バイクフレームメーカーが鎬を削るロードレース界。カナダのサーヴェロ社はチーム運営に終止符を打ち、表舞台から撤退することを発表した。発足から僅か2年でサーヴェロ・テストチームは消滅。代わりに同社はアメリカのガーミン・トランジションズのスポンサーに加わる。

2年間のチーム活動に終止符を打つサーヴェロ・テストチーム2年間のチーム活動に終止符を打つサーヴェロ・テストチーム photo:Cor Vosプロコンチネンタル登録ながら、カルロス・サストレ(スペイン)やトル・フースホフト(ノルウェー)、ハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ)と言ったトップ選手を揃えるサーヴェロ・テストチーム。しかし発足から僅か2年でチーム運営から撤退することを発表した。

現在のロードレース界には、BMCやデローザ、コルナゴがメインスポンサーを務めるチームがひしめいている。

チーム初年度の2009年ジロ・デ・イタリアではステージ3勝をマークチーム初年度の2009年ジロ・デ・イタリアではステージ3勝をマーク photo:Kei Tsujiアンディ・リース氏が所有するバイクメーカーBMC社がサポートするBMCレーシングチームは、今年カデル・エヴァンス(オーストラリア)やジョージ・ヒンカピー(アメリカ)、アレッサンドロ・バッラン(イタリア)を獲得し、一躍トップチームの仲間入りを果たした。エヴァンスは今年フレーシュ・ワロンヌでの優勝やジロ・デ・イタリアでのステージ優勝、マリアローザ着用、マイヨジョーヌ着用でリース氏の期待に応えている。

過去にはイタリアのビアンキ社がメインスポンサーとしてチームを運営。ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)の活躍にチームは沸いた。その時代がバイクフレームメーカーによるチームサポートの全盛期だったと言える。

2009年ツール・ド・フランスでステージ2勝2009年ツール・ド・フランスでステージ2勝 photo:Cor Vosカナダのサーヴェロ社が発足したのは1995年のこと。タイムトライアルやトライアスロン向きのエアロバイクを製造するメーカーとして注目を集め、2003年からビャルヌ・リース監督率いるチームCSCにバイク供給を開始。リース監督とのコラボレーションがサーヴェロ社を大きく躍進させた。2008年にはサストレがツール・ド・フランス制覇を成し遂げている。

サストレのツール制覇の1ヶ月後、サーヴェロ社は2009年に新チームを発足させるとともに、サストレを獲得したことを発表。サーヴェロの共同オーナーであるジェラルド・ヴルーメン氏は当時「サーヴェロ・テストチームの目標はレースで結果を出すこと。選手たちはフィールドテストを行い、そのフィードバックを積極的に製品に活かしていきたい」とコメントしてる。

今年のツールでステージ優勝を飾ったトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)今年のツールでステージ優勝を飾ったトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム) photo:Kei Tsujiヴルーメン氏の望み通り、チームは初年度から早速結果を残した。ツアー・オブ・カリフォルニアでフースホフトがステージ優勝を飾り、ジロ・デ・イタリアでステージ3勝、ツール・ド・フランスでステージ2勝という好成績をマーク。今年は少し勢いを落としたが、それでもツールでフースホフトがパヴェステージで勝利するなど、トップチームとしての活躍が目立った。

フースホフトの勝利から1ヶ月が経った先週、サーヴェロ社はチーム運営の撤退を発表した。

「近年のルール改正により、ビッグレースに出場するためには多大な資金力を必要とするトレンドが出来上がった。それは我々が求めているものではない。この2年間で得た収穫は大きいが、これ以上チームサポートの規模を拡大させる方針は取らない」。サーヴェロ社はプレスリリースの中でそうコメントしている。

サーヴェロ社はチーム運営から手を引くが、完全にロードレース界から撤退するわけではない。チーム撤退を聞きつけたアメリカのガーミン・トランジションズのジョナサン・ヴォーターズ代表は、サーヴェロ社をサブスポンサーに迎え入れることを発表。2011年からガーミン・サーヴェロとして発進することとなった。

サーヴェロ社のサポート決定に喜ぶヴォーターズ監督。しかしその一方でサーヴェロ・テストチームの所属選手やスタッフは新たな所属チームを探す必要がある。チームリーダーのサストレはイタリアのチームジェオックスと契約済み。フースホフトはガーミン・サーヴェロへの移籍が決まっており、エーススプリンターのタイラー・ファラー(アメリカ)との棲み分けに注目が集まる。テオ・ボス(オランダ)は古巣ラボバンクに戻る予定だ。

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji

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