2011/10/07(金) - 22:29
3つの1級山岳が設定されたツアー・オブ・北京(UCIワールドツアー)最難関の第3ステージ。終盤に逃げたニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)が、同じくアイルランド出身のフィリップ・ダイグナン(レディオシャック)を敗って勝利。トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)は総合首位を死守した。
ツアー・オブ・北京2011第3ステージ image:www.tourofbeijing.netツアー・オブ・北京第3ステージは、前日のゴール地点メントウゴウから北京北部の山岳地帯を抜け、ヨンニン・タウンにゴールする162km。前半からカテゴリー山岳が2級、1級、1級、1級と連続する。
最後の1級山岳エルプリアンはゴールから僅か12kmしか離れていない。今大会最高の難易度を誇るステージであり、クライマーにとって最初で最後の活躍の場。総合争いに注目が集まった。
前日のゴール地点メントウゴウをスタート photo:Sonoko Tanakaこの日最初の2級山岳で飛び出したのはアドリアーノ・マローリ(イタリア、ランプレ・ISD)、ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)、ヨン・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)。しかしメイン集団は警戒して大きなタイム差を与えない。
遅れてリエーベ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)らが逃げに合流するも、結局レース後半の2連続1級山岳を前に集団は一つに戻る。
逃げグループを形成するロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)ら photo:Sonoko Tanakaゴール29km手前の1級山岳を先頭通過したイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)は、前日の逃げで稼いだポイントに12ポイントを加算し、山岳賞ランキングトップに躍り出た。
そして迎えた1級山岳エルプリアン。まずはフィリップ・ダイグナン(アイルランド、レディオシャック)が動き、これに総合4位クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)とロッシュが合流する。3名はメイン集団を引き離して頂上をクリアし、ゴール地点ヨンニン・タウンへ急いだ。
山岳地帯の樹々は真っ赤に色づく photo:Sonoko Tanakaしかしフルームはマルティンにとって総合で26秒遅れの危険な存在。先頭3名はハイペースでローテーションを組むが、後方からリーダージャージを含む50名ほどの集団が追い上げる。脚の揃った3名は粘りのある走りを見せ、集団を振り切ってラスト1km。道幅のある最終ストレートに入った。
逃げグループを長時間率いた総合狙いのフルームが徐々に失速すると、ラスト300mでロッシュがスプリントを開始する。フルームが集団に飲み込まれるその前で、ダイグナンを振り切ったロッシュがガッツポーズを繰り出した。
「ラスト15kmはとにかくレーススピードが速かった。3人は互いを励まし合いながらただ逃げ続けた。何も考えず、ただ踏み続けた」。劇的な逃げ切りを成功させ、スプリントを制したロッシュは語る。
フィリップ・ダイグナン(アイルランド、レディオシャック)を下したニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)が勝利 photo:Sonoko Tanaka
「集団内に総合狙いのチームメイト(ジャンクリストフ)ペローがいたので、登りで賭けに出た。それが功を奏した。これまでずっとチームは僕を支えてくれたけど、その恩返しがなかなかできずにいた。今日も彼らは100%の力で走ってくれたんだ。この勝利を感謝の言葉に代えたい」。
念願のワールドツアー勝利をおさめたニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) photo:Sonoko Tanakaロッシュは、1987年にツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ロード世界選手権で優勝するという「トリプルクラウン」を達成したステファン・ロッシュの息子である。その名前から注目されることが多いが、意外にも勝利数は少ない。ビッグレースで安定した成績を残しながらも、勝利からは見放されていた。最後の勝利は2009年のアイルランド選手権ロードレース。
リーダージャージを守ったトニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード) photo:Sonoko Tanaka「間違いなくこれは自己最高の勝利だ。プロツアー(ワールドツアー)レースで勝つことは特別なこと。2年間待ち続けた勝利が今日やってきた。ゴールで両手を挙げる数秒間は最高の瞬間だったよ」。キャリア最高の勝利を掴んだロッシュ。そろそろ「ステファンの息子」という呼び名も卒業だ。
この日、リーダージャージを含む集団は1秒差でゴール。結局フルームはタイムを奪えず、マルティンと総合下位の選手のタイム差に変動無し。総合トップ10の中では、新人賞ジャージを着る総合3位のアレックス・ダウセット(イギリス、チームスカイ)が唯一遅れた。
最難関山岳ステージで総合リードを守ったマルティンは、北京総合優勝に自信を見せる。「今日のステージが最難関だった。明日からの2ステージはスプリンター向きだ。これで日曜日(最終日)までリーダージャージを守り切る自信をもてるよ」。
残る2ステージはいずれも平坦基調。第4ステージは中盤にかけて難易度の低いカテゴリー山岳が3つ設定されているが、ゴール手前はフラット。今大会2回目の集団スプリントに注目だ。
レース内容や選手コメントはレース公式リリースより。
ツアー・オブ・北京2011第3ステージ結果
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) 3h53'15"
2位 フィリップ・ダイグナン(アイルランド、レディオシャック)
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +01"
4位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、ランプレ・ISD)
5位 ニック・ナイエンス(ベルギー、サクソバンク・サンガード)
6位 ポール・マルテンス(ドイツ、ラボバンク)
7位 アンヘル・マドラソルイス(スペイン、モビスター)
8位 サイモン・クラーク(オーストラリア、アスタナ)
9位 マイケル・バリー(カナダ、チームスカイ)
10位 ルーク・ロバーツ(オーストラリア、サクソバンク・サンガード)
個人総合成績
1位 トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード) 7h10'19"
2位 デーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・サーヴェロ) +17"
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +26"
4位 スティーブ・クミングス(イギリス、チームスカイ) +35"
5位 オリヴィエ・カイセン(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +39"
6位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク) +41"
7位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル) +43"
8位 アンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)
9位 ダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ)
10位 ニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップ) +46"
ポイント賞
クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
山岳賞
イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)
新人賞
ベンジャミン・キング(アメリカ、レディオシャック)
チーム総合成績
チームスカイ
text:Kei Tsuji
photo:Sonoko Tanaka
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最後の1級山岳エルプリアンはゴールから僅か12kmしか離れていない。今大会最高の難易度を誇るステージであり、クライマーにとって最初で最後の活躍の場。総合争いに注目が集まった。
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遅れてリエーベ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)らが逃げに合流するも、結局レース後半の2連続1級山岳を前に集団は一つに戻る。
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そして迎えた1級山岳エルプリアン。まずはフィリップ・ダイグナン(アイルランド、レディオシャック)が動き、これに総合4位クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)とロッシュが合流する。3名はメイン集団を引き離して頂上をクリアし、ゴール地点ヨンニン・タウンへ急いだ。
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この日、リーダージャージを含む集団は1秒差でゴール。結局フルームはタイムを奪えず、マルティンと総合下位の選手のタイム差に変動無し。総合トップ10の中では、新人賞ジャージを着る総合3位のアレックス・ダウセット(イギリス、チームスカイ)が唯一遅れた。
最難関山岳ステージで総合リードを守ったマルティンは、北京総合優勝に自信を見せる。「今日のステージが最難関だった。明日からの2ステージはスプリンター向きだ。これで日曜日(最終日)までリーダージャージを守り切る自信をもてるよ」。
残る2ステージはいずれも平坦基調。第4ステージは中盤にかけて難易度の低いカテゴリー山岳が3つ設定されているが、ゴール手前はフラット。今大会2回目の集団スプリントに注目だ。
レース内容や選手コメントはレース公式リリースより。
ツアー・オブ・北京2011第3ステージ結果
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) 3h53'15"
2位 フィリップ・ダイグナン(アイルランド、レディオシャック)
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +01"
4位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、ランプレ・ISD)
5位 ニック・ナイエンス(ベルギー、サクソバンク・サンガード)
6位 ポール・マルテンス(ドイツ、ラボバンク)
7位 アンヘル・マドラソルイス(スペイン、モビスター)
8位 サイモン・クラーク(オーストラリア、アスタナ)
9位 マイケル・バリー(カナダ、チームスカイ)
10位 ルーク・ロバーツ(オーストラリア、サクソバンク・サンガード)
個人総合成績
1位 トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード) 7h10'19"
2位 デーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・サーヴェロ) +17"
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +26"
4位 スティーブ・クミングス(イギリス、チームスカイ) +35"
5位 オリヴィエ・カイセン(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +39"
6位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク) +41"
7位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル) +43"
8位 アンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)
9位 ダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ)
10位 ニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップ) +46"
ポイント賞
クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
山岳賞
イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)
新人賞
ベンジャミン・キング(アメリカ、レディオシャック)
チーム総合成績
チームスカイ
text:Kei Tsuji
photo:Sonoko Tanaka
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