埼玉県飯能市で開催された小さなグラベル試乗&レッスン会をレポート。実践的なレッスンを受けながら走る、濃くて楽しいルート。キャノンデールが目指す「グラベルを楽しく広める」という姿勢をたっぷり感じてきました。



キャノンデールほど、日本のグラベルカルチャーを盛り上げようとしているバイクブランドは他にないかもしれない。

本気のレーサーに送るSuper Xと、遊びゴコロを刺激するTopstoneといったグラベルモデルの充実ぶりもさることながら、ニセコや十勝、やくらいといった代表的なイベントには創設期から積極的に携わり、「遊び場」を一緒に作ろうと試みている。

ずらり揃ったキャノンデールのグラベルバイク photo:So Isobe
レッスンはストレッチからスタート。これ、重要なんです photo:So Isobe



サドルにどう座るか、どう目線を作るか。これが滑りやすいオフロードバイクで一番大切な部分 photo:So Isobe

もっと言えばキャノンデールの「顔役」と言っても良い元プロ選手のカズこと山本和弘さんを筆頭に、とにかく中の人は積極的にアソビを楽しむ人だらけ。それはキャノンデール・ジャパンからインターテックへと体制が変わっても一切変わらず、むしろブランドとしての自転車ラブ度はさらに向上しているような気さえする。

そんなキャノンデールが、もっともっと日本のグラベルサイクリストを増やしたい!という思いのもと、グラスルーツ(=草の根)活動を始めていることをご存知だろうか。全国各地のショップを拠点に「Cannondale TEST RIDE WEEK」と銘打った試乗会を開催し、特にグラベル部門ではしっかりとオフロードを走れるフィールドを用意して「グラベルバイクって最近よく聞くけどどういうもの?」というビギナーに扉を大きく開け放っている。

とまあ、ここまではよく聞く試乗会だが、その中でも特徴的だったのが、先の9月27日(日)に市街地型のグラベルフィールドがたっぷりと広がる埼玉県飯能市・入間市周辺を舞台に開催した「Test Ride & Lesson」会。グラベル、という言葉が生まれる遥かかなた昔から、MTBをドロップハンドル化した「モンスタークロス」を筆頭に、独自のカスタムバイクを作ってはダートロードを突っ走ってきたサイクルハウスミカミ店主の三上和志さんを講師&ツアーガイドに呼んで開催した「せっかく試乗するなら、もっと安全に楽しくホンモノのグラベル遊びをしちゃおうぜ」の会なのである。

「いつどんな時も、身体が自転車の中心にあることが大切」と説く三上さん photo:So Isobe

女性も複数名参加されていました photo:So Isobe
タイトコーナーを作ってスラローム練習 photo:So Isobe



午前をビギナー、午後を上級者と分けたそれぞれのプログラムは、三上さんが入間市の自転車活用まちづくりの事業の一環で使わせてもらっていると言う「入間市文化創造アトリエ AMIGO!」を会場に講習からスタート。グラベルの走りかた、の前に、準備運動やストレッチから始めるのが普段からクラブ員やお店のユーザーを対象にしたレッスンを開催している三上さん流だ。「ええ、そこから?」と思うなかれ、その全てが「ここを伸ばしておくと、もし滑って足をついたときに怪我しにくくなるんですよ」というような実践的な内容だ。「走る方法」も乗り方と降り方から始まって、重心の考え方、バランスの取り方と、単純なコーナリングやペダリングのレクチャーとは一味違って、滑ったり凹凸がたくさん存在するオフロードを攻略するための「考え方」そのものを伝授してくれるのだ。

「特に急な下りでは前傾姿勢が深くなるから目線も上目になる。だから視線を遮るキャップは被らない方が良いですよ」だなんて、言われてみれば確かにそりゃそうだ!ということも少なくない。ここで全てお伝えするのは到底無理だけれど、すべての内容は、三上さんの「オフロードはまっすぐ走るより少しでたらめに走ったほうが楽しい。ふざけて走っても危なくないようにする練習なんです」という思いの上に成り立つものだ。

レッスンが終わったらコースへ。と思ったらすぐに水たまりをコーナーに見立てて練習&FUN!いつまで経っても前に進まないのが三上さん流(笑) photo:So Isobe

コースには川渡りも。三上さんがウン十年開拓を続けてきたナイスルートだ photo:So Isobe
「グラベル楽しい!」 photo:So Isobe


メインコースは河川敷のフラットグラベル。スピードを上げたり、脇道にそれてみたり photo:So Isobe

午前・午後は、三上さんの目が行き届くように10名ほどの少人数制。ビギナー班が走ったのは約10kmのルートだ。河川敷、農道、住宅街のちょっとした裏道、そして森区間と、市街地と自然が絶妙に入り混じった区間を繋いでいく。かく言う筆者の磯部も、三上さんにそそのかされてこの最高な自転車環境が広がる飯能エリアに移住した身。走りながら聞こえてくる参加者たちの「こんな道があるんだ!めっちゃ楽しい」という声には、自分のことのように嬉しくなってしまう。

要所要所で立ち止まってはその場に合わせた実践的なレクチャーが差し込まれる。距離だけ見れば拍子抜けするかもしれないが、その中身の濃さは、とても「10km」という数字には収まらず、メーターの距離を見て「えっ、たったそれしか走っていないんですか!」という人が多数だった。「アドバイス一つもらうたびに怖くなくなりました」という嬉しい声も。午後に開催された上級者でも多くの「楽しかった!」という声が聞こえてきたのでした。

あちこちで始まる即席レッスン。「せっかくのグラベルバイクは、こういう遊びをしないとつまらないですからね」と三上さん photo:So Isobe

イベントを企画したキャノンデールの福田暢彦さん。昨年はアンバウンドのXLを完走した photo:So Isobe
この前日、イベントを企画したキャノンデールのマーケティング担当、福田暢彦さんは北海道のニセコグラベルを視察していた。それでも「グラスルーツのイベントを大切にしたい」という思いから、千歳発20時50分の便に飛び乗ってやってきたのだという。ズイフトからキャノンデールへ移籍し、昨年はアンバウンドのXLクラス(約580km)を完走した経歴を持つ、根っからのグラベル好きだ。

なぜキャノンデールはビッグイベントだけではなく、こういったスモールイベントにも力を入れるのか。福田さんに聞いた。

「グラベルはロードと比べてリスクが高いので、基礎から学んでもらった方がより長く楽しんでもらえる。それに、学んだ分だけ遊べるフィールドもどんどん広がっていくんです。だから僕らは、ただ試乗してもらうだけじゃなくて、乗り方も簡単に紹介しながら、フィールドで楽しく遊べる手助けをしたい。こういう活動は、今後もっと力を入れていきたいですね」。今回、三上さんとタッグを組んだ理由もそこにある。「三上さんはこのローカルの人たちと長い付き合いの信頼関係があるし、フィールドも関東近郊としては抜群。一発目としては本当に良かった」。今後は福島の「おむすびグラベル」や埼玉の「定峰峠ヒルクライム」への協賛なども予定しており、各地でローカルの人と付き合いながら、良いフィールドを一緒に探していきたいという。

「業界で一番、中の人が走っている会社でありたい」と福田さんは言う。今回の舞台となったTEST RIDE WEEKも、誰かの号令で始まった企画ではなく、自然発生的に始まったプログラムだという。その根っこにあるグラベルの魅力を尋ねると、こんな答えが返ってきた。「面白さって仲間で決まる部分がかなり多い。美味しいものとか、僕はお風呂やサウナが好きなんですけど、そういうのも組み合わせやすいですよね。見たことない場所で知らない土地のものを食べられるのは、人を豊かにすると思うんです。自転車ってただ速いだけの道具ではなく、人生を豊かにするための道具ですから、道具のことばかり語ってもしょうがない。その道具で何ができるのか。そこが一番重要だと思っています」。

たっぷり時間をかけて10kmコースを走破。お疲れ様でした! photo:So Isobe

筆者も自前のTopstone Carbon(初代)を持ち込んで走りました。いいバイクです photo:So Isobe
終了しても全然解散しない参加者の皆様。いいイベントだった証拠です photo:So Isobe



数字だけ見ればどこにでもあるような小さな試乗会だったけれど、その中身はとてつもなく濃いものだった。キャノンデールにとって、大きな遊び場を作ることと、小さな遊び場を大切にすることはまったく矛盾しないものらしい。

text:So Isobe