2011/01/20(木) - 18:18
上り基調ゴールが設定されたツアー・ダウンアンダー第3ステージ。現U23世界チャンピオンのマイケル・マシューズ(オーストラリア、ラボバンク)が鮮烈なスプリントで優勝をもぎとった。スプリントに絡めず17位でゴールしたマキュアンに代わって、3位のマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)が総合首位に返り咲いている。
土曜日のウィランガステージに次いで難易度の高いコースとして注目を集めた第3ステージ。アデレードにほど近いアンレーからスターリングまでの129kmに大きな山岳は設定されていないが、終盤のスターリング周回コースにはアップダウンが詰め込まれている。
しかもゴール前8kmは概ね上り基調で、決してピュアスプリンター向きとは言えない。2009年にはアラン・デーヴィス(オーストラリア)がこの上りスプリントを制し、総合優勝に繋がる貴重なタイム差を獲得している。スターリングはダウンアンダーの名物で、この日のコースは昨年の第3ステージとほぼ同じレイアウトだ。
燦々と照りつける太陽の下、前日の第2ステージで落車したバーナード・サルツバーガー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)とクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)を除く131名がスタート。
2005年大会以来、6年ぶりにリーダージャージを着るロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)を先頭に走り出したメイン集団は、10kmに渡る長いニュートラルゾーンを走行。11時20分に正式スタートが切られると、ヨースト・ファンレイエン(オランダ、ヴァカンソレイユ)がファーストアタックを決めた。
アデレードの街を見下ろす丘の上に向かって伸びるハイウェイでアタック合戦が繰り広げられ、トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ)にルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)、ルイス・パサモンテス(スペイン、モビスター)、アレクサンダー・クチンスキー(ベラルーシ、カチューシャ)が追いついて先頭は4名に。アンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)の単独追走は届かず、4名の逃げが決まった。
3分のリードを稼ぎ出した逃げグループに対し、メイン集団を率いたのはマキュアン擁するレディオシャック。グレゴリー・ラスト(スイス)らが牽引を担ったが、積極的にタイム差を詰める勢いはなく、タイム差は48km地点で最大5分をマークした。
チームメイトのスプリント賞ジャージを守りたいダーブリッジが2つのスプリントポイントを狙ったが、いずれもクチンスキーが先頭通過。79km地点のKOM(山岳ポイント)はダーブリッジが穫っている。
3分後方では、山岳ポイント獲得を狙って集団から飛び出したティモシー・ロー(オーストラリア、BMCレーシングチーム)にマルティン・コーラー(スイス、BMCレーシングチーム)とアンヘル・マドラソルイス(スペイン、モビスター)が追いつき、3名で追走グループを形成。2日連続で攻撃に出たローがKOM5番手通過を果たした。
合計2周半するスターリングの周回コースに入ると、HTC・ハイロードがレディオシャックに加勢し、メイン集団のスピードを上げる。ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)も集団牽引に加わる。
ローら3名は先頭に追いつくことなく集団に引き戻され、先頭4名も最終周回に入ってすぐに吸収。ゴールまで20kmを残してレースはフリダシに戻ったが、集団後方ではカヴェンディッシュが脱落する。
アップダウンが続くテクニカルな周回で、ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)やウィリアム・クラーク(オーストラリア、レオパード・トレック)がアタックを仕掛けたが、決定的なリードは奪えない。
最終周回ではパンクが多発し、リーダージャージのマキュアンに続いて総合2位のゴスがパンク。ラスト12km地点でスペアバイクに乗り換えたゴスは、ベルンハルト・アイゼル(オーストリア)の力を借り、何とかゴールまで8kmを残して集団に戻った。
ゴールに至る上りではアタックが多発し、飛び出したリッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク)をベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック)がチェックに入る。先頭2人は5秒ほどのリードを得て、上りをハイスピードで駆け抜けた。
しかしポルトのチャレンジもラスト2kmで封じ込められる。積極的に集団をコントロールするスプリンターチームは現れず、混戦状態のまま集団はラスト1kmに突入した。
ラスト150mで真っ先にスプリントを開始したのは、新人賞ジャージを着るゴス。しかしそのすぐ後ろからラボバンクジャージが勢いよく加速していく。軽快なスプリントでゴスを引き離し、ラスト100mで先頭を奪ったマシューズ。アンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)が鋭い追い上げを見せたが、マシューズのリードは最後まで揺るがなかった。
再び有望な若手がステージ優勝を飾った。マシューズは前日のステージ優勝者である23歳ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)より更に若い20歳のスプリンターだ。昨年ツール・ド・ランカウイの第1ステージと第3ステージを制し、TOJ(ツアー・オブ・ジャパン)の堺の個人TTで優勝。そしてスプリンターながら富士山ステージで4位に入った選手だ。
昨年ロード世界選手権U23ロードレースで上りスプリントを制して優勝。今年からプロチームのラボバンクで走っている。
「シーズン最初のレース、しかもプロチームのメンバーとしての初レースでプロ初勝利。本当に素晴らしい。」喜びを包み隠さず、ウキウキ顔でマシューズはインタビューに応える。
「今大会最も難しいコースの一つであるこのステージで勝てたんだ。世界トップクラスのチームで走るのはプレッシャーを伴うけど、それが結果に繋がって嬉しい。今日はチームメイトたちのおかげで勝利したようなもの。トム(リーザー)やヨス(ファンエムデン)のおかげで好位置をキープして、ラスト1kmの時点でゴスの番手を取った。早めに仕掛けたゴスを抜くと、もう誰も視界に入って来なかった。最高のシーズンスタートだ。」
ボーナスタイム10秒を獲得したマシューズは総合4位に浮上している。
総合首位のマキュアンはスプリントに絡めずステージ17位。パンクで遅れながらもステージ3位に入ったゴスがボーナスタイムにより総合首位を奪い返した。
リーダージャージに袖を通したゴスは、表彰台で小さく安堵の表情を見せた。「今日は暑くてタフな一日だった。ラスト12kmでパンクしてバイクを交換。チームカーだけでなく救急車にも抜かされたんだ。でもベニー(アイゼル)に助けられて何とか集団に復帰。集団に復帰してすぐに上りが始まったので、休む暇がなかったよ。ヘイデン(ロールストン)が集団前方まで引き上げてくれたおかげでスプリントに絡めた。チームの強さを改めて感じたよ。日曜日までリーダージャージを守れるという自信を得た。」
まだまだ総合上位陣のタイム差は小さく、ボーナスタイムでリーダージャージが入れ替わる可能性は大きい。ツアー・ダウンアンダーは後半戦に突入する。
ツアー・ダウンアンダー2011第3ステージ
1位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、ラボバンク) 3h11'47"
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)
3位 マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)
4位 サイモン・ジェランス(オーストラリア、チームスカイ)
5位 ルーク・ロバーツ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
6位 フランシスコホセ・ベントソ(スペイン、モビスター)
7位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)
8位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、アスタナ)
9位 ビエル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル)
10位 シモーネ・ポンツィ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
個人総合成績
1位 マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード) 9h56'25"
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット) +02"
3位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック) +04"
4位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、ラボバンク)
5位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
6位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、アスタナ) +14"
7位 フランシスコホセ・ベントソ(スペイン、モビスター)
8位 マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ)
9位 アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)
10位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)
新人賞
マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)
スプリント賞
マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)
山岳賞
ルーク・ロバーツ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
敢闘賞
ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
土曜日のウィランガステージに次いで難易度の高いコースとして注目を集めた第3ステージ。アデレードにほど近いアンレーからスターリングまでの129kmに大きな山岳は設定されていないが、終盤のスターリング周回コースにはアップダウンが詰め込まれている。
しかもゴール前8kmは概ね上り基調で、決してピュアスプリンター向きとは言えない。2009年にはアラン・デーヴィス(オーストラリア)がこの上りスプリントを制し、総合優勝に繋がる貴重なタイム差を獲得している。スターリングはダウンアンダーの名物で、この日のコースは昨年の第3ステージとほぼ同じレイアウトだ。
燦々と照りつける太陽の下、前日の第2ステージで落車したバーナード・サルツバーガー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)とクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)を除く131名がスタート。
2005年大会以来、6年ぶりにリーダージャージを着るロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)を先頭に走り出したメイン集団は、10kmに渡る長いニュートラルゾーンを走行。11時20分に正式スタートが切られると、ヨースト・ファンレイエン(オランダ、ヴァカンソレイユ)がファーストアタックを決めた。
アデレードの街を見下ろす丘の上に向かって伸びるハイウェイでアタック合戦が繰り広げられ、トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ)にルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)、ルイス・パサモンテス(スペイン、モビスター)、アレクサンダー・クチンスキー(ベラルーシ、カチューシャ)が追いついて先頭は4名に。アンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)の単独追走は届かず、4名の逃げが決まった。
3分のリードを稼ぎ出した逃げグループに対し、メイン集団を率いたのはマキュアン擁するレディオシャック。グレゴリー・ラスト(スイス)らが牽引を担ったが、積極的にタイム差を詰める勢いはなく、タイム差は48km地点で最大5分をマークした。
チームメイトのスプリント賞ジャージを守りたいダーブリッジが2つのスプリントポイントを狙ったが、いずれもクチンスキーが先頭通過。79km地点のKOM(山岳ポイント)はダーブリッジが穫っている。
3分後方では、山岳ポイント獲得を狙って集団から飛び出したティモシー・ロー(オーストラリア、BMCレーシングチーム)にマルティン・コーラー(スイス、BMCレーシングチーム)とアンヘル・マドラソルイス(スペイン、モビスター)が追いつき、3名で追走グループを形成。2日連続で攻撃に出たローがKOM5番手通過を果たした。
合計2周半するスターリングの周回コースに入ると、HTC・ハイロードがレディオシャックに加勢し、メイン集団のスピードを上げる。ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)も集団牽引に加わる。
ローら3名は先頭に追いつくことなく集団に引き戻され、先頭4名も最終周回に入ってすぐに吸収。ゴールまで20kmを残してレースはフリダシに戻ったが、集団後方ではカヴェンディッシュが脱落する。
アップダウンが続くテクニカルな周回で、ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)やウィリアム・クラーク(オーストラリア、レオパード・トレック)がアタックを仕掛けたが、決定的なリードは奪えない。
最終周回ではパンクが多発し、リーダージャージのマキュアンに続いて総合2位のゴスがパンク。ラスト12km地点でスペアバイクに乗り換えたゴスは、ベルンハルト・アイゼル(オーストリア)の力を借り、何とかゴールまで8kmを残して集団に戻った。
ゴールに至る上りではアタックが多発し、飛び出したリッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク)をベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック)がチェックに入る。先頭2人は5秒ほどのリードを得て、上りをハイスピードで駆け抜けた。
しかしポルトのチャレンジもラスト2kmで封じ込められる。積極的に集団をコントロールするスプリンターチームは現れず、混戦状態のまま集団はラスト1kmに突入した。
ラスト150mで真っ先にスプリントを開始したのは、新人賞ジャージを着るゴス。しかしそのすぐ後ろからラボバンクジャージが勢いよく加速していく。軽快なスプリントでゴスを引き離し、ラスト100mで先頭を奪ったマシューズ。アンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)が鋭い追い上げを見せたが、マシューズのリードは最後まで揺るがなかった。
再び有望な若手がステージ優勝を飾った。マシューズは前日のステージ優勝者である23歳ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)より更に若い20歳のスプリンターだ。昨年ツール・ド・ランカウイの第1ステージと第3ステージを制し、TOJ(ツアー・オブ・ジャパン)の堺の個人TTで優勝。そしてスプリンターながら富士山ステージで4位に入った選手だ。
昨年ロード世界選手権U23ロードレースで上りスプリントを制して優勝。今年からプロチームのラボバンクで走っている。
「シーズン最初のレース、しかもプロチームのメンバーとしての初レースでプロ初勝利。本当に素晴らしい。」喜びを包み隠さず、ウキウキ顔でマシューズはインタビューに応える。
「今大会最も難しいコースの一つであるこのステージで勝てたんだ。世界トップクラスのチームで走るのはプレッシャーを伴うけど、それが結果に繋がって嬉しい。今日はチームメイトたちのおかげで勝利したようなもの。トム(リーザー)やヨス(ファンエムデン)のおかげで好位置をキープして、ラスト1kmの時点でゴスの番手を取った。早めに仕掛けたゴスを抜くと、もう誰も視界に入って来なかった。最高のシーズンスタートだ。」
ボーナスタイム10秒を獲得したマシューズは総合4位に浮上している。
総合首位のマキュアンはスプリントに絡めずステージ17位。パンクで遅れながらもステージ3位に入ったゴスがボーナスタイムにより総合首位を奪い返した。
リーダージャージに袖を通したゴスは、表彰台で小さく安堵の表情を見せた。「今日は暑くてタフな一日だった。ラスト12kmでパンクしてバイクを交換。チームカーだけでなく救急車にも抜かされたんだ。でもベニー(アイゼル)に助けられて何とか集団に復帰。集団に復帰してすぐに上りが始まったので、休む暇がなかったよ。ヘイデン(ロールストン)が集団前方まで引き上げてくれたおかげでスプリントに絡めた。チームの強さを改めて感じたよ。日曜日までリーダージャージを守れるという自信を得た。」
まだまだ総合上位陣のタイム差は小さく、ボーナスタイムでリーダージャージが入れ替わる可能性は大きい。ツアー・ダウンアンダーは後半戦に突入する。
ツアー・ダウンアンダー2011第3ステージ
1位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、ラボバンク) 3h11'47"
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)
3位 マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)
4位 サイモン・ジェランス(オーストラリア、チームスカイ)
5位 ルーク・ロバーツ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
6位 フランシスコホセ・ベントソ(スペイン、モビスター)
7位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)
8位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、アスタナ)
9位 ビエル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル)
10位 シモーネ・ポンツィ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
個人総合成績
1位 マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード) 9h56'25"
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット) +02"
3位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック) +04"
4位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、ラボバンク)
5位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
6位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、アスタナ) +14"
7位 フランシスコホセ・ベントソ(スペイン、モビスター)
8位 マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ)
9位 アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)
10位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)
新人賞
マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)
スプリント賞
マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)
山岳賞
ルーク・ロバーツ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
敢闘賞
ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
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