2010年8月29日、ブエルタ・ア・エスパーニャ(UCIヒストリカル)の第2ステージが暑さの厳しいアンダルシア州で行なわれ、パワフルなスプリントでライバルたちを沈めたヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー)が嬉しいグランツール初勝利を飾った。

連日気温40度近い暑さが続くスペイン南部のアンダルシア州連日気温40度近い暑さが続くスペイン南部のアンダルシア州 photo:Cor Vosスペインの中でも暑さが厳しいとされる南部のアンダルシア州。第2ステージは州都セビーリャ近くのアルカラ・デ・グアダイラをスタートし、標高1000m級の山岳地帯を抜けて地中海に面したスペイン有数の観光地マルベーリャにゴールする。

連日40度を超える暑さが続いていた同地域だが、幸いこの日は最高気温が低め。とは言えかんかん照りの太陽と37〜38度に達する暑さが選手たちを苦しめた。背中に氷袋を詰め込み、ボトルの水を頭から被って暑さをしのぐ選手たち。アシスト選手たちはボトル運びに追われた。

スタート後すぐに先頭グループを形成したハビエル・ラミレス(スペイン、アンダルシア・カハスール)やミカエル・ドラージュ(フランス、オメガファーマ・ロット)ら4名スタート後すぐに先頭グループを形成したハビエル・ラミレス(スペイン、アンダルシア・カハスール)やミカエル・ドラージュ(フランス、オメガファーマ・ロット)ら4名 photo:Unipublicアルカラ・デ・グアダイラのスタート後、地元のハビエル・ラミレス(スペイン、アンダルシア・カハスール)のアタックを切っ掛けに4名の逃げグループが形成。ラミレスはミカエル・ブファズ(フランス、コフィディス)、ジョニー・ウォーカー(オーストラリア、フットオン・セルヴェット)、ミカエル・ドラージュ(フランス、オメガファーマ・ロット)とともに熱い旅に出た。

順調に7分までリードを広げた4名だったが、この日唯一の3級山岳プルーニャ峠の手前でブファズが落車するトラブル発生。ブファズは鎖骨を骨折してしまい、今大会最初のリタイア者となった。

メイン集団はマイヨロホを擁するチームHTC・コロンビアがコントロールを担い、ラルスイティング・バク(デンマーク)らが献身的に長時間集団を牽引。緩い上りが続くレース後半にかけて逃げグループとの差を詰めた。

アンダルシア州の美しい街並を背にアンダルシア州の美しい街並を背に photo:Unipublic逃げグループを形成するミカエル・ブファズ(フランス、コフィディス)やミカエル・ドラージュ(フランス、オメガファーマ・ロット)逃げグループを形成するミカエル・ブファズ(フランス、コフィディス)やミカエル・ドラージュ(フランス、オメガファーマ・ロット) photo:Unipublicマイヨロホを着て走るマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)マイヨロホを着て走るマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア) photo:Unipublic

一日中メイン集団をコントロールし続けたチームHTC・コロンビア一日中メイン集団をコントロールし続けたチームHTC・コロンビア photo:Unipublicやがてゴールまで50kmを切ると、メイン集団からマルコス・ガルシア(スペイン、シャコベオ・ガリシア)が発進。勢い良く飛び出したガルシアは2分前を走行する先頭グループに合流し、地中海に向かって転げ落ちるような下り区間へ。しかしゴールまで40kmを残してタイム差は早くも1分を切った。

40度近い暑さのためアシスト選手たちはボトル運びに大忙し40度近い暑さのためアシスト選手たちはボトル運びに大忙し photo:Unipublic結局ラミレス、ドラージュ、ウォーカー、ガルシアの4名はゴール12km手前で全て吸収。マルベーリャのゴールに向かってスプリンターチームがポジションを争いながら、メイン集団は平坦区間をハイスピードで駆け抜けた。

ランプレがチームHTC・コロンビアを抑え込んで集団先頭に陣取り、ラスト3kmを切るとリクイガスが先頭へ。メンバーを揃えるリクイガスが優位に立ったが、エーススプリンターのダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)がポジションを下げた影響により、ラスト1kmで隊列が崩れてしまう。

後半の山岳地帯で先頭グループに追いついたマルコス・ガルシア(スペイン、シャコベオ・ガリシア)後半の山岳地帯で先頭グループに追いついたマルコス・ガルシア(スペイン、シャコベオ・ガリシア) photo:UnipublicここからはランプレとチームHTC・コロンビアの一騎打ち。アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)を連れるダニーロ・ホンド(ドイツ)と、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)を連れるマシュー・ゴス(オーストラリア)が猛スピードで集団先頭に立った。

混戦状態の口火を切ったのはタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)。直ぐさまスプリントで応戦するカヴェンディッシュとペタッキ。しかしそれらの選手を別ラインから追い上げ、パワフルなスプリントで猛進したフタロヴィッチが先着した。

集団スプリントでカヴェンディッシュを沈めたヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー)集団スプリントでカヴェンディッシュを沈めたヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー) photo:Unipublicフタロヴィッチは1983年生まれの26歳。フランスのフランセーズデジューで走る2008年から2年連続でベラルーシチャンピオンに輝いているスプリンターで、2009年からツール・メディテラネアンで2年連続ステージ2勝を飾っている。2009年ツール・ド・フランスに初出場し、ランタンルージュ(総合最下位)で完走した。

今年は8月上旬のツール・ド・ポローニュでスプリント勝利。レース後のインタビューで「これは3回目のグランツール出場。だからステージ優勝にはそれほど驚いていない。ツール・ド・ポローニュでプロツアークラスの勝利を飾り、そこで自信を得たんだ」と、大物らしいコメント。

マイヨロホを守ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)マイヨロホを守ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア) photo:Unipublic「チームメイトのアシストを受けてカヴェンディッシュの番手に付けたんだ。そこで飛び出すタイミングを待ち続けた。勝利したときは本当に信じられない気分だったよ。カヴェンディッシュは暑さに苦しんでいたのかもしれない」。フタロヴィッチはポイント賞ジャージを獲得。この日の走りを見る限り、今後のステージでも勝利に絡んでくるだろう。

12秒のボーナスタイムを獲得したカヴェンディッシュはマイヨロホをキープ。しかし暑さに苦しんでいたのは明らかで、レース中にはチームメイトのベルンハルト・アイゼル(オーストリア)にボトルの水をかけられるシーンも見られた。

翌第3ステージは終盤に1級山岳レオン峠が登場する起伏に富んだコースで行なわれる。しかも最後は短い上りを経てゴール。ラスト1.8km地点から上りが始まり、標高差100mを駆け上がる。上りでアタックが繰り返される白熱したレース展開に持ち込まれるだろう。


ブエルタ・ア・エスパーニャ2010第2ステージ結果
1位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー)4h35'41"
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
4位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)
5位 マヌエル・カルドソ(ポルトガル、フットオン・セルヴェット)
6位 コルド・フェルナンデス(スペイン、エウスカルテル)
7位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
8位 ロベルト・フェルスター(ドイツ、チームミルラム)
9位 デニス・ガリムジャノフ(ロシア、カチューシャ)
10位 アンドレアス・スタウフ(ドイツ、クイックステップ)

個人総合成績(マイヨロホ)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア) 4h49'35"
2位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、チームHTC・コロンビア)+12"
3位 ピーター・ベリトス(スロバキア、チームHTC・コロンビア)
4位 タジェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、チームHTC・コロンビア)
5位 マシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)
6位 ヘイデン・ロールストン(ニュージーランド、チームHTC・コロンビア)
7位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)   +21"
8位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)         +22"
9位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)
10位 フレデリック・ヴィレムス(ベルギー、リクイガス)

ポイント賞(プントス)
1位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー) 25pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア) 25pts
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)   16pts

山岳賞(モンターニャ)
1位 ミカエル・ドラージュ(フランス、オメガファーマ・ロット) 3pts
2位 ハビエル・ラミレス(スペイン、アンダルシア・カハスール) 2pts
3位 ジョニー・ウォーカー(オーストラリア、フットオン・セルヴェット)1pt

複合賞(コンビナーダ)
1位 ハビエル・ラミレス(スペイン、アンダルシア・カハスール)147pts
2位 ジョニー・ウォーカー(オーストラリア、フットオン・セルヴェット)157pts
3位 ミカエル・ドラージュ(フランス、オメガファーマ・ロット)194pts

チーム総合成績
1位 チームHTC・コロンビア   14h01'09"
2位 リクイガス         +10"
3位 サーヴェロ・テストチーム      +13"

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic

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