朝から底冷えしたカーフマンGP北関東ステージ(埼玉県比企郡)は、時折ちらつくあられと共に開会式を迎えた。

会場となった武蔵丘森林公園は、自然との共生を実践的に展示する施設で、園内にはさまざまな植物が植えられている。大会当日は冬の様相だったが、カワウが巣作りと子育ての最中らしく、あちこちで鳴声が聞こえる。春、夏、秋と、季節を変えて訪れると、美しい四季と出会えそうだ。

午後から開催されるエリートクラス。全国から精鋭が結集ししのぎを削る午後から開催されるエリートクラス。全国から精鋭が結集ししのぎを削る カーフマン開催の冬は、下草も枯れて見通しが良い格好のレースコンディション。特にエイジクラスの第2ランはクロスカントリーコースを採っており、コースバリエーションの楽しみも味わえる。第1ランとバイクで使った足を、柔らかい土で労われる(?)のも嬉しい。

とはいえ、アップダウンのある丘陵地帯なので、心拍はバッチリ上がる。さらに、先行した選手を追うにも、背中を見切れないつらさがある。これが逃げる選手には有効に働き、追う側には焦りや諦めを生む...。そんなレース展開を左右する結果にもなった。


・エイジ

今回はキッズ、ジュニア、エイジ、MTB、エリートクラス、総勢174名のエントリー。そのうちボリュームクラスであるエイジでは、3つのウェイブに分かれてスタートする。そのため、ゴールするまでは総合優勝者が分からないものの、観客は第2ウェイブに入った中国地方からの遠征組、鳥越秀樹(アミーゴ倉敷)と岡崎敏夫に注目。過去3戦とも、2人は必ずトップ争いに加わり、勝敗を分け合ってきたからだ。

そして今回、そこに割って入ったのが東京都の中島秀彰(Harriers)。ランニングクラブハリアーズの所属だけに、得意のランで、序盤から鳥越を脅かす。

バイクパートでは、ここが強みの岡崎が先行する2人に追いついて、後半は流れをリード。しかし、第2ランへのアドバンテージにつながるほどのマージンは取れず、ランパートに移ると2人にさっそく捕まってしまう。結果、総合では鳥越2位、中島5位、岡崎6位に収まった。

2位争いの栗原と濱。今回のステージはドラフティング走行禁止のルールで行われた2位争いの栗原と濱。今回のステージはドラフティング走行禁止のルールで行われた さて、総合優勝したのは秋田県から参加の兎澤俊幸(KYON2)。3位山田健作(アミーゴ倉敷)同様、最後の第3ウェイブでスタートし、5周回する第1ラン後半には先の2つのウェイブを泳ぎ切ってトップ10人ほどに食い込んでいる。また、山田勇司(神町自衛隊陸上部)も、スタート順こそ間違えたものの、陸上部らしいランラップで総合4位に入った。

エイジ女子は伊藤梨沙が優勝、総合では41位に入っている。


・エリート男子

松丸真幸(コラテック)、河原勇人(トーシンパートナーズTEAM KEN'S )ら、ロングの雄を迎えた北関東ステージ。彼らが出ると聞いてエントリーを決めたという選手もいるほどの人気ぶりだ。「頑張ってください」「応援しています!」と、スタート前から観客の声がかかるシーンも見られた。

エイジスタート時に降りしきった雨あられで、一度は最悪の路面コンディションになったこの日。エリートレースまでには雨も浸透したのか、路面が落ち着いてきた。

スタート前に身体を温めることに腐心していた篠崎友(BODY TUNE/SUNNY FISH)が、その工夫の甲斐あってか(?)勢い良く第1ランを飛び出す。「バイクの篠崎」の固定観念を吹き飛ばさんばかりだ。

しかし、その篠崎を好き放題走らせておくほど、エリートは甘くない。すかさず島田敦史(ホンダ栃木)、深浦裕哉(セサミ/BODY/FISH/ハリアーズ)、栗原正明(国士舘大学エース)らがペースアップする。濱正崇(十四侍)と河原にも篠崎は飲み込まれるが、バイクで再びトップに浮上。勝利に貪欲なところを見せて、観客を大いに沸かせた。

昨年の年間チャンピオン、深浦祐哉。この距離では目下6連勝中昨年の年間チャンピオン、深浦祐哉。この距離では目下6連勝中 さて、いったんはバイクで篠崎の後塵を拝した深浦だが、第2ランに移ると早々に篠崎をパス、そのまま優勝の座を守りきった。決して万全ではなかった体調と聞くが、深浦ですら、河原、松丸と闘う魅力には抗えなかったようだ。

その松丸は、右足の親指を血まみれにしながらの第2ラン。結構なダメージだったのか、ゴールすると不完全燃焼気味の表情でシューズを脱いだ。それでも6位にしっかり入賞してくるあたりは、さすが。

一方、河原は、第2ランへのトランジットで左太ももを痙攣させ、あわやリタイア?と思われたが、ベテランらしくレースをまとめて19位でゴール。エイドで給水に努めたあたりも、経験を生かした痙攣対策を思わせた。


・エリート女子

常勝の沢田愛理(JR北海道)が序盤からペースを上げてきた。
「北海道では練習できなくなっているバイクで追いつかれるのは必至、それまでにマージンを稼ぎたかった」とフィニッシュ後に述懐した沢田だが、コーナーの続くコースが幸いしたか、追う菊池日出子(チームブレイブ)、西麻依子(湘南ベルマーレスポーツクラブ)、佐藤千佳(湘南ベルマーレトライアスロンクラブ)らは、背中の見えない沢田に対してあと少しの踏ん張りが届かず、ついに最後まで沢田に独走を許した。



text:小峰眞実(マルチスポーツライター)
photo:MSPO

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