2009/05/12(火) - 00:13
ヴェネツィアから車で約1時間。アドリア海に面した観光地イェゾロで、ジロ・チェンテナリオ(100周年記念大会)のロードレースは動き出した。
自転車ファンでごった返したイェゾロのスタート地点から100mも離れれば、海水浴客でごった返したビーチが現れる。時折遠くからジロMCの叫び声が聞こえる以外は、いたって普通の休日の海水浴シーン。イェゾロは北イタリア有数のビーチリゾートだ。
序盤はラグーンを縫うように平野を進む。集団スプリント勝負濃厚の平坦コースで勇敢にも飛び出したのは、トスカーナ州フィレンツェ出身のレオナルド・スカルセッリ(イタリア)。昨年クイックステップのメンバーとしてジャパンカップで45位に入っているスカルセッリは、袖口からタトゥーが見え隠れする34歳のベテランだ。
スカルセッリが所属するウクライナとイタリアの混成チームISDは、ジロに向けてジャージデザインを変更。どこかチームコロンビアのマッチョジャージにインスパイアーされた感のある蛍光黄白黒デザインになった。この日のスカルセッリの単独逃げで新ジャージは露出が一気に高まったといっていいだろう。
単独でトリエステ市民の暖かい歓迎を受けたスカルセッリだったが、やがては力尽きて吸収。ISDは勝利を新鋭スプリンターのオスカル・ガット(イタリア)に託した。
トリエステで繰り広げられたスプリント第1ラウンド
トリエステはイタリア北東部の端の端に位置する。スロベニア国境が近く、現在もスロベニア系住民の比率が高い。過去にはオーストリアやドイツ、ユーゴスラビアなど、隣接する国々との戦火に巻き込まれ、占領と併合を繰り返し、1954年にイタリアに復帰して今のトリエステがある。2004年ジロでは「トリエステ復帰50年」を記念するステージも行なわれた。
プレスルームのベランダから、山と海に挟まれた美しいトリエステの街並を眺めていると「どうだ!これが小さなナポリだ!」と地元の警官に自慢された。ナポリの街並はしっかりと見たことがないが、それは確かに一理ある。ゴールはそんな「小ナポリ」の海沿いの大通りに置かれた。
最後の最後に3周する周回コースに登場する山岳ポイント「モンテベッロ」は、直訳すると「美しい山」。ド平坦なこの日最後の関門だが、最大勾配7%とピュアスプリンターもパワーで乗り切れる。マリアヴェルデ獲得に燃える選手たちの度重なるアタックも、ガーミンとチームコロンビア率いる大集団が封じ込めた。
中継ヘリが近づき、「トリエステの歓声を選手に!」というアナウンスとともに会場の熱気は最高潮に。最終ストレートに姿を現したのはアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)。そのすぐ後ろで、全身マリアローザのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)がスプリント体勢に入るのが見えた。
カメラマンのポジション争いはゴール前のスプリンター並みに激しい。バトルが一旦視界から消え、次にファインダーに映った時(正直言うとマリアローザの先行を予想していた)、カヴェンディッシュを抑え込んだペタッキの姿がそこにあった。
現世界最速を破った元世界最強スプリンター
喘息薬過剰摂取の疑いで出場停止処分を受けたペタッキが、ジロのスプリント舞台に戻ってきた。「ジロに出場するのは2年ぶり。やはりジロはテレビで見ていても面白くない」と、レース後の会見で語る。
復活に向けて、冬期は厳しいトレーニングを積んできたペタッキ。「今シーズンすでに8勝を飾っているが、やはりグランツールでの勝利は格別。ブランクを置いての今回の勝利は、(2007年ジロの)カリアリでの勝利に近いものがある。あの時は『失われた時間は努力すれば取り戻せる』ということを実感した」と続ける。
この日1歳の誕生日を迎える息子に捧げる勝利。その表情には、一仕事を終えた安堵感があった。
一方で前日のリードがあるためカヴェンディッシュはマリアローザを守ったが、ここまで敵無しの様相を呈していただけにトーンダウンしていた。表彰台でも笑顔は少なく、レース後の記者会見でも少し放心した様子。
「ミラノ~サンレモのポッジオとチプレッサを経験しているから、最後の上り(モンテベッロ)は問題じゃなかった。チームは完全に機能していたけど自分の力が足りず、早めに仕掛けたペタッキに届かなかった。マリアローザを守ったことは、一日働いたチームへのせめてもの償い」と、マリアローザをまとったカヴェンディッシュが肩を落とす。
一騎打ちを演じた両者が「明日はまたスプリンターのチャンス」と語る第3ステージは、海沿いのグラードからヴァルドッビアーデネまでの198kmで行なわれる。
ゴール地点周辺はプロセッコ(スパークリングワイン)の産地として有名で、一面ブドウ畑の丘が幾重にも連なるまさにワイン王国。丘の上に位置するヴァルドッビアーデネに向かって、なだらかな上りをこなしてゴールに辿り着く。ピュアスプリンターがフレッシュな状態で挑む最後のバトルだ。
photo&text:Kei Tsuji
自転車ファンでごった返したイェゾロのスタート地点から100mも離れれば、海水浴客でごった返したビーチが現れる。時折遠くからジロMCの叫び声が聞こえる以外は、いたって普通の休日の海水浴シーン。イェゾロは北イタリア有数のビーチリゾートだ。
序盤はラグーンを縫うように平野を進む。集団スプリント勝負濃厚の平坦コースで勇敢にも飛び出したのは、トスカーナ州フィレンツェ出身のレオナルド・スカルセッリ(イタリア)。昨年クイックステップのメンバーとしてジャパンカップで45位に入っているスカルセッリは、袖口からタトゥーが見え隠れする34歳のベテランだ。
スカルセッリが所属するウクライナとイタリアの混成チームISDは、ジロに向けてジャージデザインを変更。どこかチームコロンビアのマッチョジャージにインスパイアーされた感のある蛍光黄白黒デザインになった。この日のスカルセッリの単独逃げで新ジャージは露出が一気に高まったといっていいだろう。
単独でトリエステ市民の暖かい歓迎を受けたスカルセッリだったが、やがては力尽きて吸収。ISDは勝利を新鋭スプリンターのオスカル・ガット(イタリア)に託した。
トリエステで繰り広げられたスプリント第1ラウンド
トリエステはイタリア北東部の端の端に位置する。スロベニア国境が近く、現在もスロベニア系住民の比率が高い。過去にはオーストリアやドイツ、ユーゴスラビアなど、隣接する国々との戦火に巻き込まれ、占領と併合を繰り返し、1954年にイタリアに復帰して今のトリエステがある。2004年ジロでは「トリエステ復帰50年」を記念するステージも行なわれた。
プレスルームのベランダから、山と海に挟まれた美しいトリエステの街並を眺めていると「どうだ!これが小さなナポリだ!」と地元の警官に自慢された。ナポリの街並はしっかりと見たことがないが、それは確かに一理ある。ゴールはそんな「小ナポリ」の海沿いの大通りに置かれた。
最後の最後に3周する周回コースに登場する山岳ポイント「モンテベッロ」は、直訳すると「美しい山」。ド平坦なこの日最後の関門だが、最大勾配7%とピュアスプリンターもパワーで乗り切れる。マリアヴェルデ獲得に燃える選手たちの度重なるアタックも、ガーミンとチームコロンビア率いる大集団が封じ込めた。
中継ヘリが近づき、「トリエステの歓声を選手に!」というアナウンスとともに会場の熱気は最高潮に。最終ストレートに姿を現したのはアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)。そのすぐ後ろで、全身マリアローザのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)がスプリント体勢に入るのが見えた。
カメラマンのポジション争いはゴール前のスプリンター並みに激しい。バトルが一旦視界から消え、次にファインダーに映った時(正直言うとマリアローザの先行を予想していた)、カヴェンディッシュを抑え込んだペタッキの姿がそこにあった。
現世界最速を破った元世界最強スプリンター
喘息薬過剰摂取の疑いで出場停止処分を受けたペタッキが、ジロのスプリント舞台に戻ってきた。「ジロに出場するのは2年ぶり。やはりジロはテレビで見ていても面白くない」と、レース後の会見で語る。
復活に向けて、冬期は厳しいトレーニングを積んできたペタッキ。「今シーズンすでに8勝を飾っているが、やはりグランツールでの勝利は格別。ブランクを置いての今回の勝利は、(2007年ジロの)カリアリでの勝利に近いものがある。あの時は『失われた時間は努力すれば取り戻せる』ということを実感した」と続ける。
この日1歳の誕生日を迎える息子に捧げる勝利。その表情には、一仕事を終えた安堵感があった。
一方で前日のリードがあるためカヴェンディッシュはマリアローザを守ったが、ここまで敵無しの様相を呈していただけにトーンダウンしていた。表彰台でも笑顔は少なく、レース後の記者会見でも少し放心した様子。
「ミラノ~サンレモのポッジオとチプレッサを経験しているから、最後の上り(モンテベッロ)は問題じゃなかった。チームは完全に機能していたけど自分の力が足りず、早めに仕掛けたペタッキに届かなかった。マリアローザを守ったことは、一日働いたチームへのせめてもの償い」と、マリアローザをまとったカヴェンディッシュが肩を落とす。
一騎打ちを演じた両者が「明日はまたスプリンターのチャンス」と語る第3ステージは、海沿いのグラードからヴァルドッビアーデネまでの198kmで行なわれる。
ゴール地点周辺はプロセッコ(スパークリングワイン)の産地として有名で、一面ブドウ畑の丘が幾重にも連なるまさにワイン王国。丘の上に位置するヴァルドッビアーデネに向かって、なだらかな上りをこなしてゴールに辿り着く。ピュアスプリンターがフレッシュな状態で挑む最後のバトルだ。
photo&text:Kei Tsuji
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