45年ぶりの世界選手権が日本に来るかもしれない。日本自転車競技連盟(JCF)が2035年「スーパー世界選手権」の日本招致へ。国際交渉を担う別府史之氏に、招致に込めた思いと、9年後に描く夢を聞いた。
その一報を聞いて、とにかくワクワクした。きっと同じニュースを目にしたほとんどの自転車好きがそう思っただろう。
日本自転車競技連盟(JCF)今年8月、読売新聞によるJCFの中野浩一副会長へのインタビューで明かしたのが、2035年の「UCI自転車世界選手権」の日本招致を目指しているという構想だ。ロード、トラック、MTB、BMX、グラベル、そしてアマチュアのグランフォンドまで、UCIが管轄するあらゆる種目の世界選手権を一つの国に集めて一挙に開く、通称「スーパー世界選手権」。オリンピックの前年に4年に1度開かれ、2023年のグラスゴーで初開催、来年2027年にはフランスのオート=サヴォワで第2回が行われる。

熱狂に包まれた東京2020。あの興奮が、2035年のスーパー世界選手権招致で帰ってくるかもしれない photo:CorVos
日本で最後にロード世界選手権が開かれたのはジャパンカップの出自でもある1990年の宇都宮大会だ。アジア初開催だったあの大会から数えれば2035年でちょうど45年。世界屈指のスーパースターたちが一堂に会し、日本でアルカンシエルを争う。9年後、そんな光景が実現するかもしれない。
JCFの理事を務める別府史之氏は、そんな招致プロジェクトのキーマンを務めている。2009年に新城幸也とともに日本人として初めてツール・ド・フランスを完走し、欧州のトップチームで長く走り続けた「フミ」こと別府氏と、国内側の実務を取り仕切るJCF常務理事の加地邦彦氏に、招致に込めた思いを聞いた。
「今が手を挙げるべきタイミングだった」

招致プロジェクトのキーマンを務める別府史之氏。2026年ツール・ド・フランスにて photo:Sotaro Arakawa
スーパー世界選手権は2027年のフランス大会に続き、その次の大会もイタリアでの開催が決まっている。だがその先はまだ空白だ。「UCIからも候補になってくれる国を探していた。だから日本も2035年に向けて立候補したいと手を挙げたんです」と別府氏は経緯を語る。
背中を押したのは45年という時の流れ。「アジア大会は今年愛知で開催しましたし、アジア選手権は伊豆半島や奈良で何度も開かれています。でも世界選手権に関してはずっとアジアで行われていなかった。東京2020オリンピックも開催したから国際大会を開ける余地は十分にある。タイミング的には今まさに手を挙げるべきだったんです」。
ニセコとアジア大会 国際大会が続く日本
振り返れば今年の日本は国際大会が多く開催された。8月には北海道ニセコでアジア初となるUCIグランフォンド世界選手権が開かれ、9月から10月にかけては愛知・名古屋のアジア競技大会でトラックからロード、MTB、BMXまで熱戦が繰り広げられている。

8月にニセコで開催されたグランフォンド世界選手権 photo:Makoto AYANO
アマチュアの頂点を決めるニセコの世界選手権には、日本から約300人、海外からは約1,400人が参加したという。「昨年の大会と比べても出場者が多かった。海外からの『日本へ行きたい』というモチベーションが大きかったと思います。ニセコは決してアクセスがいい場所ではないけれど、それでも世界からこれだけの人が集まった。日本にとってかなり大きな意味があったと思います」と別府氏。
「ホビーレースに取り組んでいる方にとってはモチベーションになったし、『世界選に出る』という目標づくりにもなったんじゃないかという気持ちは強くあります」。羊蹄山を望むニセコのコースを世界各国のジャージが走ったあの光景に胸を躍らせたファンも多いはずだ。そしてその熱気は、さらに大きな舞台へとつながろうとしている。
世界の流れも追い風に

UCIが2032年ロード世界選手権のインド開催を発表 (c)UCI 世界の潮流も日本の背中を押している。9月にモントリオールで開かれたUCI総会では、2032年のロード世界選手権をインドのプネーで開催することが決まった。インドでは史上初の開催だ。2028年にはUAEのアブダビでの開催も控えており、欧州中心だった世界選手権のグローバル化は明確だ。45年間世界選手権から遠ざかってきた日本にとっても好機と言える。
招致に向けた動きもすでに始まっている。別府氏はニセコのグランフォンド世界選手権に合わせて、UCI副会長でもあるアジア自転車連合(ACC)の会長のもとへ挨拶に赴いた。モントリオールのUCI総会では橋本聖子JCF会長の代理としてダヴィ・ラパルティアン会長らと言葉を交わしているほか、フランスの自宅はUCIの本拠地があるスイス・エーグルから1時間半ほどの距離で、頻繁に足を運んで直接話ができる環境にあるという。
「交渉は始まったばかりで、決定に向けた動きは2027年。日本開催のメリットを少しずつインプットしていきたいと思っています。まだオープンにはなっていませんが、フランスにいるからこそ、どの国が立候補しているかという情報も持っています」と言う。
日本の武器はこれまで積み重ねてきた開催実績。「グランフォンド世界選手権や今年のアジア大会、来年のMTBアジア選手権。さらにジャパンカップやツアー・オブ・ジャパン、ツール・ド・九州といった国際ロードレースの開催実績もある。45年間世界選手権を開いていないから『そろそろ日本でやろうか』という機運も強まると思います」。
元選手だからこそ伝えられること

JCFの常務理事を務める加地邦彦氏 photo:Michinari Takagi
招致に向けてJCF内にはプロジェクトチームが立ち上がった。「チームリーダーは橋本会長で、国内の事務方は私とJCFの事務局。別府くんには国際系の交渉や調整を手伝ってもらっています」と加地氏は説明する。JOC会長でもある橋本会長が先頭に立ち、競輪界のレジェンドである中野副会長もサポートに加わる布陣だ。
欧州拠点の元プロ選手であることの強み。それは世界選手権の重要性を理解していることにあると別府氏は言う。「国際大会の盛り上がりは日本国内にいる方にはあまりピンとこないものだと思うんです。海外ではこれだけ自転車競技が重要視されているということを伝えていく必要があると感じています」。
「その上でロードレースだけを誘致しても一過性の単発で終わってしまう。スーパー世界選手権は来年のフランス大会でグラベルやエンデューロ、パンプトラックなども加わって20競技規模になります。日本にはトラックもロードもMTBもフリースタイルもある。それを大きなサイクリングの祭典として開催できることは、将来に向けても大きなメリットがあると感じています」。
その言葉の裏には東京2020への思いがある。コロナ禍で多くの競技が無観客となった東京大会は、自転車競技こそMTBやトラックなど一部で観客を入れて行われたものの、大会のレガシーを社会に根付かせる動きは十分ではなかったと振り返る。
「パリやロンドンではオリンピックに合わせてインフラ整備を進めていました。でも日本の場合、東京大会の後に自転車目線で進んだ道路インフラの整備は路肩にブルーラインを引いたくらい。そういうところに2035年大会をつなげていけたら、社会全体の自転車推進を進める上で相乗効果があると思います」。

ヨーロッパの自転車競技界と強いコネクションを持つ別府氏。強い意思を抱いて招致活動を行なっているという photo:Sotaro Arakawa
アムステルダムやコペンハーゲン、ロンドン、パリ、バルセロナといった欧州の大都市では、車を減らして自転車インフラを増やす取り組みが進んでいる。「そうすれば誰にとっても安全で住みやすい環境になる。何より子どもたちが安全に移動できるまちづくりをしなければ未来がなくなっていってしまう。スーパー世界選手権の招致を最終的にそういう文化づくりにつなげていけたらいいですね」。
経済効果は360億円とも言われる。この数字について聞くと、別府氏は九州の例を挙げた。「ツール・ド・九州でも30億円ほどの経済効果が見込まれています。国際基準のデータに照らし合わせれば、360億円以上の経済効果を生むことは可能だと感じています」。放映権にも大きな伸び代があるという。「ツール・ド・フランスは全世界で30億人が視聴しているというデータがあります。でも日本でツールを生中継で見ている人はおそらく0.何%。伸び代はものすごく大きいし、まだまだポテンシャルの高い分野だと思います」。
「ただし自治体の協力がなければ、僕らだけがやる気を出しても実現しないんです。地域に何かを還元できなければ協力する意味がない。だから僕らはいろいろな考え方を練らないといけない。そこですよね」。
ツール・ド・フランスがそうであるように、自転車レースは国や自治体を挙げて地域全体で盛り上げていくイベントだ。だからこそスーパー世界選手権は地域に根付いた活動につなげやすい、そして一過性で終わらせず、その後につなげて発展させていくことが大切だと別府氏は考えている。

東京オリンピックのロードコースは東京都府中市の武蔵野の森公園を出発し、富士スピードウェイにフィニッシュした photo:CorVos
もし日本開催が実現した暁にトラック競技が修善寺開催となることは間違いないだろう。では、ロードレースはどういったコースが想定されているのだろう?
「まだ具体的には決まっていませんが、東京2020では静岡県の富士スピードウェイにフィニッシュを持ってきた。すごくいいコースだったと思うんです。開催地が誇れるような場所を通って、応援しやすく熱狂できる環境に整えたいと思っています。それにスポーツ大会を運営するうえで一番の収入源は放映権です。テレビ中継にもしっかり配慮して、映える風景の中を選手たちが通っていくシーンを映せれば素敵ですよね」。
9年後の主役は今のジュニア世代
2035年は今から9年後。現在のジュニア世代が選手として全盛期を迎える頃であり、世界選手権の開催が叶えばJCFが現在進めているという若手育成プログラムの下地づくりも加速する。育成についてもしっかりしたロードマップを作ることが招致チームの思いだ。

2025年のツール・ド・ラヴニールに出場した日本ナショナルチーム。2026年の出場はなかった photo:Japan Cycling Federation / Sonoko Tanaka
フランスで暮らす別府氏は、ツール・ド・フランスがあるからこそ選手を目指す子どもたちの姿を日々目にしている。JCFは国内初となるUCIグラベルシリーズやeサイクリングの全日本選手権を立ち上げ、今まで日本になかった競技の舞台づくりにも取り組んできた。
「グラベルシリーズやeサイクリングの全日本選手権を作ったことで、世界につながる道が2つ拓けました。それによってアスリートたちのモチベーションが上がったのは肌で感じています。ロードに関しては世界の舞台はまだまだ遠く狭き門ですが、JCFとしてモチベーションにつながる場所を作っていかなくてはいけない」。
自転車を愛するすべての人の後押しを

「世界選招致には自転車に乗る人、自転車を愛する人全員の後押しが必要です」と言い切る別府氏 photo:Sotaro Arakawa
最後に別府氏はこう語った。
「自転車は競技だけじゃなく、もっと生活に関わるものですよね。『ロードレース』と聞くと『競技でしょ』と思われてしまう。それを野球やサッカーのように、もっと身近なものにしていく必要があると思っています。世界選手権の招致が叶えば、あらゆる手を尽くしてそういう方向に持っていきたい。そこには僕らやチームだけじゃなく、自転車に乗る人、自転車を愛する人全員の後押しが必要不可欠なんです」。
ニセコで日本のホビーレーサーたちが世界のアマチュアたちと肩を並べた興奮も、アジア大会の熱気も、9年後のさらに大きな舞台へとつながっている。世界のスーパースターたちが再び日本の沿道を走り抜ける。想像するだけで胸が高鳴る光景が現実になるかもしれない。
text:So Isobe
その一報を聞いて、とにかくワクワクした。きっと同じニュースを目にしたほとんどの自転車好きがそう思っただろう。
日本自転車競技連盟(JCF)今年8月、読売新聞によるJCFの中野浩一副会長へのインタビューで明かしたのが、2035年の「UCI自転車世界選手権」の日本招致を目指しているという構想だ。ロード、トラック、MTB、BMX、グラベル、そしてアマチュアのグランフォンドまで、UCIが管轄するあらゆる種目の世界選手権を一つの国に集めて一挙に開く、通称「スーパー世界選手権」。オリンピックの前年に4年に1度開かれ、2023年のグラスゴーで初開催、来年2027年にはフランスのオート=サヴォワで第2回が行われる。

日本で最後にロード世界選手権が開かれたのはジャパンカップの出自でもある1990年の宇都宮大会だ。アジア初開催だったあの大会から数えれば2035年でちょうど45年。世界屈指のスーパースターたちが一堂に会し、日本でアルカンシエルを争う。9年後、そんな光景が実現するかもしれない。
JCFの理事を務める別府史之氏は、そんな招致プロジェクトのキーマンを務めている。2009年に新城幸也とともに日本人として初めてツール・ド・フランスを完走し、欧州のトップチームで長く走り続けた「フミ」こと別府氏と、国内側の実務を取り仕切るJCF常務理事の加地邦彦氏に、招致に込めた思いを聞いた。
「今が手を挙げるべきタイミングだった」

スーパー世界選手権は2027年のフランス大会に続き、その次の大会もイタリアでの開催が決まっている。だがその先はまだ空白だ。「UCIからも候補になってくれる国を探していた。だから日本も2035年に向けて立候補したいと手を挙げたんです」と別府氏は経緯を語る。
背中を押したのは45年という時の流れ。「アジア大会は今年愛知で開催しましたし、アジア選手権は伊豆半島や奈良で何度も開かれています。でも世界選手権に関してはずっとアジアで行われていなかった。東京2020オリンピックも開催したから国際大会を開ける余地は十分にある。タイミング的には今まさに手を挙げるべきだったんです」。
ニセコとアジア大会 国際大会が続く日本
振り返れば今年の日本は国際大会が多く開催された。8月には北海道ニセコでアジア初となるUCIグランフォンド世界選手権が開かれ、9月から10月にかけては愛知・名古屋のアジア競技大会でトラックからロード、MTB、BMXまで熱戦が繰り広げられている。

アマチュアの頂点を決めるニセコの世界選手権には、日本から約300人、海外からは約1,400人が参加したという。「昨年の大会と比べても出場者が多かった。海外からの『日本へ行きたい』というモチベーションが大きかったと思います。ニセコは決してアクセスがいい場所ではないけれど、それでも世界からこれだけの人が集まった。日本にとってかなり大きな意味があったと思います」と別府氏。
「ホビーレースに取り組んでいる方にとってはモチベーションになったし、『世界選に出る』という目標づくりにもなったんじゃないかという気持ちは強くあります」。羊蹄山を望むニセコのコースを世界各国のジャージが走ったあの光景に胸を躍らせたファンも多いはずだ。そしてその熱気は、さらに大きな舞台へとつながろうとしている。
世界の流れも追い風に

招致に向けた動きもすでに始まっている。別府氏はニセコのグランフォンド世界選手権に合わせて、UCI副会長でもあるアジア自転車連合(ACC)の会長のもとへ挨拶に赴いた。モントリオールのUCI総会では橋本聖子JCF会長の代理としてダヴィ・ラパルティアン会長らと言葉を交わしているほか、フランスの自宅はUCIの本拠地があるスイス・エーグルから1時間半ほどの距離で、頻繁に足を運んで直接話ができる環境にあるという。
「交渉は始まったばかりで、決定に向けた動きは2027年。日本開催のメリットを少しずつインプットしていきたいと思っています。まだオープンにはなっていませんが、フランスにいるからこそ、どの国が立候補しているかという情報も持っています」と言う。
日本の武器はこれまで積み重ねてきた開催実績。「グランフォンド世界選手権や今年のアジア大会、来年のMTBアジア選手権。さらにジャパンカップやツアー・オブ・ジャパン、ツール・ド・九州といった国際ロードレースの開催実績もある。45年間世界選手権を開いていないから『そろそろ日本でやろうか』という機運も強まると思います」。
元選手だからこそ伝えられること

招致に向けてJCF内にはプロジェクトチームが立ち上がった。「チームリーダーは橋本会長で、国内の事務方は私とJCFの事務局。別府くんには国際系の交渉や調整を手伝ってもらっています」と加地氏は説明する。JOC会長でもある橋本会長が先頭に立ち、競輪界のレジェンドである中野副会長もサポートに加わる布陣だ。
欧州拠点の元プロ選手であることの強み。それは世界選手権の重要性を理解していることにあると別府氏は言う。「国際大会の盛り上がりは日本国内にいる方にはあまりピンとこないものだと思うんです。海外ではこれだけ自転車競技が重要視されているということを伝えていく必要があると感じています」。
「その上でロードレースだけを誘致しても一過性の単発で終わってしまう。スーパー世界選手権は来年のフランス大会でグラベルやエンデューロ、パンプトラックなども加わって20競技規模になります。日本にはトラックもロードもMTBもフリースタイルもある。それを大きなサイクリングの祭典として開催できることは、将来に向けても大きなメリットがあると感じています」。
その言葉の裏には東京2020への思いがある。コロナ禍で多くの競技が無観客となった東京大会は、自転車競技こそMTBやトラックなど一部で観客を入れて行われたものの、大会のレガシーを社会に根付かせる動きは十分ではなかったと振り返る。
「パリやロンドンではオリンピックに合わせてインフラ整備を進めていました。でも日本の場合、東京大会の後に自転車目線で進んだ道路インフラの整備は路肩にブルーラインを引いたくらい。そういうところに2035年大会をつなげていけたら、社会全体の自転車推進を進める上で相乗効果があると思います」。

アムステルダムやコペンハーゲン、ロンドン、パリ、バルセロナといった欧州の大都市では、車を減らして自転車インフラを増やす取り組みが進んでいる。「そうすれば誰にとっても安全で住みやすい環境になる。何より子どもたちが安全に移動できるまちづくりをしなければ未来がなくなっていってしまう。スーパー世界選手権の招致を最終的にそういう文化づくりにつなげていけたらいいですね」。
経済効果は360億円とも言われる。この数字について聞くと、別府氏は九州の例を挙げた。「ツール・ド・九州でも30億円ほどの経済効果が見込まれています。国際基準のデータに照らし合わせれば、360億円以上の経済効果を生むことは可能だと感じています」。放映権にも大きな伸び代があるという。「ツール・ド・フランスは全世界で30億人が視聴しているというデータがあります。でも日本でツールを生中継で見ている人はおそらく0.何%。伸び代はものすごく大きいし、まだまだポテンシャルの高い分野だと思います」。
「ただし自治体の協力がなければ、僕らだけがやる気を出しても実現しないんです。地域に何かを還元できなければ協力する意味がない。だから僕らはいろいろな考え方を練らないといけない。そこですよね」。
ツール・ド・フランスがそうであるように、自転車レースは国や自治体を挙げて地域全体で盛り上げていくイベントだ。だからこそスーパー世界選手権は地域に根付いた活動につなげやすい、そして一過性で終わらせず、その後につなげて発展させていくことが大切だと別府氏は考えている。

もし日本開催が実現した暁にトラック競技が修善寺開催となることは間違いないだろう。では、ロードレースはどういったコースが想定されているのだろう?
「まだ具体的には決まっていませんが、東京2020では静岡県の富士スピードウェイにフィニッシュを持ってきた。すごくいいコースだったと思うんです。開催地が誇れるような場所を通って、応援しやすく熱狂できる環境に整えたいと思っています。それにスポーツ大会を運営するうえで一番の収入源は放映権です。テレビ中継にもしっかり配慮して、映える風景の中を選手たちが通っていくシーンを映せれば素敵ですよね」。
9年後の主役は今のジュニア世代
2035年は今から9年後。現在のジュニア世代が選手として全盛期を迎える頃であり、世界選手権の開催が叶えばJCFが現在進めているという若手育成プログラムの下地づくりも加速する。育成についてもしっかりしたロードマップを作ることが招致チームの思いだ。

フランスで暮らす別府氏は、ツール・ド・フランスがあるからこそ選手を目指す子どもたちの姿を日々目にしている。JCFは国内初となるUCIグラベルシリーズやeサイクリングの全日本選手権を立ち上げ、今まで日本になかった競技の舞台づくりにも取り組んできた。
「グラベルシリーズやeサイクリングの全日本選手権を作ったことで、世界につながる道が2つ拓けました。それによってアスリートたちのモチベーションが上がったのは肌で感じています。ロードに関しては世界の舞台はまだまだ遠く狭き門ですが、JCFとしてモチベーションにつながる場所を作っていかなくてはいけない」。
自転車を愛するすべての人の後押しを

最後に別府氏はこう語った。
「自転車は競技だけじゃなく、もっと生活に関わるものですよね。『ロードレース』と聞くと『競技でしょ』と思われてしまう。それを野球やサッカーのように、もっと身近なものにしていく必要があると思っています。世界選手権の招致が叶えば、あらゆる手を尽くしてそういう方向に持っていきたい。そこには僕らやチームだけじゃなく、自転車に乗る人、自転車を愛する人全員の後押しが必要不可欠なんです」。
ニセコで日本のホビーレーサーたちが世界のアマチュアたちと肩を並べた興奮も、アジア大会の熱気も、9年後のさらに大きな舞台へとつながっている。世界のスーパースターたちが再び日本の沿道を走り抜ける。想像するだけで胸が高鳴る光景が現実になるかもしれない。
text:So Isobe
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