2011/01/17(月) - 10:11
60年以上の歴史を持つフランスの総合自転車メーカー「ラピエール」。ラピエールは常に先進的なバイクを作りだして欧州のスポーツバイクシーンに名を刻んできた。またその四つ葉のクローバーを模したロゴでお馴染みのUCIプロチーム「フランセーズデジュー」に永らくバイク供給していることでも有名だ。
ツール・ド・フランスはもちろん、世界トップレベルのレースで鍛えあげられてきたバックグラウンドがラピエールにはある。
ラピエール センシウム300CP (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
今回のテストバイクはその老舗ブランドの「センシウム300CP」だ。センシウムはフラグシップの「ゼリウス」に次ぐセカンドグレードのモデルになる。またレーシングモデルである「ゼリウス」に対して、「センシウムは快適性を重視したロングライドモデルとなっている。
ハッキリとした色使いでモダンなグラフィックはいかにも現代バイクといった様相だ
しなやかにカーブを描くダウンチューブの裏側は偏平になっている
そしてセンシウムの前モデルがそのコンセプト通りロングディスタンスを得意とし、かつ高性能であったため好評だったにもかかわらず、2011モデルはフルモデルチェンジされた。レースを舞台としたフィールドテストやブラインドテストなど経て刷新された結果、この2011モデルは前モデルに対して快適性に磨きがかかっただけではなく、高い運動性能を獲得したことが“売り”となっている。
レーシングモデルの「ゼリウス」と同じテーパーヘッドチューブを採用している
フロントフォークのステアリングコラムはアルミ製へと変更されている
ブレーキアーチの直上部に新採用された“C+”エラストメリックコネクタが巻き付けられている
大きく目立った改良点はシートステーだ。ステー形状そのものも変更されているが、それ以上に「“C+”エラストメリックコネクタ」と呼ばれるシートステー上部に取り付けられた樹脂製のユニットが一際目立つ。これはカーボンのシートステーに巻き付ける構造になっている振動吸収ユニットだ。これにより運動性を損なうことなく振動吸収性の向上を果たしている。
トップチューブのケーブル内蔵処理に注目。トップチューブの湾曲度も独特だ
快適性を考えた412mmのロングチェーンステーはこのバイクの特徴のひとつだ
この“C+”エラストメリックコネクタのほかには、特徴的なラウンドチューブ、412mmの長いチェーンステーなどにより振動吸収性を確保しながら、入力された力の高効率伝達を可能にしている。また「ゼリウス」と同じテーパーヘッドチューブを採用するなど、走破性能も高められ、コンフォートでありながら高い走行性能を獲得したバイクへと昇華している。
特徴的な形状を見せるシートステー
トップ&ヘッドチューブに内蔵されたケーブルはBB裏できれいにまとめられる
「“C+”エラストメリックコネクタ」以外にシートステー自体も前作から形状を変えている
その証拠として実際に荒れた石畳が長く続く過酷な“北の地獄”と称されるクラシックレース「パリ〜ルーベ」2010年大会に、フランセーズデジューの選手がこの新しいセンシウムのプロトタイプを使用している。
前モデルも好評だっただけにこの新モデルへの興味は尽きない。さっそくインプレッションに入ろう。
―インプレッション
「長距離・長時間乗るならこれはいい選択肢だ」
流郷克也(ユーキャン)
快適性と路面追従性の高さなどの「安定性」がいいバイクだ。振動吸収性能が高いにもかかわらず、踏み込んでもヨレているようなところはない。単純に“柔らかい”というワケではないのだ。
ハンドリングも落ち着いており、誰でも安心して操作できるだろう。そして圧巻なのがその路面追従性だ。荒れた路面でもダッシュしようがコーナリング中だろうが、路面にしっかりと食いついたままで、跳ねたり弾かれたりする素振りも見せない。
この路面への接地感や安定性は、普通のロードレーサーでは決して得られないレベルだ。たしかに今回新たに採用された「“C+”エラストメリックコネクタ」も効いているとは思うが、それ以前に高い次元で快適性、安定性を重視した設計そのものが成功しているのだろう。
「長距離・長時間乗るならこれはいい選択肢だ」流郷克也
その走りは同じようなコンセプトの「キャノンデール・シナプス」「スペシャライズド・ルーベ」などよりも、さらに快適性や安定性に注力している印象を受けた。またコルナゴなどのもつ高速域で初めて真価を発揮するような直進安定性とは目的や質が違うが、低速域から踏み出しが軽く安定しているのもこのバイクの持ち味だろう。
完成車のまま乗ってもグランフォンドやブルベのようなロングライドで大活躍してくれるバイクとなっている。ホイールにはマヴィック アクシウム2011がチョイスされているが、軽量ホイールと転がり抵抗の少ないタイヤを装備してこの安定性と接地感を活かせば、よりフレームのポテンシャルを引きだすことができるだろう。完成車のアッセンブリで慣れた頃にこれらのパーツを替えてみるといいのではないだろうか。
また荒れた路面のコース設定がされていたり、単独走が多い200kmを越えるような長丁場のものならレースでも十分使えるだろう。メーカーの考えたコンセプト通りに仕上がっており、そういう意味でも申し分ないバイクとなっている。
惜しむらくはテストバイクが私にとっては2まわりほど大きく、その安定性が強くなり過ぎてしまったため、この「センシウム300CP」本来の性能を味わえなかったこと。もし自分に合ったサイズなら安定性や快適性能のポジティブな面がもっと良く出ただろう。それだけの潜在能力を十分感じるバイクだ。
「過酷なロングライドで武器になりそうな1台」
若生正剛(なるしまフレンド)
「過酷なロングライドでこそ武器になりそうな1台」 若生正剛 ラピエールというと、以前から快適性と走行性能の高さで好評だったスカンジウムフレームの逸話をよく聞いた。それだからか“剛性コントロールが上手いメーカー”というイメージを個人的に持っていた。この「センシウム300CP」もそのイメージに違わない非常に乗り心地のよい快適性と必要な剛性を保ったバイクとなっている。
下からの突き上げを緩和して、ペダリングによる力をしっかり受け止めて推進力に換えてくれる。それでいて“しなり”で後ろから押してくれるような感覚を得られるバイクだ。
操作感もニュートラルなのでハンドリングで乗り手を選ぶようなことはない。またボリューム感のあるフレームなので、剛性が偏ったりしていないか特に注意して乗ってみたのだが、全体的に調和の取れた適度なバランスで、ほどよい剛性感を感じることができた。
また今回注目されている「“C+”エラストメリックコネクタ」の効果もよく感じる。もともと評価の高かったその快適性に磨きがかかった印象を受けた。その上で必要なところに必要な分の剛性がきちんと割り振ってあるので、走りそのものもしっかり楽しめる、といったところだ。さすがにプロ選手がパヴェのレースに使っているだけあって、単純に柔らかいだけのバイクに留まっていない。
どんな走行シーンでも無難にこなしてくれるが、後ろから押してくれるようなウィップを利用して坂をリズミカルに上るのは面白い。それに凸凹の荒れた路面は想像以上に快適に走る。あまりにスムースに走るので衝撃を受ける人もいるだろう。
長時間乗っても疲労が溜まりにくく、走行感も軽いのでロングライドで使いたくなるバイクだ。それに速度域が低いレースならば十分に使えるレベルで仕上がっている。悪路のレースならさらにアドバンテージを得られるだろう。
またホイールを替えるともっとフレームの実力をもっと引きだせるはずだ。完成車状態で慣れたころにホイールを替えてみるといい。非常に明確なキャラクターのバイクなので、用途が合っているならば買って間違いのない1台だ。
ラピエール センシウム300CP (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ラピエール センシウム300CP
フレーム:センシウム300CPカーボンHMモノコック
フォーク:ラピエール カーボン-アロイテーパードステアラー
ホイール:マヴィック アクシウム2011 ブラック
コンポ:シマノアルテグラ
サイズ:460、490、520、550
車体重量:7.9kg(完成車)
希望小売価格(税込み):357,000円(完成車)
インプレライダーのプロフィール
流郷克哉 流郷克哉(ユーキャン)
東京、神奈川、静岡、山梨で展開するサイクルショップ「YOU CAN(ユーキャン)」の多摩境店店長。選手時代は脱サラ後、複数チームを経て30歳で日本鋪道と契約。生涯成績は国内でジャパンカップアマチュア部門優勝、ツールド東北ステージ優勝など。フランスに単身渡仏後、1シーズンで60弱のロードレースに参戦。エリート4勝、ほか1勝を挙げるほか、10位以内フィニッシュが20レースを越えた。2004年に引退し、現在ユーキャン多摩境店にて店長をしながら高校生ら若手育成に努めている。
YOU CAN
若生正剛 若生正剛(なるしまフレンド)
自転車店「なるしまフレンド」店員。昭和第一学園在籍時に競技を始める。トラック競技で2年生時に初めてインターハイ出場を果たした。同じく3年生時は選抜、インターハイと大きな大会を連続出場。卒業後、自転車の楽しさを伝えたいと思い立ち、なるしまフレンドに入社。現在3年目を迎える。プロ選手としての経験が無いものの、ショップ店員としてはそれを逆手に一般自転車乗りの感覚を共有できることを強みにして接客している。
なるしまフレンド
ウェア協力:B・EMME(フォーチュン)
photo:Makoto.Ayano
text:Kiichi.Gotoda
ツール・ド・フランスはもちろん、世界トップレベルのレースで鍛えあげられてきたバックグラウンドがラピエールにはある。
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今回のテストバイクはその老舗ブランドの「センシウム300CP」だ。センシウムはフラグシップの「ゼリウス」に次ぐセカンドグレードのモデルになる。またレーシングモデルである「ゼリウス」に対して、「センシウムは快適性を重視したロングライドモデルとなっている。
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そしてセンシウムの前モデルがそのコンセプト通りロングディスタンスを得意とし、かつ高性能であったため好評だったにもかかわらず、2011モデルはフルモデルチェンジされた。レースを舞台としたフィールドテストやブラインドテストなど経て刷新された結果、この2011モデルは前モデルに対して快適性に磨きがかかっただけではなく、高い運動性能を獲得したことが“売り”となっている。
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大きく目立った改良点はシートステーだ。ステー形状そのものも変更されているが、それ以上に「“C+”エラストメリックコネクタ」と呼ばれるシートステー上部に取り付けられた樹脂製のユニットが一際目立つ。これはカーボンのシートステーに巻き付ける構造になっている振動吸収ユニットだ。これにより運動性を損なうことなく振動吸収性の向上を果たしている。
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この“C+”エラストメリックコネクタのほかには、特徴的なラウンドチューブ、412mmの長いチェーンステーなどにより振動吸収性を確保しながら、入力された力の高効率伝達を可能にしている。また「ゼリウス」と同じテーパーヘッドチューブを採用するなど、走破性能も高められ、コンフォートでありながら高い走行性能を獲得したバイクへと昇華している。
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その証拠として実際に荒れた石畳が長く続く過酷な“北の地獄”と称されるクラシックレース「パリ〜ルーベ」2010年大会に、フランセーズデジューの選手がこの新しいセンシウムのプロトタイプを使用している。
前モデルも好評だっただけにこの新モデルへの興味は尽きない。さっそくインプレッションに入ろう。
―インプレッション
「長距離・長時間乗るならこれはいい選択肢だ」
流郷克也(ユーキャン)
快適性と路面追従性の高さなどの「安定性」がいいバイクだ。振動吸収性能が高いにもかかわらず、踏み込んでもヨレているようなところはない。単純に“柔らかい”というワケではないのだ。
ハンドリングも落ち着いており、誰でも安心して操作できるだろう。そして圧巻なのがその路面追従性だ。荒れた路面でもダッシュしようがコーナリング中だろうが、路面にしっかりと食いついたままで、跳ねたり弾かれたりする素振りも見せない。
この路面への接地感や安定性は、普通のロードレーサーでは決して得られないレベルだ。たしかに今回新たに採用された「“C+”エラストメリックコネクタ」も効いているとは思うが、それ以前に高い次元で快適性、安定性を重視した設計そのものが成功しているのだろう。
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その走りは同じようなコンセプトの「キャノンデール・シナプス」「スペシャライズド・ルーベ」などよりも、さらに快適性や安定性に注力している印象を受けた。またコルナゴなどのもつ高速域で初めて真価を発揮するような直進安定性とは目的や質が違うが、低速域から踏み出しが軽く安定しているのもこのバイクの持ち味だろう。
完成車のまま乗ってもグランフォンドやブルベのようなロングライドで大活躍してくれるバイクとなっている。ホイールにはマヴィック アクシウム2011がチョイスされているが、軽量ホイールと転がり抵抗の少ないタイヤを装備してこの安定性と接地感を活かせば、よりフレームのポテンシャルを引きだすことができるだろう。完成車のアッセンブリで慣れた頃にこれらのパーツを替えてみるといいのではないだろうか。
また荒れた路面のコース設定がされていたり、単独走が多い200kmを越えるような長丁場のものならレースでも十分使えるだろう。メーカーの考えたコンセプト通りに仕上がっており、そういう意味でも申し分ないバイクとなっている。
惜しむらくはテストバイクが私にとっては2まわりほど大きく、その安定性が強くなり過ぎてしまったため、この「センシウム300CP」本来の性能を味わえなかったこと。もし自分に合ったサイズなら安定性や快適性能のポジティブな面がもっと良く出ただろう。それだけの潜在能力を十分感じるバイクだ。
「過酷なロングライドで武器になりそうな1台」
若生正剛(なるしまフレンド)
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下からの突き上げを緩和して、ペダリングによる力をしっかり受け止めて推進力に換えてくれる。それでいて“しなり”で後ろから押してくれるような感覚を得られるバイクだ。
操作感もニュートラルなのでハンドリングで乗り手を選ぶようなことはない。またボリューム感のあるフレームなので、剛性が偏ったりしていないか特に注意して乗ってみたのだが、全体的に調和の取れた適度なバランスで、ほどよい剛性感を感じることができた。
また今回注目されている「“C+”エラストメリックコネクタ」の効果もよく感じる。もともと評価の高かったその快適性に磨きがかかった印象を受けた。その上で必要なところに必要な分の剛性がきちんと割り振ってあるので、走りそのものもしっかり楽しめる、といったところだ。さすがにプロ選手がパヴェのレースに使っているだけあって、単純に柔らかいだけのバイクに留まっていない。
どんな走行シーンでも無難にこなしてくれるが、後ろから押してくれるようなウィップを利用して坂をリズミカルに上るのは面白い。それに凸凹の荒れた路面は想像以上に快適に走る。あまりにスムースに走るので衝撃を受ける人もいるだろう。
長時間乗っても疲労が溜まりにくく、走行感も軽いのでロングライドで使いたくなるバイクだ。それに速度域が低いレースならば十分に使えるレベルで仕上がっている。悪路のレースならさらにアドバンテージを得られるだろう。
またホイールを替えるともっとフレームの実力をもっと引きだせるはずだ。完成車状態で慣れたころにホイールを替えてみるといい。非常に明確なキャラクターのバイクなので、用途が合っているならば買って間違いのない1台だ。
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ラピエール センシウム300CP
フレーム:センシウム300CPカーボンHMモノコック
フォーク:ラピエール カーボン-アロイテーパードステアラー
ホイール:マヴィック アクシウム2011 ブラック
コンポ:シマノアルテグラ
サイズ:460、490、520、550
車体重量:7.9kg(完成車)
希望小売価格(税込み):357,000円(完成車)
インプレライダーのプロフィール
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東京、神奈川、静岡、山梨で展開するサイクルショップ「YOU CAN(ユーキャン)」の多摩境店店長。選手時代は脱サラ後、複数チームを経て30歳で日本鋪道と契約。生涯成績は国内でジャパンカップアマチュア部門優勝、ツールド東北ステージ優勝など。フランスに単身渡仏後、1シーズンで60弱のロードレースに参戦。エリート4勝、ほか1勝を挙げるほか、10位以内フィニッシュが20レースを越えた。2004年に引退し、現在ユーキャン多摩境店にて店長をしながら高校生ら若手育成に努めている。
YOU CAN
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自転車店「なるしまフレンド」店員。昭和第一学園在籍時に競技を始める。トラック競技で2年生時に初めてインターハイ出場を果たした。同じく3年生時は選抜、インターハイと大きな大会を連続出場。卒業後、自転車の楽しさを伝えたいと思い立ち、なるしまフレンドに入社。現在3年目を迎える。プロ選手としての経験が無いものの、ショップ店員としてはそれを逆手に一般自転車乗りの感覚を共有できることを強みにして接客している。
なるしまフレンド
ウェア協力:B・EMME(フォーチュン)
photo:Makoto.Ayano
text:Kiichi.Gotoda
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