2011/08/22(月) - 14:44
8月21日、ドイツ・ハンブルグを舞台としたクラシックレース、ヴァッテンフォール・サイクラシックスが開催された。勝負は35人のスプリントに持ち込まれ、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ) が制した。ツール・ド・フランスステージ2勝、エネコツアー総合優勝に続く勝利だ。
ヴァッテンフォール・サイクラシックス2011 コースマップ (c)CorVosドイツ唯一のプロツアーカテゴリーのワンデイレースであるヴァッテンフォール・サイクラシックス。前身のHEWサイクラシックスから数えて今年で16回目を迎える、クラシックの中では歴史の浅い大会だ。
過去の優勝者の名前にはヤン・ウルリッヒ(ドイツ)やヨハン・ムセウ(ベルギー)といった名選手や、近年ではロビー・マキュアン(オーストラリア、現レディオシャック)、タイラー・ファラー(アメリカ、現ガーミン・サーヴェロ)といったスプリンターの名前が並んでいる。
ドイツ屈指の港湾都市ハンブルクにとられた周回コースで行われ、今年の総距離は216.5km。中でも山岳ポイントが設定されているヴァーゼベルクの登りは計4度登場し、標高・勾配とも峻厳ではないものの、勝負を左右するアタックの頻発するポイントとなっている。どのタイミングでアタックをするか、そしてスプリンターにとってはこの登りで集団に食らいつくことが勝利の条件となる。
レースの名所にして最大の勝負どころ、ヴァーセベルグ。登坂距離700mmのこの短い坂は、平均勾配10%、最大勾配16%。この激坂を合計4回通過し、ハンブルグ中心部へゴールする。
コースは昨年とほぼ同じだが、南方の周回サーキットが昨年の逆時計回りに変更されている。坂からハンブルグ市内まで平坦路が長いため、近年は中集団のスプリントで勝負が決している。
ドイツ・ハンブルグ中心街がスタート&ゴール地点となる (c)CorVos
ノルウェーからボアッソンハーゲンの応援に駆けつけたファンの姿も (c)CorVos
ハンブルグ市内の鉄橋を渡る集団 (c)CorVos21チーム・162人の選手が出場。2009年と2010年に2連覇したタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)は同時開催のブエルタ・ア・エスパーニャ出場のため欠場。ディフェンディングチャンピオン不在の大会となった。ブエルタにほとんどのスプリンターが出場しているため、スプリントに強いパンチャータイプの選手が多く集まった。
過去のチャンピオンでは2008年覇者ロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)、2005年覇者フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)が出場。なかでも地元ドイツが誇るアンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)にも期待が集まる。そして全日本チャンピオンの別府史之(レディオシャック)も参戦。
郊外の湖沿いのコースを走る集団 好天に恵まれたハンブルグをスタートした選手たち。早々に5人の逃げが決まる。逃げたのはラルス・バク(デンマーク、HTCハイロード)、パヴェル・ブルット(ロシア、カチューシャ)、トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユDCM)、ヤン・バルタ(チェコ、チーム・ネットアップ)、ダニエル・セスマ(スペイン、エウスカルテル)。
5人の逃げはタイム差3分ほどに開くが、スプリントに持ちこみたい各チームの思惑で大きくは逃がしてもらえない。
この逃げからまずセスマが脱落した。
137.2km地点、1回目のヴァーセベルグを越える時点でタイム差は20秒まで縮まる。逃げる4人は辛うじて逃げ続けるが、次にバルタが脱落。続いてデヘントが脱落。
ヴァーセベルグをクリアするパヴェル・ブルット(ロシア、カチューシャ) (c)CorVosメイン集団はレオパード・トレックが主に牽引し、後半の逃げを決めたい選手が代わる代わるアタックして前に出ようとする。このレースを得意とする別府史之も奮闘し、前を攻める。
集団団からミカエル・シェレル(フランス、アージェードゥーゼル)、ピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)、マッテオ・トレンティン(イタリア、クイックステップ)が抜け出すが、逃げるまでには至らず吸収される。
カウンターアタックで飛び出したファビアン・ウェーグマン(ドイツ、レオパード・トレック)が後退してきたデヘントと合流し、逃げるバクとブルットを追ったが、4回目のヴァーセベルグ越えのためにペースアップした集団に飲み込まれた。そしてバクとブルットも残り25kmで吸収された。
ヴァーゼベルクの登りでスピードを上げるファビアン・ウェーグマン(ドイツ、レオパード・トレック)ら (c)CorVos続いてマーティン・チャリンギ(オランダ、ラボバンク)の強力な走りで約10人の選手が差を開くが、再び集団はひとつに。
残り15kmでドリス・デヴェナインス(ベルギー、クイックステップ)がアタックすると集団が分裂し、グライペルやトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)ら有力選手が後方集団に取り残される。
最終的に形成された先頭集団は約35人。ラスト2kmでチャリンギがアタックし、集団に差をつけて残り1kmへ。メイン集団はチームスカイが列車を形成してスピードアップ。残り400mでチャリンギを吸収した。
レオパード・トレック勢が集団をコントロールする。先頭はヨースト・ポストゥーマ (c)CorVosスプリントに向けてスピードをあげるのはジェレイント・トーマス(イギリス、チームスカイ)。後方につけたボアッソンハーゲンがラスト250mでスパート。後方からはシモーネ・ポンツィ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)やゲラルド・チオレック(ドイツ、クイックステップ)が猛追するが、ボアッソンハーゲンの勢いは衰えず、両手を大きく突き上げてゴールした。2位はチオレック、3位はボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユDCM)。別府史之は4分33秒差の109位でゴールしている。
昨年のこのレースでは早すぎたスパートで2位に終わったボアッソンハーゲン。ツール・ド・フランスで2勝、エネコツアーで総合優勝の好調を持続する勝利だ。トーマスらチームメイトのアシストもうまく機能した。
チオレックをスプリントで下したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ) (c)CorVos
勝利したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ) (c)CorVosエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ) の勝利コメント
「このコースは上りとスプリントがいい感じでミックスしている。最後は小集団スプリントになるだろうと思っていた。最後はジェレイント・トーマスがパーフェクトなタイミングで牽いてくれたから、後は勝利するだけだった」
セルファイス・クナーフェン監督(チームスカイ)のコメント
「チームの全員が素晴らしい仕事をした。なかでもピーター・ケノーはステージ終盤でライバルとなるスプリンターたちを後方に15秒~20秒置き去りにするように、分裂した先頭集団をコントロールした。そして(フアンアントニオ)フレチャとクリス(フルーム)が最後に素晴らしい強さを見せた。もちろんG(ジェレイント・トーマス)とエドヴァルド(ボアッソンハーゲン)も強かった」。
ヴァッテンフォール・サイクラシックス2011 結果
1位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ) 4h49'40"
2位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、クイックステップ)
3位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユDCM)
4位 シモーネ・ポンツィ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
5位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
自転車のギア板をかたどった優勝トロフィーを手にするチオレックをスプリントで下したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ) (c)CorVos6位 ユルゲン・ルーランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
7位 サイモン・クラーク(オーストラリア、アスタナ)
8位 マヌエル・カルドソ(ポーランド、レディオシャック)
9位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ランプレISD)
10位 マイケル・クレーダー(オランダ、ガーミン・サーヴェロ)
109位 別府史之(日本、レディオシャック) +4'33"
photo:(c)CorVos
text:Yufta.Omata,Makoto.AYANO
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過去の優勝者の名前にはヤン・ウルリッヒ(ドイツ)やヨハン・ムセウ(ベルギー)といった名選手や、近年ではロビー・マキュアン(オーストラリア、現レディオシャック)、タイラー・ファラー(アメリカ、現ガーミン・サーヴェロ)といったスプリンターの名前が並んでいる。
ドイツ屈指の港湾都市ハンブルクにとられた周回コースで行われ、今年の総距離は216.5km。中でも山岳ポイントが設定されているヴァーゼベルクの登りは計4度登場し、標高・勾配とも峻厳ではないものの、勝負を左右するアタックの頻発するポイントとなっている。どのタイミングでアタックをするか、そしてスプリンターにとってはこの登りで集団に食らいつくことが勝利の条件となる。
レースの名所にして最大の勝負どころ、ヴァーセベルグ。登坂距離700mmのこの短い坂は、平均勾配10%、最大勾配16%。この激坂を合計4回通過し、ハンブルグ中心部へゴールする。
コースは昨年とほぼ同じだが、南方の周回サーキットが昨年の逆時計回りに変更されている。坂からハンブルグ市内まで平坦路が長いため、近年は中集団のスプリントで勝負が決している。
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この逃げからまずセスマが脱落した。
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カウンターアタックで飛び出したファビアン・ウェーグマン(ドイツ、レオパード・トレック)が後退してきたデヘントと合流し、逃げるバクとブルットを追ったが、4回目のヴァーセベルグ越えのためにペースアップした集団に飲み込まれた。そしてバクとブルットも残り25kmで吸収された。
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昨年のこのレースでは早すぎたスパートで2位に終わったボアッソンハーゲン。ツール・ド・フランスで2勝、エネコツアーで総合優勝の好調を持続する勝利だ。トーマスらチームメイトのアシストもうまく機能した。
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「このコースは上りとスプリントがいい感じでミックスしている。最後は小集団スプリントになるだろうと思っていた。最後はジェレイント・トーマスがパーフェクトなタイミングで牽いてくれたから、後は勝利するだけだった」
セルファイス・クナーフェン監督(チームスカイ)のコメント
「チームの全員が素晴らしい仕事をした。なかでもピーター・ケノーはステージ終盤でライバルとなるスプリンターたちを後方に15秒~20秒置き去りにするように、分裂した先頭集団をコントロールした。そして(フアンアントニオ)フレチャとクリス(フルーム)が最後に素晴らしい強さを見せた。もちろんG(ジェレイント・トーマス)とエドヴァルド(ボアッソンハーゲン)も強かった」。
ヴァッテンフォール・サイクラシックス2011 結果
1位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ) 4h49'40"
2位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、クイックステップ)
3位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユDCM)
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7位 サイモン・クラーク(オーストラリア、アスタナ)
8位 マヌエル・カルドソ(ポーランド、レディオシャック)
9位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ランプレISD)
10位 マイケル・クレーダー(オランダ、ガーミン・サーヴェロ)
109位 別府史之(日本、レディオシャック) +4'33"
photo:(c)CorVos
text:Yufta.Omata,Makoto.AYANO
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