8月22・23日に宮城県加美町で開催されたグラベルクラシックやくらい。1日目のレースに続いて2日目はグループライドだ。やくらい周辺一帯の広域に設定されたダイナミックなルートを仲間と一緒に完走を目指す。困難な道にグループで挑み、走り終えた先に待つのは大いなる感動だ。



夜が明けないうちからライダースミーティングだ photo:Makoto AYANO

レース部門が日本初開催のUCIレースとして大きな話題を呼んだグラベルクラシックやくらい。2日目の「EXPLORE GRAVEL GROUP RIDE YAKURAI」は、タイムや順位を競わず、グループで完走を目指すアドベンチャーライドだ。

やくらいグラベルのオリジン種目であるグループライド。ルール的には1チーム3~5名のチーム編成で出走。ソロエントリーもできるが、ソロの参加者同士でチーム編成を行い、あくまでグループで走るというもの。たとえ仲間のアテが無い独りぼっち状態で申し込んでも、主催者側でグループをアレンジしてくれるのだ。

野球のユニホーム的なコスチュームで揃えた2チーム・10人
地元のメンバーで揃えたチームYAKURAI



コースはロングとショートの2つ。プロフィールは以下のとおり。

・ロングコース:103km、獲得標高2,180m、グラベル率52%
・ショートコース:57.2km、獲得標高1,250m、グラベル率56%


走り方の決めごとは、グループメンバーでジャージを揃えて参加すること(揃えるのはトップスだけでもOK)。チーム全員が一緒に走行し、チェックポイントでも全員揃ってスタンプをもらうこと。

UCIグラベルレースで使われたゲートがスタートだ photo:Makoto AYANO

走行ルートはサイコンなどGPSデバイスにルートデータをインストールしたうえでセルフナビゲートで走る(ルート上に看板等は無い)。なおロングコースはドロップハンドル車(グラベルロード、シクロクロスバイク、ロードバイクなど)のみ参加という車両条件となり、ショートコースはマウンテンバイク、E-Bikeでの出走も可能となっている。今回はロングコースを追いかけて取材した。

チームHANGOVERの皆さん
Xのサインを見せるRXグラベルチーム



当日のブリーフィング(走行説明会)は夜明け前の朝4時半から。スタートは5時で、ほぼ夜明けとともに走り出すことになる。ロングコースの制限時間として18:00までにフィニッシュすること。

レースと同じゲートをくぐりスタートしていく
畑の中にはこんな看板が掲げられていた



今年から招集&スタート地点はレースと同じ陶芸の里スポーツ公園となり、前日にレースで使われたスタート&フィニッシュゲートが使われるのがゴキゲンだ。MCさんにチーム紹介を受けながら、1チームずつ1~2分間隔で走り出していく。ちなみにロングコースには38チーム・153名が出走、ショートコースには31チーム・119名が出走した。

レースでもコースになったグラベルで鳴子温泉を目指す photo:Nobuhiko Tanabe

この日は走りはじめからあいにくの雨。しかし霧のような小雨で気温も高く、寒くないのは幸いだ。過去には途中で降り出した豪雨に、夏だというのに幾人かが低体温症になってしまうほど冷え込んだこともあるのだ。

前日のレースで優勝した沢田時選手と奥さんも走る! photo:Nobuhiko Tanabe

走るルートは毎年変わるのが通例。今回はスタートしてまずレースのコースにもなった序盤の林道へと進んでいく。長い舗装路の上りから先は整った砂利のグラベル林道が続き、そのまま北上し、鳴子温泉に抜けるまでずっと深い森の中を進み続ける。

パノラマポイントでの視界は真っ白... photo:Nobuhiko Tanabe
大会に欠かせないキャノンデール・ジャパンチーム



午前のうちは小雨が降り続き、補給地点も何もない森のなかを進む。つまり朝ごはんをしっかり食べておく必要があるルートだ。渡渉(川渡り)も何箇所かあり、冒険心を掻き立ててくれる。

チームBrompton Japanは小径車で走る! photo:Nobuhiko Tanabe

この長い長い第1パートは鳴子温泉までの距離32km。ほぼグラベルだからじつに3時間かかる道のりだ。雨がずっと降り続いたが、林道の荒れは少なかったようだ。

チェックポイントでは全員揃ってスタンプを押してもらう photo:Nobuhiko Tanabe
チームDTスイス&マルイの皆さん photo:Nobuhiko Tanabe



鳴子に出れば、国道47号線沿いや鳴子温泉街の入口にコンビニがあるので、そこで大休止の買い出し補給をするのも通例だ。

鳴子温泉の道沿いにはこけしがたたずむ photo:Makoto AYANO

スゴイカッコイイCX東北チームの皆さん photo:Makoto AYANO

そこからは大谷川に沿って国道47号線をひた走る。道沿いに名物の巨大なこけしが微笑むようにたたずむのがシュールだ。国道沿いに点在する温泉宿を眺めつつ、川沿いを遡る。グラベルライドといっても舗装路を併用して距離を伸ばすのがツーリング的な味わいを増す要素になっている。

味のある川沿いの道で森へと向かう photo:Makoto AYANO

中山平温泉からは再び森へと向かっていく。ホタルで有名な里へと続く田舎道はグラベル未満の舗装路で、ほとんど通行するクルマもなく、霧の深い天気もあいまって神秘的な雰囲気だ。チームで揃って走っていると、かつてこのイベントの前身が、2022年には「ラファ・エクスプロア プレステージ」だったことを思い起こさせてくれる。

鬱蒼とした雰囲気のある道を進んでいく photo:Makoto AYANO

そう、さらにその以前の2021年には、3Tが世界で展開したグラベルイベントシリーズのJEROBOAM(ジェロボーム)ジャパン・グラベルチャレンジだったこともあり、それがやくらいがグラベルイベントを迎えた初めてのことだった。以来この地は、運営形態を変えながら、日本におけるグラベルイベント発祥の地として受け継がれてきたのだ。

のどかな田舎道でホタルの里を抜けて森へと進んでいく photo:Makoto AYANO

エリア一帯に広がる森を自転車で走り放題できるのには理由がある。もともと林業が盛んなこの一帯。走行ルートになっている林道を管理する林業に携わる業者さんや自治体の理解と懐の深さがあって、イベントに対して林道を解放してくれているのだ。楽しく走りつつも、こうした地元の協力があってはじめてイベントは可能になる。そんな背景があることは留意しておきたい。

クルマの来ない、のどかすぎる田舎道でチームワークを披露する photo:Makoto AYANO

道は徐々に勾配を増していき、細い山道になる。岩堂沢ダムへと長い上りが続く。ダム湖に出るまでの二ツ森トンネルはとても長く、暗くて涼しいトンネル道がえんえんと続く。その先が行き止まりなのでクルマの通行はほぼ無く、この日はトンネル道が自転車の専有状態。トンネル特有の音の反響で遊ぶように、大声で歌いながら走る愉快なグループも。

虫よけのオニヤンマ君をダブルで装備!
スタッフは熊撃退スプレーを携帯している



岩堂沢ダムから先のグラベルは普段は走れないという photo:Makoto AYANO

トンネル先の広場から湖畔道路を進めば、そのままグラベルへと入っていく。ここからは折り返しで、加美町に向けて下り基調だ。

田代キャンプ場のエイドでは美味しいグルメが楽しめた photo:Nobuhiko Tanabe

砂利の走り心地のよさに思わず笑顔になる photo:Makoto AYANO

レースでも使われたルートをかすめ、加美町のある盆地へと戻ってきた。視界の先に小さな富士山のような容姿の薬莱山(やくらいさん)が見えてくる。

薬莱山に向かって白い道=ストラーデ・ビアンケが伸びる photo:Nobuhiko Tanabe

午後になって雨は止み、高原のような開けた草原に出ると、そこに白いグラベル道がくねりながら彼方まで続いているのが見える。やくらいグラベル名物のストラデビアンケ=「白い道」だ。その先の鞍部にはカウチソファが置かれていて、そこでグループメンバー揃っての記念写真を撮るのがお約束だ。

開けた草原に伸びる白いグラベルを走る photo:Makoto AYANO

このご褒美的なグラベルの路上で、公式フォトグラファーの田辺信彦さんらがチームごとにグループフォトを撮ってくれるのだ。今年はハヤサカサイクルSNSスタッフによる動画収録もあり、その様子は後ほどハヤサカのYoutubeチャンネルに動画コンテンツとしてアップされるようだ。

ストラーデ・ビアンケのソファで記念撮影を photo:Makoto AYANO

例年ならライドの最終盤にあるこのソファでの記念撮影だが、今年はさらにグラベルがもう1区間用意してあるという。残り28kmは、短いようでいて長いことが後になって分かる。

アロハシャツが正装の新潟CSサカモトの皆さん
整った砂利グラベルを走れば笑顔がこぼれる



最終エイドとなったペンションKAMIFUJI前の広場では、冷たくて美味しいスムージーが振る舞われ、踊りながらスコップを振り回して歌う「スコップ三味線」のバンド演奏が楽しめた。青森県津軽地方の宴会芸が発祥らしいが、参加者を鼓舞してくれるロックな演奏は、微笑ましくも元気が出ました!

サイクルパークO2の皆さん photo:Makoto AYANO

ペンションKAMIFUJI前の広場ではスコップ三味線の演奏が励ましてくれた
Tシャツでコスチュームを揃えたチームKANEHACHIの皆さん



ここからフィニッシュまでは25km弱。しかしせっかく加美町内に下ってきたのに、ルートはもう一度山に戻るように折り返し、最後のグラベル区間へと向かう。

過酷だった最後のグラベル区間は完走のスパイスになった photo:Nobuhiko Tanabe

この最後に控えていたグラベル区間がかなりの難路で、登り勾配がキツく、じつは全ルートの最高標高となる609mまで登ることになる。そして下りのグラベル路面は酷く荒れているというスパイスの効いたもの。最後の最後の難関に「思わず心が折れそうだった」と話す人も。

世界農業遺産になった「大崎耕土」を眺めながらのライドだ photo:Makoto AYANO

フィニッシュはグループ全員で。これは2チーム揃って10人でのフィニッシュ! photo:Nobuhiko Tanabe

陶芸の里スポーツ公園へとフィニッシュすれば、完走証とカウベルのご褒美がもらえる。会場のフードトラックで食事を楽しみ、最寄りの温泉で汗を流すのが恒例。14時前後のフィニッシュで速く走った人も、制限時間ギリギリで日暮れ近くまでかかって走ることになったグループも、訊けばどちらも相当に過酷な体験をしている。

スゴイカッコイイCX東北チームのフィニッシュ
cycleclub3UPの皆さん。男性2人は前日のレースも走って今日はロングコースを完走



毎年のように参加しているグループに話を聞いてみれば、それでも例年よりはずっと楽なルート設定だったと聞いた。ちなみに前々回は過酷で、日没後までナイトランを強いられたグループもいくつかあったから、例年より多少は難易度の低いルートだったことは確かだろう。

もっとも参加者のグラベル適性も年々上がり、走り慣れてきている感もある。このグループライド、毎年走り終えると「キツかった」という感想が聞かれるが、今年に関して言えば鳴子〜岩堂沢ダム間の舗装区間が長く、距離の割にグラベル率と獲得標高、難易度は低めだったことで、完走率は高まったと言えそうだ。

完走の参加賞はUCI大会ロゴ入りのカウベル photo:Makoto AYANO
フィニッシュではフードトラックが待っているのも嬉しい photo:Makoto AYANO



それでも前日のレースとあわせてダブルエントリーした人は疲労困憊で、両日ともロングコースを完走できた人は本当にタフ。なかにはダブルエントリーするも前日のレースの疲労が抜けず、出走できなかったという人もちらほら(とくに海外参加者)。

訊けば2年連続で連日走った人のなかでは2日目のショートコースの人気が高かったようで、もしダブルエントリーで土曜にレースに出るなら日曜は仲間たちとショートコースを走る、というのがオススメのようです。

「大成功の2日間。来年はレースとグループライドの両日参加できるようにルートを再設計したい」
オーガナイザー菅田純也さん(ハヤサカサイクル)


大会オーガナイザーの菅田純也さん(ハヤサカサイクル) photo:Makoto AYANO
前日にレースがあることを考慮して、グループライドのルートはあえて難易度を下げたんですが、前夜から雨が降り続いたことで過酷さが増してしまったようです。それでもフィニッシュタイムには余裕があり、完走率も高かったようです。鳴子はじめ自治体の支援もあり、一帯の大自然を堪能してもらえたと思います。

今年はレースに220人、グループライドに280人と、合計500人以上の方に参加していただきました。初開催にこぎつけたUCIレースの成功、そしてグループライドも昨年より参加者が増えて大いに盛り上がりました。大きな事故もなく、2日間の大会は成功だったと言えます。

次回のグループライドはレースとのダブルエントリーでも楽しめるよう、ロングもショートも少し距離を短めに、難易度も下げようと考えています。グラベル初心者の方でも参加しやすいように走りやすくしたいですね。

薬莱山をバックにカウチソファでグループフォト photo:Nobuhiko Tanabe

そしてレース部門で上位25%の枠に入ってUCIメダルを授与された人で、10月のオーストラリアでのUCIグラベル世界選手権に出場するという人が把握しているだけで20人以上いるようです。日本初開催のレースで早速そうした流れが作れたことは本当に嬉しいことです。

2027年のフランスでのUCIグラベル世界選手権は8月の第4週目開催ということで、その日本予選になるグラベルクラシックやくらいの開催日は7月31日-8月1日になります。来年はさらにコースを刷新し、今回好評だった農道グラベルのような区間を増やし、より集団走行のレースができるようにと考えています。また「グラベルの聖地やくらい」で皆さんにお会いできることを楽しみにしています。

text&photo:Makoto AYANO

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