2011/10/27(木) - 10:59
サーヴェロのニューシリーズ、S5。そのミドルグレードにあたるのがこのS5チームである。S5シリーズは、3モデルあり、上級モデルからS5 VWD、このS5TEAM、S5となる。そのなかよりS5 TEAM RED Special EDをインプレッションした。
CERVELO R5 TEAM RED Special ED (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
S5シリーズのフレームのフォルムは同様で、主な違いはフレーム重量である。S5 VWDは1000gほどとシリーズ最軽量となる。S5TEAMは1100g、S5は1260gである(サイズはいずれも54)。
このS5TEAMはサポートチームのガーミン・サーヴェロによってツール・ド・フランスでデビューウィンを飾ったモデルである。あえてミドルグレードを投入するというのが、質実剛健なサーヴェロらしい。
ヘッドチューブも空力を考慮した形状になっている
縦方向に扁平したエアロチューブを組み合わせる
S5専用カーボンフォーク。P4の技術が活きている
先程も述べたが、ミドルグレードといっても、重量の差であって剛性や運動性能などはほとんど同様であるという。その秘めたる性能は、エアロ効果だけでなく、ツールではトル・フースホフトによって難関山岳オービスク峠ステージで勝利し、またスプリントでも勝っている。これらの事実がSシリーズの力を証明している。
縦長のダウンチューブでも優れた横剛性を発揮するスマートウォール設計によって、剛性バランスは最適に保たれている。
ICS3は変速性能を保つ優れた内蔵ケーブル処理だ
フォークとダウンチューブの境界線はスムーズなラインを描く
シートピラーを固定するクランプ部はフレームに収まる
シートステーの付け根の突起がリアブレーキによって生じる乱気流を抑える
エアロフォルムはPシリーズからのフィードバックによって、この形状を構築している。Pシリーズの中でもP4のテクノロジーを多く引き継ぎ、実験では素晴らしい値をたたき出す。時速20kmからエアロ効果を発揮し、時速40kmでは標準的なバイクにくらべ約32ワットのエネルギーセーブが見込めるという。ちなみにS3よりも約9ワットもセーブできる。
専用のフロントフォークとドロップド・ダウンチューブは特徴がある。ダウンチューブはクリアランスを保てる限界の位置までホイールへ近づけることで、フォーククラウン部の乱気流を整える効果がある。フォーク形状もフレームに合わせて段差や余計な隙間を作らないよう配慮したデザインだ。
シングルボトルの場合は下方に付けると、1.4ワットのパワーセーブが見込めるという
左右非対称のチェーンステー。ドライブ側のボリュームある形状に注目してほしい
ケーブルルーティングを適正化するICS3(インターナルケーブルストップ3)によってケーブルの引きが軽く、コントロールを妨げない設計もサーヴェロの技術が活きる。ハンガー下のケーブル処理もエアロダイナミクス性能に配慮した形状だ。
またシートステーは、リアブレーキに生じる空気抵抗を軽減するために、サイドにせり出したような設計である。このデザインによって整流効果を高めている。
またダウンチューブにはボトル取り付け台座が2カ所用意されており、シングルボトルの時はより空気抵抗を軽減できるようにBBに近い位置に装着できる。この形状によって約1.4ワットのパワーセーブが見込めるという。
カットアウトしたシートチューブ。リアホイールはぎりぎりまで寄せられる
BBright構造のハンガー。左右非対称形状である
リアブレーキの周辺部。シートステーがエアロ効果を発揮する
さらに2011年にリリースしたRシリーズの「BBright」を導入。スラム製プレスフィット30を用いることで、容易かつ、高性能を実現。フレームの剛性を高く保つこともできる。
フレームセット(専用シートポスト、ヘッド、BB付属)の他に、スラム・レッドをアッセンブルしたスペシャルエディション、シマノ・アルテグラ、アルテグラDi2をアッセンブルしたモデルを用意している。
圧倒的な存在感を見せるCERVELO R5 TEAM RED Special EDを、2人のテスターはどう評価したのか?インプレッションを聞いてみよう。
―インプレッション
「ロードレースで使用するという前提から外れずにエアロ形状を取込んだ究極のロードレーサー」
鈴木祐一(RiseRide)
次世代のエアロバイクと言える造形の美しさ フレーム形状はかなり特徴的だった。見るからに空気抵抗が少ない設計で、このフォルムは、純粋にかっこいい。まさに究極のエアロロードバイクだな、と思わせてくれる。
エアロダイナミクスを追求しているので、フレームは全体的に縦方向へ扁平している。これは今までのエアロロードバイクにみられる形状と同じだ。
今までのエアロを取り入れたロードバイクは、タイムトライアルバイクからのデザインという感覚を強く受ける。UCIが定めたレギュレーションのひとつである6.8kg以下という重量規制などにより、軽さの追求はやや頭打ちになっていて、各社ともエアロに注目し、追求し始めている。
タイムトライアルバイクから十分なノウハウとテクノロジーがフィードバックされているので、使い方は平坦ベースということになる。その代表的な用途はトライアスロンやグランツールにもあるような平坦ステージで使われるイメージだろう。
そういったTTから派生したバイクは、峠での走りや、悪路、急コーナリングといったいろいろなシチュエーションや路面状態に対応し切れていないものが多い。直進性能などは、タイムトライアルバイク独特のクセまでもコピーしてしまったバイクが少なくないのだ。
このS5 TEAMの場合は、クセというものがほとんどなく、まさしくロードバイクの乗り心地だった。イメージとしては、空気抵抗の少なさから高速域で活躍できる場面においても、コントロール性能が秀逸だった。
コーナリングでの不安は感じられず、上りに関してもスイスイと進んでいく。つまりロードバイクの運動性を持ったエアロバイクなのだ。タイムトライアルではなくて、ロードバイク側から生まれたような印象だった。非常に乗りやすい。ブラインドテストではごくノーマルな形状のロードバイクと勘違いしそうなくらいである。
そして、見た目だけのエアロチューブではなく、かなりこだわった複雑な形状で、高速ダウンヒルではスピードの伸びを体感できる。また、バイクに乗っていて特に感じるのは、風を切る音が明らかに少ないことだ。
そういう意味では、ロードレーサーの本来の動きの機敏さ、路面状況に対応できる万能さを確保しつつ、ロードバイクというベースから外れずにエアロ形状を取込んでいる、とても魅力的なロードレーサーだと思う。
ステアリング性能も素晴らしい。ホイールも振っても綺麗に切れ込めるのが特徴的だった。峠の下りなどで、バイクを倒し込むときなどに有効だろう。
多くのエアロ系ロードバイクの場合、直進しているときの空気抵抗は少ないけれど、斜めからの空気抵抗のことはあまり考えられていないと思う。このS5は角度の変化、斜めからの風も考えていると感じる。倒し込みが凄く自然にでき、重さを感じないところが新しい驚きだった。
次世代のエアロバイクだといえる造形美。普通のロードレーサーの乗り心地でありながら、エアロロードバイクとしての効果を発揮している。この優位性ははっきりと感じる。
どこがダメという、ウィークポイントはまったく感じられなかった。メカニックの視点から見ると、ワイヤーの取り回しは気になるところはあり、形状的には特化している部分だ。
いままにはないワイヤーの取り回しがあるので、メンテナンスときに気を遣うのは間違いないだろう。プロの手を借りてしっかりとメンテナンスしたい。
しかし、ワイヤーの引き、取り回しにはネガティブな感じはしなかった。構造は奇抜だが、使い勝手は普通と言えるところに収まっている。ただし性能を維持していくためには定期的な調整を行ったほうが良いだろう。
贅沢をいうなら電動コンポで組みたい。ケーブル類はもっとスマートにフレーム内部に収められるし、ヘッド周りのケーブル処理も美しくまとめられる。電動化したら、まさしく完璧なバイクになるのではないだろうか。
「エアロ系ロードバイクとしては軽量に仕上がっているのが魅力 乗りやすさも秀逸」
山本健一
S5シリーズの中間グレードであるS5 TEAM。このモデルはツール・ド・フランスでデビューしたチーム、ガーミン・サーヴェロ供給バイクとほぼ同様のスペックである。
そのタイムトライアルバイクに匹敵するエアロフォルムながら、フレーム単体の重量は1100g台という軽さだ。エアロ系ロードバイクとしては軽量に仕上がっていると言えるだろう。上位モデルのS5 VWDはさらに軽量に仕上がっているというから驚きだ。
踏み出しの加速性は、R5と比較するなら「芯がある踏み心地」といえる。タイムトライアルバイクにありがちだった過剰な剛性感はなく、想像よりも自然な踏み心地だった。
縦方向に向かって巨大なフィンを形成しており、いかにも剛性に偏りがあるようにみえるが、実際はノーマルバイクに近いフィーリングだった。ダンシングなどではこういった形状のフレームはクセがあるものだが、縦と横剛性のバランスがよく。標準的なバイクから乗り換えてもすぐに馴染むことができた。
R5に導入しているBBrightや、サーヴェロのエアロチューブの機構である「スマートウォール構造」によって、この優秀なバランス感が実現していると想像できる。S5の強みはRシリーズとPシリーズの「良いとこ取り」のスペックだろう。双方の持ち味をうまく消化している。
エアロ系ロードバイクとしては軽量に仕上がっている
ダウンチューブとフロントホイールのクリアランスがほとんどない状態だが、試乗車のスペックではダウンチューブに接触することは無かった。かりに25Cサイズのタイヤを履かせたら接触するかもしれないが、このクラスのバイクにそのチョイスは考えにくいので、心配には及ばないだろうが。
じっくりとホイールにパワーを伝えるようなイメージだと踏み応えがある。しかし、やや高めのケイデンスをキープすると、軽やかに進む印象だ。
中速からの巡航できるスピード域では、スムーズなペダリングが楽しめた。およそ30~40m/hほどではエアロ効果が強く発揮されるかのように、粘りのある走りを実感できた。
エアロ効果か、それともプラセボ効果だろうか? データを検証したわけでもないので感覚に委ねざるをえないが、脚を止めた時の減速感は他のバイクと比べると低く感じ、あたかもスピードが伸びているように感じるのだった。
上りでも想像以上に小気味良く進み、アベレージスピードの高さを体験できた。ペダリングパワーをスポイルするようなねじれはなく、ペダルがスイスイと回る。ケイデンスは高めのほうが好みだったが、トルクにも十分に対応してくれる。
路面の悪い場所ではややピーキーなイメージがあるものの、プロスペックであることを考慮すれば、問題にはならないだろう。パーツセレクトで十分に解消できるはずだ。
ある意味、乗り込むたびにそのピーキーさがライダーのスキルを鍛えてくれるだろう。スポーツカーを手足のように操るように、プロスペックのバイクを乗りこなす楽しみもある。
優れたエアロ効果を発揮しつつも、ナチュラルな乗り心地を実現したバイクだ。まちがいなく、次世代エアロロードバイクのベンチマークとなる存在だろう。
CERVELO R5 TEAM RED Special ED (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
CERVELO R5 TEAM RED Special ED
フレーム:S5TEAM True Aero Smartwall Higth Modulus Carbon
ヘッドセット:FSA IS-2
フォーク:Cerv?lo FK26UL
シートポスト:Cerv?lo SP12
BB:SRAM Press Fit30 BBright
フレーム重量:1,160g(サイズ54)
サイズ:48、51、54、56
価格:924,000円/S5TEAM レッド 完成車
609,000円(税込み)/S5TEAM アルテグラ 完成車
724,500円(税込み)/S5TEAM アルテグラ Di2 完成車
483,000円(税込み)/フレーム、フォーク、ヘッドセット、シートポスト&BB
インプレライダーのプロフィール
鈴木祐一 鈴木 祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
山本健一(バイクジャーナリスト) 山本健一(バイクジャーナリスト)
身長187cm、体重68kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質はどちらかといえばスピードマンタイプで上りは苦手。1000mタイムトライアル1分10秒(10年前のベストタイム)がプチ自慢。インプレッションはじめ製品レビューなどがライフワーク的になっている。インプレ本のバイブル、ロードバイクインプレッション(エイ出版社)の統括エディターもつとめる。
ウェア協力:ビエンメB+(フォーチュン)
text:Kenichi.YAMAMOTO
photo:Makoto AYANO
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S5シリーズのフレームのフォルムは同様で、主な違いはフレーム重量である。S5 VWDは1000gほどとシリーズ最軽量となる。S5TEAMは1100g、S5は1260gである(サイズはいずれも54)。
このS5TEAMはサポートチームのガーミン・サーヴェロによってツール・ド・フランスでデビューウィンを飾ったモデルである。あえてミドルグレードを投入するというのが、質実剛健なサーヴェロらしい。
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先程も述べたが、ミドルグレードといっても、重量の差であって剛性や運動性能などはほとんど同様であるという。その秘めたる性能は、エアロ効果だけでなく、ツールではトル・フースホフトによって難関山岳オービスク峠ステージで勝利し、またスプリントでも勝っている。これらの事実がSシリーズの力を証明している。
縦長のダウンチューブでも優れた横剛性を発揮するスマートウォール設計によって、剛性バランスは最適に保たれている。
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エアロフォルムはPシリーズからのフィードバックによって、この形状を構築している。Pシリーズの中でもP4のテクノロジーを多く引き継ぎ、実験では素晴らしい値をたたき出す。時速20kmからエアロ効果を発揮し、時速40kmでは標準的なバイクにくらべ約32ワットのエネルギーセーブが見込めるという。ちなみにS3よりも約9ワットもセーブできる。
専用のフロントフォークとドロップド・ダウンチューブは特徴がある。ダウンチューブはクリアランスを保てる限界の位置までホイールへ近づけることで、フォーククラウン部の乱気流を整える効果がある。フォーク形状もフレームに合わせて段差や余計な隙間を作らないよう配慮したデザインだ。
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ケーブルルーティングを適正化するICS3(インターナルケーブルストップ3)によってケーブルの引きが軽く、コントロールを妨げない設計もサーヴェロの技術が活きる。ハンガー下のケーブル処理もエアロダイナミクス性能に配慮した形状だ。
またシートステーは、リアブレーキに生じる空気抵抗を軽減するために、サイドにせり出したような設計である。このデザインによって整流効果を高めている。
またダウンチューブにはボトル取り付け台座が2カ所用意されており、シングルボトルの時はより空気抵抗を軽減できるようにBBに近い位置に装着できる。この形状によって約1.4ワットのパワーセーブが見込めるという。
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さらに2011年にリリースしたRシリーズの「BBright」を導入。スラム製プレスフィット30を用いることで、容易かつ、高性能を実現。フレームの剛性を高く保つこともできる。
フレームセット(専用シートポスト、ヘッド、BB付属)の他に、スラム・レッドをアッセンブルしたスペシャルエディション、シマノ・アルテグラ、アルテグラDi2をアッセンブルしたモデルを用意している。
圧倒的な存在感を見せるCERVELO R5 TEAM RED Special EDを、2人のテスターはどう評価したのか?インプレッションを聞いてみよう。
―インプレッション
「ロードレースで使用するという前提から外れずにエアロ形状を取込んだ究極のロードレーサー」
鈴木祐一(RiseRide)
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エアロダイナミクスを追求しているので、フレームは全体的に縦方向へ扁平している。これは今までのエアロロードバイクにみられる形状と同じだ。
今までのエアロを取り入れたロードバイクは、タイムトライアルバイクからのデザインという感覚を強く受ける。UCIが定めたレギュレーションのひとつである6.8kg以下という重量規制などにより、軽さの追求はやや頭打ちになっていて、各社ともエアロに注目し、追求し始めている。
タイムトライアルバイクから十分なノウハウとテクノロジーがフィードバックされているので、使い方は平坦ベースということになる。その代表的な用途はトライアスロンやグランツールにもあるような平坦ステージで使われるイメージだろう。
そういったTTから派生したバイクは、峠での走りや、悪路、急コーナリングといったいろいろなシチュエーションや路面状態に対応し切れていないものが多い。直進性能などは、タイムトライアルバイク独特のクセまでもコピーしてしまったバイクが少なくないのだ。
このS5 TEAMの場合は、クセというものがほとんどなく、まさしくロードバイクの乗り心地だった。イメージとしては、空気抵抗の少なさから高速域で活躍できる場面においても、コントロール性能が秀逸だった。
コーナリングでの不安は感じられず、上りに関してもスイスイと進んでいく。つまりロードバイクの運動性を持ったエアロバイクなのだ。タイムトライアルではなくて、ロードバイク側から生まれたような印象だった。非常に乗りやすい。ブラインドテストではごくノーマルな形状のロードバイクと勘違いしそうなくらいである。
そして、見た目だけのエアロチューブではなく、かなりこだわった複雑な形状で、高速ダウンヒルではスピードの伸びを体感できる。また、バイクに乗っていて特に感じるのは、風を切る音が明らかに少ないことだ。
そういう意味では、ロードレーサーの本来の動きの機敏さ、路面状況に対応できる万能さを確保しつつ、ロードバイクというベースから外れずにエアロ形状を取込んでいる、とても魅力的なロードレーサーだと思う。
ステアリング性能も素晴らしい。ホイールも振っても綺麗に切れ込めるのが特徴的だった。峠の下りなどで、バイクを倒し込むときなどに有効だろう。
多くのエアロ系ロードバイクの場合、直進しているときの空気抵抗は少ないけれど、斜めからの空気抵抗のことはあまり考えられていないと思う。このS5は角度の変化、斜めからの風も考えていると感じる。倒し込みが凄く自然にでき、重さを感じないところが新しい驚きだった。
次世代のエアロバイクだといえる造形美。普通のロードレーサーの乗り心地でありながら、エアロロードバイクとしての効果を発揮している。この優位性ははっきりと感じる。
どこがダメという、ウィークポイントはまったく感じられなかった。メカニックの視点から見ると、ワイヤーの取り回しは気になるところはあり、形状的には特化している部分だ。
いままにはないワイヤーの取り回しがあるので、メンテナンスときに気を遣うのは間違いないだろう。プロの手を借りてしっかりとメンテナンスしたい。
しかし、ワイヤーの引き、取り回しにはネガティブな感じはしなかった。構造は奇抜だが、使い勝手は普通と言えるところに収まっている。ただし性能を維持していくためには定期的な調整を行ったほうが良いだろう。
贅沢をいうなら電動コンポで組みたい。ケーブル類はもっとスマートにフレーム内部に収められるし、ヘッド周りのケーブル処理も美しくまとめられる。電動化したら、まさしく完璧なバイクになるのではないだろうか。
「エアロ系ロードバイクとしては軽量に仕上がっているのが魅力 乗りやすさも秀逸」
山本健一
S5シリーズの中間グレードであるS5 TEAM。このモデルはツール・ド・フランスでデビューしたチーム、ガーミン・サーヴェロ供給バイクとほぼ同様のスペックである。
そのタイムトライアルバイクに匹敵するエアロフォルムながら、フレーム単体の重量は1100g台という軽さだ。エアロ系ロードバイクとしては軽量に仕上がっていると言えるだろう。上位モデルのS5 VWDはさらに軽量に仕上がっているというから驚きだ。
踏み出しの加速性は、R5と比較するなら「芯がある踏み心地」といえる。タイムトライアルバイクにありがちだった過剰な剛性感はなく、想像よりも自然な踏み心地だった。
縦方向に向かって巨大なフィンを形成しており、いかにも剛性に偏りがあるようにみえるが、実際はノーマルバイクに近いフィーリングだった。ダンシングなどではこういった形状のフレームはクセがあるものだが、縦と横剛性のバランスがよく。標準的なバイクから乗り換えてもすぐに馴染むことができた。
R5に導入しているBBrightや、サーヴェロのエアロチューブの機構である「スマートウォール構造」によって、この優秀なバランス感が実現していると想像できる。S5の強みはRシリーズとPシリーズの「良いとこ取り」のスペックだろう。双方の持ち味をうまく消化している。
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ダウンチューブとフロントホイールのクリアランスがほとんどない状態だが、試乗車のスペックではダウンチューブに接触することは無かった。かりに25Cサイズのタイヤを履かせたら接触するかもしれないが、このクラスのバイクにそのチョイスは考えにくいので、心配には及ばないだろうが。
じっくりとホイールにパワーを伝えるようなイメージだと踏み応えがある。しかし、やや高めのケイデンスをキープすると、軽やかに進む印象だ。
中速からの巡航できるスピード域では、スムーズなペダリングが楽しめた。およそ30~40m/hほどではエアロ効果が強く発揮されるかのように、粘りのある走りを実感できた。
エアロ効果か、それともプラセボ効果だろうか? データを検証したわけでもないので感覚に委ねざるをえないが、脚を止めた時の減速感は他のバイクと比べると低く感じ、あたかもスピードが伸びているように感じるのだった。
上りでも想像以上に小気味良く進み、アベレージスピードの高さを体験できた。ペダリングパワーをスポイルするようなねじれはなく、ペダルがスイスイと回る。ケイデンスは高めのほうが好みだったが、トルクにも十分に対応してくれる。
路面の悪い場所ではややピーキーなイメージがあるものの、プロスペックであることを考慮すれば、問題にはならないだろう。パーツセレクトで十分に解消できるはずだ。
ある意味、乗り込むたびにそのピーキーさがライダーのスキルを鍛えてくれるだろう。スポーツカーを手足のように操るように、プロスペックのバイクを乗りこなす楽しみもある。
優れたエアロ効果を発揮しつつも、ナチュラルな乗り心地を実現したバイクだ。まちがいなく、次世代エアロロードバイクのベンチマークとなる存在だろう。
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CERVELO R5 TEAM RED Special ED
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シートポスト:Cerv?lo SP12
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フレーム重量:1,160g(サイズ54)
サイズ:48、51、54、56
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609,000円(税込み)/S5TEAM アルテグラ 完成車
724,500円(税込み)/S5TEAM アルテグラ Di2 完成車
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インプレライダーのプロフィール
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サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
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身長187cm、体重68kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質はどちらかといえばスピードマンタイプで上りは苦手。1000mタイムトライアル1分10秒(10年前のベストタイム)がプチ自慢。インプレッションはじめ製品レビューなどがライフワーク的になっている。インプレ本のバイブル、ロードバイクインプレッション(エイ出版社)の統括エディターもつとめる。
ウェア協力:ビエンメB+(フォーチュン)
text:Kenichi.YAMAMOTO
photo:Makoto AYANO
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