2011/04/04(月) - 11:30
ロンド・ファン・フラーンデレンに新たなチャンピオンが誕生した。連覇を狙ったファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)らのアタックを力で封じ込め、ゴールスプリントを制したニック・ナイエンス(ベルギー、サクソバンク・サンガード)。また、別府史之(レディオシャック)は3度目の出場で日本人初完走を果たした。
ゴールまで45kmを残して動いた有力選手たち
18カ所の急坂と石畳区間が詰め込まれた256.3kmがロンドの舞台。今年も世界屈指のクラシックレーサーたちがブルージュ・マルクト広場に集結した。
曇り空の下、午前10時にスタートが切られると、アベレージ50km/hのハイスピードでレースは幕開ける。降雨の予報が出ていたが、結局最後まで雨が降ることはなかった。
52km地点でレース前半の逃げが決まる。メンバーはロジャー・ハモンド(イギリス、ガーミン・サーヴェロ)、ジェレミー・ハント(イギリス、チームスカイ)、ステファン・ファンダイク(オランダ、ベランダス・ヴィレムス)、ミッチェル・ドッカー(オーストラリア、スキル・シマノ)、セバスティアン・テュルゴー(フランス、ユーロップカー)。地元ベルギー勢は逃げグループに選手を送り損ねた。
タイム差は100km地点で最大8分をマーク。ゴールまで100kmを切ってから始まる「オウデ・クワレモント」「パテルベルグ」「コッペンベルグ」の“3連続ベルグ”までレースが動かないのが通例だが、今年は圧倒的な優勝候補カンチェラーラの存在に危機感を抱くライバルチームが早めに動く。
この日3つめの「レケルベルグ」の登りを前に、ラボバンクのマーティン・チャリンギ(オランダ)が先陣を切ってアタック。平坦区間で飛び出したチャリンギにはヘルト・ステーグマン(ベルギー、クイックステップ)やベルンハルト・アイゼル(オーストリア、HTC・ハイロード)が合流。強力な19名が追走グループを形成した。
ライバルチームの攻撃を抑え込むため、レオパード・トレックはメイン集団を率いて追走。結局19名の追走グループは4つめの「カペリイ」を前に吸収される。しかしレオパード・トレックはこの追走でチーム力を消耗してしまう。
エースを好位置で“3連続ベルグ”に突入させたいチームが積極的にペースを上げたため、ゴールまで86kmを残した「オウデ・クワレモント」に到達した時点で、先頭5名とメイン集団のタイム差は1分に。石畳が敷かれた長さ2200mの登りでシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)が動いた。
メイン集団から飛び出したシャヴァネルは、サイモン・クラーク(オーストラリア、アスタナ)とともに先頭グループに合流する。続く最大勾配20.3%の「パテルベルグ」と最大勾配22%の「コッペンベルグ」で、シャヴァネルとクラークが他の逃げメンバーを振り切って先行。2人逃げが始まった。
一方のメイン集団では「パテルベルグ」と「コッペンベルグ」でフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)がアタックを連発させる。
しかしトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)やカンチェラーラといったビッグネームがジルベールの動きを封じ込め、メイン集団は20名ほどに絞られた状態でこれらの難所をクリアした。
その後もアタックは止まず、ゴールまで66kmを残した平坦区間でエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)が、「エイケンベルグ」でラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)がそれぞれアタック。この2人は先頭のシャヴァネルとクラークに追いつき、4名で25秒のリードを築いてラスト50km。
続く「モーレンベルグ」で、先頭はシャヴァネルが独走状態に持ち込む。昨年この「モーレンベルグ」で攻撃を仕掛けたカンチェラーラとボーネンは動かない。有力選手たちが動いたのは、急坂ではなく、ゴールまで45kmを残した「ハーグフク」の石畳区間だった。
まずアルカンシェルのトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)が緩やかな登りでアタックを仕掛け、これに呼応するようにボーネンとカンチェラーラがアタック。スイッチが入ったカンチェラーラは「レベルグ」でボーネンを振るい落とし、それまで逃げていたボームやボアッソンを抜き去り、単独でシャヴァネルを追撃し始めた。
失速したカンチェラーラ 奮起したベルギー勢
ゴール32km手前の「ヴァルケンベルグ」でカンチェラーラはシャヴァネルをキャッチ。後方にエースのボーネンを残すシャヴァネルは先頭交代に加わらず、カンチェラーラが先頭固定で平坦路をかっ飛ばす。
BMCレーシングチームやヴァカンソレイユ・DCMが懸命にペースを上げるメイン集団に対し、カンチェラーラとシャヴァネルは1分のリードを築き上げる。カンチェラーラが独走に持ち込む昨年大会の再現か。しかし後半最大の勝負どころである「ミュール・カペルミュール」が近づくと、先頭2名とメイン集団のタイム差が縮まり出す。
レース後に「脚がつっていた」と打ち明けたカンチェラーラは、昨年飛ぶように駆け上がった「ミュール・カペルミュール」で失速。40秒遅れでこの難所に突入したメイン集団からは、カンチェラーラのアタック時にパンクで後退していたジルベールがアタック。
アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)とビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)を引き連れて「ミュール・カペルミュール」を駆け上がったジルベールは、頂上で先頭のカンチェラーラとシャヴァネルを捕まえた。
スプリント力のあるボーネンを引き離したいジルベールはそのままの勢いを維持し、続く最後の「ボスベルグ」でアタックを仕掛けて独走に持ち込む。しかし決定的なリードは奪えず、ラスト10kmを10秒のリードで独走するのを諦めたジルベールはスローダウン。シャヴァネルやカンチェラーラが再び追いついた。
やがて「ミュール・カペルミュール」で遅れていたボーネンやナイエンスを含むグループも先頭に復帰。ゴールまで平坦な8kmを残して、優勝候補がひしめき合う12名の先頭グループが形成。レースは実質的にフリダシに戻った。
ここからは一か八かのアタック合戦。バッランやナイエンス、フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)らのアタックは不発に終わり、息を吹き返したカンチェラーラがラスト4kmで再び発進。カンチェラーラにはシャヴァネルとナイエンスが食らいつき、3名が先行した状態でラスト1kmのアーチを切った。
カンチェラーラは最終ストレートで捨て身のスパート。しかしナイエンスとシャヴァネルは千切れず持ち堪え、ラスト200mでナイエンスがスプリントで先頭へ。長時間逃げ続けていたシャヴァネルがスプリントで応戦したが伸びず、ゴールラインでナイエンスが両手を突き上げた。
母国ベルギー最大のタイトルを手にしたナイエンス
「何年も何年も思い描き、夢見ていた瞬間がやってきた。この勝利のために、カウントできないほどの時間をトレーニングに費やしてきたんだ」。母国ベルギー最大のタイトルを手中に収めたナイエンスは興奮を抑えきれない表情で語る。
「カンチェラーラとシャヴァネルをゴールスプリントで破る自信はあった。全力で、信じられないほど追い込んでのスプリントだった」。
2002年のロンド・ファン・フラーンデレンU23レースで優勝し、2003年にクイックステップでプロデビューしたナイエンス。コフィディスとラボバンクを経て、今年からサクソバンク・サンガードで走る。
これまでオンループ・ヘットフォルクやクールネ〜ブリュッセル〜クールネなどのセミクラシックは制しているが、「モニュメント」クラスのクラシックレースでは初勝利。このロンドでは2度トップ10フィニッシュを果たしており、2008年大会では独走勝利を飾ったステイン・デヴォルデル(ベルギー)から15秒遅れの2位に入っている。
心機一転デンマークチームに移籍した今年は、レオパード・トレックに移籍したカンチェラーラらの穴を埋めるクラシックレーサーとしてエースに起用され、3月23日のドワーズ・ドア・フラーンデレンで劇的な逃げ切り勝利。このキャリア最大の勝利で、トップクラシックレーサーの仲間入りを果たした。サクソバンク・サンガードにとっては、チームを離脱したカンチェラーラを打ち破っての価値ある大会連覇だ。
敗れたカンチェラーラは前向きに結果を受け止める。「ミュールに差し掛かったとき『これは昨年のようには行かない』と感じた。でも何もせずに後退するわけにはいかない。有力選手ならばまだ何かできるはずだ。そう思って終盤に攻撃を仕掛け、表彰台を獲得した。3位という成績には満足すべき。ミラノ〜サンレモ2位、E3プライスで勝って、今回の3位。ポジティブな結果だ」。
「勝てる時もあれば負ける時もある。バイクレースはそんなものだ」。そう語るカンチェラーラは、連覇がかかった次週のパリ〜ルーベに照準を合わす。「北の地獄」でも優勝の最有力候補であることに変わりはない。
日本から唯一参戦した別府史之は、17分51秒遅れの最終集団でゴール。目標の逃げには乗ることができなかったが、日本人選手としてロンド初完走を果たした。
フミは自身のTwitterで「タフなレースだった。途中何度もトラブルに巻き込まれて諦めそうになったけど、ここで止めたら何か大切なモノを失う気がしてペダルを踏み続けた。結果は満足いくものではないけれど、雨も降らなかったし、沢山の観客に名前で応援もらえて幸せでした」とコメント。フミはパリ〜ルーベでも日本人初完走を目指す。
ロンド・ファン・フラーンデレン2011
1位 ニック・ナイエンス(ベルギー、サクソバンク・サンガード) 6h01'20"
2位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)
3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)
4位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ) +02"
5位 セバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク) +05"
6位 ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)
7位 ビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 スタフ・シェイリンクス(ベルギー、ベランダス・ヴィレムス)
9位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
10位 ジェレイント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
11位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)
12位 アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム) +09"
13位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ) +1'24"
14位 ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、HTC・ハイロード)
15位 ドミニク・ロラン(カナダ、FDJ)
16位 ダニーロ・ホンド(ドイツ、ランプレ・ISD)
17位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
18位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
19位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)
20位 マールテン・ワイナンツ(ベルギー、ラボバンク)
120位 別府史之(日本、レディオシャック) +17'51"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Makoto Ayano
ゴールまで45kmを残して動いた有力選手たち
18カ所の急坂と石畳区間が詰め込まれた256.3kmがロンドの舞台。今年も世界屈指のクラシックレーサーたちがブルージュ・マルクト広場に集結した。
曇り空の下、午前10時にスタートが切られると、アベレージ50km/hのハイスピードでレースは幕開ける。降雨の予報が出ていたが、結局最後まで雨が降ることはなかった。
52km地点でレース前半の逃げが決まる。メンバーはロジャー・ハモンド(イギリス、ガーミン・サーヴェロ)、ジェレミー・ハント(イギリス、チームスカイ)、ステファン・ファンダイク(オランダ、ベランダス・ヴィレムス)、ミッチェル・ドッカー(オーストラリア、スキル・シマノ)、セバスティアン・テュルゴー(フランス、ユーロップカー)。地元ベルギー勢は逃げグループに選手を送り損ねた。
タイム差は100km地点で最大8分をマーク。ゴールまで100kmを切ってから始まる「オウデ・クワレモント」「パテルベルグ」「コッペンベルグ」の“3連続ベルグ”までレースが動かないのが通例だが、今年は圧倒的な優勝候補カンチェラーラの存在に危機感を抱くライバルチームが早めに動く。
この日3つめの「レケルベルグ」の登りを前に、ラボバンクのマーティン・チャリンギ(オランダ)が先陣を切ってアタック。平坦区間で飛び出したチャリンギにはヘルト・ステーグマン(ベルギー、クイックステップ)やベルンハルト・アイゼル(オーストリア、HTC・ハイロード)が合流。強力な19名が追走グループを形成した。
ライバルチームの攻撃を抑え込むため、レオパード・トレックはメイン集団を率いて追走。結局19名の追走グループは4つめの「カペリイ」を前に吸収される。しかしレオパード・トレックはこの追走でチーム力を消耗してしまう。
エースを好位置で“3連続ベルグ”に突入させたいチームが積極的にペースを上げたため、ゴールまで86kmを残した「オウデ・クワレモント」に到達した時点で、先頭5名とメイン集団のタイム差は1分に。石畳が敷かれた長さ2200mの登りでシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)が動いた。
メイン集団から飛び出したシャヴァネルは、サイモン・クラーク(オーストラリア、アスタナ)とともに先頭グループに合流する。続く最大勾配20.3%の「パテルベルグ」と最大勾配22%の「コッペンベルグ」で、シャヴァネルとクラークが他の逃げメンバーを振り切って先行。2人逃げが始まった。
一方のメイン集団では「パテルベルグ」と「コッペンベルグ」でフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)がアタックを連発させる。
しかしトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)やカンチェラーラといったビッグネームがジルベールの動きを封じ込め、メイン集団は20名ほどに絞られた状態でこれらの難所をクリアした。
その後もアタックは止まず、ゴールまで66kmを残した平坦区間でエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)が、「エイケンベルグ」でラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)がそれぞれアタック。この2人は先頭のシャヴァネルとクラークに追いつき、4名で25秒のリードを築いてラスト50km。
続く「モーレンベルグ」で、先頭はシャヴァネルが独走状態に持ち込む。昨年この「モーレンベルグ」で攻撃を仕掛けたカンチェラーラとボーネンは動かない。有力選手たちが動いたのは、急坂ではなく、ゴールまで45kmを残した「ハーグフク」の石畳区間だった。
まずアルカンシェルのトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)が緩やかな登りでアタックを仕掛け、これに呼応するようにボーネンとカンチェラーラがアタック。スイッチが入ったカンチェラーラは「レベルグ」でボーネンを振るい落とし、それまで逃げていたボームやボアッソンを抜き去り、単独でシャヴァネルを追撃し始めた。
失速したカンチェラーラ 奮起したベルギー勢
ゴール32km手前の「ヴァルケンベルグ」でカンチェラーラはシャヴァネルをキャッチ。後方にエースのボーネンを残すシャヴァネルは先頭交代に加わらず、カンチェラーラが先頭固定で平坦路をかっ飛ばす。
BMCレーシングチームやヴァカンソレイユ・DCMが懸命にペースを上げるメイン集団に対し、カンチェラーラとシャヴァネルは1分のリードを築き上げる。カンチェラーラが独走に持ち込む昨年大会の再現か。しかし後半最大の勝負どころである「ミュール・カペルミュール」が近づくと、先頭2名とメイン集団のタイム差が縮まり出す。
レース後に「脚がつっていた」と打ち明けたカンチェラーラは、昨年飛ぶように駆け上がった「ミュール・カペルミュール」で失速。40秒遅れでこの難所に突入したメイン集団からは、カンチェラーラのアタック時にパンクで後退していたジルベールがアタック。
アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)とビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)を引き連れて「ミュール・カペルミュール」を駆け上がったジルベールは、頂上で先頭のカンチェラーラとシャヴァネルを捕まえた。
スプリント力のあるボーネンを引き離したいジルベールはそのままの勢いを維持し、続く最後の「ボスベルグ」でアタックを仕掛けて独走に持ち込む。しかし決定的なリードは奪えず、ラスト10kmを10秒のリードで独走するのを諦めたジルベールはスローダウン。シャヴァネルやカンチェラーラが再び追いついた。
やがて「ミュール・カペルミュール」で遅れていたボーネンやナイエンスを含むグループも先頭に復帰。ゴールまで平坦な8kmを残して、優勝候補がひしめき合う12名の先頭グループが形成。レースは実質的にフリダシに戻った。
ここからは一か八かのアタック合戦。バッランやナイエンス、フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)らのアタックは不発に終わり、息を吹き返したカンチェラーラがラスト4kmで再び発進。カンチェラーラにはシャヴァネルとナイエンスが食らいつき、3名が先行した状態でラスト1kmのアーチを切った。
カンチェラーラは最終ストレートで捨て身のスパート。しかしナイエンスとシャヴァネルは千切れず持ち堪え、ラスト200mでナイエンスがスプリントで先頭へ。長時間逃げ続けていたシャヴァネルがスプリントで応戦したが伸びず、ゴールラインでナイエンスが両手を突き上げた。
母国ベルギー最大のタイトルを手にしたナイエンス
「何年も何年も思い描き、夢見ていた瞬間がやってきた。この勝利のために、カウントできないほどの時間をトレーニングに費やしてきたんだ」。母国ベルギー最大のタイトルを手中に収めたナイエンスは興奮を抑えきれない表情で語る。
「カンチェラーラとシャヴァネルをゴールスプリントで破る自信はあった。全力で、信じられないほど追い込んでのスプリントだった」。
2002年のロンド・ファン・フラーンデレンU23レースで優勝し、2003年にクイックステップでプロデビューしたナイエンス。コフィディスとラボバンクを経て、今年からサクソバンク・サンガードで走る。
これまでオンループ・ヘットフォルクやクールネ〜ブリュッセル〜クールネなどのセミクラシックは制しているが、「モニュメント」クラスのクラシックレースでは初勝利。このロンドでは2度トップ10フィニッシュを果たしており、2008年大会では独走勝利を飾ったステイン・デヴォルデル(ベルギー)から15秒遅れの2位に入っている。
心機一転デンマークチームに移籍した今年は、レオパード・トレックに移籍したカンチェラーラらの穴を埋めるクラシックレーサーとしてエースに起用され、3月23日のドワーズ・ドア・フラーンデレンで劇的な逃げ切り勝利。このキャリア最大の勝利で、トップクラシックレーサーの仲間入りを果たした。サクソバンク・サンガードにとっては、チームを離脱したカンチェラーラを打ち破っての価値ある大会連覇だ。
敗れたカンチェラーラは前向きに結果を受け止める。「ミュールに差し掛かったとき『これは昨年のようには行かない』と感じた。でも何もせずに後退するわけにはいかない。有力選手ならばまだ何かできるはずだ。そう思って終盤に攻撃を仕掛け、表彰台を獲得した。3位という成績には満足すべき。ミラノ〜サンレモ2位、E3プライスで勝って、今回の3位。ポジティブな結果だ」。
「勝てる時もあれば負ける時もある。バイクレースはそんなものだ」。そう語るカンチェラーラは、連覇がかかった次週のパリ〜ルーベに照準を合わす。「北の地獄」でも優勝の最有力候補であることに変わりはない。
日本から唯一参戦した別府史之は、17分51秒遅れの最終集団でゴール。目標の逃げには乗ることができなかったが、日本人選手としてロンド初完走を果たした。
フミは自身のTwitterで「タフなレースだった。途中何度もトラブルに巻き込まれて諦めそうになったけど、ここで止めたら何か大切なモノを失う気がしてペダルを踏み続けた。結果は満足いくものではないけれど、雨も降らなかったし、沢山の観客に名前で応援もらえて幸せでした」とコメント。フミはパリ〜ルーベでも日本人初完走を目指す。
ロンド・ファン・フラーンデレン2011
1位 ニック・ナイエンス(ベルギー、サクソバンク・サンガード) 6h01'20"
2位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)
3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)
4位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ) +02"
5位 セバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク) +05"
6位 ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)
7位 ビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 スタフ・シェイリンクス(ベルギー、ベランダス・ヴィレムス)
9位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
10位 ジェレイント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
11位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)
12位 アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム) +09"
13位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ) +1'24"
14位 ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、HTC・ハイロード)
15位 ドミニク・ロラン(カナダ、FDJ)
16位 ダニーロ・ホンド(ドイツ、ランプレ・ISD)
17位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
18位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
19位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)
20位 マールテン・ワイナンツ(ベルギー、ラボバンク)
120位 別府史之(日本、レディオシャック) +17'51"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Makoto Ayano
関連ファイル
RVV_RESULT.pdf
(148.46 KB)
フォトギャラリー