2011/05/13(金) - 15:13
最近のグランツールは、選手たちがスタート地点の出走サインにやってくるのが遅い。チームバスが快適で、スタート地点のヴィラッジョ(スポンサーブースエリア)は招待のIDカードをぶら下げた観客でごった返しているのが原因だと思う。
今年は更に輪をかけて選手の到着が遅い気がする。フォトグラファーたちは「みんな最後の数分間でやってくるのさ」と言いながら、世間話をしてひたすら待ち続ける。
第6ステージのスタート地点は、崖の上に佇む「天空都市」オルヴィエート。その中心にあるドゥオーモ(教会)広場だ。イタリアの全ての街に教会はあるが、ここまで見事な建物は珍しい。他の街の教会に負けるもんかと、競い合うように立派な教会が建てられた。
前日の未舗装コースの印象をしっかり聞きたくて、別府史之(レディオシャック)の到着を待つ。「さあ今日も日本人の登場だ!フミユーキベプー!」という紹介を受けて出走サインを済ませたフミに、改めて前日の感想を聞く。
「タイミング悪くパンクしてしまって集団から遅れてしまいました。(3級山岳クローチェ・ディ・フィギーネの)勾配がきつくて登れないかと思いましたよ」とフミ。
レディオシャックのエースであるティアゴ・マシャド(ポルトガル)は3分遅れでゴール。総合争いの一線から退いたことによりレディオシャックは作戦変更を余儀なくされる。
「昨日のステージでティアゴ(マシャド)が遅れたことで、チームの作戦がガラッと変わりました。ジロはまだ長いし、厳しい山岳があるからまだ分からないけど、現時点でティアゴの3分の遅れは大きい。あくまでも彼をサポートする体制に変わりありませんが、アシストたちが動くチャンスが増えます」。
その言葉通り、今日はヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック)が動いた。総合ですでに遅れている5名による逃げだったので、タイム差が開くと思いきや、マリアローザ擁するラボバンクがきっちりとメイン集団を指揮する。タイム差はきっちりとポポヴィッチの総合タイム差(5分35秒)に抑え込まれた。
この日の216kmはイタリア半島のど真ん中を貫く。東西の海岸線を走らない限りフラットなコースは不可能で、緩やかにアップダウンを繰り返しながら、ウンブリア州からラツィオ州へと下っていく。並行して走る高速道路でプロトンをパスしながら数カ所で撮影し、ゴール地点のフィウッジ・テルメを目指した。
フィウッジ・テルメは温泉が湧き出る保養地。標高700mの山の中に位置していて、ラスト10kmから5%の登りが5kmに渡って続く。J SPORTSの電話レポートで「スプリンターは登れない」と偉そうに言ったのに、実際はスプリンターが勝った。ごめんなさい。
でもアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)の脚は残っていなかった。登りで集団に残るために酷使した脚は、ラスト数十メートルでそれ以上踏むことを拒んだ。フランシスコホセ・ベントソ(スペイン、モビスター)の後ろからスプリントで飛び出した赤いジャージが突然ストップ。勢い良く飛び出したのでペタッキにフォーカスしていたのに、突然の失速で慌ててベントソにピントを移した。
この日の獲得標高差は2500m以上と言われている。スプリンターが軒並み遅れるのも無理はない。大きく遅れてゴールしたスプリンターたちは、ベントソが勝利したことを知って肩を落としていた。フミはメイン集団内の57位でゴールし、チーム内で2番手となる総合68位・8分07秒遅れにつけている。
フィウッジのゴール地点にはステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)とヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)の横断幕が目立っていた。それもそのはず、フィウッジは2人の生まれ故郷なのだ。
コース的にはアニョーリ向きで、レース前には「今日はサプライズを用意している」と話していた。でもアニョーリは最後の登りでも動かない。ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)のアシストとしての責務を全うし、ステージ29位でレースを終えた。
「あれ?サプライズは?」と思いながら、ベントソの嬉しさ溢れる表彰式を撮影し、プレスセンターに向かおうとすると、表彰台の横に作られた特設スタジオにアニョーリの姿を発見。RAIのレース後番組「Processo alla Tappa」に出演していた。
日本に写真を送るために足早に撮影してその場を離れたが、後から聞くと、アニョーリはその番組内でガールフレンドのジョヴァンナさんにプロポーズしたそうだ。地元で彼女にプロポーズ。その場で2人の結婚が決まった。
翌第7ステージのスタート地点マッダローニはナポリの近郊。アスタナの中野喜文マッサーを含め、3人に「車上荒らしに気をつけるように」と言われた。確かに第6ステージでイタリア半島を216km南下しただけなのに、街の雰囲気が変わった気がする。
第7ステージは今大会最初の山頂フィニッシュ。2級山岳モンテヴェルジネ・ディ・メルコリアーノにゴールする。登坂距離は17kmだが、平均勾配は5%と、勾配的にはそれほど厳しくない。小集団によるゴールスプリントになるというのがもっぱらの評判だ。
2001年と2007年は、ダニーロ・ディルーカ(イタリア)がこの聖なる山モンテヴェルジネを制している。コース全長が110kmと極端に短いので、スタートを撮影してすぐにゴールに向かうことになりそうです。
text&photo:Kei Tsuji in Fiuggi Terme, Italy
今年は更に輪をかけて選手の到着が遅い気がする。フォトグラファーたちは「みんな最後の数分間でやってくるのさ」と言いながら、世間話をしてひたすら待ち続ける。
第6ステージのスタート地点は、崖の上に佇む「天空都市」オルヴィエート。その中心にあるドゥオーモ(教会)広場だ。イタリアの全ての街に教会はあるが、ここまで見事な建物は珍しい。他の街の教会に負けるもんかと、競い合うように立派な教会が建てられた。
前日の未舗装コースの印象をしっかり聞きたくて、別府史之(レディオシャック)の到着を待つ。「さあ今日も日本人の登場だ!フミユーキベプー!」という紹介を受けて出走サインを済ませたフミに、改めて前日の感想を聞く。
「タイミング悪くパンクしてしまって集団から遅れてしまいました。(3級山岳クローチェ・ディ・フィギーネの)勾配がきつくて登れないかと思いましたよ」とフミ。
レディオシャックのエースであるティアゴ・マシャド(ポルトガル)は3分遅れでゴール。総合争いの一線から退いたことによりレディオシャックは作戦変更を余儀なくされる。
「昨日のステージでティアゴ(マシャド)が遅れたことで、チームの作戦がガラッと変わりました。ジロはまだ長いし、厳しい山岳があるからまだ分からないけど、現時点でティアゴの3分の遅れは大きい。あくまでも彼をサポートする体制に変わりありませんが、アシストたちが動くチャンスが増えます」。
その言葉通り、今日はヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、レディオシャック)が動いた。総合ですでに遅れている5名による逃げだったので、タイム差が開くと思いきや、マリアローザ擁するラボバンクがきっちりとメイン集団を指揮する。タイム差はきっちりとポポヴィッチの総合タイム差(5分35秒)に抑え込まれた。
この日の216kmはイタリア半島のど真ん中を貫く。東西の海岸線を走らない限りフラットなコースは不可能で、緩やかにアップダウンを繰り返しながら、ウンブリア州からラツィオ州へと下っていく。並行して走る高速道路でプロトンをパスしながら数カ所で撮影し、ゴール地点のフィウッジ・テルメを目指した。
フィウッジ・テルメは温泉が湧き出る保養地。標高700mの山の中に位置していて、ラスト10kmから5%の登りが5kmに渡って続く。J SPORTSの電話レポートで「スプリンターは登れない」と偉そうに言ったのに、実際はスプリンターが勝った。ごめんなさい。
でもアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)の脚は残っていなかった。登りで集団に残るために酷使した脚は、ラスト数十メートルでそれ以上踏むことを拒んだ。フランシスコホセ・ベントソ(スペイン、モビスター)の後ろからスプリントで飛び出した赤いジャージが突然ストップ。勢い良く飛び出したのでペタッキにフォーカスしていたのに、突然の失速で慌ててベントソにピントを移した。
この日の獲得標高差は2500m以上と言われている。スプリンターが軒並み遅れるのも無理はない。大きく遅れてゴールしたスプリンターたちは、ベントソが勝利したことを知って肩を落としていた。フミはメイン集団内の57位でゴールし、チーム内で2番手となる総合68位・8分07秒遅れにつけている。
フィウッジのゴール地点にはステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)とヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)の横断幕が目立っていた。それもそのはず、フィウッジは2人の生まれ故郷なのだ。
コース的にはアニョーリ向きで、レース前には「今日はサプライズを用意している」と話していた。でもアニョーリは最後の登りでも動かない。ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)のアシストとしての責務を全うし、ステージ29位でレースを終えた。
「あれ?サプライズは?」と思いながら、ベントソの嬉しさ溢れる表彰式を撮影し、プレスセンターに向かおうとすると、表彰台の横に作られた特設スタジオにアニョーリの姿を発見。RAIのレース後番組「Processo alla Tappa」に出演していた。
日本に写真を送るために足早に撮影してその場を離れたが、後から聞くと、アニョーリはその番組内でガールフレンドのジョヴァンナさんにプロポーズしたそうだ。地元で彼女にプロポーズ。その場で2人の結婚が決まった。
翌第7ステージのスタート地点マッダローニはナポリの近郊。アスタナの中野喜文マッサーを含め、3人に「車上荒らしに気をつけるように」と言われた。確かに第6ステージでイタリア半島を216km南下しただけなのに、街の雰囲気が変わった気がする。
第7ステージは今大会最初の山頂フィニッシュ。2級山岳モンテヴェルジネ・ディ・メルコリアーノにゴールする。登坂距離は17kmだが、平均勾配は5%と、勾配的にはそれほど厳しくない。小集団によるゴールスプリントになるというのがもっぱらの評判だ。
2001年と2007年は、ダニーロ・ディルーカ(イタリア)がこの聖なる山モンテヴェルジネを制している。コース全長が110kmと極端に短いので、スタートを撮影してすぐにゴールに向かうことになりそうです。
text&photo:Kei Tsuji in Fiuggi Terme, Italy
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