2011/04/15(金) - 14:24
今週末から始まる「アルデンヌ・クラシック」において、フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)は間違いなく優勝候補の筆頭だ。ブラバンツ・ペイルで王道の勝ち方を見せたジルベールは「来週に向けて、調子の良さを確認できた」と冷静な表情で語る。
ブラバンツ・ペイルで先行するフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)とビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) photo:Cor Vosジルベールは好調だ。ブラバンツ・ペイルでは7名の決定的な逃げに乗り、ゴールまで14kmを残したビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)のアタックにジョイン。スプリントで早めに仕掛けたルークマンスを悠々と撃ち落としたジルベールが勝利した。
ジルベールはブラバンツ・ペイルでの勝利が「アルデンヌ・クラシック」に向けての布石であることを公言する。つまり、アムステル・ゴールドレース、フレーシュ・ワロンヌ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュに向けて準備が整っていることをアピールした。
ブラバンツ・ペイルを制したフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Cor Vos「イージーな勝利だったんじゃなかったって?確かにこういうタイプのレースは自分向きなんだ。アップダウンとカーブが連続するレースが得意。アムステルやリエージュの良いリハーサルになったよ」。
オメガファーマ・ロットに所属するジルベールは、世界最高峰のワンデーレーサーだ。持ち前の鋭いアタックで、昨年アムステル・ゴールドレースとジロ・ディ・ロンバルディアを制している。
ジルベールのカレンダーには4月第3週にチェックが入っている。中でも最大の目標に掲げているのが、アルデンヌ最終戦のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュだ。「コンディションのピークを100%リエージュに合わせなければならない。毎週調子が上がっているという実感があるよ」。
昨年アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)が優勝したリエージュでジルベールは3位だった。ここでジルベールの戦歴と「アルデンヌ・クラシック」の3レースをおさらいしておこう。
アムステル・ゴールドレース 4月17日(日)
アルデンヌ・クラシックの中で最も若く、初開催は1966年。オランダ最大のワンデーレースであり、ベルギーやドイツ国境に面した同国内陸部リンブルフ州が舞台。丘陵地帯を縫うように走る複雑な周回コースが設定され、合計31カ所の登りが絶え間なく登場する。最後はカウベルグを駆け上がってゴール。ジルベールは昨年初優勝を飾った。2004年34位、2006年69位、2008年29位、2009年4位、2010年優勝。
フレーシュ・ワロンヌ 4月20日(水)
毎年アムステルとリエージュに挟まれた水曜日に開催されるのが1936年に初開催されたフレーシュ・ワロンヌ。「ユイの壁」と呼ばれる全長1300mの激坂にゴールする。最大勾配26%の激坂ぶりに苦しむ選手が多発。1996年にランス・アームストロング(アメリカ)が優勝。昨年カデル・エヴァンス(オーストラリア)が優勝し、ジルベールは自身最高の6位という成績を残した。2004年69位、2006年21位、2007年18位、2009年35位、2010年6位。
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ 4月24日(日)
アルデンヌ・クラシック最高の格式を誇る伝統のクラシックレース。初開催は1892年で、その全長は261kmに及ぶ。リエージュをスタートしてバストーニュで折り返すコースは、復路の難易度が際立って高い。アムステルやフレーチュのそれよりも登りの距離が長く、毎年サバイバルレースが繰り広げられる。昨年ジルベールは3位。初めて表彰台に登った。2004年40位、2006年38位、2007年15位、2008年92位、2009年4位、2010年3位。
2010年アムステル・ゴールドレース カウベルグでライバルたちを蹴散らしたフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Cor Vos「アムステルに関しては、集団が一つのままでカウベルグの登り口に達する展開になれば、僕にチャンスが回ってくる。仮に逃げグループが最後まで粘る展開になれば、複雑なレースになる。理想的な展開は、小さなグループが10分程度のリードで逃げ、ゴールまで余裕をもって集団が一つにまとまることだ」。ジルベールはシーズン開幕前のインタビューでそう語っている。
「フレーシュは『ユイの壁』がゴールであり続ける限り、決して僕向きのレースとは言えない。あの激坂は完全にピュアクライマー向きだ」。
リエージュ名物の「コート・ド・ラ・ルドゥット」にはPHIL(フィリップ)の路上ペイントが施される photo:Cor Vos「これまで100%のコンディションでリエージュに挑んだことがない。身体的には、もう勝つ準備はできている。あとはコンディショニングの問題だ。ずっと勝ちたいと夢見続けているレースであり、それが自分の原点でもある。間違いなく一番勝ちたいクラシックレースだ」。
世界チャンピオンのトル・フースホフト(ノルウェー)同様、ジルベールは現在モナコに居を構えている。しかし気持ちはいつでもリエージュにある。勝負どころのコート・ド・ラ・ルドゥットには、今PHIL(フィリップ)」の路上ペイントが描かれるだろう。
2010年リエージュ 残り6km地点のサンニコラで追走グループから飛び出したフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Cor Vos「とにかく100%のコンディショニングが勝利の鍵だ。昨年はコンタドール=ヴィノクロフ、ロドリゲス=コロブネフ、アンディ・シュレク=フランク・シュレクという3組の強いコンビがいて、対する僕は一人だった。今年はそんな状況にならないことを願うよ」。
ブラバンツ・ペイルでのテストを完了したジルベールは、アムステルでも勝利を狙う。しかしジルベールはあくまでもカウベルグのゴール地点の先にあるリエージュを見据えている。
「今日の勝利でジルベールのプレッシャーは増したはずだ」。オメガファーマ・ロットのヘルマン・フリソン監督はブラバンツ・ペイルの勝者をそう分析する。「でもライバルチームは焦りを感じているはず。ジルベールはアムステルの優勝候補の筆頭だ」。
早くもジルベールの2011年シーズンはクライマックスを迎える。
text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji
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ジルベールはブラバンツ・ペイルでの勝利が「アルデンヌ・クラシック」に向けての布石であることを公言する。つまり、アムステル・ゴールドレース、フレーシュ・ワロンヌ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュに向けて準備が整っていることをアピールした。
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オメガファーマ・ロットに所属するジルベールは、世界最高峰のワンデーレーサーだ。持ち前の鋭いアタックで、昨年アムステル・ゴールドレースとジロ・ディ・ロンバルディアを制している。
ジルベールのカレンダーには4月第3週にチェックが入っている。中でも最大の目標に掲げているのが、アルデンヌ最終戦のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュだ。「コンディションのピークを100%リエージュに合わせなければならない。毎週調子が上がっているという実感があるよ」。
昨年アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)が優勝したリエージュでジルベールは3位だった。ここでジルベールの戦歴と「アルデンヌ・クラシック」の3レースをおさらいしておこう。
アムステル・ゴールドレース 4月17日(日)
アルデンヌ・クラシックの中で最も若く、初開催は1966年。オランダ最大のワンデーレースであり、ベルギーやドイツ国境に面した同国内陸部リンブルフ州が舞台。丘陵地帯を縫うように走る複雑な周回コースが設定され、合計31カ所の登りが絶え間なく登場する。最後はカウベルグを駆け上がってゴール。ジルベールは昨年初優勝を飾った。2004年34位、2006年69位、2008年29位、2009年4位、2010年優勝。
フレーシュ・ワロンヌ 4月20日(水)
毎年アムステルとリエージュに挟まれた水曜日に開催されるのが1936年に初開催されたフレーシュ・ワロンヌ。「ユイの壁」と呼ばれる全長1300mの激坂にゴールする。最大勾配26%の激坂ぶりに苦しむ選手が多発。1996年にランス・アームストロング(アメリカ)が優勝。昨年カデル・エヴァンス(オーストラリア)が優勝し、ジルベールは自身最高の6位という成績を残した。2004年69位、2006年21位、2007年18位、2009年35位、2010年6位。
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ 4月24日(日)
アルデンヌ・クラシック最高の格式を誇る伝統のクラシックレース。初開催は1892年で、その全長は261kmに及ぶ。リエージュをスタートしてバストーニュで折り返すコースは、復路の難易度が際立って高い。アムステルやフレーチュのそれよりも登りの距離が長く、毎年サバイバルレースが繰り広げられる。昨年ジルベールは3位。初めて表彰台に登った。2004年40位、2006年38位、2007年15位、2008年92位、2009年4位、2010年3位。
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「今日の勝利でジルベールのプレッシャーは増したはずだ」。オメガファーマ・ロットのヘルマン・フリソン監督はブラバンツ・ペイルの勝者をそう分析する。「でもライバルチームは焦りを感じているはず。ジルベールはアムステルの優勝候補の筆頭だ」。
早くもジルベールの2011年シーズンはクライマックスを迎える。
text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji
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