第3ステージを制したのはトラック競技のスペシャリスト、韓国のジャン・スンジェ。総合リーダーが山岳で遅れ、新しいリーダーはアジア選手権2位のムラディヤン・ハルムラトフ(ウズベキスタン、ジャイアント・ケンダ)。愛三工業レーシングチームは鈴木謙一が先頭集団でフィニッシュしている。

 ジャン・スンジェ(韓国、韓国ナショナル)がゴールスプリントを制した ジャン・スンジェ(韓国、韓国ナショナル)がゴールスプリントを制した photo:Sonoko.Tanaka

渓谷沿いの1級山岳を越える第3ステージ

スタートラインに並んだエイドリアン・ジョブルグ(ノルウェー、ジョーカー・メリダ)とベルナールド・スルズベガー(オーストラリア、Vオーストラリア)スタートラインに並んだエイドリアン・ジョブルグ(ノルウェー、ジョーカー・メリダ)とベルナールド・スルズベガー(オーストラリア、Vオーストラリア) photo:Sonoko.Tanakaツアー・オブ・チャイナ第3ステージは1級山岳を含む112kmで開催された。全9ステージ中、1級山岳は2ステージに登場するが、どちらも山頂ゴールではなく、第3ステージでは山頂から約70km下ってのゴールだ。そして第1、2ステージと降り続いた雨がようやく止み、第3ステージは曇り空でのスタートを迎えた。

スタートしてから1級山岳の山頂までの42.5kmを渓谷沿いに登っていくコース。スタート後にいくつかのアタックがかかったが、山頂を前にイランのベテランクライマー、ガダール・ミズバニ(タブリーズ・ペトロケミカル)が独走、山頂を先頭で通過する。そして山岳賞トップに立ち、ジャージを獲得した。



宝鶏郊外のお城をバックにレースが進む宝鶏郊外のお城をバックにレースが進む photo:Sonoko.Tanaka渓谷沿いの1級山岳を登る選手たち渓谷沿いの1級山岳を登る選手たち photo:Sonoko.Tanaka山頂をトップ通過したガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)山頂をトップ通過したガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル) photo:Sonoko.Tanaka

少人数でのスプリントを制したジャン

先頭集団を追うエイドリアン・ジョブルグ(ノルウェー、ジョーカー・メリダ)先頭集団を追うエイドリアン・ジョブルグ(ノルウェー、ジョーカー・メリダ) photo:Sonoko.Tanaka上りで大きく分かれた集団だったが、下りで選手たちはまとまり、約50人ほどの先頭集団が形成される。しかし、リーダージャージを着るエイドリアン・ジョブルグ(ノルウェー、ジョーカー・メリダ)は、山岳で遅れたため、後方集団に残される形となった。しかし、第2ステージでエンドリアンとともに逃げ切り、2位でフィニッシュしているムラディヤン・ハルムラトフ(ウズベキスタン、ジャイアント・ケンダ)は先頭集団内に入った。

そのまま先頭集団はゴールを迎えることになる。事前資料のプロフィールからもゴール前は上りとなることがわかっていたが、残り1kmを切って、実際に選手たちの前に現れた上りは予想以上に急傾斜であった。

前方で1級山岳を越えた鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)前方で1級山岳を越えた鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム) photo:Sonoko.Tanakaその登坂区間を抜け、やや少人数になった集団でのゴールスプリント。ロシアのアレクサンドル・セロフ(ロシアナショナル)と競い合う形で、先頭でフィニッシュしたのはジャン・スンジェ(韓国、韓国ナショナル)。アジア大会トラック競技で多くの金メダル獲得している、2011年の韓国チャンピオンが勝利を掴んだ。

右側に大きく指を振った特徴的なフィニッシュポーズ。その訳を聞くと2ヶ月前に生まれた娘へ勝利をプレゼントしたのだと言う。また弟のジャン・チャンジェ(韓国、韓国ナショナル)と兄弟で参加している今大会。昨第2ステージで、チャンジェはゴール前で落車している。弟の不運を晴らす意味でも気持ちのいいゴールとなった。


 ジャン・スンジェ(韓国、韓国ナショナル)がゴールスプリントを制した ジャン・スンジェ(韓国、韓国ナショナル)がゴールスプリントを制した photo:Sonoko.Tanaka新しいリーダーは、ジャイアントのムラディヤン

総合リーダーは、先頭と同タイムでフィニッシュしたムラディヤン・ハルムラトフ(ウズベキスタン、ジャイアント・ケンダ)に移る。2位と3分27秒差。しかし、チーム関係者は「自分たちは強いチームではない。ジャージを1日でもキープできたら、嬉しいことだよ!」と話す。

リコの勝利に続き、リーダージャージを獲得したジャイアント・ケンダ。ムラディヤンはチームに加入したばかりの29歳の選手だ。初春に開催された新城幸也(ユーロップカー)が優勝したアジア大会で、新城とともに逃げて、2位に入っている。逃げが得意なようだが、チーム監督もそのウズベキスタン選手の実力を把握しきれていないと言う……。イ総合首位、イエロージャージを獲得したムラディヤン・ハルムラトフ(ウズベキスタン、ジャイアント・ケンダ)総合首位、イエロージャージを獲得したムラディヤン・ハルムラトフ(ウズベキスタン、ジャイアント・ケンダ) photo:Sonoko.Tanakaエローを身につけ、どのような走りを魅せてくれるか楽しみだ。


ステージ優勝狙いにシフトする愛三工業レーシングチーム

愛三工業レーシングチームは、鈴木謙一のみが山頂を前方で通過し先頭集団でフィニッシュ、残る5選手は後方集団に残される形になった。この時点で総合上位を狙えるのは、実質的に鈴木謙一に絞られた。

別府匠監督は「トレーニング不足が響いたのかも知れません。正直なところ、もう少し先頭に残ってほしかった。またベスト中国ライダーを獲得したワンカンポー(香港、香港ナショナル)は、大会最年長選手でもあるベスト中国ライダーを獲得したワンカンポー(香港、香港ナショナル)は、大会最年長選手でもある photo:Sonoko.Tanaka後方集団に5選手がいたので、彼らで先頭を追っても良かったかと思いますが、リーダー選手が後方に残されていたことや、他の主力チームが先頭集団に選手を送り込めていたことなどもあり、自分たちだけで追うことはしなかった。

総合を狙うのが厳しくなってしまった以上、チームはステージ優勝狙いにスイッチしていきます。第8ステージに1級山岳を控えるレース日程で、変に総合を狙って、パワーをセーブして走るより、これで思い切りのいいレースができるようになると思います。選手たちも、今日遅れてしまったことを挽回する意味でも、積極的に走るでしょう」と話す。


山岳賞ジャージを獲得したガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)山岳賞ジャージを獲得したガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル) photo:Sonoko.Tanaka500kmを陸移動した休息日

翌9月13日は1回目の休息日。いや、正確には移動日だった。約500kmの道のりを先導パトカーに引連れられて、全関係車両が鳳県から綿陽まで移動した。朝9時に鳳県のホテルを出発し、綿陽に到着したのは夕方5時! 選手たちはチームカーとチームバンに分乗。隊列を崩すことは許されず、誰かがトイレに行きたくなっても止まらないし、パーキングで遅れた人は容赦なく置いていくという中国式ルールでの移動……、ある意味、ハードな1日となった。

移動日を挟んで開催される第4ステージは、今大会最長となる214.6kmで開催される。途中3ヵ所にスプリントポイントがあり、下り基調ながら小さな起伏が連続するコースプロフィールだ。集団スプリントとなるか、アジアンチームに負けたくない主要チームが大きく動くか……? 

寒い日が続いていたが、明日の天気予報は曇り時々晴れ。最高気温は28℃、ホットなレースになってほしい。

KOMポイントで観戦する民族衣装の女の子たちKOMポイントで観戦する民族衣装の女の子たち photo:Sonoko.Tanaka民族衣装を身につけポーズをとるポディウムガールたち民族衣装を身につけポーズをとるポディウムガールたち photo:Sonoko.Tanaka

ツアー・オブ・チャイナ2011 第3ステージ結果
1位 ジャン・スンジェ(韓国、韓国ナショナル) 2h37'07"
2位 アレクサンドル・セロフ(ロシア、ロシアナショナル)
3位 クリスター・レイク(ノルウェー、ジョーカー・メリダ)
4位 ターナー・プット(アメリカ、アメリカナショナル)
5位 ピルミン・ラング(スイス、アトラスパーソナル・ジャクロー)
6位 パブロ・ルシュガ(スペイン、アンダルシア・カハグラナダ)
7位 ベルナールド・スルズベガー(オーストラリア、Vオーストラリア)
8位 ディルク・ミューラー(ドイツ、ニュトリキシオン)
9位 ワン・カンポー(香港、香港ナショナル)
10位 ホセルイス・カーノ(スペイン、アンダルシア・カハグラナダ)
40位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+12"
76位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+4'23"
84位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)
90位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)
95位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)

個人総合成績(イエロージャージ)
1位 ムラディヤン・ハルムラトフ(ウズベキスタン、ジャイアント・ケンダ)9h16'34"
2位 ジャン・スンジェ(韓国、韓国ナショナル)+3'27"
3位 アレクサンドル・セロフ(ロシア、ロシアナショナル)+3'31"
4位 マテイ・ムジェルリ(スロベニア、プルティニナ)+3'33"
5位 クリスター・レイク(ノルウェー、ジョーカー・メリダ)
6位 パブロ・ルシュガ(スペイン、アンダルシア・カハグラナダ)+3'34"
7位 イワン・コヴァレフ(ロシア、ロシアナショナル)+3'36"
8位 ピルミン・ラング(スイス、アトラスパーソナル・ジャクロー)+3'37"
9位 マニュエル・オルテガ(スペイン、アンダルシア・カハグラナダ)
10位 ターナー・プット(アメリカ、アメリカナショナル)
43位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)
60位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)+8'
65位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
67位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)
93位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)+8'15"
97位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)+8'20"

ポイント賞(ブルージャージ)
ボリス・シュピレフスキ(ロシア、タブリーズ・ペトロケミカル)

山岳賞(ポルカドットジャージ)
ガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)

チーム総合成績
アンダルシア・カハグラナダ


photo&text:Sonoko.Tanaka