ステージがスタートした三亜に戻る184kmで開催された第8ステージ。途中に2つの3級山岳と2級山岳が組み込まれ、翌、最終ステージは市街地でのクリテリウムとなるため、第8ステージが総合首位を決定づける最後のチャンスとなった。
リーダージャージを第1ステージから着続けているのが、ジャスタン・ジュル(フランス、ラポム・マルセイユ)。小柄な若手スプリンターだが、すでにチームメイトは3人となり、連日のレースコントロールにより、疲労が溜まっているのは、どんな手を使っても隠せない事実だった。
本領を発揮したアスタナの完全勝利
レースは53km地点に控える3級山岳に向けて、総合2位に甘んじている昨年の優勝者ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン)擁するアスタナの徹底コントロールで進んでいく。
上りが始まり、アスタナはチームメンバー6人で集団をペースアップさせる。さすがプロツアーチーム。リーダージャージを着たジュルを容易に集団から振り落としてしまった。
リーダーが遅れたことを確認すると、アスタナはさらにペースアップさせ、下りや平坦区間でも追いつけないほど圧倒的なタイム差を稼ぎ出した。山頂通過時点でアスタナの全選手を含む先頭集団は33人ほど。そして下りで17人が追いつき、50人の大きな先頭集団が形成される。
その後に設定された3つの中間スプリントをイグリンスキーはすべて上位通過し、ボーナスタイムを次々に獲得する。そして50人の集団で迎えたゴールスプリントも制し、総合首位に踊り立つ完全勝利となった。
「リーダーが疲れていることはわかっていたので、機会は今日だと思い、チームは力を温存していたんだ」と話す。
2位にはダニエーレ・コッリ(イタリア、ジェオックス・TMC)、3位にレイノルド・ランスブルグ(南アフリカ、MTNキュベカ)が続いた。
ポイント賞もイグリンスキーが獲得。しかし、2位のケニー・ファンヒュメル(オランダ、スキル・シマノ)と僅差であるため、最終日にポイント賞争いは持ち越される。山岳で遅れてしまい、後方集団で脚を休めることができたファンヒュメル。明日はジャージ奪還をめざす。
ステージ3位でフィニッシュしたランスブルグはこの日中間スプリントとフィニッシュで計9秒のボーナスタイムを獲得。総合順位を7位から2位に大幅ジャンプアップさせた。有力スプリンターの影に潜みながらも、ステージを追うごとに着実に総合順位を上げてきた。
1989年生まれの22歳、直前にオーストラリアで開催されたヘラルドサンツアーでステージ優勝を挙げ、将来はヨーロッパで走ることを切望しているという。
最終日直前に失われたイエロージャージ
そして、先頭集団から遅れること約25分。リーダージャージのジャスタン・ジュルを含む後続集団がフィニッシュ地点に到着した。ジュルのジャージは落車により汚れていた。聞けば、最初の山岳の下りでほかの選手と接触して落車したと言う。いい日があれば、悪い日もある。しかし、コンチネンタルチームながら、リーダージャージを獲得し、第7ステージまで守ったことは大きな評価に値するだろう。
総合ランクアップなるか?最後のチャンスに挑む愛三工業
愛三工業レーシングチームは、盛一大と中島康晴が先頭集団内でゴール。スプリントには参加せず、24位と48位でレースを終えている。また伊藤雅和が体調不良によりリタイアとなった。
盛一大のコメント
「最初の山岳で遅れてしまったので、あとから合流した中島と全開で下り区間を走り、追走集団に追いつき、そこからはローテーションで先頭集団を追いました。アスタナもタイム差を広げようと必死に先頭集団を牽いていたので、なかなか追いつきませんでした。
スプリントでは最初いい位置を取れましたが、途中で集団内が行き詰まってしまい、危険だと思ったので、今日はスプリントをしませんでした。明日も引き続き、中間スプリントとゴールを狙っていきます。やるしかないので、精一杯頑張ります!」
別府匠監督のコメント
「盛選手は疲れてきていますが、やる気は失っていません。1秒でもタイムを稼げれば、総合順位、ポイント賞順位、賞金、すべてのものが上がります。取られたら終わりですが、最後までチャンスを狙って走りたいと思います」
ツアー・オブ・ハイナン2011 第8ステージ結果
1位 ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ) 4h27'45"
2位 ダニエーレ・コッリ(イタリア、ジェオックス・TMC)
3位 レイノルド・ランスブルグ(南アフリカ、MTNキュベカ)
4位 アダム・フェラン(オーストラリア、ドラパック)
5位 シルウェスター・ヤニシェフスキー(ポーランド、CCC・ポルサット)
6位 アディ・オスマン(マレーシア、ドラパック)
7位 ワン・メイリン(中国、中国ナショナル)
8位 カミル・ゼリンスキー(ポーランド、CCC・ポルサット)
9位 チャンジャ・ジャン(韓国、トレンガヌ)
10位 ステファン・ガンサー(ドイツ、エディメルクス)
24位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)
48位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)
61位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+24'57"
93位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
DNF 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)
個人総合成績
1位 ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)32h01'12"
2位 レイノルド・ランスブルグ(南アフリカ、MTNキュベカ)+14"
3位 アレクサンドル・シュミット(ドイツ、エディ・メルクス)+19"
4位 ワン・メイリン(中国、中国ナショナル)+21"
5位 ウラディミール・エフィムキン(ロシア、タイプ1)
6位 マチィアス・ベルトリング(ドイツ、エディ・メルクス)+22"
7位 アダム・フェラン(オーストラリア、ドラパック)+24"
8位 アディ・オスマン(マレーシア、ドラパック)+25"
9位 シャビエル・フロレンシオ(スペイン、ジェオックス・TMC)
10位 アレクサンドル・ディアチェンコ(カザフスタン、アスタナ)
14位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)+27"
33位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)+2'31"
57位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+29'02"
77位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+32'13"
山岳賞
マウリツィオ・ゴラト(イタリア、ジェオックス・TMC)
ポイント賞
ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
アジアンリーダー
ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
チーム総合成績
ジェオックス・TMC
photo&text:Sonoko.Tanaka
レースは長い旅路のすえ、三亜に戻ってきた
東方から第1ステージがスタートした三亜に戻る184kmで開催された第8ステージ。途中に2つの3級山岳と2級山岳が組み込まれ、翌、最終ステージは市街地でのクリテリウムとなるため、第8ステージが総合首位を決定づける最後のチャンスとなった。
リーダージャージを第1ステージから着続けているのが、ジャスタン・ジュル(フランス、ラポム・マルセイユ)。小柄な若手スプリンターだが、すでにチームメイトは3人となり、連日のレースコントロールにより、疲労が溜まっているのは、どんな手を使っても隠せない事実だった。
本領を発揮したアスタナの完全勝利
レースは53km地点に控える3級山岳に向けて、総合2位に甘んじている昨年の優勝者ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン)擁するアスタナの徹底コントロールで進んでいく。
上りが始まり、アスタナはチームメンバー6人で集団をペースアップさせる。さすがプロツアーチーム。リーダージャージを着たジュルを容易に集団から振り落としてしまった。
リーダーが遅れたことを確認すると、アスタナはさらにペースアップさせ、下りや平坦区間でも追いつけないほど圧倒的なタイム差を稼ぎ出した。山頂通過時点でアスタナの全選手を含む先頭集団は33人ほど。そして下りで17人が追いつき、50人の大きな先頭集団が形成される。
その後に設定された3つの中間スプリントをイグリンスキーはすべて上位通過し、ボーナスタイムを次々に獲得する。そして50人の集団で迎えたゴールスプリントも制し、総合首位に踊り立つ完全勝利となった。
「リーダーが疲れていることはわかっていたので、機会は今日だと思い、チームは力を温存していたんだ」と話す。
2位にはダニエーレ・コッリ(イタリア、ジェオックス・TMC)、3位にレイノルド・ランスブルグ(南アフリカ、MTNキュベカ)が続いた。
ポイント賞もイグリンスキーが獲得。しかし、2位のケニー・ファンヒュメル(オランダ、スキル・シマノ)と僅差であるため、最終日にポイント賞争いは持ち越される。山岳で遅れてしまい、後方集団で脚を休めることができたファンヒュメル。明日はジャージ奪還をめざす。
ステージ3位でフィニッシュしたランスブルグはこの日中間スプリントとフィニッシュで計9秒のボーナスタイムを獲得。総合順位を7位から2位に大幅ジャンプアップさせた。有力スプリンターの影に潜みながらも、ステージを追うごとに着実に総合順位を上げてきた。
1989年生まれの22歳、直前にオーストラリアで開催されたヘラルドサンツアーでステージ優勝を挙げ、将来はヨーロッパで走ることを切望しているという。
最終日直前に失われたイエロージャージ
そして、先頭集団から遅れること約25分。リーダージャージのジャスタン・ジュルを含む後続集団がフィニッシュ地点に到着した。ジュルのジャージは落車により汚れていた。聞けば、最初の山岳の下りでほかの選手と接触して落車したと言う。いい日があれば、悪い日もある。しかし、コンチネンタルチームながら、リーダージャージを獲得し、第7ステージまで守ったことは大きな評価に値するだろう。
総合ランクアップなるか?最後のチャンスに挑む愛三工業
愛三工業レーシングチームは、盛一大と中島康晴が先頭集団内でゴール。スプリントには参加せず、24位と48位でレースを終えている。また伊藤雅和が体調不良によりリタイアとなった。
盛一大のコメント
「最初の山岳で遅れてしまったので、あとから合流した中島と全開で下り区間を走り、追走集団に追いつき、そこからはローテーションで先頭集団を追いました。アスタナもタイム差を広げようと必死に先頭集団を牽いていたので、なかなか追いつきませんでした。
スプリントでは最初いい位置を取れましたが、途中で集団内が行き詰まってしまい、危険だと思ったので、今日はスプリントをしませんでした。明日も引き続き、中間スプリントとゴールを狙っていきます。やるしかないので、精一杯頑張ります!」
別府匠監督のコメント
「盛選手は疲れてきていますが、やる気は失っていません。1秒でもタイムを稼げれば、総合順位、ポイント賞順位、賞金、すべてのものが上がります。取られたら終わりですが、最後までチャンスを狙って走りたいと思います」
ツアー・オブ・ハイナン2011 第8ステージ結果
1位 ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ) 4h27'45"
2位 ダニエーレ・コッリ(イタリア、ジェオックス・TMC)
3位 レイノルド・ランスブルグ(南アフリカ、MTNキュベカ)
4位 アダム・フェラン(オーストラリア、ドラパック)
5位 シルウェスター・ヤニシェフスキー(ポーランド、CCC・ポルサット)
6位 アディ・オスマン(マレーシア、ドラパック)
7位 ワン・メイリン(中国、中国ナショナル)
8位 カミル・ゼリンスキー(ポーランド、CCC・ポルサット)
9位 チャンジャ・ジャン(韓国、トレンガヌ)
10位 ステファン・ガンサー(ドイツ、エディメルクス)
24位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)
48位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)
61位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+24'57"
93位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
DNF 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)
個人総合成績
1位 ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)32h01'12"
2位 レイノルド・ランスブルグ(南アフリカ、MTNキュベカ)+14"
3位 アレクサンドル・シュミット(ドイツ、エディ・メルクス)+19"
4位 ワン・メイリン(中国、中国ナショナル)+21"
5位 ウラディミール・エフィムキン(ロシア、タイプ1)
6位 マチィアス・ベルトリング(ドイツ、エディ・メルクス)+22"
7位 アダム・フェラン(オーストラリア、ドラパック)+24"
8位 アディ・オスマン(マレーシア、ドラパック)+25"
9位 シャビエル・フロレンシオ(スペイン、ジェオックス・TMC)
10位 アレクサンドル・ディアチェンコ(カザフスタン、アスタナ)
14位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)+27"
33位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)+2'31"
57位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+29'02"
77位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+32'13"
山岳賞
マウリツィオ・ゴラト(イタリア、ジェオックス・TMC)
ポイント賞
ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
アジアンリーダー
ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
チーム総合成績
ジェオックス・TMC
photo&text:Sonoko.Tanaka
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