2011/08/19(金) - 22:43
8月20日(土)に開幕するグランツール最終戦、ブエルタ・ア・エスパーニャ。山岳の厳しさに定評のある3週間の闘いの注目選手をピックアップ。日本人初出場の土井雪広(日本、スキル・シマノ)からも目が離せない。
総合優勝に輝いたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) photo:Unipublic/Graham Watson今年は例年に比べ、1週間早い8月第3週からの開幕となるブエルタ・ア・エスパーニャ。毎年、世界選手権の1週間前に最終日を迎えるのが常だが、今年は2週間前にマドリッドにゴールする。世界選手権の調整も兼ねた選手にとってこのスケジューリングがどうブエルタの走りに影響するかは注目どころ。
逆に、世界選手権までの日数が空いたことで、いつもは途中でリタイヤしてしまうスプリンターたちが最後まで残る可能性も。若手やベテランが混ざる、例年以上に白熱のスプリントが見られそうだ。しかし、多くの選手が愚痴をこぼす山岳の厳しさは今年も健在。スプリンターの調整には、少し無理があるかもしれない難易度の高さは相変わらずか。
それでは脚質別に、ブエルタ・ア・エスパーニャ2011の注目選手を見てみよう。
力は拮抗 オールラウンダー
昨年はマイヨロホを着たイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) photo:Cor Vosブエルタ総合リーダーの証、燃えるように赤いジャージのマイヨロホを狙うのはオールラウンダーたち。今年も有力な選手たちが集うが、その実力は均衡しているというのが大方の見方だ。
まず一番に名前を挙げたいのは、昨年の覇者ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)。昨年初のグランツール優勝を経験し、今年のジロではアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク)の前に屈したものの総合3位。着実にステージレーサーとして成長中。しかし、今大会にかけては少し弱気。「自分の知らない登りが多い」として、「一線級の選手たちがこのレースをわからなくしそうだ」とライバルたちを警戒する。
ジロでは精彩を欠いたデニス・メンショフ(ロシア、ジェオックス・TMC) photo:Riccardo Scanferlaそのライバルに挙げられるのは、母国にタイトルを取り戻したいスペイン勢。その筆頭は、イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)だ。昨年、山岳2ステージを制し、マイヨロホを着ながら、第14ステージで落車してリタイヤの憂き目に遭った。今年のジロでは山岳ステージで勝利しており、その山岳力は指折りだ。
もうひとりのスペイン人山岳スペシャリストとしてはホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)を忘れるわけにはいかない。昨年はアントンが落車した第14ステージを制し、マイヨロホを2日間着ている。勾配がきつければきついほど力を発揮する生粋のクライマー。それだけに、タイムトライアルが弱点。今年は平坦気味の47kmと、TTスペシャリスト向けのコース設定がなされているため、なんとかここをうまくこなしたいところ。
ジロで総合2位のミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) photo:Kei Tsujiチームがツール出場を逃したことで、ビッグレースでの存在感に乏しいチームジェオックス。だが2度のブエルタ覇者デニス・メンショフ(ロシア、チームジェオックス)の名を、優勝候補リストの上位に挙げないのは無礼千万というものだろう。影の薄さは着実な走りの裏返しでもある。昨年は41位と振るわなかったが、今年のジロでは静かに総合8位。3度目の栄冠を狙い、山岳ステージではしっかりと前に残るメンショフに期待したい。
今年コンタドールの強大な力に屈しジロで総合2位となったミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)は、積極的な山岳の走りが身上。この山岳がちなブエルタでも活躍してくれるはずだ。年齢31と選手としての適齢期に、強力なチームを手に入れたスカルポーニの走りに注目。
ツールではリタイヤに終わったアンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック) photo:Cor Vos落車の多かった今年のツールでは多くの総合有力選手がリタイヤで姿を消した。中でもエース4人で臨んだレディオシャックはそのエース全てが落車でリタイヤという悲劇的な事態に。それだけにこのブエルタにはツールと遜色ないフルメンバーで挑む。エースはアンドレアス・クレーデン(ドイツ)とヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア)。しかしまだツールの落車の影響が残っており、不安材料は拭えない。なお、セレクションの最後の4人に残っていたフミこと別府史之(日本)は最後でメンバーから外れている。
やはりツールで涙を飲んだのが、急成長中のユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)。ツールにかけていただけに、そのフラストレーションとモチベーションを存分にブエルタにつぎ込んでくるだろう。同じくツール落車組としてはブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)のリベンジも期待したいところ。
他には、3週間のステージレースに不安は残るが、ダニエル・マーティン(アイルランド)とクリストフ・ルメヴェル(フランス)のガーミン・サーヴェロコンビや、アイルランドの星ニコラス・ロッシュ(アージェードゥーゼル)、ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)、レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)らがトップ10、あるいはその上を狙ってくるだろう。
世界屈指の選手ぞろい 若手の台頭も スプリンター
圧倒的な力でポローニュ区間4勝を飾ったマルセル・キッテル(ドイツ、スキル・シマノ)、ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)は総合優勝 photo:Riccardo Scanferla何と言ってもスプリンターのメンバーが豪華だ。直前のロンドン・サリーサイクルクラシックを制したばかりのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)を始め、タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)、4度目の世界選手権制覇にモチベーションの高いオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)、トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)やアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)ら。
そんなスプリンターの中で、注目株はマルセル・キッテル(ドイツ、スキル・シマノ)。直前のツール・ド・ポローニュで7ステージ中4ステージで勝利するという鮮烈なデビューを飾った23歳の新世代スプリンターが、どれだけ世界トップの選手と渡り合えるか注目だ。
その他の注目選手 土井が日本人初出場!
日本人初出場を果たす土井雪広(スキル・シマノ、日本) photo:Sonoko Tanakaこのブエルタで注目したい初出場選手は2人。ひとり目は何と言っても、日本人として初のブエルタ出場となる土井雪広(スキル・シマノ)だ。これで土井、新城幸也(ユーロップカー)、フミと欧州組の選手3人がそれぞれグランツールを経験することになる。「できる限り、可能な限り、最大限の走りをしたい。とにかくブエルタを走るのが今から楽しみ」と語る土井は直前のスペインのレースの山岳ステージで上位に食い込んでおり、このブエルタで山岳ステージでの活躍に期待がかかる。
待望のグランツールデビューを飾るのはピーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)も同じ。このスプリンター兼クライマー兼ルーラー…、とにかく形容しがたい文字通りのオールラウンダーがいよいよ3週間のレースに挑む。直前のツール・ド・ポローニュを制したばかりのこの21歳はニーバリのアシストを担うが、アシスト故に生じるチャンスをモノにすれば、ステージ優勝はそう遠くないだろう。
いずれにせよ、3週間のブエルタでは全ての選手にチャンスがある。キラリと光る新星の登場や、ベテランのいぶし銀のアシストぶりなど、どの瞬間も見どころとなる。栄光のマイヨロホ争いはもちろんのこと、あらゆる選手の光る走りに注目してほしいグランツール最終戦だ。
text:Yufta Omata
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逆に、世界選手権までの日数が空いたことで、いつもは途中でリタイヤしてしまうスプリンターたちが最後まで残る可能性も。若手やベテランが混ざる、例年以上に白熱のスプリントが見られそうだ。しかし、多くの選手が愚痴をこぼす山岳の厳しさは今年も健在。スプリンターの調整には、少し無理があるかもしれない難易度の高さは相変わらずか。
それでは脚質別に、ブエルタ・ア・エスパーニャ2011の注目選手を見てみよう。
力は拮抗 オールラウンダー
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まず一番に名前を挙げたいのは、昨年の覇者ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)。昨年初のグランツール優勝を経験し、今年のジロではアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク)の前に屈したものの総合3位。着実にステージレーサーとして成長中。しかし、今大会にかけては少し弱気。「自分の知らない登りが多い」として、「一線級の選手たちがこのレースをわからなくしそうだ」とライバルたちを警戒する。
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もうひとりのスペイン人山岳スペシャリストとしてはホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)を忘れるわけにはいかない。昨年はアントンが落車した第14ステージを制し、マイヨロホを2日間着ている。勾配がきつければきついほど力を発揮する生粋のクライマー。それだけに、タイムトライアルが弱点。今年は平坦気味の47kmと、TTスペシャリスト向けのコース設定がなされているため、なんとかここをうまくこなしたいところ。
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今年コンタドールの強大な力に屈しジロで総合2位となったミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)は、積極的な山岳の走りが身上。この山岳がちなブエルタでも活躍してくれるはずだ。年齢31と選手としての適齢期に、強力なチームを手に入れたスカルポーニの走りに注目。
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やはりツールで涙を飲んだのが、急成長中のユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)。ツールにかけていただけに、そのフラストレーションとモチベーションを存分にブエルタにつぎ込んでくるだろう。同じくツール落車組としてはブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)のリベンジも期待したいところ。
他には、3週間のステージレースに不安は残るが、ダニエル・マーティン(アイルランド)とクリストフ・ルメヴェル(フランス)のガーミン・サーヴェロコンビや、アイルランドの星ニコラス・ロッシュ(アージェードゥーゼル)、ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)、レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)らがトップ10、あるいはその上を狙ってくるだろう。
世界屈指の選手ぞろい 若手の台頭も スプリンター
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そんなスプリンターの中で、注目株はマルセル・キッテル(ドイツ、スキル・シマノ)。直前のツール・ド・ポローニュで7ステージ中4ステージで勝利するという鮮烈なデビューを飾った23歳の新世代スプリンターが、どれだけ世界トップの選手と渡り合えるか注目だ。
その他の注目選手 土井が日本人初出場!
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待望のグランツールデビューを飾るのはピーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)も同じ。このスプリンター兼クライマー兼ルーラー…、とにかく形容しがたい文字通りのオールラウンダーがいよいよ3週間のレースに挑む。直前のツール・ド・ポローニュを制したばかりのこの21歳はニーバリのアシストを担うが、アシスト故に生じるチャンスをモノにすれば、ステージ優勝はそう遠くないだろう。
いずれにせよ、3週間のブエルタでは全ての選手にチャンスがある。キラリと光る新星の登場や、ベテランのいぶし銀のアシストぶりなど、どの瞬間も見どころとなる。栄光のマイヨロホ争いはもちろんのこと、あらゆる選手の光る走りに注目してほしいグランツール最終戦だ。
text:Yufta Omata
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