ロード世界選手権の男子U23ロードレースは、逃げ集団から飛び出したアシュリン・バリー(アメリカ)が30km独走。元スカイのマイケル・バリーを父に持つ19歳が、自らの誕生日にアルカンシエルを手に入れた。



日本代表として出場した新藤大翔と山里一心 photo:CorVos

9月25日に行なわれたロード世界選手権の男子U23ロードレースは、各国から集った176名によって争われた。コースは他のカテゴリーと共通で、カミリアン・ウード(距離1.67km/平均7.4%)やポリテクニーク(距離0.78km/平均6%)を越える1周13.4kmのコース。これを13周する174.2kmで行なわれ、獲得標高差は3,497mと難易度は高い。

タイムトライアルを制したライアン・ハル(オランダ)が不出場となるなか、注目されたのは直近のロット・グランプリ・ド・ワロニー(UCI1.Pro)でワールドツアーの強豪たちを退けたオーバン・スパルフェル(フランス)だ。さらに、ブラッドリー・ウィギンスを父に持つベン・ウィギンス(イギリス)の動きも注視されるなか、日本からは山里一心(シマノレーシング)と新藤大翔(HPCJC-BRIDGESTONE ANCHOR)が参戦した。

現地時刻で朝9時にスタートしたレースは、序盤から逃げを目指した激しい動きが続く。2周目で形成されたのは、6名で臨む強豪フランスが2名を送り込んだ13名の逃げ集団。後続ではウィギンスを含む追走集団も出来上がったものの、メイン集団が追走集団を吸収し、さらに逃げ集団も捕まえたため、レースは4周目にして振り出しに戻った。

5名の逃げグループを形成したアシュリン・バリー(アメリカ)たち photo:UCI

直後にサムエル・ノヴァク(スロバキア)が飛び出し、これに4名が反応。その結果、5名による新たな逃げ集団が形成される。この中には、リドル・トレックの育成チームに所属し、来年よりウノエックス・モビリティでプロデビューを果たす予定のクリスティアン・エグホルム(デンマーク)や、ヴィスマ・リースアバイクの育成チームで走るアシュリン・バリー(アメリカ)など、強豪が含まれた。

逃げ集団は順調にリードを広げ、6周目に入った残り93.8km地点でその差は2分を越える。そして残り75km地点、7周目に入ると、逃げからマシュー・ドッド(イギリス)がアタック。集団は再び一つにまとまったものの、この動きでプロトンとの差が1分45秒まで縮まる。そして10周目に入り、カミリアン・ウード(距離1.67km/平均7.4%)の登りで、今度はクリスティアン・エグホルム(デンマーク)が仕掛けた。

終盤に単独先頭に立ったアシュリン・バリー(アメリカ) photo:CorVos

脚が削られてきたタイミングでのエグホルムの仕掛けには、バリーしか反応できなかった。先頭交代をしながら順調に距離を消化していく2名に対し、後続ではプロトンが追走集団を吸収し、ベルギーとスイスがペースを作る。その結果、残り30kmでその差は30秒まで縮まり、危険を察知したバリーが加速して単独先頭に立った。

この日が19歳の誕生日だったバリーは、192cmという長身を活かしたパワフルなペダリングで、一度縮まったプロトンとのタイム差を再び広げた。後続ではアタックと吸収が繰り返され、牽制もあって足並みが揃わない。有力と目されたスパルフェルを含む5名の集団が形成され、追いかけたものの、最後までその差を詰め切ることはできなかった。そしてバリーがガッツポーズと共に勝利を手に入れた。

30kmの独走を決めたアシュリン・バリー(アメリカ) photo:CorVos

このカテゴリーで北米に初となる金メダルをもたらしたアシュリン・バリー(アメリカ) photo:CorVos

ディスカバリーチャンネルでは別府史之氏とチームメイトで、チームコロンビアHTCを経て、スカイ・プロサイクリング(現ネットカンパニー・イネオス)で走ったマイケル・バリー(カナダ)を父に持つアシュリン・バリー。母親のディディ・デメト=バリー(アメリカ)も元プロ選手であるため、バリーはまさにサラブレッド。カナダとアメリカの両方の国籍を持つが、2023年に競技ではアメリカ国籍を選択。そして男子U23ロードレースではアメリカ人として初めて、さらには北米勢としても初めてアルカンシエルをもたらした。

「登り坂で強い選手たちについていけるほどの力はないと思っていた。単独になってからはとにかく全力で踏み続けた。正直、最終周回の最後の丘を登り切るまでは、勝てるなんて思っていなかった。だから信じられない気持ちだ」とレースを振り返ったバリー。「まるでホームレースのようで、たくさんの友人や家族が見えた。コース脇では愛犬の吠える声まで聞こえていたよ」と語った。

アルカンシエルを手に入れたアシュリン・バリー(アメリカ) photo:UCI

銀メダルを争うスプリントはエクトル・アルバレス(スペイン)が制し、銅メダルはイェスペル・スティアンセン(ノルウェー)が獲得。一方、新藤と山里は途中棄権に終わっている。
ロード世界選手権2026 男子U23ロードレース結果
1位 アシュリン・バリー(アメリカ) 4:17:35
2位 エクトル・アルバレス(スペイン) +0:53
3位 イェスペル・スティアンセン(ノルウェー)
4位 オ-バン・スパルフェル(フランス)
5位 ニールス・ドリーセン(ベルギー) +0:55
6位 マッテオ・スカルコ(イタリア)
7位 マッティア・ネグレンテ(イタリア) +1:19
8位 リハルド・リシュカ(スロバキア)
9位 エラゼム・ヴァリヤヴェツ(スロベニア)
10位 ジャック・ワード(オーストラリア)
DNF 新藤大翔
DNF 山里一心
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos