世界選スイス・シャンペリー大会は、崖のような難コースに加えて大雨で転倒者が続出の大荒れのレースになった。ワールドカップ上位者でも手こずるジャンプを末政実緒(Team FUNFANCY/INTENSE)は飛んで自身をアピール。決勝は6位。2008、2010年の5位の結果は越えられなかった。

世界選手権スイス・シャンペリー大会を走る末政実緒(Team FUNFANCY/INTENSE)世界選手権スイス・シャンペリー大会を走る末政実緒(Team FUNFANCY/INTENSE) photo: www.canadiancyclist.com

末政実緒(Team FUNFANCY/INTENSE)末政実緒(Team FUNFANCY/INTENSE) ワールドカップ最終戦から2週間、年に一度の世界一を決める世界選手権大会がスイス・シャンペリーで開催されました。シャンペリーは過去2回ワールドカップが開催されましたが、毎回必ず雨が降り、急斜面に作られたコースは下るというより滑り落ちると言う印象が強く、世界一といっても過言ではないほど過酷なコースで、今年世界選手権が開催される事になりました。

コースはほぼ上から下までシングルトラックで、1.6kmと他のコースに比べると短いものの、走り応えのあるコースでした。真っ逆さまに落ちるような急斜面の下りで落差が激しく、スタートからゴールまで一切気の抜けないコースでした。
そして、コースの所々にあるビックジャンプ。ゴール前にはなんと7個もあり、バイクを扱う繊細さに加えジャンプを行く勢いも必要でした。

世界選手権は色々な種目とカテゴリーのレースが行われるため、一週間と開催期間が長く、毎日レースが行われているため、試走時間は毎日短く、一日の試走本数は少ないものの、余裕を持って試走する事が出来ました。
そのおかげで、今回はワールドカップのように時間とコース攻略に追われ、「大きなジャンプを飛ばなければいけない」という切迫した感覚はなく、毎日「このジャンプを飛ぼう」「次はこのジャンプを飛ぼう」といった感じで、段階を踏んで前向きに取りくむ事ができました。

タイムドセッション 滑り易いコースを丁寧に走る

世界選手権は全員が決勝を走るため、予選の代わりにタイムドセッションが金曜日に行われました。午前中の練習でやっとジャンプが全て飛べるようになり、すっきりとした気持ちでタイムドセッションに挑みました。
前日に雨が降った影響でコースはまだ少し滑りやすく、そしてコースを上から下まで通しで走るのは初めてだったので、丁寧に走り6位でゴール。

タイムドセッション 結果
1位 レイチェル・アサートン(ドイツ)
2位 エメリーヌ・ラゴー(フランス)
3位 ニコル・ミリアム(フランス)
4位 トレーシー・モスレー(イギリス)
5位 ペトラ・ベルンハルト(オーストリア)
6位 末政実緒(日本)



まるで戦場 大雨の決勝は6位に入る

週始めの天気予報は前半が晴れ、後半は崩れるという予報でした。しかし、土曜日の夕方に一瞬大雨になった以外は、土曜日の夜と日曜日の朝は降っておらず、天気予報は外れたかな? と、かすかな希望を持っていましたが、日曜日朝の試走を終えてジュニアクラスの決勝が始まる少し前から雨が降り始めてしまいました。

ジュニアの決勝が始まったとたん、救助ヘリがコースへ出動し始め、それが一向に止む事がなくコースは戦場と化しました。そして、ヘリが出動する都度コースクローズ、リフトストップでもうレースは混乱状態。
決勝は少なくとも1時間は遅れているという情報がありましたが、スタート間隔を詰めたおかげで思いのほか早く女子が始まりました。

ジュニア男女の混乱、悪天候でスタート地点は張りつめた異様な緊張感。こういうときこそ冷静さを心がけ、落ち着いてまずは泥の様子を見ながら慎重にスタートしました。

しかし、コースコンディションは想像以上に滑りやすく、前半鋭角なコーナーで落下防止の網にハンドルバーを引っ掛けてしまい停止。
急いで取り払い気を取り直してスタートするも行く手が泥に阻まれ、タイムロス分を取り戻すのが厳しかったですが、中盤の大きなステップアップジャンプは雨でも飛ぶ事が出来て勢いがついてきました。

ジャンプを飛び、スピードに乗り始めた矢先、フロントタイヤがすっぽ抜けて転倒。ダメージはなくすぐに起き上がり走り出し、無我夢中で前へ前へと進み、やっとゴール前のジャンプセクションへきました。
泥で飛ぶのが厳しくなっていましたが、絶対に飛べると信じて全力で漕いでジャンプに突入しました。

飛び出しで滑って体勢が崩れ転倒しそうになりましたが、なんとか体勢を立て直し、全てクリアしてゴール。ジャンプでタイムを縮めたとはいえ、転倒が響き、6位で世界選手権を終えました。

ゴール前のジャンプは、昨年の世界チャンピオンでさえ一つ目で体勢を崩し飛べず、「女子で飛んだのは数名のみだ」と聞いた時は、その数名の中に入る事が出来て嬉しかったです。
パワーよりテクニック重視のコース。得意なコースで表彰台を逃したのは悔しいですが、今年はシーズンを通し今ひとつ自分の実力を発揮出来ずにいたし、そのうえ怪我もしてしまい、こんな状態で通用するのかと不安な気持ちもありましたが、今回は実力を発揮出来て自信を取り戻せた良いレースだったと思います。
もちろん今回の結果に満足する事なく、さらなるレベルアップに必要な技術、体力を身につけなければなりません。と同時に、年々レベルの上がる海外で日本人ダウンヒル選手が活躍するには、個々に応援してもらっているスポンサーの方々のサポートのみならず、連盟や協会のバックアップが必要不可欠だと切実に思いました。

いつも応援してくださっているスポンサーの皆様、ファンの皆様、そして世界選で全力でサポートしてくださった日本チームスタッフの皆様には、感謝の気持ちでいっぱいです。応援ありがとうございました。

海外でのレースは世界戦にて終了しましたが、国内はこれから後半戦が始まります。まず最後まで気を抜かず全力で走りたいと思います。次のレースは9月17日富士見パノラマで開催されるジャパンシリーズ第3戦です。良い走りをお見せ出来るよう、全力で挑みたいと思います。

末政実緒(Team FUNFANCY/INTENSE)

マウンテンバイク世界選手権2011DH 結果
1位 エメリーヌ・ラゴー(フランス)
2位 レイチェル・アサートン(ドイツ)
3位 クレア・ブシェ(カナダ)
4位 ニコル・ミリアム(フランス)
5位 サブリナ・ジョニエ(フランス)
6位 末政実緒(日本)