ツアー・オブ・ハイナン2011第4ステージの勝者、ディオン・ロックが所属するチャンピオンシステムは、来季、アジア初のプロコンチネンタルチーム(セカンドデビジョン)となることが発表されたばかり。現在アジアでもっとも注目を集めているチームだ。

プロコンチネンタルチームは、主催者の招待があれば最高峰のワールドツアーに参戦することができるランクとなる。
チームのカメルマン監督とジェネラルマネージャーであるエド・ビーモン氏に話を伺った。

チャンピオンシステムの選手とカメルマン監督チャンピオンシステムの選手とカメルマン監督 (c)Sonoko.TANAKA

-- プロコンチネンタルチームへの昇格は簡単なことでしたか?

ツアー・オブ・ハイナン第4ステージで勝利を挙げたディオン・ロック(オーストラリア、チャンピオンシステム)ツアー・オブ・ハイナン第4ステージで勝利を挙げたディオン・ロック(オーストラリア、チャンピオンシステム) (c)Sonoko.TANAKA「プロ・コンチネンタルチームになるのは、非常に難しかったです。プロ・コンチネンタルチームが世界でも30チーム弱と少ないのは、より良い機材サポートを集めるだけでなく、より多くの資金を集める必要があるからです。すべてのライダーに給料を払わなくてはならないし、健康管理や、食事の管理、ドーピング検査の為の定期的な血液検査や、各管理をするためにスタッフを雇わなくてはなりません。選手へかけるコストは大変なものです。

また、ヨーロッパや北米でレースを行うために体制を整えることも大変お金がかかります。これらは、プロ・コンチネンタルチームとコンチネンタルチームの違いの一部分にしか過ぎません。」

-- チャンピオンシステムの狙いは?

ディオン・ロックが乗るのはチャンピオンシステムオリジナルバイクだディオン・ロックが乗るのはチャンピオンシステムオリジナルバイクだ (c)Sonoko.Tanaka「私たちの主な狙いは、アジアのライダーがヨーロッパやアメリカのレースで戦う場を作ることです。私たちは5年でプロツアーに出るということを目標にしています。
チャンピオンシステムは香港を拠点とするサイクルジャージなどを製作するスポーツウエア会社ですが、アジアだけでなく北米を重視したグローバルなビジネスを望んでいます。そのために一番いい方法が自分たちのチームを持つことだと考えているんです。アジア人選手の進化とともに、企業も前に進んでいこうとしています」

-- 来年のスケジュールは?

「シーズンの初戦は、ツール・ド・ランカウィに出場の予定でいますが、ヨーロッパや北米、オセアニアのレースにも出場予定です。2012年は、チームを二手に分け、1年で250日はレースに挑む予定でいます。」

-- 現在、17人のチームメンバーに対して5人が香港のアジア人選手ですが、来年のアジア
人選手の割合はどうなりますか?


「2012年は8人のアジアのライダーを迎える予定でいます。その他18人は、インターナショナルのライダーになります。」

-- 日本人選手をチームに迎えるというビジョンはありませんか?

アジアのレースから世界の舞台に躍り出るチケットを手にするチャンピオンシステムアジアのレースから世界の舞台に躍り出るチケットを手にするチャンピオンシステム (c)Sonoko.TANAKA「もちろんあります。現在UCIプロチームとプロコンチネンタルチームに所属している日本のライダーがいます。そして愛三工業のような国際レースで戦えるチームがあります。我々はアジア発のプロ・コンチネンタルチームなので、日本のライダーもぜひ迎えたいと思っています。
まだ確定ではないので、名前は言えませんが、日本のライダーで、ひとり交渉している人がいます。ぜひ、私たちのチームに入ってくれることを望んでいます。」

-- アジア人選手のポテンシャルをどう感じていますか?

「アジアのライダーは、非常に競争心が強いと思います。しかしまだ彼らには経験が足りません。ただ、海外でのレースのチャンスが無いために、経験が不足しているだけだと私は思っています。今後、アジアだけでなくヨーロッパや北米、世界のトップクラスのレースに参戦することができれば、選手は強くなり、最終的にトップのレースシーンで活躍するアジア人選手が増えてくると思います」

チャンピオンシステムのジェネラルマネージャー エド・ビーモン氏とヤン・キルシプー(エストニア)チャンピオンシステムのジェネラルマネージャー エド・ビーモン氏とヤン・キルシプー(エストニア) -- チームの長期的なヴィジョンは?

私たちの目的は、プロツアーで戦える第一世代のアジアのライダーを育てることに力をいれた、国際的なチームを作ることです。

長期的には、将来のチャンピオン選手を育て、アジアでのプロフェッショナルな自転車競技の構造を作り、アジアの選手の活躍の場を提供することが目標です。

--

同チームのキャプテンは、エストニア人のヤン・キルシプーが引き続き務める。UCIレース累積130勝以上という膨大な勝利数を誇るスプリンターは、来年42歳を迎える。「レースがとても好きだから走り続けている」と言うが、彼の豊富な経験がチームの成長を後押ししているのは、言うまでもない事実でもある。

現在のところ来季のチームにはレオパード・トレックからウィル・クラーク(オーストラリア)、同じくオーストラリア人のアーロン・ケンプス、香港のウー・キンサンらの加入が決まっている。

アジア籍のプロコンチネンタルチームの誕生は、私たちにとって、とても魅力的なニュースに感じる。チームの活動が軌道に乗れば、アジア人選手が世界の頂点に挑戦する間口が格段に広がるだろう。

また、チームが加入交渉をしている日本人選手はファンなら誰もが知っている名前だ。これからの発表を楽しみに待ちたい。


photo&text:Sonoko.TANAKA