2011/01/16(日) - 01:49
全日本チャンピオン・辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)を中心とする日本人選手たちはベルギーの西、フランス国境近くの街ズウェベヘムで共同生活をしながら、レースを転戦している。彼らの遠征環境と生活の様子を紹介しよう。
地元のメルセデス・ベンツ社がレース移動用のクルマを借してくれた (c)Sonoko.Tanaka
今年の遠征メンバーは全日本チャンピオン辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)、同じく女子チャンピオン豊岡英子(パナソニックレディース)、全日本2位の竹之内悠(CT TOMACC)、4位の小坂光(宇都宮ブリッツェン)の4名。
彼らにとってベルギーを拠点としてレース活動をするのは、昨シーズンが初めての試みだった。欧州遠征の経験が豊富な辻浦にとっても、ベルギーでの生活は初めてだったし、ほかの日本人選手や日本人メカニックとともに遠征するのは初めてのこと。たくさんの不安や、ときにはトラブルもあったが、無事にシーズンを終えることができた。
日本人選手が滞在するズウェベヘムの中心部 (c)Sonoko.Tanaka
オーテヘムのコース横に集まった観客たち (c)Sonoko.Tanaka
昨シーズンの世界選手権後、辻浦は「結果以上に多くの人とのつながりを築けたことが、今シーズンの大きな収穫だった。お世話になったたくさんの恩は、来年、再来年と結果で返していきたい」と話している。
そんな日本人選手を精力的にサポートしてくれているのが、ベルギー人のデビッドとランジット、2人の現地スタッフとそのファミリーだ。デビッドはベルギー在住の橋川健氏(ダンジェロアンティヌッチィ・株式会社NIPPO/チームユーラシア・フォンドリエスト監督)の古くからの友人であり、橋川氏からの紹介で辻浦たちと知り合った。
チーム監督の資格をもつデビッドはいつでも選手思いだ (c)Sonoko.Tanaka
レース後地元のファンと話す辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) (c)Sonoko.Tanaka
バイクの洗浄をする現地スタッフのランジット (c)Sonoko.Tanakaシクロクロスはスタッフがいないと成り立たない競技。2シーズン目にして選手とスタッフの絆はより深まっている。外国人である日本人選手にとって、レース中のサポートだけでなく、クルマやテントなどの物品を用意してくれ、住む家や洗濯など遠征生活全般においてサポートしてくれる彼らの存在はどれだけ大きいことか。
選手は親身になってサポートしてくれるスタッフにとても感謝しているし、スタッフも遠い日本からやってきて、本場のシクロクロスで懸命に戦う選手たちを快く応援してくれている。スタッフは家族がいるにも関わらず、毎週末だけでなく年末年始のホリデイをすべてシクロクロスのレースにあててくれたというエピソードが、両者のいい関係を物語っているように感じる。
日本人選手応援パーティに地元の人が120人も集まった!
今シーズン、選手たちを驚かせたのが、デビッドとランジットが昨年秋頃から企画してくれていた日本人選手応援パーティだ。学校のホールを貸し切って、地元の人を大勢呼んで選手との交流を図るというもの。またそこで集まった収益を活動資金にしてくれるというのだ。
街のスポーツバーに貼られた日本人選手応援パーティのポスター (c)Sonoko.Tanaka
パーティの準備でポストカードにサインする辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) (c)Sonoko.Tanaka
地元のカフェやレストランがボランティアで協力してくれ、会場に次々と料理や飲み物が運び込まれる。立派なDJテーブルやライティングセットも組まれた。
選手たちは「本当に人が来てくれるのかな?」と不安だったが、当初は80人くらい来ると言われていたが、日を追うごとにその数はどんどんと大きくなり、最終的に集まってくれた人は120人にも上った。
ベルギー人の情の深さに感激する反面、「走りで恩を返したい!」 そう強く感じた夜だった。
パーティで日本人選手の話を熱心に聞く参加者たち (c)Sonoko.Tanaka
パーティで日本人選手の話を熱心に聞く参加者たち (c)Sonoko.Tanaka
地元の人達の厚意に応えたい。そう強く感じた選手たち。そして、その絶好の機会はパーティの3日後に訪れる。滞在先のズウェベヘムからわずか6kmという隣町オーテヘムで開催されるシクロクロスレースだ。お世話になっている地元の人が大勢観戦にやってくる。
オーテヘムはUCIレースではないものの、毎年決まってベルギー選手権の翌日に開催されるため、その年のチャンピオンが新しいジャージをお披露目を兼ねて参戦するベルギーの定番レース。したがって、ナショナルレースとは思えないほど豪華なメンバーが揃う。
チャンピオンジャージを初披露したニールス・アルベール(ベルギー、BKCP) (c)Sonoko.Tanaka
オーテヘムのスタート風景 (c)Sonoko.Tanaka
今年のベルギーチャンピオン、ニールス・アルベール(BKCP)を一目見ようと大勢の観客たちが集まっていた。シクロクロス人気の高まりなのか、昨年に比べ来場者は2,000人も増したという。
日本人選手のエントリーは辻浦、竹之内、小坂の3名。レース前、アップをする表情から緊張が伝わってきた。
オーテヘムで優勝したケビン・パウエルズ(ベルギー、テレネット・フィデア) (c)Sonoko.Tanaka
17位でフィニッシュした辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) (c)Sonoko.Tanaka
結果、優勝はケビン・パウエルズ(ベルギー、テレネット・フィデア)。日本勢の辻浦は中盤まで第2パックで走り17位(+6:21)、竹之内が23位(+8:45)、小坂が29位(マイナス1ラップ)でフィニッシュした。レベルの高いレースで、まずますの結果を残すことができた。
選手たちのマッサージをしてくれるのはプロのマッサーであるディタ (c)Sonoko.Tanaka辻浦はレースをこう振り返る。
「今回はUCIレースではないけど、滞在先の街からたくさんの人が来てくれているので、いつもどおりUCIレース同等のモチベーションで挑みました。昨年と比べるとトップ選手のレベルが高いなか、昨年同等の結果を残せたことはよかったです。今までよりも中盤で追い込めるようになってきている。前半?中盤にかけてもう1つ前のパックで走ることや、終盤がまだ弱いのでそれらを世界戦に向けた課題としたいと思います。
今回は日本チームの周りには、テープを貼らないといけないほど、大勢の人がきてくれました。去年きてくれた人がまた写真を撮ろうと言ってくれたり、用意したポストカードが一気になくなったり。レース中に自分の名前を呼んで応援してくれる人もたくさんいました。昨年以上に自分たちに興味をもってくれていると感じています。
シクロクロスは一人ではできない。今季は選手やスタッフが自分の役割以上の仕事をしてくれているのでサポート体制はとてもいい。昨年は手探りだった部分も多いけど、今年は選手もスタッフもそれぞれお互いのことをよく知っている。みんなが理解できていることでうまく回っているんです。地元の人やスタッフからの期待をいいプレッシャーに替えて、いい方向に持っていきたいと思います」
日本人選手の次戦は1月23日のワールドカップ・ホーガハイデ大会、世界選手権の前哨戦だ。日本ナショナルチームと欧州遠征組が合流し、辻浦圭一、竹之内悠、丸山厚(MASSA-FOCUS-OUTDOOR PRODUCTS)、豊岡英子、ジュニアの沢田時(ENDLESS/Pro Ride)の5名が出場予定になっている。
photo&text : Sonoko.Tanaka
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今年の遠征メンバーは全日本チャンピオン辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)、同じく女子チャンピオン豊岡英子(パナソニックレディース)、全日本2位の竹之内悠(CT TOMACC)、4位の小坂光(宇都宮ブリッツェン)の4名。
彼らにとってベルギーを拠点としてレース活動をするのは、昨シーズンが初めての試みだった。欧州遠征の経験が豊富な辻浦にとっても、ベルギーでの生活は初めてだったし、ほかの日本人選手や日本人メカニックとともに遠征するのは初めてのこと。たくさんの不安や、ときにはトラブルもあったが、無事にシーズンを終えることができた。
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昨シーズンの世界選手権後、辻浦は「結果以上に多くの人とのつながりを築けたことが、今シーズンの大きな収穫だった。お世話になったたくさんの恩は、来年、再来年と結果で返していきたい」と話している。
そんな日本人選手を精力的にサポートしてくれているのが、ベルギー人のデビッドとランジット、2人の現地スタッフとそのファミリーだ。デビッドはベルギー在住の橋川健氏(ダンジェロアンティヌッチィ・株式会社NIPPO/チームユーラシア・フォンドリエスト監督)の古くからの友人であり、橋川氏からの紹介で辻浦たちと知り合った。
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選手は親身になってサポートしてくれるスタッフにとても感謝しているし、スタッフも遠い日本からやってきて、本場のシクロクロスで懸命に戦う選手たちを快く応援してくれている。スタッフは家族がいるにも関わらず、毎週末だけでなく年末年始のホリデイをすべてシクロクロスのレースにあててくれたというエピソードが、両者のいい関係を物語っているように感じる。
日本人選手応援パーティに地元の人が120人も集まった!
今シーズン、選手たちを驚かせたのが、デビッドとランジットが昨年秋頃から企画してくれていた日本人選手応援パーティだ。学校のホールを貸し切って、地元の人を大勢呼んで選手との交流を図るというもの。またそこで集まった収益を活動資金にしてくれるというのだ。
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選手たちは「本当に人が来てくれるのかな?」と不安だったが、当初は80人くらい来ると言われていたが、日を追うごとにその数はどんどんと大きくなり、最終的に集まってくれた人は120人にも上った。
ベルギー人の情の深さに感激する反面、「走りで恩を返したい!」 そう強く感じた夜だった。
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結果、優勝はケビン・パウエルズ(ベルギー、テレネット・フィデア)。日本勢の辻浦は中盤まで第2パックで走り17位(+6:21)、竹之内が23位(+8:45)、小坂が29位(マイナス1ラップ)でフィニッシュした。レベルの高いレースで、まずますの結果を残すことができた。
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今回は日本チームの周りには、テープを貼らないといけないほど、大勢の人がきてくれました。去年きてくれた人がまた写真を撮ろうと言ってくれたり、用意したポストカードが一気になくなったり。レース中に自分の名前を呼んで応援してくれる人もたくさんいました。昨年以上に自分たちに興味をもってくれていると感じています。
シクロクロスは一人ではできない。今季は選手やスタッフが自分の役割以上の仕事をしてくれているのでサポート体制はとてもいい。昨年は手探りだった部分も多いけど、今年は選手もスタッフもそれぞれお互いのことをよく知っている。みんなが理解できていることでうまく回っているんです。地元の人やスタッフからの期待をいいプレッシャーに替えて、いい方向に持っていきたいと思います」
日本人選手の次戦は1月23日のワールドカップ・ホーガハイデ大会、世界選手権の前哨戦だ。日本ナショナルチームと欧州遠征組が合流し、辻浦圭一、竹之内悠、丸山厚(MASSA-FOCUS-OUTDOOR PRODUCTS)、豊岡英子、ジュニアの沢田時(ENDLESS/Pro Ride)の5名が出場予定になっている。
photo&text : Sonoko.Tanaka
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