2011/04/24(日) - 04:38
アルデンヌクラシックの最後を締めくくるのは格式と伝統のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。仏語で最古参を意味する"ラ・ドワイエンヌ"(La Doyenne)とも呼ばれる正真正銘のクラシックレースだ。
クラシックレースの中でもモニュメントと呼ばれる最高格式を誇る5レースに含まれるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュは、それだけにどの選手にとっても憧れの的。険しい登りと平地がミックスされたコースは、クラシックレーサーはもちろん、山岳に秀でるステージレーサーにもチャンスがある。
歴史を紐解けば、ジャック・アンクティル(フランス)、エディ・メルクス(ベルギー)、ベルナール・イノー(フランス)、ショーン・ケリー(アイルランド)、モレノ・アルゲンティン(イタリア)、ミケーレ・バルトリ(イタリア)、パオロ・ベッティーニ(イタリア)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)といったグランツールウイナーからクラシックの名手まで様々な一流選手の名前を優勝者リストに見ることができる。
距離の長い登りが連続する255.5km
コースはリエージュをスタートし、バストーニュへ南下した後丘陵地帯を戻りリエージュの隣町アンスにゴールする255.5km。モニュメントのクラシックレースとしては比較的短い距離だ。
リエージュの基本的なコース設計は他のアルデンヌクラシックに似る。すなわち、アップダウンの連続する丘陵のコースだ。だが、リエージュの特徴として、ひとつひとつの登りの距離が長いことが上げられる。32の登りを誇るアムステルゴールドレースに比べると、カテゴリー付けされた登りの数10は少なく感じられるだろう。
しかしその登りの距離は最低でも1km以上、2km3kmはザラで中には4.4km続くコル・デュ・ロジェを筆頭に、中勾配の長い登りが選手を待ち受ける。10の登りは以下の通りだ。
登場する10カ所の上り坂
1 71.5km コート・ド・サンロシュ 長さ1.0km・平均勾配11%
2 157.5km コート・ド・ワンヌ 長さ2.7km・平均勾配7%
3 164.5km コート・ド・ストック 長さ1.0km・平均勾配12.2%
4 166.0km コート・ド・ラ・オートルヴェ 長さ3.6km・平均勾配5.6%
5 183.0km コル・デュ・ロジェ 長さ4.4km・平均勾配5.9%
6 195.5km コル・デュ・マキサール 長さ2.5km・平均勾配5%
7 206.0km モン・トゥー 長さ2.6km・平均勾配5.9%
8 220.0km コート・ド・ラ・ルドゥット 長さ2.0km・平均勾配8.8%
9 236.0km コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン 長さ1.5km・平均勾配9.5%
10 250.0km コート・ド・サンニコラ 長さ1.2km・平均勾配8.3%
157.5km地点のコート・ド・ワンヌ以降、断続的に登りが襲いかかる。リエージュの勝負どころとして有名なコート・ド・ラ・ルドゥットで今年もレースが動くだろう。平均勾配8.8%、最大勾配17%のハードクライムで有力選手が足を見せる。
続くコート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンは、この2年優勝候補のアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)が必ずアタックを見せる登りだ(09年には優勝を決めた)。そしてゴールまで5kmを残して最後の登りコート・ド・サンニコラ。クライマーの選手はここで独走に、スプリントを狙う選手はここでしがみつかないと勝機は無い。
ゴール地点はカテゴリー化されていないものの、ゆるやかな登り基調。少人数スプリントか、劇的な独走勝利か、いずれにせよモニュメントの栄光に浴することができるのはただ一人だけだ。
アルデンヌ・グランドスラムに挑むジルベール
レース当日は、誰もがフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)に注目する。この1週間でアムステル・ゴールドレースとフレーシュ・ワロンヌを圧倒的な力で立て続けに制したジルベールが優勝候補の筆頭であることは疑いようが無い。
プレッシャーさえジルベールを止める要因にはならない感がある中、ライバルたちはいかにしてジルベールを封じ込めるかを考えてくるだろう。最注目チームはアルデンヌのスペシャリストを揃えるカチューシャ。そしてシュレク兄弟のレオパード・トレックだ。
カチューシャはこのアルデンヌクラシックでジルベールにことごとく敗れ2位のホアキン・ロドリゲス(スペイン)をエースに立て、最後のリエージュで有終の美を狙う。ディルーカ(イタリア)、イワノフ(ロシア)、コロブネフ(ロシア)、モレーノ(スペイン)と他チームのエース級の選手がロドリゲスを支える。
やはりジルベールに苦渋をなめさせられているのはアンディとフランクのシュレク兄弟(ルクセンブルク、レオパード・トレック)。フグルサング(デンマーク)、ウェーグマン(ドイツ)とチーム力は高いものの、チームは春先から思うように勝てていないのが気がかり。
フレーシュで3位に入ったクライマーのサミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)はイゴール・アントン(スペイン)とともに上々の仕上がり。積極果敢な走りで早めに仕掛けてくるはず。
昨年2度目のリエージュ制覇を成し遂げたアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)はしっかりと調子を上げており、3度目の勝利も現実味を帯びる。ベテランらしいレース展開の読みの巧さはプロトン随一か。
ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)の脚質はリエージュ向き。ツールの区間優勝経験者サイモン・ジェランス(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)はビッグタイトルが欲しいところ。ジロを見据えるリクイガス・キャノンデールからはイヴァン・バッソ(イタリア)がエースナンバー。ジロ直前のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)の仕上がりにも注目だ。
いずれにせよ、ジルベールvsその他の選手、という構図は揺るぎない。3戦目にして他チームはジルベールを攻略するのか。それとも敵無しの圧倒的な力でジルベールがねじ伏せるか。109年目の最古参のクラシックレースは、まもなく決戦の火蓋が切って落とされる。
text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji,Cor Vos
クラシックレースの中でもモニュメントと呼ばれる最高格式を誇る5レースに含まれるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュは、それだけにどの選手にとっても憧れの的。険しい登りと平地がミックスされたコースは、クラシックレーサーはもちろん、山岳に秀でるステージレーサーにもチャンスがある。
歴史を紐解けば、ジャック・アンクティル(フランス)、エディ・メルクス(ベルギー)、ベルナール・イノー(フランス)、ショーン・ケリー(アイルランド)、モレノ・アルゲンティン(イタリア)、ミケーレ・バルトリ(イタリア)、パオロ・ベッティーニ(イタリア)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)といったグランツールウイナーからクラシックの名手まで様々な一流選手の名前を優勝者リストに見ることができる。
距離の長い登りが連続する255.5km
コースはリエージュをスタートし、バストーニュへ南下した後丘陵地帯を戻りリエージュの隣町アンスにゴールする255.5km。モニュメントのクラシックレースとしては比較的短い距離だ。
リエージュの基本的なコース設計は他のアルデンヌクラシックに似る。すなわち、アップダウンの連続する丘陵のコースだ。だが、リエージュの特徴として、ひとつひとつの登りの距離が長いことが上げられる。32の登りを誇るアムステルゴールドレースに比べると、カテゴリー付けされた登りの数10は少なく感じられるだろう。
しかしその登りの距離は最低でも1km以上、2km3kmはザラで中には4.4km続くコル・デュ・ロジェを筆頭に、中勾配の長い登りが選手を待ち受ける。10の登りは以下の通りだ。
登場する10カ所の上り坂
1 71.5km コート・ド・サンロシュ 長さ1.0km・平均勾配11%
2 157.5km コート・ド・ワンヌ 長さ2.7km・平均勾配7%
3 164.5km コート・ド・ストック 長さ1.0km・平均勾配12.2%
4 166.0km コート・ド・ラ・オートルヴェ 長さ3.6km・平均勾配5.6%
5 183.0km コル・デュ・ロジェ 長さ4.4km・平均勾配5.9%
6 195.5km コル・デュ・マキサール 長さ2.5km・平均勾配5%
7 206.0km モン・トゥー 長さ2.6km・平均勾配5.9%
8 220.0km コート・ド・ラ・ルドゥット 長さ2.0km・平均勾配8.8%
9 236.0km コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン 長さ1.5km・平均勾配9.5%
10 250.0km コート・ド・サンニコラ 長さ1.2km・平均勾配8.3%
157.5km地点のコート・ド・ワンヌ以降、断続的に登りが襲いかかる。リエージュの勝負どころとして有名なコート・ド・ラ・ルドゥットで今年もレースが動くだろう。平均勾配8.8%、最大勾配17%のハードクライムで有力選手が足を見せる。
続くコート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンは、この2年優勝候補のアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)が必ずアタックを見せる登りだ(09年には優勝を決めた)。そしてゴールまで5kmを残して最後の登りコート・ド・サンニコラ。クライマーの選手はここで独走に、スプリントを狙う選手はここでしがみつかないと勝機は無い。
ゴール地点はカテゴリー化されていないものの、ゆるやかな登り基調。少人数スプリントか、劇的な独走勝利か、いずれにせよモニュメントの栄光に浴することができるのはただ一人だけだ。
アルデンヌ・グランドスラムに挑むジルベール
レース当日は、誰もがフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)に注目する。この1週間でアムステル・ゴールドレースとフレーシュ・ワロンヌを圧倒的な力で立て続けに制したジルベールが優勝候補の筆頭であることは疑いようが無い。
プレッシャーさえジルベールを止める要因にはならない感がある中、ライバルたちはいかにしてジルベールを封じ込めるかを考えてくるだろう。最注目チームはアルデンヌのスペシャリストを揃えるカチューシャ。そしてシュレク兄弟のレオパード・トレックだ。
カチューシャはこのアルデンヌクラシックでジルベールにことごとく敗れ2位のホアキン・ロドリゲス(スペイン)をエースに立て、最後のリエージュで有終の美を狙う。ディルーカ(イタリア)、イワノフ(ロシア)、コロブネフ(ロシア)、モレーノ(スペイン)と他チームのエース級の選手がロドリゲスを支える。
やはりジルベールに苦渋をなめさせられているのはアンディとフランクのシュレク兄弟(ルクセンブルク、レオパード・トレック)。フグルサング(デンマーク)、ウェーグマン(ドイツ)とチーム力は高いものの、チームは春先から思うように勝てていないのが気がかり。
フレーシュで3位に入ったクライマーのサミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)はイゴール・アントン(スペイン)とともに上々の仕上がり。積極果敢な走りで早めに仕掛けてくるはず。
昨年2度目のリエージュ制覇を成し遂げたアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)はしっかりと調子を上げており、3度目の勝利も現実味を帯びる。ベテランらしいレース展開の読みの巧さはプロトン随一か。
ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)の脚質はリエージュ向き。ツールの区間優勝経験者サイモン・ジェランス(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)はビッグタイトルが欲しいところ。ジロを見据えるリクイガス・キャノンデールからはイヴァン・バッソ(イタリア)がエースナンバー。ジロ直前のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)の仕上がりにも注目だ。
いずれにせよ、ジルベールvsその他の選手、という構図は揺るぎない。3戦目にして他チームはジルベールを攻略するのか。それとも敵無しの圧倒的な力でジルベールがねじ伏せるか。109年目の最古参のクラシックレースは、まもなく決戦の火蓋が切って落とされる。
text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji,Cor Vos
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