ジロ・デ・イタリア第9ステージを終え、その日のうちに空路でイタリア半島東岸のテルモリに移動した別府史之(レディオシャック)。これまでのレースの印象や、過酷な第2週に向けての抱負をフォトグラファー辻啓が訊いた。

2つ目の未舗装区間をメイン集団から遅れてクリアする別府史之(日本、レディオシャック)2つ目の未舗装区間をメイン集団から遅れてクリアする別府史之(日本、レディオシャック) photo:Kei Tsuji本日1回目の休息日はどう過ごされましたか?
今日は雨だったのでローラー台に乗りました。連日長時間走っている状況で一日走る止めてしまうとカラダがたるんでしまう。血液を循環させるためにも、汗を流し、心拍数を120から150まで上げては下げてのインターバルを1時間ほど行ないました。

ここまでの9ステージを振り返って?
上手く走れている感じです。最初の1週間はティアゴ(マシャド)やマキュアンのアシストが主な仕事で、チームメイトと交代しながらボトル運びや風よけに携わっていた。チームの仕事をこなせている実感があります。あまり動かなかったというのもあるけど、9日間を終えてそれほど疲労を感じていないです。

奇抜さが注目されるジロのコースの印象は?
幸いここまで好天続きだったので、それほどガツンとダメージを与えられるようなステージはないです。確かに未舗装の下りとかは集団内でストレスは感じたけど、晴れていたのでそれほど落車する心配もなかった。さすがに昨日の(エトナ火山の)ステージでコースの厳しさを感じましたが。

昨日の第9ステージはどこでグルペットに入ったんですか?
最後のエトナ火山の登り口まで集団内にいました。レースブックによると最後の登りは全長20kmと書いてあるけど、実際はラスト45km辺りからずっと登りなんです。ラスト35kmあたりまでハンターが『グルペット!』と叫んだので、それを切っ掛けにして集団から遅れる選手が出始めた。グルペットの形成を呼びかけるのは主にハンターですね。集団をコントロールしているのは案外ハンターだったりします。

24分46秒遅れでエトナ火山のゴールに向かう別府史之(日本、レディオシャック)24分46秒遅れでエトナ火山のゴールに向かう別府史之(日本、レディオシャック) photo:Kei Tsujiそしてそのままグルペットに入ったと。
『でも待てよ、まだゴールまで距離があるぞ?』と思っていたら、集団の後方に埋もれてしまって、そのままグルペット入りしてしまいました。前に追いつこうと思ったけど、すでに距離が開いていたので『今日は休もう』と思ってそのまま登坂開始。でもコンタドールが思いのほか早くて、最後はタイムアウトが心配になった。次からはもう少し集団内で粘ったほうがいいと感じました。

他の選手も厳しいステージだったと口を揃えています。
昨日は序盤からずっとペースが速くて、45km地点の3kmの登り(タオルミーナ)でみんなヘロヘロになっていた。最初のエトナ火山の下りも凄く速かった。道が狭くなったり、トンネルやコーナーが出てくると、イタリアチームやラボバンクが故意にペースを上げるんです。ちなみに昨日は後ろに28Tをつけていました。『26Tがあれば大丈夫だよ』と言っていた他の選手は、登りでかなり苦戦していましたね。特にジロは突然急勾配の登りが登場するから、重いギアだと疲れてしまう。

ここまで好天続き、そして高温続きですが、暑さは大丈夫?
確かに暑いです。体温が上がってしまうと心拍も上がってしまうので、時々気分が悪くなりそうになる。そういうときはボトルの水を頭から被ったり、ジャージのジッパーを開放して対処しています。個人的にはちょっと寒いぐらいのほうが好きです。

寒いと言えばツアー・オブ・カリフォルニアが雪で影響を受けているようです。
雪でステージがキャンセルになったんですよね。チームにとって重要なレースで、向こうにもいいメンバーを送り込んでいるのでチェックしています。でもこの厳しいジロを走っていると『雪ぐらいでキャンセルにするのか!』と思ってしまいます(笑)ちなみにチームマネージャーのブリュイネールは数日後にジロに合流するようです。

ボトル運びのために集団後方に下がる別府史之(日本、レディオシャック)ボトル運びのために集団後方に下がる別府史之(日本、レディオシャック) photo:Riccardo Scanferla今年のジロは特に移動が多い印象です。
毎日移動が多いので、イタリアを感じる時間が少ない。レースの後は他のことに集中できないし、ホテルに帰って寝るだけです。昨日は朝からフェリーに揺られてシチリアに渡り、そしてレース後に空路で移動。一日中バタバタでした。

昨日はホテルの到着が遅かったようですが?
まずエトナを10kmほど下ったところにあるホテルでシャワーを浴びて、警察バイクに先導されながらチームバスで下山。カターニア空港の近くにある街のレストランに選手全員が集まって食事して、飛行機に乗ったのは22時ぐらい。テルモリの空港についたのが23時半。ホテルに着いたのは夜1時でした。そして寝たのが1時半。昨日タイムアウトになった同部屋のマキュアンは朝6時半に出て行きました。

イタリアの道路状況の印象は?
全般的に路面状態が悪くて、砂が浮いているコーナーも多い。しかもそんな時に限って他のチームがペースを上げるんです。だから気を抜ける瞬間がない。危険なレースだという印象です。しかも、登りやテクニカルな下りなど、ゴール前に何かしらの仕掛けがある。平坦ステージだと聞いていたのに、最終的に一日で2500m登っていたりとか。それらを含めてジロをエンジョイできていますよ。

休息日明けの2ステージはスプリンターやアタッカーにチャンスがありそうですが?
カヴェンディッシュやペタッキがまだレースに残っているので、スプリンターのステージになる可能性が高い。昨日のエトナのステージで総合タイム差が開いたので、5〜6人の逃げができれば入りたいです。少人数の逃げだと脚を使うだけになってしまうけど、大きな逃げグループだとそのままゴールまで行ってしまえる可能性が出てくる。狙えそうなステージでは序盤から動いていきますよ。チームのオーダー的にも、ステージ優勝を狙う入りが求められる。力を抜くところは抜いて、目一杯出すところは出す。そういうメリハリをつけながら見せ場を作りたいですね。

獲得標高差が6000mを超える第15ステージ獲得標高差が6000mを超える第15ステージ image:RCS Sportそしてその後に第13・14・15ステージという厳しい山岳ステージが続きます。
第13ステージと第14ステージは、前半がそれほど厳しくない。徐々に山岳の難易度が上がって行く感じなので大丈夫だと思います。でも第15ステージは最初からいきなり1級山岳が登場するので怖いですね。そこでペースが上がると危険です。ジロの経験が豊かなマキュアンも『今年のコースは一番過酷だ』と言っていました。

その厳しい第2週に向けての抱負は?
本当に第13ステージからの3日間が最大の山場なので、歯を食いしばってでも耐えたい。今まで経験したことのない厳しさです。でも厳しいのはどの選手にも公平。反面ワクワクしている部分でもあります。

text&photo:Kei Tsuji in Termoli, Italy

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