日本大学自転車部のOB会を主体としたメンバーが、同部の活動基盤の強化と長期的な発展の支援に向け、「一般社団法人クリムゾンサイクリングアカデミー」を設立。そのファーストスポンサーとして株式会社チャリ・ロトを迎え、8月25日(火)に渋谷スクランブルスクエアにて記者会見を行った。



2026年8月8日(土)に設立されたクリムゾン社の代表には、日本大学自転車部のOBであり、現監督を務める我妻敏(あずま さとし)氏が就任。この日、会見に臨んだのは、その我妻氏と、株式会社チャリ・ロト代表取締役の石原洋輔氏、日本大学2年で自転車部所属の木綿崚介(もめん りょうすけ)、そして今年競輪選手としてデビューした同部OBの沢田桂太郎(大分、129期)の4名。はじめに我妻氏と石原氏による会見、続いて2選手によるクロストークのコーナーが設けられた。

左から、チャリ・ロト代表取締役の石原洋輔氏、沢田桂太郎、木綿崚介、日大監督でクリムゾンサイクリングアカデミー代表の我妻敏氏 photo: Yuichiro Hosoda

会見冒頭で我妻氏は、「自転車競技に打ち込み活躍できる環境を作るためには、大学や学生、保護者と言った従来の環境だけでなく、OBや企業、様々な方々と一緒に支えていく仕組みが必要と感じていた」と述べ、「従来通りのトレーニング環境を維持するだけでなく向上させ、選手がより高いレベルで活躍できる環境を作りながら、保護者の経済的負担が最も少ないチームを実現させたい」と話した。

氏は、学生の自転車競技の発展に向けては2つの課題があるとしている。

1つ目は、自転車競技は継続のための経済的負担が大きいという点。出費は自転車本体やメンテナンス費、国内外の遠征費など多岐かつ多額となり、保護者の負担が重い。氏はこれを軽減し、保護者の経済的負担が最も少ないチームを実現させたいと考えている。

2つ目は、学生アスリートのキャリア形成。卒業後もプロチームや実業団、競輪などで競技を続ける道もあるが、それを選択できる学生は限られている。そのため、競技経験を活かしながら一般企業も含めた多様なキャリアを選択出来る環境が必要だとする。

これらは学生のみならず、国内の自転車競技全般における課題と見る事も出来る。こうした課題に対し、新法人を通じてOBや団体、企業からの支援を受け入れる事で「学生が競技に打ち込み、力を発揮出来る環境を整えていきたい」と我妻氏は話し、チャリ・ロトとの連携は、その第一歩と位置づける。

質疑応答に応じる我妻敏氏 photo: Yuichiro Hosoda

チャリ・ロトは、競輪場の包括運営や整備事業をはじめ、競輪とオートレースの投票サイト「チャリ・ロト」の運営を行う企業だ。同社は、活動資金や競技に必要な物品の提供に加え、インターンシップ等を通じ、学生のキャリア形成についても協力して行くとのこと。この連携により競技用品にはチャリ・ロトのロゴを掲出する他、双方の取り組みを通じて、自転車競技の魅力や価値を発進していくとしている。

また、クリムゾン社は、社の中長期的ビジョンとして、今回発表された自チーム(日大)の育成と強化・支援の向上を、第1フェイズと位置づけている。

我妻氏が掲げたフェイズは3つあり、第2フェイズは自チームのみならず、様々な世代、特に小さなジュニア世代の育成も視野に入れること。

第3フェイズは、大学院や研究者を目指す競技者を支援をしていくこと。我妻氏は、これまでの国内自転車競技の状況を、「自転車競技は欧州を中心としたスポーツであるため、今までは欧州の取り組みを日本に輸入、あるいは類似した形で取り込み、ツール・ド・フランスに日本人を送り込もうと活動したり、成績を向上させていこうと言う形だった」と振り返る。

しかし「欧州のスポーツサイエンスを超えない事には、本当の意味で日本が欧州スポーツを超える時は来ないのではないか」と我妻氏。そういった意味で「日本のスポーツサイエンスを推進し、打開していくような研究者を支えることが、日本の自転車競技を底上げする営みになる」と、目標を掲げた。

石原洋輔氏が記者からの質問に答える photo: Yuichiro Hosoda

一方、チャリ・ロトの石原氏は、今回の連携に至った経緯をこう話す。「競輪にかかわる企業として、競輪の枠に留まらず、自転車競技全体での発展や、次世代を担う選手達の育成にも貢献していきたいと考えた」。また、その事を通じて目指すのは「学生選手の挑戦を支え、未来を広げること」とも。

そのために石原氏は、競技とキャリアの両面から学生を後押ししたいと考えている。まずは彼らが少しでも安心して競技に打ち込める環境を整えたい、と言う主旨から競技活動支援金を提供。物品についても学生にヒアリングした上で、必要なものを支援、日々の活動に必要なヘルメットやボトル、練習着などを順次提供する。

チャリ・ロトのロゴが入ったKabutoのエアロヘルメットAERO-SP4LWとボトル photo: Yuichiro Hosoda

もちろんスポンサーと言う立場であるため、練習や大会等で同社のロゴが入った提供品を使用してもらうことで、競技に取り組む学生やファンに同社を知ってもらう新たな接点になるとも考えているそうだ。

石原氏は結びに「自転車競技に取り組む選手の裾野が広がり、その中から競輪を選択肢として考える学生が増えることは競輪業界の発展にも繋がる。キャリア面では、競技に打ち込む学生が、自分自身の将来について考える機会を持つことも大切だと考えている。そのため同社では、インターンシップの受け入れを通じてその機会を提供していきたい」と話した。

インターンシップについては、現時点で学生アスリートにそう言った機会自体が少ない事を案じており、キャリア支援については「まずはここから」と考えているようだ。

チャリ・ロト代表の石原氏から木綿崚介に協賛品のヘルメットが手渡された photo: Yuichiro Hosoda
木綿崚介が、提供されたヘルメットを被り、石原氏と握手を交わす photo: Yuichiro Hosoda


フォトセッションを行う4氏 photo: Yuichiro Hosoda



木綿崚介と沢田桂太郎によるクロストーク

2者の会見の後は、現役学生の木綿崚介と、競輪選手としてデビューしたばかりの同大OB沢田桂太郎がクロストークを実施。自転車競技に入るきっかけや魅力、今回の取り組みについて語った。

今年、競輪選手としてデビューした沢田桂太郎(大分、129期) photo: Yuichiro Hosoda

沢田桂太郎

当初は陸上競技をやっていましたが、中学の時に自身の伸びしろを感じなくなってしまい、新しい競技を始めたいと思ったのがきっかけです。当時、父親がトライアスロンをしていて自転車が身近にあって、自分自身も自転車で走り回ることが好きだったので、自転車競技を始めました。その魅力は、他の競技ではなかなか見られないスピード感だと思います。

自転車競技は機材の調達から大変で、遠征も含め金銭面でとても親に苦労をかけました。在学途中からブリヂストンに所属したので、そこからはチームに頼れましたが、そこに至るまでが本当に大変でした。今回始まった活動によって、学生トップクラスで戦うことはもちろんですが、多くの選手や保護者の皆さんが、もっと競技を頑張っていけるような状態になれば良いなと思っています。

(自身のキャリアについて)僕はトラック中距離やロードレースで選手をしてきました。競輪は昔から全国に競輪場もあって知られているけれど、ロードレースは以前より名が知れてきたとは言え、まだまだマイナースポーツだと感じています。

自分はロードレースで育ってきたので、その魅力をもっと伝えたい。競輪は元々人気がある分野なので、それを見ているお客様からロードレースにも興味を持って頂けたらなと。また、競輪にも魅力がありますので、そちらにロードを見ているお客様が来て、と言う、お互いのファンの架け橋的存在になれたらいいなと考えて、ロードレースと競輪の二刀流で頑張っています。

木綿崚介

日本大学2年生で自転車部所属の木綿崚介 photo: Yuichiro Hosoda

僕は北海道出身で、周りの人達がウィンタースポーツの夏場のトレーニングとして自転車に乗っていました。自分は小さな頃からそれについて行ったりして自転車に触れ合う機会が多く、楽しかったので、自転車競技に入っていきました。

自転車競技の魅力は個人の力だけでなく、チームの戦略などによって強い選手に勝てる可能性がある点だと思います。ただ、学生ゆえに自分達自身で収入を得ることが出来ないのが弱み。金銭的問題で競技を続けられなくなっていく事が大変な点です。

今回の連携でヘルメット等の供給をして頂けることは、経済的負担を減らしながら競技を続けられることに繋がる。学生間でよく話す悩みは、僕たちは競技を高校、大学とやってきているために、自転車をやめた後に何をしたら良いのかわからないと言う事。なので、インターシップなどを通じて、社会や企業の活動を知ることは、卒業した後のキャリアに選択肢が広がる機会になります。

今回のような企業などとの連携を通して、経済的不安や卒業後のキャリアへの不安がなくなり、競技へ集中できる環境が整っていけば良いなと思います。



最後にもうひとつ。会見終了後に時間を設けて頂き、沢田桂太郎への単独インタビューを行う事が出来た。8月17日(月)付けで発表されたチャリ・ロトによる個人スポンサードである「チャリレンジャー」契約に至った経緯と、ロードレーサーとしての現時点での活動状況について話を聞いた。

女子オールスター競輪の最終日、男子ルーキーシリーズプラスを制した沢田桂太郎(大分) photo: Yuichiro Hosoda

沢田:(チャリ・ロトのスポンサードを受けた経緯は)日大の先輩がいらしたり、(日本競輪選手)養成所卒業時の成績を見て頂いていて(卒業記念レース優勝、在所1位)、新規候補の中に名前が挙がっていると言うのを聞いていました。その後、競輪選手になった時に声をかけて頂いて、全く断る理由もなかったため、お受けさせて頂きました。

今後の活動としては、同社のYouTubeの番組に出させて頂いたり、ウェアを提供頂いたり。主には自分の選手としての価値を高めて頂いているような感覚です。スポンサードしてもらっていると言うことで、自分も頑張らなければいけないと言う気持ちにもなりますし、実際メディアに出させて頂く機会が増えるので、ファンの皆様にも知って頂けるきっかけになり、自分のプラスになると考えています。

どちらかと言うとチャリ・ロトから(直接)ロードレースへ、と言う流れは難しいと思うんですけど、競輪を見てくださっているファンの皆様が、チャリ・ロトから自分のことを知り、間接的にロードレースを見る、と言う事もあると思いますし、やはりファンが増えるとロードレースやトラック競技を見てもらうきっかけも増えると思うので、応援して頂けたらなと思っています。

スパークルおおいたでまだ確定しているレースはないのですが、クリテリウムだとか(距離が)短めのレースをメインにと考えています。まだ養成所から出てきたばかりと言う事もあり、「一旦今は競輪に集中していいから」とチームからも言って頂いて、今年前半は競輪に集中してやってきました。今年の主力メンバーとしては入ってないんですけど、年内後半戦や来年のレースで出られるものは出て行きたいなと思っています。

text&photo: Yuichiro Hosoda