速報でお伝えしたとおり、中島康晴が優勝を飾ったツアー・オブ・ハイナン第2ステージ。山あいの五指山から1級山岳、2級山岳を越えて、山間部を縫うように興隆まで向かう152kmのコースで、愛三工業レーシングチームの中島が逃げた。

59秒差の逃げ切り優勝

沿道には野生のバナナの木が生い茂る沿道には野生のバナナの木が生い茂る photo:Sonoko Tanakaスタート地点は昨日よりも少しひんやりとした空気に包まれていたが、スケジュールどおり10時にスタートを迎えた。スタート直後から1級山岳に向けて、山岳賞を狙う選手たちにより加速。山頂では11人ほどが先行し、その後の下りで大きく2つの集団が形成された。

しかし94km地点で後続集団が先頭集団に追いつき、レースは振り出しに戻る。そして、100km地点から単独で中島康晴(愛三工業レーシングチーム)がアタックをかけると、集団は容易にアタックを容認。ゴールまで約50kmを残して、中島単独のエスケープがここから始まった。

残り40kmでタイム差は2分、残り30kmで3分、そして残り20kmでタイム差は3分40秒と広がり、この時点で中島の逃げ切りが濃厚となり、後続に59秒の差をつけてステージを制した。後続集団は集団スプリントとなり、ステージ3位でフィニッシュしたジャスタン・ジュル(フランス、ラポム・マルセイユ)がリーダージャージを守った。

山あいの道を進む選手たち山あいの道を進む選手たち photo:Sonoko Tanaka

UCI3勝目を飾った中島康晴

ゴールまで50kmを残してアタックを成功させた中島康晴(愛三工業レーシングチーム)ゴールまで50kmを残してアタックを成功させた中島康晴(愛三工業レーシングチーム) photo:Sonoko Tanaka「チャイナのあと、国体に出場するために、トラックの練習を多く積んでいたこともあり、1人で逃げ切る自信はありましたが、残り3kmの時点で2分のタイム差が怖く感じたのも事実です。通常なら、3kmで2分はまず間違いなく勝てますが、後ろに控えているのはプロチームを含む大集団だったため、最後の最後まで勝てる確信は持てませんでしたね」と振り返る。

中島は、2011年にヨーロッパを主戦場とするチームNIPPOからアジアで戦う愛三工業レーシングチームに移籍したチーム1年目の選手になる。

50kmの単独エスケープを成功させた中島康晴(愛三工業レーシングチーム)50kmの単独エスケープを成功させた中島康晴(愛三工業レーシングチーム) photo:Sonoko TANAKA「ヨーロッパツアーでは、知っているメンバーが多く、その国らしいレース展開も決まっています。しかし、アジアでは突然強いチームが来ることも多いし、どんな選手がいるのか、どんな展開になるのか、常に予想が付きません。また色々な文化の国で開催されるレースでは、いつも路面や天候のコンディションが違ってきます」

「この何が起こるか分からない面白さに加えて、ラインレースでは沿道にたくさんの地元の観客がいて、小さな子どもたちが目を輝かせて集まってくる。そんな場面にアジアで走る魅力を感じています」

ステージ優勝した中島康晴がチームメイトと喜びを分かち合うステージ優勝した中島康晴がチームメイトと喜びを分かち合う photo:Sonoko Tanaka「今後の課題は、限られた展開でしか勝つことができないので、登坂力やスプリント力を強化して、どんな展開でも勝てること、チームをアシストできる選手になりたいです。チームには様々な脚質の選手がいるので、彼らに話を聞いたり、今後は高負荷でのトレーニングを重視していきたいと考えています」

そう話す中島は少し珍しい“ダウンヒル”を得意とする選手。下りを利用したアタックや集団の追走に定評がある。そのダウンヒルのコツを伺うと、滑りやすい冬の雪道で培った特別なテクニックがあると言う。思わず「なるほど!」と頷いてしまうものだ。下りに強くなりたい人は彼に聞いてみよう。


タイム差を告げるボードマンが機能しなかったステージ

ラポム・マルセイユがコントロールする先頭集団ラポム・マルセイユがコントロールする先頭集団 photo:Sonoko Tanaka今日のレースでは、残り20kmまで集団にタイム差が知らされていなかったという。

後続の集団スプリントを制し、2位でフィニッシュしたケニー・ファンヒュメル(オランダ、スキル・シマノ)は記者会見で「ヨーロッパのレースなら、概ね5kmごとにタイム差を掲示するバイクが選手のもとにやってくる。しかし、今日はずっとそのバイクが現れず、ようやく来たかと思ったら、残り20kmで3分40秒も開いてしまっていた」と表情を曇らせながら振り返る。

2位以下の集団スプリントをケニー・ファンヒュメル(オランダ、スキル・シマノ)が制した2位以下の集団スプリントをケニー・ファンヒュメル(オランダ、スキル・シマノ)が制した photo:Sonoko Tanaka「20kmでこのタイム差を追い上げるのは難しい。集団は2位を争う集団スプリントに切り替えて走ったんだ」。

これがまさにアジアツアーの現状だ。残念ながら時々、このようなハプニングが起こってしまう。現に同じような状況が、先月のツアー・オブ・チャイナ第2ステージでも起こっている。

前回、逃げを容認してしまい、失敗した経験をもつ愛三工業レーシングチームにとっては、想定内のことであり、このトラブルが中島のステージ優勝を後押ししたが、悔しい思いをしたチームも多かった。


別府匠監督のコメント
ツアー・オブ・ハイナン2011第2ステージで優勝した中島康晴(愛三工業)が別府匠監督と抱きあって喜ぶツアー・オブ・ハイナン2011第2ステージで優勝した中島康晴(愛三工業)が別府匠監督と抱きあって喜ぶ photo:Sonoko TANAKA「今日、逃げ切れて、ステージ優勝によるUCIポイントを20点獲得できたことは良かったです。1勝すると言うことでレースや他のチームに対して大きなアピールになりますし、中島本人のキャリアでもHCカテゴリーで勝てたことは大きなことでしょう。

明日からは、ホットスポットでボーナスタイムを獲得して盛一大の総合順位を上げること、逃げが決まるなら伊藤雅和や中島が乗ること、ゴールは福田真平で狙うという作戦です。今日もじつは同じ作戦でしたが、ホットスポットを取れなかった。勝ったレースの中にも反省点はあります。明日からのレースに活かしていきたいですね」

リーダージャージを着るジャスタン・ジュル(フランス、ラポム・マルセイユ)リーダージャージを着るジャスタン・ジュル(フランス、ラポム・マルセイユ) photo:Sonoko Tanakaポイント賞ジャージを着るヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)ポイント賞ジャージを着るヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ) photo:Sonoko Tanaka表彰式で笑顔を見せる中島康晴(愛三工業レーシングチーム)表彰式で笑顔を見せる中島康晴(愛三工業レーシングチーム) photo:Sonoko Tanaka


ツアー・オブ・ハイナン2011第2ステージ結果
1位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム) 3h43'39"
2位 ケニー・ファンヒュメル(オランダ、スキル・シマノ) +59"
3位 ジャスタン・ジュル(フランス、ラポム・マルセイユ)
4位 レイノルド・ランスブルグ(南アフリカ、MTNキュベカ)
5位 ダニエーレ・コッリ(イタリア、ジェオックス・TMC)
6位 スチュアート・シャウ(オーストラリア、ドラパック)
7位 ピーター・エルディン(スイス、アトラスパーソナル・ジャクロー)
8位 ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
9位 シャビエル・フロレンシオ(スペイン、ジェオックス・TMC)
10位 ジェディミナス・カウパス(リトアニア、ディフェールダンジュ)
12位 福田真平(愛三工業レーシングチーム)
24位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)
39位 木守望(愛三工業レーシングチーム)
79位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)+1'12"
82位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+1'24"
DNS 奈良基(トレンガヌ)

個人総合成績
1位 ジャスタン・ジュル(フランス、ラポム・マルセイユ)7h57'10"
2位 ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)+5"
3位 アダム・フェラン(オーストラリア、ドラパック)+10"
4位 ダビド・グティエレス(スペイン、ジェオックス・TMC)+11"
5位 ジュリアン・アントマルシュ(フランス、ラポム・マルセイユ)
6位 シャビエル・フロレンシオ(スペイン、ジェオックス・TMC)+13"
7位 レイノルド・ランスブルグ(南アフリカ、MTNキュベカ)+14"
8位 カミル・ゼリンスキ(ポーランド、CCC・ポルサット)
9位 アディ・オスマン(マレーシア、ドラパック)
10位 クリスティアン・ポース(ルクセンブルク、ディフェールダンジュ)
11位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)
35位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)+27"
47位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)+2'17"
58位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+3'51"
66位 福田真平(愛三工業レーシングチーム)+5'20"
73位 木守望(愛三工業レーシングチーム)

山岳賞
ジュリアン・アントマルシュ(フランス、ラポム・マルセイユ)

ポイント賞
ジャスタン・ジュル(フランス、ラポム・マルセイユ)

アジアンリーダー
ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)

チーム総合成績
ドラパック

text&photo:Sonoko Tanaka