2011/01/19(水) - 00:00
「今日のゴールはちょっと登りだけど、全然問題ないと思う。それより風が心配かな。正直言ってコンディションは最高」。第1ステージの日の朝、ヒルトンホテル1階のロビー。ラヴァッツァのカプチーノをすすりながら、ゴスは目尻にしわを寄せてはにかんだ。で、そのゴスが勝った。クリテリウムを合わせると2連勝だ。
オーストラリア大陸の南に浮かぶ島、タスマニア島。その北部に位置する人口10万人の中規模都市ロンセストンは、驚くほど有能なサイクリストたちを輩出している。ここ数年特に。
昨年ジロ・デ・イタリアでマリアローザを着たリッチー・ポルト、ツアー・オブ・ジャパンで活躍したサルツバーガー兄弟、そして今大会最も注目を集めるスプリンターになりつつあるマシュー・ゴス。みんな小さなロンセストンの街を飛び出して、ヨーロッパに移り住んでいる。本土の大都市に匹敵する勢力だと言える。
「どうしてロンセストンから選手がいっぱい出てくると思う?」昨年のジロ期間中にゴスに聞いたことがある。「さあ分からない。別に同じクラブチームで走っていたわけじゃないし、みんな生い立ちが違う」意外にもそんな返事が戻って来た。
このダウンアンダーでポルトに同じ質問をぶつけてみた。「なぜだろう。理由は分からないな。逆にホバート(タスマニア第一の都市)からはあまり選手が出ていない。リクイガスのキャメロン・ウルフぐらいだ」本人たちも不思議がっている。
ゴスに派手さはない。坊主頭が似合う好青年と言った印象で、話題を振りまくマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)とは正反対だ。
昨年のツアー・ダウンアンダーで、ゴスはアンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)の発射台として活躍。何度もグライペルの後ろで片手を挙げていた。そのゴスが、かつてのボスであるグライペルを寄せ付けない強さを見せている。
実際に見ていないのであくまでも又聞きだが、ゴスは1月上旬に行なわれたオーストラリア選手権でも強さを誇っていたらしい。ツール・ド・フランスの頂上ゴールでステージ優勝したこともあるサイモン・ジェランス(オーストラリア、チームスカイ)の登りアタックにも小気味よく反応し、メイン集団のスプリントを制している。
今シーズン4勝目(UCIレース1勝目)を飾ったゴスは、日を追う毎に貫禄が増している気がする。報道陣に囲まれてのインタビューでも物怖じしていない。勝利がゴスを成長させ、成長したゴスが勝利する。良い流れに乗っている。このままゴスが連続でステージ優勝し、そのまま総合優勝するのではないかとひそかに期待している。
オージースプリンターとしてはロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)も元気だ。38歳という年齢を感じさせない走りで、クリテリウムに続いてこの日も3位に入った。
「一旦ポジションを失ってしまったが、ロビー・ハンターの素晴らしい走りのおかげで一気に集団先頭までジャンプアップした。おそらく50人をごぼう抜きにしたと思う。グライペルの付き位置を確保出来たのは彼のおかげだ。でもポジションの挽回にエネルギーを使ったので、スプリントでは本来の力を発揮出来なかった」
ペガサスプロジェクトの行き詰まりに伴ってレディオシャックに滑り込んだ2人のロビーがチームを牽引。このツアー・ダウンアンダーでステージ通算12勝を飾っている名物男は完全に戦闘モードに入っている。チームスカイが思うような走りを見せていない今、HTC・ハイロードとオメガファーマ・ロットの間に割って入るのはレディオシャックかも知れない。
明日は今大会最長のステージ、と言ってもグランツールでは最短クラスの146km。スタート地点のテーレム・ベンドはアデレードから100km離れていて、ゴール後も100kmの移動が待っている。でも選手たちはずっとアデレードのヒルトンホテルに連泊なので移動距離を気にしていない。「確かに移動距離は長いけど、毎日宿泊先が変わる他のステージレースよりは全然楽。それにこの天候だから何も文句は言えない」こっそりスプリントに絡んで7位に入ったアレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)はニコニコ顔で語ってくれた。
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
オーストラリア大陸の南に浮かぶ島、タスマニア島。その北部に位置する人口10万人の中規模都市ロンセストンは、驚くほど有能なサイクリストたちを輩出している。ここ数年特に。
昨年ジロ・デ・イタリアでマリアローザを着たリッチー・ポルト、ツアー・オブ・ジャパンで活躍したサルツバーガー兄弟、そして今大会最も注目を集めるスプリンターになりつつあるマシュー・ゴス。みんな小さなロンセストンの街を飛び出して、ヨーロッパに移り住んでいる。本土の大都市に匹敵する勢力だと言える。
「どうしてロンセストンから選手がいっぱい出てくると思う?」昨年のジロ期間中にゴスに聞いたことがある。「さあ分からない。別に同じクラブチームで走っていたわけじゃないし、みんな生い立ちが違う」意外にもそんな返事が戻って来た。
このダウンアンダーでポルトに同じ質問をぶつけてみた。「なぜだろう。理由は分からないな。逆にホバート(タスマニア第一の都市)からはあまり選手が出ていない。リクイガスのキャメロン・ウルフぐらいだ」本人たちも不思議がっている。
ゴスに派手さはない。坊主頭が似合う好青年と言った印象で、話題を振りまくマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)とは正反対だ。
昨年のツアー・ダウンアンダーで、ゴスはアンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)の発射台として活躍。何度もグライペルの後ろで片手を挙げていた。そのゴスが、かつてのボスであるグライペルを寄せ付けない強さを見せている。
実際に見ていないのであくまでも又聞きだが、ゴスは1月上旬に行なわれたオーストラリア選手権でも強さを誇っていたらしい。ツール・ド・フランスの頂上ゴールでステージ優勝したこともあるサイモン・ジェランス(オーストラリア、チームスカイ)の登りアタックにも小気味よく反応し、メイン集団のスプリントを制している。
今シーズン4勝目(UCIレース1勝目)を飾ったゴスは、日を追う毎に貫禄が増している気がする。報道陣に囲まれてのインタビューでも物怖じしていない。勝利がゴスを成長させ、成長したゴスが勝利する。良い流れに乗っている。このままゴスが連続でステージ優勝し、そのまま総合優勝するのではないかとひそかに期待している。
オージースプリンターとしてはロビー・マキュアン(オーストラリア、レディオシャック)も元気だ。38歳という年齢を感じさせない走りで、クリテリウムに続いてこの日も3位に入った。
「一旦ポジションを失ってしまったが、ロビー・ハンターの素晴らしい走りのおかげで一気に集団先頭までジャンプアップした。おそらく50人をごぼう抜きにしたと思う。グライペルの付き位置を確保出来たのは彼のおかげだ。でもポジションの挽回にエネルギーを使ったので、スプリントでは本来の力を発揮出来なかった」
ペガサスプロジェクトの行き詰まりに伴ってレディオシャックに滑り込んだ2人のロビーがチームを牽引。このツアー・ダウンアンダーでステージ通算12勝を飾っている名物男は完全に戦闘モードに入っている。チームスカイが思うような走りを見せていない今、HTC・ハイロードとオメガファーマ・ロットの間に割って入るのはレディオシャックかも知れない。
明日は今大会最長のステージ、と言ってもグランツールでは最短クラスの146km。スタート地点のテーレム・ベンドはアデレードから100km離れていて、ゴール後も100kmの移動が待っている。でも選手たちはずっとアデレードのヒルトンホテルに連泊なので移動距離を気にしていない。「確かに移動距離は長いけど、毎日宿泊先が変わる他のステージレースよりは全然楽。それにこの天候だから何も文句は言えない」こっそりスプリントに絡んで7位に入ったアレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)はニコニコ顔で語ってくれた。
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
Amazon.co.jp