2011/04/28(木) - 02:50
2011年4月27日、ツール・ド・ロマンディ(UCIワールドツアー)第1ステージが雨の山間部で行なわれ、最大12分50秒のリードを得た逃げグループの中から飛び出したパヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ)が勝利。別府史之(レディオシャック)は4分15秒遅れ、新城幸也(ユーロップカー)は13分06秒遅れでフィニッシュした。
「明日のステージはチャンスがある」新城幸也(日本、ユーロップカー) photo:Kei Tsuji顔見せ的なプロローグから一夜明け、ツール・ド・ロマンディが本格的に動き出した。
第1ステージは、プロローグが行なわれたマルティニをスタートし、一路レマン湖に注ぐロッテン川に沿って渓谷を北上。ローザンヌを過ぎてから2級山岳を経て内陸部に向かい、標高1546mの1級山岳ピロン峠を越え、1級山岳レイザンにゴールする172.6km。今大会最難関の山岳ステージが早くも登場した。
ツール・ド・ロマンディ出場中の別府史之(日本、レディオシャック) photo:Kei Tsujiスタート地点のマルティニは、イタリア国境のグラン・サンベルナール峠の麓に位置。同峠の修道院に縁のある大型犬、セントバーナード(フランス語読みでサンベルナール)がスタート地点を闊歩する。
暖かな太陽が、雪を冠した山から吹き下ろす風の冷たさをかき消す。スタート地点の気温は20度まで上昇したが、この日の天候は下り坂。天気予報の通り、レース後半の山間部は晴れと降雨を交互に繰り返した。
逃げグループを形成するオレクサンドル・クヴァチュク(ウクライナ、ランプレ・ISD)ら photo:Kei Tsuji「調子良く走れています」と話すのは、前日のプロローグを33位という好成績で終えた別府史之。天候の崩れを気にかけ、ジャージのレイヤーを悩みながらスタート時間を待つ。新城幸也は「今日は山頂フィニッシュですが、明日はアップダウンの繰り返し。今日はダメでも、明日のような短い登りなら大丈夫ですよ」と、早くも第2ステージに目を向けている。
スタート後すぐに飛び出したのはジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)、パヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ)、オレクサンドル・クヴァチュク(ウクライナ、ランプレ・ISD)、ブラニスラウ・サモイラウ(ベラルーシ、モビスター)の4名。
沿道で盛り上がる子どもたち photo:Kei Tsujiリーダージャージ擁するエウスカルテルが集団コントロールを放棄したため、地元スイスのBMC社が全面的にサポートするBMCレーシングチームが集団牽引。しかしペースは上がらず、タイム差は一時的に12分50秒まで広がる。
このロマンディには、ジロ・デ・イタリアに向けて最終調整中の選手が多く出場している。レオパード・トレックのエーススプリンター、ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)もその一人。しかしベンナーティは32km地点で落車してリタイア。ベンナーティは鎖骨骨折と肋骨4本骨折、肺挫傷の重傷で、4〜6週間の戦線離脱を余儀なくされる。ジロ出場に赤信号が灯った。
集団後方で走る新城幸也(日本、ユーロップカー) photo:Kei Tsujiレース後半の山岳地帯に入ると、リクイガス・キャノンデールとアスタナが集団ペースアップを開始したが、時すでに遅し。序盤に許した大きなタイム差が最後まで尾を引き、逃げグループは4分のリードを得たままゴール22km手前の1級山岳ピロン峠をクリア。
雨に濡れたテクニカルな下りで逃げグループは崩壊し、ブラットとサモイラウが3分30秒のリードで最後の1級山岳レイザンへ。急勾配区間を含む標高差360m・登坂距離8.5kmの登りでサモイラウを振り切り、独走体勢に入ったブラット。後続を引き離す走りで、雨に濡れる標高1318mのゴールに飛び込んだ。
両手を広げてゴールするパヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ) photo:Kei Tsujiメイン集団はダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)やカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)らを先頭に、約2分遅れてゴール。2分47秒遅れたヨナタン・カストロビエホ(スペイン、エウスカルテル)に代わって、リーダージャージはステージ優勝者ブラットの手に渡った。
レース後の記者会見で、流暢なイタリア語で受け答えするブラット。「難しいコースに悪天候がプラスされて、予想以上に厳しいステージとなった。しかも最初の50kmはずっと向かい風。でも調子が良かったので、独走に持ち込もうと思ったんだ。その結果、この素晴らしい勝利が飛び込んできた」。
1分23秒遅れの4位に入ったジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ) photo:Kei Tsuji
集団前方でゴールするカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Kei Tsuji
リーダージャージを獲得したパヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ) photo:Kei Tsuji
4分15秒遅れでゴールする別府史之(日本、レディオシャック) photo:Kei Tsuji総合2位以下を1分以上引き離すリードを得たブラットだが、本人はきっぱりと「ジャージキープにこだわるつもりはない」と言い放つ。「今日はステージ優勝というゴールに向かって突き進んだ。総合成績がゴールじゃない。今はシーズン2勝目に充分満足しているよ」。
総合争いが決するのは、最終日前日、第4ステージの個人タイムトライアル。20.1kmの起伏に富んだコースで、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)やカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)らがタイム差を挽回するだろう。逃げグループから脱落しながらもステージ4位に入ったボブリッジも、総合を狙える位置につけている。
レースの模様はフォトギャラリーにて!
ツール・ド・ロマンディ2011第1ステージ結果
1位 パヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ) 4h27'41"
2位 オレクサンドル・クヴァチュク(ウクライナ、ランプレ・ISD) +56"
3位 ブラニスラウ・サモイラウ(ベラルーシ、モビスター) +1'15"
4位 ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ) +1'23"
5位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) +1'59"
6位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +2'01"
7位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +2'03"
8位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +2'05"
9位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、モビスター)
10位 サイモン・スピラック(スロベニア、ランプレ・ISD)
67位 別府史之(日本、レディオシャック) +4'15"
125位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +13'06"
個人総合成績
1位 パヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ) 4h31'26"
2位 オレクサンドル・クヴァチュク(ウクライナ、ランプレ・ISD) +1'00"
3位 ブラニスラウ・サモイラウ(ベラルーシ、モビスター) +1'22"
4位 ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ) +1'31"
5位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) +2'04"
6位 ゴルカ・ベルドゥーゴ(スペイン、エウスカルテル)
7位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +2'06"
8位 スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム) +2'08"
9位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
10位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +2'09"
68位 別府史之(日本、レディオシャック) +4'19"
126位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +13'16"
山岳賞
オレクサンドル・クヴァチュク(ウクライナ、ランプレ・ISD)
中間スプリント賞
ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)
チーム総合成績
ランプレ・ISD
text&photo:Kei Tsuji in Leysin, Switzerland
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第1ステージは、プロローグが行なわれたマルティニをスタートし、一路レマン湖に注ぐロッテン川に沿って渓谷を北上。ローザンヌを過ぎてから2級山岳を経て内陸部に向かい、標高1546mの1級山岳ピロン峠を越え、1級山岳レイザンにゴールする172.6km。今大会最難関の山岳ステージが早くも登場した。
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暖かな太陽が、雪を冠した山から吹き下ろす風の冷たさをかき消す。スタート地点の気温は20度まで上昇したが、この日の天候は下り坂。天気予報の通り、レース後半の山間部は晴れと降雨を交互に繰り返した。
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スタート後すぐに飛び出したのはジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)、パヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ)、オレクサンドル・クヴァチュク(ウクライナ、ランプレ・ISD)、ブラニスラウ・サモイラウ(ベラルーシ、モビスター)の4名。
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このロマンディには、ジロ・デ・イタリアに向けて最終調整中の選手が多く出場している。レオパード・トレックのエーススプリンター、ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)もその一人。しかしベンナーティは32km地点で落車してリタイア。ベンナーティは鎖骨骨折と肋骨4本骨折、肺挫傷の重傷で、4〜6週間の戦線離脱を余儀なくされる。ジロ出場に赤信号が灯った。
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雨に濡れたテクニカルな下りで逃げグループは崩壊し、ブラットとサモイラウが3分30秒のリードで最後の1級山岳レイザンへ。急勾配区間を含む標高差360m・登坂距離8.5kmの登りでサモイラウを振り切り、独走体勢に入ったブラット。後続を引き離す走りで、雨に濡れる標高1318mのゴールに飛び込んだ。
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レース後の記者会見で、流暢なイタリア語で受け答えするブラット。「難しいコースに悪天候がプラスされて、予想以上に厳しいステージとなった。しかも最初の50kmはずっと向かい風。でも調子が良かったので、独走に持ち込もうと思ったんだ。その結果、この素晴らしい勝利が飛び込んできた」。
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総合争いが決するのは、最終日前日、第4ステージの個人タイムトライアル。20.1kmの起伏に富んだコースで、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)やカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)らがタイム差を挽回するだろう。逃げグループから脱落しながらもステージ4位に入ったボブリッジも、総合を狙える位置につけている。
レースの模様はフォトギャラリーにて!
ツール・ド・ロマンディ2011第1ステージ結果
1位 パヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ) 4h27'41"
2位 オレクサンドル・クヴァチュク(ウクライナ、ランプレ・ISD) +56"
3位 ブラニスラウ・サモイラウ(ベラルーシ、モビスター) +1'15"
4位 ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ) +1'23"
5位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) +1'59"
6位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +2'01"
7位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +2'03"
8位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +2'05"
9位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、モビスター)
10位 サイモン・スピラック(スロベニア、ランプレ・ISD)
67位 別府史之(日本、レディオシャック) +4'15"
125位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +13'06"
個人総合成績
1位 パヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ) 4h31'26"
2位 オレクサンドル・クヴァチュク(ウクライナ、ランプレ・ISD) +1'00"
3位 ブラニスラウ・サモイラウ(ベラルーシ、モビスター) +1'22"
4位 ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ) +1'31"
5位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) +2'04"
6位 ゴルカ・ベルドゥーゴ(スペイン、エウスカルテル)
7位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +2'06"
8位 スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム) +2'08"
9位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
10位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +2'09"
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126位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +13'16"
山岳賞
オレクサンドル・クヴァチュク(ウクライナ、ランプレ・ISD)
中間スプリント賞
ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)
チーム総合成績
ランプレ・ISD
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