2011/06/24(金) - 08:17
いよいよ今週末、ロード日本一を決める大会が岩手・八幡平で行われる。今年のメンバーは豪華だ。別府史之、新城幸也、宮澤崇史、土井雪広、佐野淳哉など、海外組は全員帰国して参戦。そして迎える国内チームも調子を整えて日本一の座を狙う。過去最高と言っていいメンバーが日本ナショナルジャージをかけて戦う200km。果たして勝つのは?
すべての選手とチームが照準を定める最高ステータスのレースが全日本選手権だ。このレースに体調を合わせない選手はいない。言い訳も許されない。会場はほかのレースとは比べものにならないほどの緊張感が漂う。全選手が心身ともに最高の状態で臨むのがこの大会だ。
勝者は1年間ナショナルチャンピオンジャージを着ることができる。国内選手はもちろん、別府史之(レディオシャック)や新城幸也(ユーロップカー)のような海外拠点の選手はなおさらそれを欲する。ミラノ・サンレモで日本チャンピオンのジャージをまとって逃げた宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)の雄姿は記憶に新しいところだろう。
全日本選手権ロードレース プログラム
6月25日(土)
8時30分 男子U23スタート 170.5km 11周
8時35分 男子ジュニアスタート 124km 8周
8時40分 男子U17+U15スタート 93km 6周
6月26日(日)
8時00分 男子エリートスタート 201.5km 13周
8時05分 女子エリートスタート 124km 8周
8時10分 女子ジュニア+U17スタート 62km 4周
コースを下見しての紹介
岩手山ふもとの1周15.5kmの公道が今回のコースだ。細長い二等辺三角形で、短い底辺部分が4km弱の上り、あと12kmほどは直線状の緩い下りから平坦だ。上りは標高差210mで平均勾配は約6%。各クラス共に上りきったところがゴール。
上り区間は直線状で道幅が広く見通しが利く。この程度ならばもちろんヒルクライムとは言えない。だが広島の坂のようなアウターギアで一気に上がれる坂ではない。インナーギアで上らざるを得ない坂だ。だが勾配が急ではないため単独で抜け出すことは難しい。
上りの後は広い二車線道路の一直線状の緩い下り。ここはペダルをこがねば進んでくれない区間だ。その勾配も緩急があるが、上りで付けた差もこの区間で吸収される可能性が高い。逆にここでこそ差をつけたら逃げが決まりやすい区間とも言える。
コース右折して戻る方向にすすめると下りカーブからいきなり左直角コーナーを過ぎる。この区間はハイスピードで一列棒状のはずだ。ここも集団が途切れる可能性のある場所だ。その後は牧草地帯を抜ける平坦基調の道で、そして4km弱の上り区間へ右折する。この上り勾配は平均6%だが、少しの緩急がある。上り始めがややきつく、フィニッシュライン手前1kmほどで緩くなり、ふたたび400m手前から急になり、フィニッシュライン部分は緩くなる。周回コースは、右折してさらに200mほど先が全体のピーク地点だ。
単純なコースゆえの難しさがあるコース
コースそのものは4kmの上りと、あとは緩い下りで、「単純なコース」と言っていい。だが単純なコースほどレースの内容は複雑になる。中級以下のレベルのレースならば、間違いなく最終周回の上り勝負だ。しかしレースは国内最高の全日本選手権。そのような消極的なレースには絶対にならないだろう。
しかしながらやはりポイントは4kmの上り区間、時間にして9分ほど。ここを時速30km以上のハイペースになると付いていける選手はごくわずかになる。そのまま続く緩い下り区間も踏み倒せば逃げが決まる。平地TTの得意なパワー系の選手が有利で、それに付いていくことができるスプリンターがいればなお有利だ。
あとは風向きだ。2つの長辺の緩い下り区間が、多くは向かい風かあるいは追い風だが、ここが横風になるととたんに地獄の区間になる。
緩い下り区間は圧倒的に集団が有利。あるいは強力なチームメイトが多いほど有利。なので単騎参戦の海外組にはきつい場面だ。
自信のある選手やチームは、集団を絞るべく上りや向かい風区間、一列棒状になる区間でアタックをかける。見逃せない区間の多いのが今年のコースだ。ルートラボのマップはこちら。
選手紹介
エリート男子
本命は海外組、別府と新城
有力なのは海外組。実力と経験で他選手を上回る。弱点はほぼ単騎参戦であることだ。
やはり本命は別府と新城だろう。スピードのあるオールラウンダータイプが、このコースに最も向く。この2人ならば、それぞれが終盤の30kmほどを独走で逃げ切ることもできる。
別府は06年に個人TTとロードの全日本チャンピオン、ツールやジロでステージ一桁など、そして今年の全日本個人TTチャンピオンだ。
新城は06年U23全日本チャンピオン、07年エリート同、ほかツールやジロでステージ一桁、10年世界選ロード9位、そして今年はアジア選ロードチャンピオンだ。優勝は逃げで、入賞はゴールスプリントのパターンが多い。
現・全日本チャンピオンの宮澤は単騎で臨む。国内でのビッグタイトルが少なかった宮澤だが、日本人最強のスプリンターとして磨きを増している。また国内では「上れるスプリンター」としても通用する力を持つ。
佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)はチームから菊池誠晃との参加となる。今年の全日本個人TTは2位だが、向かい風の復路は優勝した別府よりも速かった。日本人では最もパワーを出せる選手であり、今回の上りや緩い下り区間でその真価を発揮する。
この宮澤と佐野はもちろん違うチームだが、NIPPOは宮澤個人へのサポートも継続しており、高い次元においては協調する方向とみていいだろう。
土井は本来ならば得意なコースで優勝候補に挙げられるが、好調だった今年4月13日にレース中の落車で膝蓋骨を骨折。まだ2ヶ月しかたっていないので通常ならば全日本選手権を走れる状況ではない。しかし懸命のリハビリで体調を整え、レースに臨む。その復帰にかける執念を見せてくれるはずだ。
福島晋一(トレンガヌ・プロ・アジア)は奈良基とともに参戦。今シーズンも優勝争いのシーンに多く登場しており、その積極性と2010年全日本個人TTチャンピオンの独走力は、ほか全選手が恐れるところだ。福島もまた、必ず優勝争いの場面に登場する。
国内各チームは?
海外組を迎え撃つ国内チームも、今季すでに国内外で結果を出している。国内組の有利なポイントはチームプレーができること。遠征を重ねたチームワークで、優勝者をチームから出すという明快な目的でレースに臨むことができる。
愛三工業レーシングチーム
別府匠新監督のもと、今季UCIレースでじつに6勝しているチームだ。なかでも筆頭は綾部勇成のランカウイ山岳ステージの優勝だ。また熊野で見せた盛一大らと西谷泰治の国内最速列車に対抗できるチームは無い。西谷はスピードだけでなく、海外UCIレースのヒルクライムシーンで優勝するほどの登坂力もある。キャプテンの綾部と、そして西谷を中心とした動きをとるだろう。
シマノレーシング
年長の鈴木真理以外はすべて若手のチーム。メンバーの誰もが表彰台に立てる実力を持つ。昨年2位の鈴木真理は悲願達成に向けて臨む。昨年のジャパンカップ3位の畑中勇介はこのコースで最も優勝に近い。登坂力とスピードを併せ持ち、加えて抜群の勝負勘はチームで一番だ。今季加入の青柳憲輝とオランダから一時帰国の阿部嵩之、平塚吉光は、チームの重要な戦力だ。阿部は本調子ならば優勝をも狙える力を持つ。そして西薗良太はその強力な力で必ずや重要局面の動きを演出する。
チームブリヂストン・アンカー
昨年のツール・ド・北海道総合優勝の清水都貴と、そして井上和郎が中心になる。この2人とも一時期同じチームで海外活動していた経験もある。清水は過去の全日本選手権では好成績を残せていないが、優勝を狙える実力を持つ。井上は国体3連覇が有名だが、08年全日本選手権では野寺に僅差で破れ2位になっている。さらに若手が力を増しており、それらをまとめるのはキャプテンの狩野智也だ。直近のヒルクライム2連戦で好成績をあげ、司令塔として最終局面まで残る。
宇都宮ブリッツェン
6月のヒルクライム2連戦を制し、驚異の復活を遂げた増田成幸が注目される。すでに5月の熊野で力を発揮しており、日を追うごとに以前よりも強くなっていく様から、全日本選手権での走りに期待がかかろうというものだ。中村誠も昨年チーム最上位で注目される。
マトリックスパワータグ
今シーズン再びコンチネンタル登録したチームは、真鍋和幸を中心とする。悪条件のレースほど先頭集団で動くのが真鍋の真骨頂。しぶとい走りを永良大誠や山下貴宏らとともに見せてくれるだろう。終盤の先頭集団に、複数の緑色ジャージが残る姿を見られる可能性は高い。
クラブチーム、大学生は
クラブチームの有力どころはリスト順に、武井享介(チーム・フォルツァ!)、西谷雅史(チームオーベスト)、小畑郁・岩島啓太(なるしまフレンド)、栂尾大知(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)、木下智裕(EQADS)、片山右京(宇都宮ブリッツェン)、中根英登(中京大学)、早川朋宏(法政大学)、大場政登志(Team Eurasia-Fondriest Bikes)、吉田隼人・野口正則(鹿屋体育大学)、辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)、高岡亮寛(イナーメ・アイランド信濃山形)、小嶋洋介(岩井商会GANWELL RACING)らだ。本来はU23の年齢である大学生らは、世界選手権代表選考を考慮してエリートで出走している。そして高岡、吉田、早川はトップテン入りの実力を持つ。彼らもまた、優勝を目指して走る。
エリートのキーマンは佐野淳哉と西薗良太
数ある選手の中で、その動きが注目されるのは、今年の全日本TT2位と3位の佐野と西薗だ。このコースでの上り区間のTTを13回反復したならば、この2人がワン・ツーだろう。この2人が仕掛けるとスプリンターたちは付いていくことができない。この2人の動きは勝敗に大きく影響するだろう。
女子エリート 本命は萩原麻由子
昨年のチャンピオンであり今年の全日本個人TTで圧勝した萩原麻由子(サイクルベースあさひレーシング)が優勝候補筆頭だ。だが通常では逃げが決まりにくい今年のコース。西加南子(LUMINARIA)と片山梨絵(SPECIALIZED)が展開次第で表彰台の中央に立つことも。3月のトラック世界選手権で大怪我を負った上野みなみ(鹿屋体育大学)は順調に回復しており、全日本個人TTでは2位にまで復調している。本調子ならば高いレベルで萩原と渡り合える選手で注目だ。さらに針谷千紗子(サイクルベースあさひレーシング)、森本朱美(スミタ・ラバネロ)高橋奈美(Vitesse-Serotta-Feminin)、明珍裕子(朝日大学)、塚越さくら(鹿屋体育大学)、豊岡英子(パナソニックレディース)、井上玲美(スーパーKアスリートラボ)らも注目だ。
男子U23 山本元喜と澤田賢匠の戦い
現チャンピオンの山本元喜(鹿屋体育大学)と澤田賢匠(CIELVO NARA PRO CYCLINGTEAM)を中心に動く。山本は昨年のツール・ド・北海道第3ステージ優勝、そして1週間前の学生個人ロードを制している。澤田は実業団Jプロツアー第1戦舞洲クリテで劇的逃げ切り優勝、その後も常に積極的な走りをしている。この2人は逃げが得意だが、今年のコースは単独の逃げに不利だ。原川浩介(湘南ベルマーレ)、松尾修作(FUJI-CYCLINGTIME.COM)、平井栄一(ブリヂストン・エスポワール)、徳田鍛造・黒枝士揮(鹿屋体育大学)、安井雅彦(東京大学)らも積極的に逃げる選手。逃げ同士の戦いは必見だ。チームとして多勢なのはブリヂストン・エスポワール、鹿屋体育大学、日本大学らだ。チームプレーがあるのは当然だが、U23クラスにおいては個の力を見たいところだ。
text:高木秀彰
photo:高木秀彰、Kei Tsuji、Riccardo Scanferla、Kenji Nakamura
すべての選手とチームが照準を定める最高ステータスのレースが全日本選手権だ。このレースに体調を合わせない選手はいない。言い訳も許されない。会場はほかのレースとは比べものにならないほどの緊張感が漂う。全選手が心身ともに最高の状態で臨むのがこの大会だ。
勝者は1年間ナショナルチャンピオンジャージを着ることができる。国内選手はもちろん、別府史之(レディオシャック)や新城幸也(ユーロップカー)のような海外拠点の選手はなおさらそれを欲する。ミラノ・サンレモで日本チャンピオンのジャージをまとって逃げた宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)の雄姿は記憶に新しいところだろう。
全日本選手権ロードレース プログラム
6月25日(土)
8時30分 男子U23スタート 170.5km 11周
8時35分 男子ジュニアスタート 124km 8周
8時40分 男子U17+U15スタート 93km 6周
6月26日(日)
8時00分 男子エリートスタート 201.5km 13周
8時05分 女子エリートスタート 124km 8周
8時10分 女子ジュニア+U17スタート 62km 4周
コースを下見しての紹介
岩手山ふもとの1周15.5kmの公道が今回のコースだ。細長い二等辺三角形で、短い底辺部分が4km弱の上り、あと12kmほどは直線状の緩い下りから平坦だ。上りは標高差210mで平均勾配は約6%。各クラス共に上りきったところがゴール。
上り区間は直線状で道幅が広く見通しが利く。この程度ならばもちろんヒルクライムとは言えない。だが広島の坂のようなアウターギアで一気に上がれる坂ではない。インナーギアで上らざるを得ない坂だ。だが勾配が急ではないため単独で抜け出すことは難しい。
上りの後は広い二車線道路の一直線状の緩い下り。ここはペダルをこがねば進んでくれない区間だ。その勾配も緩急があるが、上りで付けた差もこの区間で吸収される可能性が高い。逆にここでこそ差をつけたら逃げが決まりやすい区間とも言える。
コース右折して戻る方向にすすめると下りカーブからいきなり左直角コーナーを過ぎる。この区間はハイスピードで一列棒状のはずだ。ここも集団が途切れる可能性のある場所だ。その後は牧草地帯を抜ける平坦基調の道で、そして4km弱の上り区間へ右折する。この上り勾配は平均6%だが、少しの緩急がある。上り始めがややきつく、フィニッシュライン手前1kmほどで緩くなり、ふたたび400m手前から急になり、フィニッシュライン部分は緩くなる。周回コースは、右折してさらに200mほど先が全体のピーク地点だ。
単純なコースゆえの難しさがあるコース
コースそのものは4kmの上りと、あとは緩い下りで、「単純なコース」と言っていい。だが単純なコースほどレースの内容は複雑になる。中級以下のレベルのレースならば、間違いなく最終周回の上り勝負だ。しかしレースは国内最高の全日本選手権。そのような消極的なレースには絶対にならないだろう。
しかしながらやはりポイントは4kmの上り区間、時間にして9分ほど。ここを時速30km以上のハイペースになると付いていける選手はごくわずかになる。そのまま続く緩い下り区間も踏み倒せば逃げが決まる。平地TTの得意なパワー系の選手が有利で、それに付いていくことができるスプリンターがいればなお有利だ。
あとは風向きだ。2つの長辺の緩い下り区間が、多くは向かい風かあるいは追い風だが、ここが横風になるととたんに地獄の区間になる。
緩い下り区間は圧倒的に集団が有利。あるいは強力なチームメイトが多いほど有利。なので単騎参戦の海外組にはきつい場面だ。
自信のある選手やチームは、集団を絞るべく上りや向かい風区間、一列棒状になる区間でアタックをかける。見逃せない区間の多いのが今年のコースだ。ルートラボのマップはこちら。
選手紹介
エリート男子
本命は海外組、別府と新城
有力なのは海外組。実力と経験で他選手を上回る。弱点はほぼ単騎参戦であることだ。
やはり本命は別府と新城だろう。スピードのあるオールラウンダータイプが、このコースに最も向く。この2人ならば、それぞれが終盤の30kmほどを独走で逃げ切ることもできる。
別府は06年に個人TTとロードの全日本チャンピオン、ツールやジロでステージ一桁など、そして今年の全日本個人TTチャンピオンだ。
新城は06年U23全日本チャンピオン、07年エリート同、ほかツールやジロでステージ一桁、10年世界選ロード9位、そして今年はアジア選ロードチャンピオンだ。優勝は逃げで、入賞はゴールスプリントのパターンが多い。
現・全日本チャンピオンの宮澤は単騎で臨む。国内でのビッグタイトルが少なかった宮澤だが、日本人最強のスプリンターとして磨きを増している。また国内では「上れるスプリンター」としても通用する力を持つ。
佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)はチームから菊池誠晃との参加となる。今年の全日本個人TTは2位だが、向かい風の復路は優勝した別府よりも速かった。日本人では最もパワーを出せる選手であり、今回の上りや緩い下り区間でその真価を発揮する。
この宮澤と佐野はもちろん違うチームだが、NIPPOは宮澤個人へのサポートも継続しており、高い次元においては協調する方向とみていいだろう。
土井は本来ならば得意なコースで優勝候補に挙げられるが、好調だった今年4月13日にレース中の落車で膝蓋骨を骨折。まだ2ヶ月しかたっていないので通常ならば全日本選手権を走れる状況ではない。しかし懸命のリハビリで体調を整え、レースに臨む。その復帰にかける執念を見せてくれるはずだ。
福島晋一(トレンガヌ・プロ・アジア)は奈良基とともに参戦。今シーズンも優勝争いのシーンに多く登場しており、その積極性と2010年全日本個人TTチャンピオンの独走力は、ほか全選手が恐れるところだ。福島もまた、必ず優勝争いの場面に登場する。
国内各チームは?
海外組を迎え撃つ国内チームも、今季すでに国内外で結果を出している。国内組の有利なポイントはチームプレーができること。遠征を重ねたチームワークで、優勝者をチームから出すという明快な目的でレースに臨むことができる。
愛三工業レーシングチーム
別府匠新監督のもと、今季UCIレースでじつに6勝しているチームだ。なかでも筆頭は綾部勇成のランカウイ山岳ステージの優勝だ。また熊野で見せた盛一大らと西谷泰治の国内最速列車に対抗できるチームは無い。西谷はスピードだけでなく、海外UCIレースのヒルクライムシーンで優勝するほどの登坂力もある。キャプテンの綾部と、そして西谷を中心とした動きをとるだろう。
シマノレーシング
年長の鈴木真理以外はすべて若手のチーム。メンバーの誰もが表彰台に立てる実力を持つ。昨年2位の鈴木真理は悲願達成に向けて臨む。昨年のジャパンカップ3位の畑中勇介はこのコースで最も優勝に近い。登坂力とスピードを併せ持ち、加えて抜群の勝負勘はチームで一番だ。今季加入の青柳憲輝とオランダから一時帰国の阿部嵩之、平塚吉光は、チームの重要な戦力だ。阿部は本調子ならば優勝をも狙える力を持つ。そして西薗良太はその強力な力で必ずや重要局面の動きを演出する。
チームブリヂストン・アンカー
昨年のツール・ド・北海道総合優勝の清水都貴と、そして井上和郎が中心になる。この2人とも一時期同じチームで海外活動していた経験もある。清水は過去の全日本選手権では好成績を残せていないが、優勝を狙える実力を持つ。井上は国体3連覇が有名だが、08年全日本選手権では野寺に僅差で破れ2位になっている。さらに若手が力を増しており、それらをまとめるのはキャプテンの狩野智也だ。直近のヒルクライム2連戦で好成績をあげ、司令塔として最終局面まで残る。
宇都宮ブリッツェン
6月のヒルクライム2連戦を制し、驚異の復活を遂げた増田成幸が注目される。すでに5月の熊野で力を発揮しており、日を追うごとに以前よりも強くなっていく様から、全日本選手権での走りに期待がかかろうというものだ。中村誠も昨年チーム最上位で注目される。
マトリックスパワータグ
今シーズン再びコンチネンタル登録したチームは、真鍋和幸を中心とする。悪条件のレースほど先頭集団で動くのが真鍋の真骨頂。しぶとい走りを永良大誠や山下貴宏らとともに見せてくれるだろう。終盤の先頭集団に、複数の緑色ジャージが残る姿を見られる可能性は高い。
クラブチーム、大学生は
クラブチームの有力どころはリスト順に、武井享介(チーム・フォルツァ!)、西谷雅史(チームオーベスト)、小畑郁・岩島啓太(なるしまフレンド)、栂尾大知(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)、木下智裕(EQADS)、片山右京(宇都宮ブリッツェン)、中根英登(中京大学)、早川朋宏(法政大学)、大場政登志(Team Eurasia-Fondriest Bikes)、吉田隼人・野口正則(鹿屋体育大学)、辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)、高岡亮寛(イナーメ・アイランド信濃山形)、小嶋洋介(岩井商会GANWELL RACING)らだ。本来はU23の年齢である大学生らは、世界選手権代表選考を考慮してエリートで出走している。そして高岡、吉田、早川はトップテン入りの実力を持つ。彼らもまた、優勝を目指して走る。
エリートのキーマンは佐野淳哉と西薗良太
数ある選手の中で、その動きが注目されるのは、今年の全日本TT2位と3位の佐野と西薗だ。このコースでの上り区間のTTを13回反復したならば、この2人がワン・ツーだろう。この2人が仕掛けるとスプリンターたちは付いていくことができない。この2人の動きは勝敗に大きく影響するだろう。
女子エリート 本命は萩原麻由子
昨年のチャンピオンであり今年の全日本個人TTで圧勝した萩原麻由子(サイクルベースあさひレーシング)が優勝候補筆頭だ。だが通常では逃げが決まりにくい今年のコース。西加南子(LUMINARIA)と片山梨絵(SPECIALIZED)が展開次第で表彰台の中央に立つことも。3月のトラック世界選手権で大怪我を負った上野みなみ(鹿屋体育大学)は順調に回復しており、全日本個人TTでは2位にまで復調している。本調子ならば高いレベルで萩原と渡り合える選手で注目だ。さらに針谷千紗子(サイクルベースあさひレーシング)、森本朱美(スミタ・ラバネロ)高橋奈美(Vitesse-Serotta-Feminin)、明珍裕子(朝日大学)、塚越さくら(鹿屋体育大学)、豊岡英子(パナソニックレディース)、井上玲美(スーパーKアスリートラボ)らも注目だ。
男子U23 山本元喜と澤田賢匠の戦い
現チャンピオンの山本元喜(鹿屋体育大学)と澤田賢匠(CIELVO NARA PRO CYCLINGTEAM)を中心に動く。山本は昨年のツール・ド・北海道第3ステージ優勝、そして1週間前の学生個人ロードを制している。澤田は実業団Jプロツアー第1戦舞洲クリテで劇的逃げ切り優勝、その後も常に積極的な走りをしている。この2人は逃げが得意だが、今年のコースは単独の逃げに不利だ。原川浩介(湘南ベルマーレ)、松尾修作(FUJI-CYCLINGTIME.COM)、平井栄一(ブリヂストン・エスポワール)、徳田鍛造・黒枝士揮(鹿屋体育大学)、安井雅彦(東京大学)らも積極的に逃げる選手。逃げ同士の戦いは必見だ。チームとして多勢なのはブリヂストン・エスポワール、鹿屋体育大学、日本大学らだ。チームプレーがあるのは当然だが、U23クラスにおいては個の力を見たいところだ。
text:高木秀彰
photo:高木秀彰、Kei Tsuji、Riccardo Scanferla、Kenji Nakamura