2011年3月13日、パリ〜ニース(UCIワールドツアー)の最終第8ステージが雨の山岳コースで行なわれ、逃げグループの中から終盤の下りで飛び出したトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)が独走勝利。第4ステージに続くフランスチャンピオンの2勝目で大会は幕を閉じた。

逃げグループを形成するダビ・ロペスガルシア(スペイン、モビスター)やマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)逃げグループを形成するダビ・ロペスガルシア(スペイン、モビスター)やマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM) photo:A.S.O.パリ〜ニースの最終日は定番のニースステージ。距離は124kmと短いが、2級山岳シャトーヌフ峠、2級山岳カレゾン峠、1級山岳ラ・トゥルビー、1級山岳エズ峠が連続して登場。最後はハイスピードダウンヒルを経てニースにゴールする。

前日に引き続いてこの日も冷たい雨の中でのレース開催。総合32位に順位を下げていたユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)を始め、昨年このニースステージを制したアマエル・モワナール(フランス、BMCレーシングチーム)ら5名がスタートしなかった。

雨に濡れたスリッピーな下りを進む雨に濡れたスリッピーな下りを進む photo:A.S.O.スタート直後のアンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)のアタックは吸収され、3級山岳デュラヌ峠で山岳賞ジャージのレミ・ポリオル(フランス、FDJ)やヴォクレール、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)、リーナス・ゲルデマン(ドイツ、レオパード・トレック)を含む11名が先行する。

総合における危険な選手が入っていないとして、メイン集団はこの動きを見送る。するとレース中盤にはタイム差が3分まで拡大した。

チームメイトに守られて走るリーダージャージのトニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)チームメイトに守られて走るリーダージャージのトニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード) photo:A.S.O.HTC・ハイロードやレディオシャックがコントロールするメイン集団は徐々に人数を減らしたが、逃げを捕まえる意図は無く、タイム差の縮小は鈍い。

やがて2級山岳カレゾン峠で逃げグループからヴィノクロフやゲルデマンらが脱落し、総合ジャンプアップを目指す総合13位・2分50秒遅れのマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)が積極的に逃げを牽いて1級山岳ラ・トゥルビーをクリア。ゴールまで30kmを残したこの峠を、20名ほどに絞られたメイン集団は1分25秒遅れで通過した。

先頭で1級山岳エズ峠を駆け上がるトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)とディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・ISD)先頭で1級山岳エズ峠を駆け上がるトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)とディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・ISD) photo:A.S.O.そして迎えた1級山岳エズ峠。1分30秒のリードでこの最後の峠に差し掛かった先頭グループから、ヴォクレールとディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・ISD)の2人が抜け出す。この2人は後続を引き離したままニースへの下りに差し掛かった。

登りで積極的にペースを作ったのはウリッシ。しかし下りに入るとヴォクレールの先行が始まる。雨に濡れたテクニカルかつハイスピードなダウンヒルでヴォクレールは差を広げ、ウリッシを9秒引き離した状態でラスト5kmを通過。平坦区間でもヴォクレールはペースを落とさず、独走のままニースのゴールに飛び込んだ。

ニースに向かって下りを攻めるトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)ニースに向かって下りを攻めるトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) photo:A.S.O.「大成功のパリ〜ニースだ。」第4ステージに続く今大会2勝目を飾ったヴォクレールはレース後のインタビューで応える。「ステージ2勝は素晴らしい成績。近年パリ〜ニースではツキに見放されていたけど、今年は脚の調子が良かった。総合10位や総合11位という成績よりも、ステージ2勝のほうがずっと良い。」

ヴォクレールは昨年大会の最終ニースステージでも逃げに乗り、モワナールとの一騎打ちに敗れて2位に終わっている。「今日は作戦を立てて走っていたわけじゃない。展開に恵まれてチャンスが回ってきたんだ。最後の下りではリスクを負ったよ。昨年僅差で敗れたことを思い出し、独走でゴールすべきだと判断した。」その落ち着いた走りがステージ2勝目に繋がった。

ニースのゴールに独走で飛び込むトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)ニースのゴールに独走で飛び込むトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) photo:Cor Vosこの日、総合上位陣はサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)を除いて動きを見せず。サンチェスは得意の下りでリードを広げるため、最後のエズ峠でアタック。メイン集団を16秒引き離してゴールしたサンチェスは総合5位に順位を上げたが、トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)の総合リードを奪うには至らなかった。

第6ステージ・個人タイムトライアルで優勝し、最後までそのリードを守り抜いたマルティンが総合優勝。2009年から2年連続でロード世界選手権タイムトライアル銅メダルを獲得しているTTスペシャリストが、そのオールラウンドぶりを今一度見せつけた。

総合表彰台、2位アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)、優勝トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)、3位ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)総合表彰台、2位アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)、優勝トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)、3位ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Cor Vos「これはキャリア最大の成功だ。昨日から冷たい雨が降ったおかげで、下りは非常に危険だった。クラッシュせずに走り切ることができて良かったよ。強力なライバルたちがいたので、今日の勝利は最後まで分からなかった。」

昨年のエネコ・ツアー、今年のヴォルタ・アン・アルガルヴェに続く中級ステージレース制覇を達成したマルティン。いずれも個人TTでリードを広げての勝利だ。今シーズン、マルティンはツール・ド・フランスを最大の目標に据える。「とにかくファンタスティックなシーズンスタートであり、次のレースに向けて自信を得ることができたよ。ツールでいい走りを見せたい。そしてその準備は整った。」

この日は46名がリタイア。出場した176名の選手のうち、ニースに辿り着いたのは89名だった。

選手コメントはチーム公式サイトより。


パリ〜ニース2011第8ステージ結果
1位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)      3h15'58"
2位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・ISD)         +23"
3位 ジュリアン・エルファレス(フランス、コフィディス)      +1'06"
4位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
5位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、モビスター)
6位 マッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)  +1'08"
7位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)       +1'12"
8位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)        +1'22"
9位 サイモン・スピラック(スロベニア、ランプレ・ISD)
10位 トーマス・ヴァイクス(リトアニア、アスタナ)

個人総合成績
1位 トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)       34h03'37"
2位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)      +36"
3位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)        +41"
4位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)        +1'10"
5位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)       +1'13"
6位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、アージェードゥーゼル)  +1'24"
7位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)   +1'34"
8位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)   +1'36"
9位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)            +2'04"
10位 マキシム・モンフォール(ベルギー、レオパード・トレック)   +2'26"

ポイント賞
ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)

山岳賞
レミ・ポリオル(フランス、FDJ)

新人賞
レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)

チーム総合成績
レディオシャック

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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