2011/07/10(日) - 19:26
最初の山岳と言えるシュペル・ベスへのフィニッシュは、逃げきりグループからアタックしたポルトガル人ライダーのルイ・コスタ(モビスター)が勝利。2人の選手に事故が続いたチームに明るさを取り戻した。意欲を見せたヴィノクロフだが、驚くべき粘りを披露したフースホフトがマイヨジョーヌを守った。
朝の悪い知らせはクリストファー・ホーナー(レディオシャック)のリタイア。昨第7ステージで落車して鼻を骨折、ふくらはぎに深い擦過傷を負ったホーナー。安定した山岳の力を発揮するツアーオブ・カリフォルニア覇者はスタートしなかった。レディオシャックはこれで4人いたリーダーのうち2人を失うことになった。
最初の山岳テスト 中央山塊の入り口へ
雨に打たれながらプロトンを待つシュペール・ベッスのファンたち photo:Makoto Ayano
雨の中エヴァンスの到着を待つオージーファン photo:Makoto Ayano朝のうちから曇空。ときどき晴れ間がのぞく。そして雨。また今日も変わりやすい天気だ。ここ数日のツールは雨雲と一緒に動いているようにさえ思える。
しかし今日の集団には大きな落車のニュースは無し。序盤から逃げを容認し、山岳で集団もばらけたことで優勝候補たちにとっては久しぶりに緊張度の高すぎないクルーズになったようだ。
天気はすぐれないが、フランスはこの土曜日から夏のバカンス期間に入った。観客も急に増えてくる。
ツールの舞台はマシフ・サントラル(中央山塊)に差し掛かる。緑の深いオーヴェルニュ地域圏、ピュイ・ド・ドーム県へ。周辺には鉱泉が豊かに湧出し、炭酸水のペリエやヴィッテルの産地が近い(同名の街がある)。
ゴール地点の標高1275mの3級山岳シュペル・ベス・サンシーは、3年前の2008年にも登場。リカルド・リッコがゴール前に華麗なアタックを決めて優勝した。しかしもう1勝を挙げた後CERA陽性が発覚してリッコはツールを追い出された。そのとき、2位になったのはカデル・エヴァンス。今日はエヴァンスにとってマイヨジョーヌを着るチャンス。山岳、そして山頂ゴールが始まることで、ツールは次の章へと入る。
不遇が続くチームに喜びをもたらしたコスタの勝利
山岳を越えてシュペール・ベッス・サンシーを目指す9名の逃げグループ photo:Makoto Ayanoシュペル・ベスまで逃げ切った集団からアタックし、頂上まで逃げ切ったルイ・コスタ(モビスターチーム)。逃げ集団に早く見切りをつけ、追いすがるヴィノクロフから逃げ切った。
「残り4.5kmでアタックした。絶好のタイミングだと思ったし、ぼくが一番強かったんだ。その後、ヴィノクロフがすぐ後ろに迫ってきた。つかまると思った。でもすべてをなげうって、なんとかリードを保った。うまくいったんだ」。
コスタは2010年ツールではゴール後にカルロス・バレドとともに喧嘩を始めてペナルティを喰らったポルトガル出身の24歳。2010年10月には実弟であるマリオ・コスタとともにメチルヘキサナミンの陽性反応が確認された。しかしその薬物が禁止薬物リストから除外される予定だったために処分を取り消された、ちょっとお騒がせ系の選手だ。
しかしその実力は折り紙付き。2010年のポルトガルロードチャンピオンで、2009年にダンケルク4日間レースで総合優勝、2010年には同レース総合2位と新人賞を獲得している、ポルトガルが将来に期待を寄せるオールラウンダーだ。
山岳ステージで逃げ切りを果たしたルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)が勝利 photo:Cor Vosコスタは言う「今年度、ぼくたちのチームはとてもつらい状況にあった。だから、この勝利がささやかな喜びをもたらせて、うれしく思う。この勝利はぼくを支えてくれたみんなに、とくに亡くなったシャビエル・トンドと、今も入院中のマウリシオ・ソレールに捧げたいと思う」。
モビスターチームはこの2ヶ月、不運が続いてきた。5月にシャビエル・トンド(スペイン)が、練習に出かけようとして自宅のガレージの扉に挟まれ、不慮の事故死を遂げている。また、ツール・ド・スイスではコロンビア人のクライマー、マウリシオ・ソレールが落車で頭蓋骨骨折による脳浮腫、肺損傷、手首骨折、全身擦過傷の重傷を負った。
事故があった6月17日以来3週間が過ぎ、ソレールはスイスからスペインの病院に移送され、深刻な事態は脱しているが、依然としてベッドの上で治療を受ける状態が続いている。現在の容態は徐々に良い方向に向かってはいるが、まだ医師の呼びかけには反応できても言葉を話せる状態ではなく、認知障害があるという。
ジルベールのマイヨヴェール返り咲き
フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)のペースアップに、コンタドール、エヴァンスらが反応する photo:Cor Vosコンタドール集団から力強いスプリントを披露して2位になったジルベール。ステージ優勝のチャンスがあるのは分かっていたが、結局は逃げるコスタを追い込めなかった。しかしマイヨヴェールは取り返した。この日、チームのアシスト力が足りず、
第7ステージのゴールスプリントでポイントを狙わず、マイヨヴェールをロハスに奪われてしまっていたジルベール。チームはもちろん平坦ゴールでステージ優勝の狙えるアンドレ・グライペルの勝利のためにアシストしたが、ジルベール自身がポイントを稼ぐスプリントができなかったことを後悔している。
この先、ゴールスプリントの機会が減るジルベールがパリでマイヨヴェールを着るためには、中間スプリントを積み重ねていく必要がありそうだ。
コンタドールのアタックは不発? 不調?
シュペール・ベッスの登りに差しかかるグルペット photo:Makoto Ayanoこの日、総合争いの選手のなかで注目すべきは、コンタドールが抱えたタイム差を少しでも挽回するために山頂ゴールでアタックするのかどうか、だった。コンタドールがツールに勝つのはもはや絶望的とする声さえあるが、本人は「まだまだ」と構えている様子。チームにも余裕の空気が流れている。
果たしてコンタドールは細かく差を詰めるために動いてくるのか?アルプスまで待つのか?
そして予想通りコンタドールは動いた。しかしそのアタックはキレはなく、決定的な一撃にはならなかった。エヴァンスやアンディ・シュレクにマークされ、引き離せないことが分かるとスピードを緩めた。腰の入らないペダリングは、苦しむ様子とも取れなくはなかった。脇を猛烈なスピード差でジルベールが駆け抜けていった。
2008年のツールを「アスタナの不招待」で欠場したコンタドールは、シュペル・ベスを知らなかった。「とても厳しい登りと信じていたが、それほど勾配がきつくなかった」。そして、アタックが決まらなかったことは、調子の悪さではないというコメント。「結局、大きくタイム差がつくのはアルプスだろう」。
アンディ&フランク・シュレク、エヴァンスらを引き離すのはこの短い坂ではなかった。
粘ったフースホフト エヴァンスたちのマイヨジョーヌの押し付け合い?
マイヨジョーヌを守れないと言われていたトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)だが photo:Makoto Ayano
雨に打たれて走るカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)、ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)ら photo:Makoto Ayanoアタック合戦に入ったコンタドール集団に差を開かれるも、最後にはその差を詰めてタイム差無しでゴールしたフースホフト。驚きのマイヨジョーヌ維持だ。誰もが前日の公言を覚えている。
「昨ステージ終了後に「マイヨジョーヌを守るつもりはない。シュペル・ベスは僕には厳しすぎるから、GC(総合)ライダーに付いていくことは無理だ」と、記者会見でも複数のメディアに対しても繰り返し話していたフースホフト。この日、1秒差で続くエヴァンスのマイヨジョーヌは、ほぼ約束されたも同然だった。
フースホフトがマイヨジョーヌを維持しないことを表明していたことで、この日、ガーミン・サーヴェロに代わって終盤に逃げ集団を追うのはBMCレーシングの役目になった。
しかしフースホフトは最後に気が変わった? それとも予定通り? 予想以上の(いや、一部で予想されていた)頑張りを見せた。
「ただただ、ハング・オン、ハング・オン(食らいついた)だった。今もイエローでいられるなんてただ信じられない。今日はカデル(エヴァンス)だけに注意していた。彼のラスト1kmの動きにはついていけなかったけれど、遅れてからは自分のテンポで開いた差を詰めて、最後はスプリントして追いついた。
明日はもちろん厳しい一日になるだろうが、明日も、休息日までイエローをキープできるように頑張る。でも、明日はコントロールすることが難しいステージになるだろう」。
マイヨジョーヌをとるにはまだ早い?
メイン集団はBMCレーシングが引っ張る photo:Makoto Ayanoもし逃げグループが捕まっていたらまったく違うゴール争いが見られただろう。
決定的なアタックを見せなかったコンタドールと同様に、エヴァンスもミュール・ド・ブルターニュで見せたスプリントを披露すること無く、マイヨジョーヌ獲得のための強い意欲は見せなかった。レース終盤までBMCレーシングが素晴らしい働きでレースをコントロールしたにもかかわらず。
チームはまだマイヨジョーヌを取ることは時期早尚と考えているようだ。
BMCレーシングのジョン・ルランゲ監督は言う「フースホフトがマイヨを守る可能性はとても小さかったから、ガーミン・サーヴェロが働かないことは分かっていた。だから我々が仕事をする責任があった。ティージェイ・ヴァンガードレンのようないい選手が逃げているとき、彼に大きなタイム差を与えられない。
今日カデルがマイヨジョーヌを取ることはゴールじゃなかった。もし取ったとしても、続くステージで手放したほうがいい」。
ヴィノクロフの野望叶わず マイヨとステージ勝利は持ち越し
踏切を越えていくトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)ら photo:Makoto Ayanoステージ勝利とマイヨジョーヌを欲してアタックしたヴィノクロフ。アシスト役のティラロンゴを先に行かせる用意の良さも見せたが、しかし逃げるコスタに追いつくことができず、むしろコンタドール集団に飲み込まれ、結局は何も手に入れることができなかった。
ステージ勝利へのニアミスは、昨年のツール第12ステージで早めのアタックを決め、マンドの"ジャラベール山"こと2級山岳クロワ・ヌーヴ峠頂上近くまで逃げたが(当時チームメイトだった)コンタドールとホアキン・ロドリゲスに交わされたときの再現のようだった。しかしこうしたステージにこそヴィノのチャンスは少なからずあった。
「目標はまずステージ優勝をとることだった。そしてマイヨジョーヌも取れるならば取りたかった。でも結局は両方とも手に入らなかった」。
ヴィノにとって最後のツール。しかし最終的な総合成績は視野の外にある。「総合5位、6位にとどまったところでぼくには意味が無い。それより何かするほうがいい。マイヨジョーヌを数日着るか、美しいステージ優勝を挙げるか、マイヨ・アポアか、だ」。
ヴィノクロフはゴール手前300mで集団に飲み込まれた photo:Cor Vosそんなヴィノにとって最大のチャンスが明日の第9ステージだ。合計8つのカテゴリー山岳があり、逃げて山岳ポイントを稼げばマイヨ・アポアを獲得できるチャンスが大きい。そしてゴール地点の4級山岳サン・フルールは、旧市街へと続く平均勾配6.1%・登坂距離1600mの道による上りの先にゴールが設定されている。まさにヴィノおあつらえ向きのコース。
総合争いの選手たちにとってはお互いを見合うステージになる可能性だが、逃げてステージ勝利を挙げる、そしてマイヨジョーヌとマイヨアポアを手にするためには、これほヴィノに適したコースはない。
しかし、誰もがヴィノが行くことを予想しているなかでアタックできるかどうかは別の問題だ。
ヴィノは言う「誰もがぼくがステージ優勝を狙ってツールに来ていることを知っているんだ」。
落車の影響が今になって出る
昨日マイヨ・ブランを奪取したヘーシンクだったが photo:Makoto Ayanoこの日遅れを見せたロベルト・ヘーシンク(ラボバンク)とロマン・クロイツィゲル(アスタナ)。ヘーシンクは新人賞ジャージをキープはしたが、1分08秒遅れで総合争いから脱落してしまった。第5ステージの落車で負ったケガが、今ここでクライミング能力に翳りをもたらした。
「こうなることを恐れていた。足が言うことをきかないとき、付いていくことは難しかった。まだ落車の影響に苦しんでいる。自分のレベルが発揮できない。ツールは回復するのを待ってくれるような小さなステージレースじゃない。タフな精神力が求められる。僕は今日見せたよりもっといい走りができる選手だよ」。
期待の星ロマン・クロイツィゲル(アスタナ)も20分の遅れを喫した。落車の影響、そして厳しかったジロ・デ・イタリアの影響はあるのだろうか?
photo&text:Makoto.AYANO
朝の悪い知らせはクリストファー・ホーナー(レディオシャック)のリタイア。昨第7ステージで落車して鼻を骨折、ふくらはぎに深い擦過傷を負ったホーナー。安定した山岳の力を発揮するツアーオブ・カリフォルニア覇者はスタートしなかった。レディオシャックはこれで4人いたリーダーのうち2人を失うことになった。
最初の山岳テスト 中央山塊の入り口へ
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しかし今日の集団には大きな落車のニュースは無し。序盤から逃げを容認し、山岳で集団もばらけたことで優勝候補たちにとっては久しぶりに緊張度の高すぎないクルーズになったようだ。
天気はすぐれないが、フランスはこの土曜日から夏のバカンス期間に入った。観客も急に増えてくる。
ツールの舞台はマシフ・サントラル(中央山塊)に差し掛かる。緑の深いオーヴェルニュ地域圏、ピュイ・ド・ドーム県へ。周辺には鉱泉が豊かに湧出し、炭酸水のペリエやヴィッテルの産地が近い(同名の街がある)。
ゴール地点の標高1275mの3級山岳シュペル・ベス・サンシーは、3年前の2008年にも登場。リカルド・リッコがゴール前に華麗なアタックを決めて優勝した。しかしもう1勝を挙げた後CERA陽性が発覚してリッコはツールを追い出された。そのとき、2位になったのはカデル・エヴァンス。今日はエヴァンスにとってマイヨジョーヌを着るチャンス。山岳、そして山頂ゴールが始まることで、ツールは次の章へと入る。
不遇が続くチームに喜びをもたらしたコスタの勝利
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「残り4.5kmでアタックした。絶好のタイミングだと思ったし、ぼくが一番強かったんだ。その後、ヴィノクロフがすぐ後ろに迫ってきた。つかまると思った。でもすべてをなげうって、なんとかリードを保った。うまくいったんだ」。
コスタは2010年ツールではゴール後にカルロス・バレドとともに喧嘩を始めてペナルティを喰らったポルトガル出身の24歳。2010年10月には実弟であるマリオ・コスタとともにメチルヘキサナミンの陽性反応が確認された。しかしその薬物が禁止薬物リストから除外される予定だったために処分を取り消された、ちょっとお騒がせ系の選手だ。
しかしその実力は折り紙付き。2010年のポルトガルロードチャンピオンで、2009年にダンケルク4日間レースで総合優勝、2010年には同レース総合2位と新人賞を獲得している、ポルトガルが将来に期待を寄せるオールラウンダーだ。
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モビスターチームはこの2ヶ月、不運が続いてきた。5月にシャビエル・トンド(スペイン)が、練習に出かけようとして自宅のガレージの扉に挟まれ、不慮の事故死を遂げている。また、ツール・ド・スイスではコロンビア人のクライマー、マウリシオ・ソレールが落車で頭蓋骨骨折による脳浮腫、肺損傷、手首骨折、全身擦過傷の重傷を負った。
事故があった6月17日以来3週間が過ぎ、ソレールはスイスからスペインの病院に移送され、深刻な事態は脱しているが、依然としてベッドの上で治療を受ける状態が続いている。現在の容態は徐々に良い方向に向かってはいるが、まだ医師の呼びかけには反応できても言葉を話せる状態ではなく、認知障害があるという。
ジルベールのマイヨヴェール返り咲き
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この先、ゴールスプリントの機会が減るジルベールがパリでマイヨヴェールを着るためには、中間スプリントを積み重ねていく必要がありそうだ。
コンタドールのアタックは不発? 不調?
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2008年のツールを「アスタナの不招待」で欠場したコンタドールは、シュペル・ベスを知らなかった。「とても厳しい登りと信じていたが、それほど勾配がきつくなかった」。そして、アタックが決まらなかったことは、調子の悪さではないというコメント。「結局、大きくタイム差がつくのはアルプスだろう」。
アンディ&フランク・シュレク、エヴァンスらを引き離すのはこの短い坂ではなかった。
粘ったフースホフト エヴァンスたちのマイヨジョーヌの押し付け合い?
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フースホフトがマイヨジョーヌを維持しないことを表明していたことで、この日、ガーミン・サーヴェロに代わって終盤に逃げ集団を追うのはBMCレーシングの役目になった。
しかしフースホフトは最後に気が変わった? それとも予定通り? 予想以上の(いや、一部で予想されていた)頑張りを見せた。
「ただただ、ハング・オン、ハング・オン(食らいついた)だった。今もイエローでいられるなんてただ信じられない。今日はカデル(エヴァンス)だけに注意していた。彼のラスト1kmの動きにはついていけなかったけれど、遅れてからは自分のテンポで開いた差を詰めて、最後はスプリントして追いついた。
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マイヨジョーヌをとるにはまだ早い?
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チームはまだマイヨジョーヌを取ることは時期早尚と考えているようだ。
BMCレーシングのジョン・ルランゲ監督は言う「フースホフトがマイヨを守る可能性はとても小さかったから、ガーミン・サーヴェロが働かないことは分かっていた。だから我々が仕事をする責任があった。ティージェイ・ヴァンガードレンのようないい選手が逃げているとき、彼に大きなタイム差を与えられない。
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ヴィノクロフの野望叶わず マイヨとステージ勝利は持ち越し
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「目標はまずステージ優勝をとることだった。そしてマイヨジョーヌも取れるならば取りたかった。でも結局は両方とも手に入らなかった」。
ヴィノにとって最後のツール。しかし最終的な総合成績は視野の外にある。「総合5位、6位にとどまったところでぼくには意味が無い。それより何かするほうがいい。マイヨジョーヌを数日着るか、美しいステージ優勝を挙げるか、マイヨ・アポアか、だ」。
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総合争いの選手たちにとってはお互いを見合うステージになる可能性だが、逃げてステージ勝利を挙げる、そしてマイヨジョーヌとマイヨアポアを手にするためには、これほヴィノに適したコースはない。
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ヴィノは言う「誰もがぼくがステージ優勝を狙ってツールに来ていることを知っているんだ」。
落車の影響が今になって出る
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期待の星ロマン・クロイツィゲル(アスタナ)も20分の遅れを喫した。落車の影響、そして厳しかったジロ・デ・イタリアの影響はあるのだろうか?
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