2009/04/18(土) - 07:10
春のクラシックシーズンもいよいよ後半戦に突入。「アルデンヌ・クラシック」3連戦の幕開けを告げる第44回アムステル・ゴールドレースがオランダ南部で行なわれる。合計31カ所の急坂が登場する起伏に富んだコースは、名物カウベルグでクライマックスを迎える。今年は新城幸也(Bboxブイグテレコム)の出場も決まった。
絶え間ない31の急坂は名物カウベルグに終着
標高が低く、真っ平らなイメージが強いオランダ。その国土の大半は標高0メートル、もしくはそれ以下だ。国名Nederland(英語でNetherlands)が「低地の国」を意味するほど、国土の大部分は起伏に乏しい。
しかしそんなオランダ最大のロードレースであるアムステル・ゴールドレースは、上りが鍵を握る起伏の厳しいアップダウンコース。レースの舞台となるのは、ベルギーとドイツに隣接したオランダ南部のリンブルグ州だ。
今年で開催44回目と、クラシックレースの中では若手の部類に入る。その名の通りオランダ有数のビール会社「アムステル」がレーススポンサーであり、ロードレース強豪国オランダのファンたちはビールを片手に沿道で盛り上がる。
コースは今年もマーストリヒトを起点として、丘陵地帯に張り巡らされた大中小の周回コースを3周。全長258.6kmの間に登場する坂の難易度は、ロンド・ファン・フラーンデレンには届かないが、その数がハンパじゃない。絶え間なく登場する合計31の短い上りが、選手たちの体力を奪っていく。
特に終盤の小周回に登場するヴォルフスベルグ、クルイスベルグ、アイゼルボスウェグ、ケウテンベルグはいずれも急勾配で、上りでの繰り返されるアタックとカウンターアタックが集団の人数を減らしていくだろう。
そして最後は名物のカウベルグ。この上りは大中小の周回コースの起点に設定されているため、選手たちはここを計3回通過することになる。上りの長さは1450mで勾配は12%。この上りで激しいスプリント勝負が繰り広げられるのが通例で、例年沿道にはみっちり観客が詰めかける。
加えてコースは全体的に道幅が狭く、「1000のカーブ」と呼ばれるほどコーナーが連続。アップダウンとワインディングの繰り返しは「ジェットコースター」のよう。これらの試練を“フレッシュな状態”で乗り越え、最後のカウベルグに全力をぶつけることが出来るかが勝負の分かれ道。一瞬の判断ミスが敗戦に繋がることもあり、アタックチャンスを感じ取る優れた嗅覚も問われる。
上りで攻撃を仕掛ける軽量級アタッカーたち
急坂での爆発力が問われるレースにおいて、毎年活躍するのがグランツールで総合上位を狙えるようなオールラウンダーたち。中でも上りのスプリント力を得意とする選手の活躍が目立つ。
昨年は連続するアップダウンで集団が9名に絞られ、カウベルグでの上りスプリント勝負を制したダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)が優勝。かつてジロ・デ・イタリアを制したクネゴは、起伏のあるワンディレースで安定した成績を残すワンディレーサーとして開花。今年もアルデンヌ・クラシックとジロ総合成績を目標に掲げている。
ルクセンブルクチャンピオンジャージを着て2006年大会を制したフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)は、昨年クネゴにスプリントで破れて2位。今年は再びその3色ジャージを着て出場する。今年も弟アンディ・シュレク(ルクセンブルク)や、2007年ロード世界選手権2位アレクサンドル・コロブネフ(ロシア)のサポートを受ける。
クネゴと同じく上りスプリントが得意なアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)は、脚質的に得意なコースレイアウトだと思われるがまだ優勝経験無し。昨年3位で初めて表彰台に上った。
CONI(イタリア五輪委員会)が2年間の出場停止を求めるなど、逆風の中にあるバルベルデ。連覇を狙うリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに向けて、ここで波に乗れるか。直前のクラシカ・プリマベラで優勝しており、好調なのは明らかだ。今年も心強い相棒ホアキン・ロドリゲス(スペイン)を引き連れて出場する。
2004年にアルデンヌ・クラシック3連戦全制覇の偉業を成し遂げたダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)は、37歳になった今も輝きを失っていない。ティレーノ〜アドリアティコ総合優勝のミケーレ・スカルポーニ(イタリア)が古豪レベッリンを支える。
その一方で、2005年覇者のダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)は、所属チームが招待されずに欠場。ディルーカはフレーシュ・ワロンヌとリエージュ出場も逃し、代わりにジロ・デル・トレンティーノで調整を続ける予定。イタリア勢としては若手ヴィンチェンツォ・ニーバリ(リクイガス)にも注目だ。
昨年フレーシュ・ワロンヌを制したキム・キルシェン(ルクセンブルク、チームコロンビア)は、カリフォルニア第4ステージで落車し、鎖骨と肋骨を骨折。何とかアルデンヌまでに復帰したが、シュヘルデプライスはリタイア。まだ本調子ではなく、マイケル・ロジャース(オーストラリア)にエースの座を託す可能性は高い。
地元オランダ期待のクライマー、ロバート・ヘーシンク(ラボバンク)は昨年フレーシュ・ワロンヌで4位。スプリント力で劣るため、上りでアタックを成功させて有利な展開に持ち込みたい。上りをこなせるスプリンターのオスカル・フレイレ(スペイン)が先頭集団に残った場合、もちろんフレイレで勝利を狙う。
今年サイレンス・ロットに合流したトーマス・デッケル(オランダ)とフィリップ・ジルベール(ベルギー)の2人は、波に乗れないチームに勢いをもたらせるか。昨年大会のレース終盤にアタックを繰り返したセルゲイ・イワノフ(ロシア)とクリスティアン・ファンバーガー(オーストリア)のカチューシャコンビも注目だ。
北京五輪ロード金メダリストのサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)や、ここまでのクラシックレースでアシストに専念したシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)も上位に絡んでくるだろう。その一方でシーズン序盤から大活躍し、ワールドランキング首位のハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)は、シーズン後半に向けて束の間の休息をとるため欠場する。
そして今年は新城幸也(Bboxブイグテレコム)の出場が決まった。新城はグランプリ・ド・ドゥナンでスプリントに加わって10位に入るなど好調。初出場のアムステル・ゴールドレースは「最初で最後の気持ちで頑張る」と意気込んでいる。
絶え間ない31の急坂は名物カウベルグに終着
標高が低く、真っ平らなイメージが強いオランダ。その国土の大半は標高0メートル、もしくはそれ以下だ。国名Nederland(英語でNetherlands)が「低地の国」を意味するほど、国土の大部分は起伏に乏しい。
しかしそんなオランダ最大のロードレースであるアムステル・ゴールドレースは、上りが鍵を握る起伏の厳しいアップダウンコース。レースの舞台となるのは、ベルギーとドイツに隣接したオランダ南部のリンブルグ州だ。
今年で開催44回目と、クラシックレースの中では若手の部類に入る。その名の通りオランダ有数のビール会社「アムステル」がレーススポンサーであり、ロードレース強豪国オランダのファンたちはビールを片手に沿道で盛り上がる。
コースは今年もマーストリヒトを起点として、丘陵地帯に張り巡らされた大中小の周回コースを3周。全長258.6kmの間に登場する坂の難易度は、ロンド・ファン・フラーンデレンには届かないが、その数がハンパじゃない。絶え間なく登場する合計31の短い上りが、選手たちの体力を奪っていく。
特に終盤の小周回に登場するヴォルフスベルグ、クルイスベルグ、アイゼルボスウェグ、ケウテンベルグはいずれも急勾配で、上りでの繰り返されるアタックとカウンターアタックが集団の人数を減らしていくだろう。
そして最後は名物のカウベルグ。この上りは大中小の周回コースの起点に設定されているため、選手たちはここを計3回通過することになる。上りの長さは1450mで勾配は12%。この上りで激しいスプリント勝負が繰り広げられるのが通例で、例年沿道にはみっちり観客が詰めかける。
加えてコースは全体的に道幅が狭く、「1000のカーブ」と呼ばれるほどコーナーが連続。アップダウンとワインディングの繰り返しは「ジェットコースター」のよう。これらの試練を“フレッシュな状態”で乗り越え、最後のカウベルグに全力をぶつけることが出来るかが勝負の分かれ道。一瞬の判断ミスが敗戦に繋がることもあり、アタックチャンスを感じ取る優れた嗅覚も問われる。
上りで攻撃を仕掛ける軽量級アタッカーたち
急坂での爆発力が問われるレースにおいて、毎年活躍するのがグランツールで総合上位を狙えるようなオールラウンダーたち。中でも上りのスプリント力を得意とする選手の活躍が目立つ。
昨年は連続するアップダウンで集団が9名に絞られ、カウベルグでの上りスプリント勝負を制したダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)が優勝。かつてジロ・デ・イタリアを制したクネゴは、起伏のあるワンディレースで安定した成績を残すワンディレーサーとして開花。今年もアルデンヌ・クラシックとジロ総合成績を目標に掲げている。
ルクセンブルクチャンピオンジャージを着て2006年大会を制したフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)は、昨年クネゴにスプリントで破れて2位。今年は再びその3色ジャージを着て出場する。今年も弟アンディ・シュレク(ルクセンブルク)や、2007年ロード世界選手権2位アレクサンドル・コロブネフ(ロシア)のサポートを受ける。
クネゴと同じく上りスプリントが得意なアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)は、脚質的に得意なコースレイアウトだと思われるがまだ優勝経験無し。昨年3位で初めて表彰台に上った。
CONI(イタリア五輪委員会)が2年間の出場停止を求めるなど、逆風の中にあるバルベルデ。連覇を狙うリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに向けて、ここで波に乗れるか。直前のクラシカ・プリマベラで優勝しており、好調なのは明らかだ。今年も心強い相棒ホアキン・ロドリゲス(スペイン)を引き連れて出場する。
2004年にアルデンヌ・クラシック3連戦全制覇の偉業を成し遂げたダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)は、37歳になった今も輝きを失っていない。ティレーノ〜アドリアティコ総合優勝のミケーレ・スカルポーニ(イタリア)が古豪レベッリンを支える。
その一方で、2005年覇者のダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)は、所属チームが招待されずに欠場。ディルーカはフレーシュ・ワロンヌとリエージュ出場も逃し、代わりにジロ・デル・トレンティーノで調整を続ける予定。イタリア勢としては若手ヴィンチェンツォ・ニーバリ(リクイガス)にも注目だ。
昨年フレーシュ・ワロンヌを制したキム・キルシェン(ルクセンブルク、チームコロンビア)は、カリフォルニア第4ステージで落車し、鎖骨と肋骨を骨折。何とかアルデンヌまでに復帰したが、シュヘルデプライスはリタイア。まだ本調子ではなく、マイケル・ロジャース(オーストラリア)にエースの座を託す可能性は高い。
地元オランダ期待のクライマー、ロバート・ヘーシンク(ラボバンク)は昨年フレーシュ・ワロンヌで4位。スプリント力で劣るため、上りでアタックを成功させて有利な展開に持ち込みたい。上りをこなせるスプリンターのオスカル・フレイレ(スペイン)が先頭集団に残った場合、もちろんフレイレで勝利を狙う。
今年サイレンス・ロットに合流したトーマス・デッケル(オランダ)とフィリップ・ジルベール(ベルギー)の2人は、波に乗れないチームに勢いをもたらせるか。昨年大会のレース終盤にアタックを繰り返したセルゲイ・イワノフ(ロシア)とクリスティアン・ファンバーガー(オーストリア)のカチューシャコンビも注目だ。
北京五輪ロード金メダリストのサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)や、ここまでのクラシックレースでアシストに専念したシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)も上位に絡んでくるだろう。その一方でシーズン序盤から大活躍し、ワールドランキング首位のハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)は、シーズン後半に向けて束の間の休息をとるため欠場する。
そして今年は新城幸也(Bboxブイグテレコム)の出場が決まった。新城はグランプリ・ド・ドゥナンでスプリントに加わって10位に入るなど好調。初出場のアムステル・ゴールドレースは「最初で最後の気持ちで頑張る」と意気込んでいる。