2011/04/18(月) - 15:43
アルデンヌクラシックの始まりを告げるアムステルゴールドレースは、絶対の優勝候補フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)が危なげなく勝利し大会連覇を達成した。
前週までの北フランスやベルギーを舞台にした「北のクラシック」から、レースの舞台はオランダ、南ベルギーへと移っていく。アルデンヌクラシックと総称される3つのレースの最初に位置するのがアムステルゴールドレースだ。
距離は短いものの急勾配の坂が連続するの厳しいアップダウンがアルデンヌクラシックの特徴。特にこのアムステルゴールドレースには32の激坂が260kmに詰め込まれる。例年同様、ふるい落としに次ぐふるい落としのサバイバルレースが期待された。
この日のレースは穏やかな立ち上がり。逃げが決まったのはレースが1時間以上経過した後、50kmを過ぎてからであった。逃げグループを形成したのはシモーニ・ポンツィ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)、アルバート・ティマー(オランダ、スキル・シマノ)、トーマス・デハント(ベルギー、フェルナーダズヴィレムス・アクセント)、パオロ・デネグリ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)の4名。
集団のペースが緩んだことにより、4名は110km地点で12分ものタイム差を稼ぎ出した。しかし、母国最大のクラシックレースを狙うラボバンクが残り135kmからと距離を残しながらもメンバーを揃えて集団の牽引を開始。時に一列棒状になるハイスピードなペースアップに、タイム差はみるみる間に減少。
この日のラボバンクは白と青の面積の大きいスペシャルジャージを着用。これはRide for the Rosesというガン撲滅運動のチャリティライドのPRのため。Livestrongと姉妹活動にあたるとのこと。目新しいジャージに身を包んだラボバンク勢が集団をコントロールし続ける。
ゴール地点にもなっているカウベルクの登りはアムステルゴールドレース屈指の難所。3度通過するうちの2回目、184km地点でメイン集団も動き始める。これまで積極的にレースを運んで来たラボバンクから、カルロス・バレード(スペイン)がアタック。これにヤン・ギセリンク(ベルギー、HTC・ハイロード)が続き、カウベルクを終えて先頭に残ったデハントとデネグリに合流する。
バレードを先頭に送り込んだことで、ラボバンクの集団コントロールは終了。優勝候補のフィリップ・ジルベール(ベルギー)擁するオメガファーマ・ロット、オランダのプロチームであるヴァカンソレイユDMCが交代で集団を引くものの、主導権を握るチームは現れない。
一時は1分ほどの差を得た先頭グループも、残り37km地点でのジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)のアタックをきっかけに、残り34kmで吸収。集団がひとつにまとまる。この日のレースのひとつの転換点は残り23km地点、優勝候補の一角であるフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)が落車したチームメイトのファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)に乗り上げ自身も落車したこと。
フランクはすぐに走り出したものの、背中を打ったカンチェラーラは遅れ、スピードの上がったメイン集団に追いつけず。さらに、集団復帰を目指すフランクのバイクはメカトラに見舞われ、事実上ここでフランクのレースも終わってしまう。
この頃集団の先頭ではブラム・タンキンク(オランダ、ラボバンク)がアタックし、レースが活性化。この逃げは決まらなかったものの、続く29番目のアイゼルボスヴェフの登りでアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)、アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ら有力選手ぞろいの20名ほどが先頭集団を形成する。
ここにはチームメイトを伴う選手も多く、この集団を牽引するのは絶対エースのジルベールをアシストするユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)。登りに強いオールラウンダーのペースに、どのチームの選手も飛び出せない。
残り12km地点、最後から2番目の登りであるケウテンベルクを迎えて激坂を得意とするロドリゲスがアタック。この動きにアシストのいるジルベールは反応しない。ロドリゲスが集団に戻ると、さらにコロブネフがアタックし、カチューシャが波状攻撃を仕掛ける。しかしこの登りで決定的な走りを見せたのはアンディだった。
アタックで抜け出しに成功し、誰も追って来ないのを確認するとアンディはゴールまでの逃げ切りを決意。フランクやカンチェラーラを欠く中、残り10kmからの決断だ。
アンディと20名ほどの集団との差は4〜5秒のままレースは残る距離を減らしていく。集団内ではジルベールとオメガファーマ・ロットに誰も協力せず、残り3kmからはジルベール自らが集団を率いてアンディを追う展開に。
粘るアンディは単独で残り1.2km地点、最後のカウベルクの登りに突入する。数秒遅れて続いた集団から、ロドリゲスがアタックすると集団は崩壊。アンディはたちまち飲み込まれてしまう。先頭に立ったロドリゲスを唯一追えたのはジルベール。2人で残り300mを迎える。
だがジルベールはロドリゲスのスピードからさらに加速。パワフルな走りでロドリゲスを完全にねじ伏せ、独走でゴールへ。余裕すら感じさせる完勝で昨年に続きアムステルゴールドレースを制し、連覇を達成した。
3位争いは熾烈なスプリントをサイモン・ジェランス(オーストラリア、チームスカイ)が制した。中盤まで積極的なレース運びをしたラボバンクはオスカル・フレイレ(スペイン)を6位に送り込むに留まっている。
フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
「肉体的にも精神的にも心強いチームが僕にはある。レース中はずっと冷静でいて、チームメイトの働きに任せていた。今の時期に100パーセントのコンディションに持ってくるつもりでいて、まさに今がその状態だ。水曜日からまた始まるワンデイレースでの展望は明るいよ」
■アムステルゴールドレース2011結果
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)6h30'44"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2"
3位 サイモン・ジェランス(オーストラリア、チームスカイ) +4"
4位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック) +5"
5位 アレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)
6位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
7位 ビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユDMC) +7"
8位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック) +18"
9位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +19"
10位 ポール・マルテンス(オランダ、ラボバンク) +26"
text:Yufta Omata
photo:Cor Vos
前週までの北フランスやベルギーを舞台にした「北のクラシック」から、レースの舞台はオランダ、南ベルギーへと移っていく。アルデンヌクラシックと総称される3つのレースの最初に位置するのがアムステルゴールドレースだ。
距離は短いものの急勾配の坂が連続するの厳しいアップダウンがアルデンヌクラシックの特徴。特にこのアムステルゴールドレースには32の激坂が260kmに詰め込まれる。例年同様、ふるい落としに次ぐふるい落としのサバイバルレースが期待された。
この日のレースは穏やかな立ち上がり。逃げが決まったのはレースが1時間以上経過した後、50kmを過ぎてからであった。逃げグループを形成したのはシモーニ・ポンツィ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)、アルバート・ティマー(オランダ、スキル・シマノ)、トーマス・デハント(ベルギー、フェルナーダズヴィレムス・アクセント)、パオロ・デネグリ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)の4名。
集団のペースが緩んだことにより、4名は110km地点で12分ものタイム差を稼ぎ出した。しかし、母国最大のクラシックレースを狙うラボバンクが残り135kmからと距離を残しながらもメンバーを揃えて集団の牽引を開始。時に一列棒状になるハイスピードなペースアップに、タイム差はみるみる間に減少。
この日のラボバンクは白と青の面積の大きいスペシャルジャージを着用。これはRide for the Rosesというガン撲滅運動のチャリティライドのPRのため。Livestrongと姉妹活動にあたるとのこと。目新しいジャージに身を包んだラボバンク勢が集団をコントロールし続ける。
ゴール地点にもなっているカウベルクの登りはアムステルゴールドレース屈指の難所。3度通過するうちの2回目、184km地点でメイン集団も動き始める。これまで積極的にレースを運んで来たラボバンクから、カルロス・バレード(スペイン)がアタック。これにヤン・ギセリンク(ベルギー、HTC・ハイロード)が続き、カウベルクを終えて先頭に残ったデハントとデネグリに合流する。
バレードを先頭に送り込んだことで、ラボバンクの集団コントロールは終了。優勝候補のフィリップ・ジルベール(ベルギー)擁するオメガファーマ・ロット、オランダのプロチームであるヴァカンソレイユDMCが交代で集団を引くものの、主導権を握るチームは現れない。
一時は1分ほどの差を得た先頭グループも、残り37km地点でのジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)のアタックをきっかけに、残り34kmで吸収。集団がひとつにまとまる。この日のレースのひとつの転換点は残り23km地点、優勝候補の一角であるフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)が落車したチームメイトのファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)に乗り上げ自身も落車したこと。
フランクはすぐに走り出したものの、背中を打ったカンチェラーラは遅れ、スピードの上がったメイン集団に追いつけず。さらに、集団復帰を目指すフランクのバイクはメカトラに見舞われ、事実上ここでフランクのレースも終わってしまう。
この頃集団の先頭ではブラム・タンキンク(オランダ、ラボバンク)がアタックし、レースが活性化。この逃げは決まらなかったものの、続く29番目のアイゼルボスヴェフの登りでアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)、アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ら有力選手ぞろいの20名ほどが先頭集団を形成する。
ここにはチームメイトを伴う選手も多く、この集団を牽引するのは絶対エースのジルベールをアシストするユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)。登りに強いオールラウンダーのペースに、どのチームの選手も飛び出せない。
残り12km地点、最後から2番目の登りであるケウテンベルクを迎えて激坂を得意とするロドリゲスがアタック。この動きにアシストのいるジルベールは反応しない。ロドリゲスが集団に戻ると、さらにコロブネフがアタックし、カチューシャが波状攻撃を仕掛ける。しかしこの登りで決定的な走りを見せたのはアンディだった。
アタックで抜け出しに成功し、誰も追って来ないのを確認するとアンディはゴールまでの逃げ切りを決意。フランクやカンチェラーラを欠く中、残り10kmからの決断だ。
アンディと20名ほどの集団との差は4〜5秒のままレースは残る距離を減らしていく。集団内ではジルベールとオメガファーマ・ロットに誰も協力せず、残り3kmからはジルベール自らが集団を率いてアンディを追う展開に。
粘るアンディは単独で残り1.2km地点、最後のカウベルクの登りに突入する。数秒遅れて続いた集団から、ロドリゲスがアタックすると集団は崩壊。アンディはたちまち飲み込まれてしまう。先頭に立ったロドリゲスを唯一追えたのはジルベール。2人で残り300mを迎える。
だがジルベールはロドリゲスのスピードからさらに加速。パワフルな走りでロドリゲスを完全にねじ伏せ、独走でゴールへ。余裕すら感じさせる完勝で昨年に続きアムステルゴールドレースを制し、連覇を達成した。
3位争いは熾烈なスプリントをサイモン・ジェランス(オーストラリア、チームスカイ)が制した。中盤まで積極的なレース運びをしたラボバンクはオスカル・フレイレ(スペイン)を6位に送り込むに留まっている。
フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
「肉体的にも精神的にも心強いチームが僕にはある。レース中はずっと冷静でいて、チームメイトの働きに任せていた。今の時期に100パーセントのコンディションに持ってくるつもりでいて、まさに今がその状態だ。水曜日からまた始まるワンデイレースでの展望は明るいよ」
■アムステルゴールドレース2011結果
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)6h30'44"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2"
3位 サイモン・ジェランス(オーストラリア、チームスカイ) +4"
4位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック) +5"
5位 アレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)
6位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
7位 ビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユDMC) +7"
8位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック) +18"
9位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +19"
10位 ポール・マルテンス(オランダ、ラボバンク) +26"
text:Yufta Omata
photo:Cor Vos
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