2011/07/17(日) - 16:20
ツール・ド・フランスですでにステージ2勝を飾っているマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)の相棒、それがスペシャライズドのVENGE(ヴェンジ)だ。McLAREN(マクラーレン)との密接な研究開発によって生まれたスペシャルモデルも登場。空力に秀でたスプリントバイクの実力とは如何に。
空力性能を突き詰めたスプリンターの右腕
モータースポーツで名を馳せるMcLAREN(マクラーレン)社とのコラボレーションで話題を呼んだVENGEが、カリフォルニアで開催されたスペシャライズドのグローバル・プレス・ローンチで改めて発表された。
プレゼンテーションで強調されたのは、HTC・ハイロードを始めとするプロチームと密に手を組み、そしてツール・ド・フランスなどで結果を残しているということ。
剛性、重量、エアロダイナミクスの三点にフォーカスし、R&D(リサーチ&デヴェロップメント=研究開発)を繰り返した。実質的なVENGEのデビュー戦となったミラノ〜サンレモでは、マシュー・ゴス(オーストラリア)がスプリント勝利を収めている。
開発陣が重視したのは、スプリント時にファクターを担うねじれ剛性だ。高弾性のFACT IS 11Rカーボンで武装することで扁平したエアロ形状でありながら剛性が高められている。BBとチェーンステーはワンピース成形。その剛性の高さに関しては世界屈指のスプリンターを勝利に導いていることが何よりもの証明だ。
やはり注目したいのはその空力性能。如何に効率よく風を切り裂き、より少ないパワーで前に進むためのアイデアが随所に詰め込まれている。
ヘッドはTARMAC同様テーパード形状で、トップが1-1/8インチでボトムが1-3/8インチ。中央部には“くびれ”がつけられており、剛性と空力性能を両立している。ヘッドパーツはトップチューブに馴染む流線型のデザインで、空力優先デザイン視覚的に押し出す。
開発陣が時間を割いて説明していたのが「キャンパードエアフォイル・クロスセクションシートステー」だ。その断面は単なる流線型の断面ではなく、後部の角を落とし、内側が曲線を描く独特のウィング形状。実際のライドで多く見られる少し横方向から風が吹くシチュエーションで整流効果が高められる。
そしてフォークはUCI(国際自転車競技連合)のルールに沿う断面形状3:1のFACTカーボンエアフォイルフォーク。ホイール着脱時の耐久性アップのために、スチール製のインサートが組み込まれる。シートポストはリバーシブルデザインで、前後を反転させることでセットバック量を0mmと20mmに変更可能だ。
これらの室内トラックでの実験の結果、40km/h巡航時に20ワットの出力軽減を果たしていると言う(TARMAC SL3比)。スピードが上がれば上がるほど軽減値は増加。コンピューターではじき出した結果が実走で確かめられている。
気になる重量はモジュール全体で2179g(サイズ56)。とびっきり軽量とは言えないが、エアロフォルムのバイクとしては十分に軽い。
そして、ラインナップの頂点にはS-WARKS McLARENが君臨している。文字通りMcLAREN社とのコラボレーションで誕生したスペシャルモデル。F1マシンの製作で多用されるFEA(有限要素解析)によってカーボンのレイアップを細かく調整し、剛性を保ちながら軽量化を果たしている。ノーマルモデルで比較すると、重量は110gダウン。重量剛性比で17%アップしている。まさに勝つためのマシンだ。
予想以上に乗りこなしやすいスピードマシン
テストライド用に用意されたのは、McLARENでもなくS-WORKSでもないPROシリーズ。おそらく多く市場に出回るベーシックなモデルだ。TTバイクのSHIV TT(シヴ・ティーティー)を彷彿とさせるエアロフォルムが目につくが、ジオメトリーはTARMACと共通であり、特別なポジション調整は必要ない。
プレゼンテーションで散々「空力を重視したスプリンター向けの剛性の高いバイク」だと叩き込まれ、実際、ゴツいフォルムのバイクが目の前に登場。しかし走り出してみると、良い意味での“普通さ”に肩すかしを食らった。
ガチガチに固められた硬質な乗り味ではなく、適度なたわみを持ってバイクは加速していく。加速の軽快さはTARMACシリーズに譲るが、スピードに乗ってから、高速域での伸びが異なる。カツンカツンと加速するTARMACに対して、VENGEはズドーンと懐の深い加速を見せる。そして一旦加速してしまえば、そのまま巡航に持ち込める。踏み味に関しては個人の好みが大きく分かれる部分だが、ライド後半まで脚を残せるのはVENGEだろう。
どの部分がどのような空力性能を発揮しているのかは知る由もないが、突き詰められた空力性能が高速域からの伸びの良さに繋がっているのは間違いない。伸びやかな加速感によって、下りと平地では大変気持ちのよいフィーリングを得ることのできるバイクだ。
技術研究開発部責任者のクリス・ダルシオ氏曰く、猛烈に加速するカヴェンディッシュのビッグパワーを受け止めるMcLARENモデルは、よりシャープな加速感を実現しているという。
乗り心地も思いのほか良い。登りでギクシャクすることもなく、ダンシングで踏もうがシッティングで回そうが、フレームが自然と入力を受け止めてくれる。カヴェンディッシュがツールの山岳ステージでもVENGEを乗り続けているだけのことはある。ミラノ〜サンレモのように登りのあるクラシックレースでは、登りを登れなければ勝負に絡めない。見た目に反して、予想以上にオールラウンドなバイクだという印象を受けた。
text&photo:Kei Tsuji in Monterey, USA
空力性能を突き詰めたスプリンターの右腕
モータースポーツで名を馳せるMcLAREN(マクラーレン)社とのコラボレーションで話題を呼んだVENGEが、カリフォルニアで開催されたスペシャライズドのグローバル・プレス・ローンチで改めて発表された。
プレゼンテーションで強調されたのは、HTC・ハイロードを始めとするプロチームと密に手を組み、そしてツール・ド・フランスなどで結果を残しているということ。
剛性、重量、エアロダイナミクスの三点にフォーカスし、R&D(リサーチ&デヴェロップメント=研究開発)を繰り返した。実質的なVENGEのデビュー戦となったミラノ〜サンレモでは、マシュー・ゴス(オーストラリア)がスプリント勝利を収めている。
開発陣が重視したのは、スプリント時にファクターを担うねじれ剛性だ。高弾性のFACT IS 11Rカーボンで武装することで扁平したエアロ形状でありながら剛性が高められている。BBとチェーンステーはワンピース成形。その剛性の高さに関しては世界屈指のスプリンターを勝利に導いていることが何よりもの証明だ。
やはり注目したいのはその空力性能。如何に効率よく風を切り裂き、より少ないパワーで前に進むためのアイデアが随所に詰め込まれている。
ヘッドはTARMAC同様テーパード形状で、トップが1-1/8インチでボトムが1-3/8インチ。中央部には“くびれ”がつけられており、剛性と空力性能を両立している。ヘッドパーツはトップチューブに馴染む流線型のデザインで、空力優先デザイン視覚的に押し出す。
開発陣が時間を割いて説明していたのが「キャンパードエアフォイル・クロスセクションシートステー」だ。その断面は単なる流線型の断面ではなく、後部の角を落とし、内側が曲線を描く独特のウィング形状。実際のライドで多く見られる少し横方向から風が吹くシチュエーションで整流効果が高められる。
そしてフォークはUCI(国際自転車競技連合)のルールに沿う断面形状3:1のFACTカーボンエアフォイルフォーク。ホイール着脱時の耐久性アップのために、スチール製のインサートが組み込まれる。シートポストはリバーシブルデザインで、前後を反転させることでセットバック量を0mmと20mmに変更可能だ。
これらの室内トラックでの実験の結果、40km/h巡航時に20ワットの出力軽減を果たしていると言う(TARMAC SL3比)。スピードが上がれば上がるほど軽減値は増加。コンピューターではじき出した結果が実走で確かめられている。
気になる重量はモジュール全体で2179g(サイズ56)。とびっきり軽量とは言えないが、エアロフォルムのバイクとしては十分に軽い。
そして、ラインナップの頂点にはS-WARKS McLARENが君臨している。文字通りMcLAREN社とのコラボレーションで誕生したスペシャルモデル。F1マシンの製作で多用されるFEA(有限要素解析)によってカーボンのレイアップを細かく調整し、剛性を保ちながら軽量化を果たしている。ノーマルモデルで比較すると、重量は110gダウン。重量剛性比で17%アップしている。まさに勝つためのマシンだ。
予想以上に乗りこなしやすいスピードマシン
テストライド用に用意されたのは、McLARENでもなくS-WORKSでもないPROシリーズ。おそらく多く市場に出回るベーシックなモデルだ。TTバイクのSHIV TT(シヴ・ティーティー)を彷彿とさせるエアロフォルムが目につくが、ジオメトリーはTARMACと共通であり、特別なポジション調整は必要ない。
プレゼンテーションで散々「空力を重視したスプリンター向けの剛性の高いバイク」だと叩き込まれ、実際、ゴツいフォルムのバイクが目の前に登場。しかし走り出してみると、良い意味での“普通さ”に肩すかしを食らった。
ガチガチに固められた硬質な乗り味ではなく、適度なたわみを持ってバイクは加速していく。加速の軽快さはTARMACシリーズに譲るが、スピードに乗ってから、高速域での伸びが異なる。カツンカツンと加速するTARMACに対して、VENGEはズドーンと懐の深い加速を見せる。そして一旦加速してしまえば、そのまま巡航に持ち込める。踏み味に関しては個人の好みが大きく分かれる部分だが、ライド後半まで脚を残せるのはVENGEだろう。
どの部分がどのような空力性能を発揮しているのかは知る由もないが、突き詰められた空力性能が高速域からの伸びの良さに繋がっているのは間違いない。伸びやかな加速感によって、下りと平地では大変気持ちのよいフィーリングを得ることのできるバイクだ。
技術研究開発部責任者のクリス・ダルシオ氏曰く、猛烈に加速するカヴェンディッシュのビッグパワーを受け止めるMcLARENモデルは、よりシャープな加速感を実現しているという。
乗り心地も思いのほか良い。登りでギクシャクすることもなく、ダンシングで踏もうがシッティングで回そうが、フレームが自然と入力を受け止めてくれる。カヴェンディッシュがツールの山岳ステージでもVENGEを乗り続けているだけのことはある。ミラノ〜サンレモのように登りのあるクラシックレースでは、登りを登れなければ勝負に絡めない。見た目に反して、予想以上にオールラウンドなバイクだという印象を受けた。
text&photo:Kei Tsuji in Monterey, USA
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