2010/10/13(水) - 11:47
コラテックは2007年から本格的に日本市場に参入してきたドイツのブランドだ。ドイツはミュンヘン郊外に本社を構えるIKO社が1990年に立ち上げたバイクブランドで、ドイツ国内ではロードレーサーやMTBといったスポーツバイクからシティバイクまで手がけるドイツ有数の総合自転車ブランドとなっている。
もちろんレース機材としても優秀で、プロロードレースでは2005年のジロ・デ・イタリアでコロンビア・セッレイタリアチームをスポンサードして計3ステージの勝利を挙げている。
2007年からはオーストリアのコンチネンタルプロチームであるチーム・フォルクスバンクのサポートバイクとなっている。同チームは2009年にフォアアールベルク−コラテックにチーム名を変え、現在までツール・ド・スイスをはじめとしたビッグレースで活躍している。
そして今回インプレッションしたバイクがこのフォアアールベルク−コラテックにも供給されているR.T.PRO CARBONだ。搭載されるテクノロジーと独自の機構を解説しておこう。
BBに採用されるユニークな新機構『ユニバーサルボトムブラケットシステム』は、コラテック独自のインナーベアリングをBBに装着することで、市販されるすべてのタイプのクランクをそのまま装備できるとともに、高剛性とスムーズな動き、高い安定性と耐久性を実現した新機構だ。
内部に装着されるユニバーサルボトムブラケットシステムはこちらの記事で確認できるが、金属的な見た目にかかわらず超軽量な造りになっている。
上部が後方にオフセットした『プロコントロールフォーク』は、衝撃吸収性能に優れ、高い快適性を引きだす。
チェーンステーを低い位置に置くことで大きなクリアランスを生み、安定した駆動性能を発揮させる『ロープロファイルチェーンステー』は、暴れるチェーンがステーに当たって傷付けることも未然に防いでくれる。
トップチューブ長を考えたスローピングフレームでライダーにフィットしやすく、そしてコンパクトにすることで剛性を高めることも考えた『プロサイズシステム』。サイズごとに剛性を調整し、サイズが違っても同じ剛性感と乗り味になっている。
これら数々のユニークな機構とテクノロジーが搭載されることで、R.T.PRO CARBONはコラテックの持つ技術をフルに駆使した1台となっている。
ヨーロッパのプロライダーにも供給されるこのバイク。日本でもマトリックス・パワータグの選手がコラテックに乗って闘っている。いったいどんなフィーリングなのか気になるところだ。それではインプレッションに入ろう。
—インプレッション
「清々しいほどレーシーな仕上がり」 西谷雅史(オーベスト)
BBにユニバーサルボトムブラケットシステムと呼ばれる新たな構造のものを採用して、さらにダウンチューブに補強板を入れたことで剛性アップした、と事前に評判を聞いていたモデルだ。
以前のモデルも乗った経験があるので前モデルと比較すると、たしかにこのBBからダウンチューブに渡る剛性アップは確実に効果がでている。特にBBは「きわめて硬い」といった印象になった。
レーサーとしてとてもバランスがよくできている。ハンドルの切れや下りでの安定感も高く、乗り心地もいい。特にハンドリングは軽すぎず、ほどよく振れる感じで全体的な設計のよさを感じる。
そして初速がものすごく軽く、中速以降は踏んだ分確実に進んでくれる。「生粋のロードレーサー」といった感じのバイクに仕上がっている。
個人的にはフレームの硬さに合うように、もう少しフォークにも剛性を高めたものを採用したほうがよかったようにも感じる。しかし決定的にバランスが悪くなるようなものでもない。
積極的にレースエントリーするような人、特にレーシーなバイクを好んで乗りこなせる人ならば、このバイクはすごくいいフィーリングをもたらしてくれるだろう。
ここまでレースに焦点を絞って作られているバイクは珍しいと思うほどだ。反面、疲れて踏む力がなくなったら止まる、スパルタンで遊びのないフレームになっているとも思う。だが、こういう作りは個人的に好感が持てる。
たしかに“しなり”を活かした走りのバイクにある乗り心地の良さや伸びやかさなどは皆無だ。それほどしなりで進むバイクとは対称的な仕上がりになっている。
しかしレースに必要な分のコーナリング性能や的確な衝撃を伝えてくれるフィーリングの良さ、爆発力を引き出す硬さなど、レースシーンで必要な快適性や操作性、走行性能をバランスよくしっかり持っている。
このデキならばレースにおいて値段分の働きをしっかり果たしてくれるだろう。スプリントに磨きをかけたい、反応をよくしたいなど、レースに使うことをメインに考えている人にオススメしたいバイクだ。
「コラテックの考えるレースバイク」 三上和志(サイクルハウスミカミ)
試乗する前はシートステー周りやフロントフォークの特徴的な曲げ方が目立ったため、その見た目からコンフォートな乗り味で伸びやかさを武器とするバイクという印象を持った。
しかし、これが乗ってみるとまったくの逆ベクトルのコンセプトを持って作られていた。まさにプロ向けにしっかり造った硬いバイクという印象だ。
頑張っているときはこのバイクに必要な強い入力ができたが、弱ってくると踏み負ける部分がでてくる。それほどレーシーな硬さ、剛性感を持っている。
たしかにプロライダー向けの硬いバイクだが、ただ硬いだけではない。このバイクが必要としている入力強度でペダリングすることができれば真価を発揮してくれるだろう。そのポテンシャルを十分に感じさせてくれる反応の良さをみせてくれる。
また操作感はレーシングバイクとして標準的だが、低速から高速域にかけてどのレンジでも安定しているのは高く評価できる。
それにトップモデルとしてフレームが35万円弱という手頃は価格も印象的だ。この価格でプロライダーと同じフレームに乗ることができるのは魅力的に感じる。
コラテック以外のメーカーもすべてこのR.T.PRO CARBONのような硬さを持ったフレームをプロ用に造っているわけではないだろうが、それでもプロ機材の一端に触れることできるのは興味深い。
そして新機能であるユニバーサルボトムブラケットシステムも特徴的だと思った。剛性が高くなるのもこのシステムの売りだが、それ以上にあらゆるBBシステムに対応しているのがいい。手持ちのパーツがあればどれでも乗り換えることができる。これにはお買い得感を感じる。レース機材としてもポイントの高いメリットだろう。
その走りやフレームの特徴、使い勝手を考えたシステムを与えられたこのR.T.PRO CARBONは、まさにコラテックの考える理想のレースバイクを具現化したような製品と言えるだろう。
明らかにレースで積極的に走ることを考えて造られたバイクなので、自分を高めようという人や、選手を目指して頑張る若者に乗ってほしいバイクだ。
コラテック R.T.PRO CARBON
フレーム コラテック モノコック カーボン UBBS
フォーク コラテック カーボン
カラー マルチ、ブラック/ブルー
サイズ 46、48、50(プロサイズシステム)
希望小売価格(税込み) 345,450円(フレームセット)
インプレライダーのプロフィール
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。主なリザルトはツール・ド・おきなわ市民200km優勝、ジャパンカップアマチュアレース優勝など。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに「日本最速の店長」だ!
サイクルポイント オーベスト
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
ウェア協力:ルコック・スポルティフ
photo:Makoto.Ayano
text:Kiichi.Gotoda
もちろんレース機材としても優秀で、プロロードレースでは2005年のジロ・デ・イタリアでコロンビア・セッレイタリアチームをスポンサードして計3ステージの勝利を挙げている。
2007年からはオーストリアのコンチネンタルプロチームであるチーム・フォルクスバンクのサポートバイクとなっている。同チームは2009年にフォアアールベルク−コラテックにチーム名を変え、現在までツール・ド・スイスをはじめとしたビッグレースで活躍している。
そして今回インプレッションしたバイクがこのフォアアールベルク−コラテックにも供給されているR.T.PRO CARBONだ。搭載されるテクノロジーと独自の機構を解説しておこう。
BBに採用されるユニークな新機構『ユニバーサルボトムブラケットシステム』は、コラテック独自のインナーベアリングをBBに装着することで、市販されるすべてのタイプのクランクをそのまま装備できるとともに、高剛性とスムーズな動き、高い安定性と耐久性を実現した新機構だ。
内部に装着されるユニバーサルボトムブラケットシステムはこちらの記事で確認できるが、金属的な見た目にかかわらず超軽量な造りになっている。
上部が後方にオフセットした『プロコントロールフォーク』は、衝撃吸収性能に優れ、高い快適性を引きだす。
チェーンステーを低い位置に置くことで大きなクリアランスを生み、安定した駆動性能を発揮させる『ロープロファイルチェーンステー』は、暴れるチェーンがステーに当たって傷付けることも未然に防いでくれる。
トップチューブ長を考えたスローピングフレームでライダーにフィットしやすく、そしてコンパクトにすることで剛性を高めることも考えた『プロサイズシステム』。サイズごとに剛性を調整し、サイズが違っても同じ剛性感と乗り味になっている。
これら数々のユニークな機構とテクノロジーが搭載されることで、R.T.PRO CARBONはコラテックの持つ技術をフルに駆使した1台となっている。
ヨーロッパのプロライダーにも供給されるこのバイク。日本でもマトリックス・パワータグの選手がコラテックに乗って闘っている。いったいどんなフィーリングなのか気になるところだ。それではインプレッションに入ろう。
—インプレッション
「清々しいほどレーシーな仕上がり」 西谷雅史(オーベスト)
BBにユニバーサルボトムブラケットシステムと呼ばれる新たな構造のものを採用して、さらにダウンチューブに補強板を入れたことで剛性アップした、と事前に評判を聞いていたモデルだ。
以前のモデルも乗った経験があるので前モデルと比較すると、たしかにこのBBからダウンチューブに渡る剛性アップは確実に効果がでている。特にBBは「きわめて硬い」といった印象になった。
レーサーとしてとてもバランスがよくできている。ハンドルの切れや下りでの安定感も高く、乗り心地もいい。特にハンドリングは軽すぎず、ほどよく振れる感じで全体的な設計のよさを感じる。
そして初速がものすごく軽く、中速以降は踏んだ分確実に進んでくれる。「生粋のロードレーサー」といった感じのバイクに仕上がっている。
個人的にはフレームの硬さに合うように、もう少しフォークにも剛性を高めたものを採用したほうがよかったようにも感じる。しかし決定的にバランスが悪くなるようなものでもない。
積極的にレースエントリーするような人、特にレーシーなバイクを好んで乗りこなせる人ならば、このバイクはすごくいいフィーリングをもたらしてくれるだろう。
ここまでレースに焦点を絞って作られているバイクは珍しいと思うほどだ。反面、疲れて踏む力がなくなったら止まる、スパルタンで遊びのないフレームになっているとも思う。だが、こういう作りは個人的に好感が持てる。
たしかに“しなり”を活かした走りのバイクにある乗り心地の良さや伸びやかさなどは皆無だ。それほどしなりで進むバイクとは対称的な仕上がりになっている。
しかしレースに必要な分のコーナリング性能や的確な衝撃を伝えてくれるフィーリングの良さ、爆発力を引き出す硬さなど、レースシーンで必要な快適性や操作性、走行性能をバランスよくしっかり持っている。
このデキならばレースにおいて値段分の働きをしっかり果たしてくれるだろう。スプリントに磨きをかけたい、反応をよくしたいなど、レースに使うことをメインに考えている人にオススメしたいバイクだ。
「コラテックの考えるレースバイク」 三上和志(サイクルハウスミカミ)
試乗する前はシートステー周りやフロントフォークの特徴的な曲げ方が目立ったため、その見た目からコンフォートな乗り味で伸びやかさを武器とするバイクという印象を持った。
しかし、これが乗ってみるとまったくの逆ベクトルのコンセプトを持って作られていた。まさにプロ向けにしっかり造った硬いバイクという印象だ。
頑張っているときはこのバイクに必要な強い入力ができたが、弱ってくると踏み負ける部分がでてくる。それほどレーシーな硬さ、剛性感を持っている。
たしかにプロライダー向けの硬いバイクだが、ただ硬いだけではない。このバイクが必要としている入力強度でペダリングすることができれば真価を発揮してくれるだろう。そのポテンシャルを十分に感じさせてくれる反応の良さをみせてくれる。
また操作感はレーシングバイクとして標準的だが、低速から高速域にかけてどのレンジでも安定しているのは高く評価できる。
それにトップモデルとしてフレームが35万円弱という手頃は価格も印象的だ。この価格でプロライダーと同じフレームに乗ることができるのは魅力的に感じる。
コラテック以外のメーカーもすべてこのR.T.PRO CARBONのような硬さを持ったフレームをプロ用に造っているわけではないだろうが、それでもプロ機材の一端に触れることできるのは興味深い。
そして新機能であるユニバーサルボトムブラケットシステムも特徴的だと思った。剛性が高くなるのもこのシステムの売りだが、それ以上にあらゆるBBシステムに対応しているのがいい。手持ちのパーツがあればどれでも乗り換えることができる。これにはお買い得感を感じる。レース機材としてもポイントの高いメリットだろう。
その走りやフレームの特徴、使い勝手を考えたシステムを与えられたこのR.T.PRO CARBONは、まさにコラテックの考える理想のレースバイクを具現化したような製品と言えるだろう。
明らかにレースで積極的に走ることを考えて造られたバイクなので、自分を高めようという人や、選手を目指して頑張る若者に乗ってほしいバイクだ。
コラテック R.T.PRO CARBON
フレーム コラテック モノコック カーボン UBBS
フォーク コラテック カーボン
カラー マルチ、ブラック/ブルー
サイズ 46、48、50(プロサイズシステム)
希望小売価格(税込み) 345,450円(フレームセット)
インプレライダーのプロフィール
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。主なリザルトはツール・ド・おきなわ市民200km優勝、ジャパンカップアマチュアレース優勝など。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに「日本最速の店長」だ!
サイクルポイント オーベスト
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
ウェア協力:ルコック・スポルティフ
photo:Makoto.Ayano
text:Kiichi.Gotoda
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