2010/08/07(土) - 14:26
世界有数のカーボンホイールメーカーであるコリマより、ロードレースで使うことができるコンプレッションホイールが登場した。その名もエアロプラスMCCという。わずか12本のカーボンスポークとカーボンディープリム、カーボンハブによって構成される最新ハイエンドモデルである。
コリマ エアロプラス MCC フロント
コリマ エアロプラス MCC リア
高い技術力を誇るコリマは1973年に設立した、カーボンホイールやタイムトライアル用フレームなどが有名なフレンチブランドである。ヘリコプターのパーツを制作するメーカーでもあり、1988年には同社初となるカーボンディスクホイールをリリースし、のちの90年には4バトンホイール、91年にはエアロフレームのピューマを発表している。
さらにDHバーとブルホーンをカーボンファイバーで一体成型した「マンタ」は当時では突出したビジュアルも有名だろう。これは実際にローラン・フィニョンといった一流選手が愛用し、その高い完成度を世に知らしめている。
90年代のトラックフレーム「クーガー」は、93年にクリス・ボードマンがアワーレコードを樹立した際(後にレギュレーション変更により記録のみ残っている)に使用したバイクだった。
左右のスポークが対になるようなスポークパターン
デリケートなカーボンリムは、空気圧指定が設けられる
また雪上ダウンヒルでの最高速アタック、ホイールチェア競技などへ積極的に参入する様子から、記録やコンペティション、そしてエアロダイナミクスに傾倒したブランドともいえる。
なかでもカーボンディープリムは、多くのプロ選手たちに愛用され、多くの勝利に貢献した名作である。
コリマの製品群は、カーボン素材の特徴を引き出した堅実な作りが特徴的だ。ブレード状のカーボンスポークを用いた4バトンホイールや、ディスクホイールは登場から20年近くも経過しているが、現在でもハイレベルな性能を誇る。
フロントホイールは12本のスポークを用いたラジアル組み。フランジは大きめだ
反フリー側は軽量なカーボンフランジを採用している
そんなコリマの最新モデルが、エアロプラス MCCホイールだ。ロードレース用ラインナップの頂点に君臨するハイエンドモデルである。
通常のカーボンディープリムホイールのように見えるが、実は4バトンホイールと同様のコンプレッション構造で成り立っている。わずか12本のスポークでリムを支える外見は頼りないが、チューブ形状の太いカーボンスポークはとてもしっかりした強度を持っている。
ハブから伸びたスポークはリムに直結され保持する。スポークはリムを引っ張っていない(テンションをかけていない)ため、リムは強力な引っ張りから耐えるための強度を必要とせず、大幅な軽量化に成功している。外周部を含め約100gの軽量化を実現しているという。
リムとのジョイント部はより多くのカーボンを積層している
TNIの軽量クイックリリースレバーが付属する
この画期的構造によって前後ペアで約1080gという軽さを実現している。さらに姉妹モデルとしてロープロファイルカーボンリムを用いた軽量タイプ「ウイニウムプラス MCC」も開発しており、こちらは前後セットで約980gという軽さになるという。
もちろんUCIのレギュレーションでも認められており、登録レーサーも思う存分ロードレースで活用できる。
それでは早速インプレッションをお届けしよう。
―インプレッション
「実用派のコリマだけに、幅広い用途が期待できる」 山本健一(バイクジャーナリスト)
「実用派のコリマだけに、幅広い用途が期待できる」 山本健一(バイクジャーナリスト) カーボンホイールがそれほど主流でないころからカーボンディープリムホイールのラインナップを展開し、独特の存在感を示していたコリマ。当方も10年ほど前からトラックレースなどでコリマの4バトンホイールを使うことがあり、非常に愛着があるブランドだ。
4バトンのような構造のホイールは一般的にコンプレッションといわれる構造である。これはリムとハブをスポークで引っ張るのではなく、スポークで支える構造である。
一般的なテンションホイールは、ショックを吸収し乗り心地が良く、サスペンションがないロードバイク向けの構造である。一方のコンプレッションホイールは乗り心地が悪くなる傾向にある。4バトンホイールも例外ではなく、優れたエアロ効果と高い巡航性能と引き換えに乗り心地はよいとはいえないのが唯一のウィークポイントだろう。
それらコンプレッションホイールの欠点を克服したのがこのエアロプラスMCCだろう。12本という少ないスポーク数で、頼りないイメージがあるが、乗ってしまうとそんな懸念は吹き飛んでしまうほどしっかりとしている。
少ないスポーク数ながら、リムとハブをしっかりと結んでいるスポークはかなり頑丈に仕上がっており、一般的なホイールとの剛性差はないだろう。リムハイトがあるだけ、縦剛性は高く、踏み出しのロスはほとんど感じない。加速性能はかなり高く、高速になればなるほどその性能は際立っていく。
コンプレッションホイールにありがちなガタガタとしたバイブレーションは感じず、一般的なテンションホイール(カーボンディープリム形状だったとして)と比較的も大差ないほど。カーボンスポーク構造の恩恵か、乗り味は優れている。
かなり軽量ながらも、エネルギーロスを感じさせない剛性感 もっとも注意したのは実用性だろう。この構造であれば、レースはもちろんロングランドなども楽しめる。見るからにエアロホイールだが、ヒルクライムにも通用する軽さもある。しかしリムが100gも軽くなった、という印象よりもパワーロスの少なさが際立っているように感じる。
しかしながら上りにさしかかったときの軽さはトップクラスの性能だ。スポークやリムの撓みは最小限にとどめ、不安はまったく感じない。下りでのスムーズさ、コーナーワークはかなり優秀なレベルだろう。
もちろん空力にも優れている感触がある。スポークの太さそのものよりも、数の少なさによる恩恵が勝っているように感じる。特にフロントホイールの風抜けがよく、横風によるステアリングへの影響も少ない。
外周部が軽くなると慣性も低くなり、上りで軽快になるだけ不安定になる傾向がある。特に下りでは強く感じるだろう。このホイールもそれに近いフィーリングはあるものの慣れるレベルだった。この種類のホイールとしては扱いやすいといえる。
軽量ホイールはデリケートなモデルが多いが、MMCはシチュエーションを気にすることなく優れた走りを楽しめる。もちろんここ一番レースに使いたい超決戦ホイールだ。
コリマ エアロプラス MCC
コリマ エアロプラス MCC
リム素材:カーボン
スポーク素材:カーボン
ハブボディ:F/カーボン、R/カーボン
スポーク数:F/12H、R/12H
リムハイト:F&R/47mm
重量:1080g(前後セット)
カセットスプロケット互換性:シマノ、カンパニョーロ
体重制限:100kg
インプレライダーのプロフィール
山本健一(バイクジャーナリスト) 山本健一(バイクジャーナリスト)
身長187cm、体重68kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質はどちらかといえばスピードマンタイプで上りは苦手。1000mタイムトライアル1分10秒(10年前のベストタイム)がプチ自慢。インプレッションはじめ製品レビューなどがライフワーク的になっている。インプレ本のバイブル、ロードバイクインプレッション(エイ出版社)の統括エディターもつとめる。
ウェア協力:ETXE ONDO(エチェオンド)(サイクルクリエーション)
text&edit :Kenichi.YAMAMOTO
photo:Makoto.AYANO


高い技術力を誇るコリマは1973年に設立した、カーボンホイールやタイムトライアル用フレームなどが有名なフレンチブランドである。ヘリコプターのパーツを制作するメーカーでもあり、1988年には同社初となるカーボンディスクホイールをリリースし、のちの90年には4バトンホイール、91年にはエアロフレームのピューマを発表している。
さらにDHバーとブルホーンをカーボンファイバーで一体成型した「マンタ」は当時では突出したビジュアルも有名だろう。これは実際にローラン・フィニョンといった一流選手が愛用し、その高い完成度を世に知らしめている。
90年代のトラックフレーム「クーガー」は、93年にクリス・ボードマンがアワーレコードを樹立した際(後にレギュレーション変更により記録のみ残っている)に使用したバイクだった。


また雪上ダウンヒルでの最高速アタック、ホイールチェア競技などへ積極的に参入する様子から、記録やコンペティション、そしてエアロダイナミクスに傾倒したブランドともいえる。
なかでもカーボンディープリムは、多くのプロ選手たちに愛用され、多くの勝利に貢献した名作である。
コリマの製品群は、カーボン素材の特徴を引き出した堅実な作りが特徴的だ。ブレード状のカーボンスポークを用いた4バトンホイールや、ディスクホイールは登場から20年近くも経過しているが、現在でもハイレベルな性能を誇る。


そんなコリマの最新モデルが、エアロプラス MCCホイールだ。ロードレース用ラインナップの頂点に君臨するハイエンドモデルである。
通常のカーボンディープリムホイールのように見えるが、実は4バトンホイールと同様のコンプレッション構造で成り立っている。わずか12本のスポークでリムを支える外見は頼りないが、チューブ形状の太いカーボンスポークはとてもしっかりした強度を持っている。
ハブから伸びたスポークはリムに直結され保持する。スポークはリムを引っ張っていない(テンションをかけていない)ため、リムは強力な引っ張りから耐えるための強度を必要とせず、大幅な軽量化に成功している。外周部を含め約100gの軽量化を実現しているという。


この画期的構造によって前後ペアで約1080gという軽さを実現している。さらに姉妹モデルとしてロープロファイルカーボンリムを用いた軽量タイプ「ウイニウムプラス MCC」も開発しており、こちらは前後セットで約980gという軽さになるという。
もちろんUCIのレギュレーションでも認められており、登録レーサーも思う存分ロードレースで活用できる。
それでは早速インプレッションをお届けしよう。
―インプレッション
「実用派のコリマだけに、幅広い用途が期待できる」 山本健一(バイクジャーナリスト)

4バトンのような構造のホイールは一般的にコンプレッションといわれる構造である。これはリムとハブをスポークで引っ張るのではなく、スポークで支える構造である。
一般的なテンションホイールは、ショックを吸収し乗り心地が良く、サスペンションがないロードバイク向けの構造である。一方のコンプレッションホイールは乗り心地が悪くなる傾向にある。4バトンホイールも例外ではなく、優れたエアロ効果と高い巡航性能と引き換えに乗り心地はよいとはいえないのが唯一のウィークポイントだろう。
それらコンプレッションホイールの欠点を克服したのがこのエアロプラスMCCだろう。12本という少ないスポーク数で、頼りないイメージがあるが、乗ってしまうとそんな懸念は吹き飛んでしまうほどしっかりとしている。
少ないスポーク数ながら、リムとハブをしっかりと結んでいるスポークはかなり頑丈に仕上がっており、一般的なホイールとの剛性差はないだろう。リムハイトがあるだけ、縦剛性は高く、踏み出しのロスはほとんど感じない。加速性能はかなり高く、高速になればなるほどその性能は際立っていく。
コンプレッションホイールにありがちなガタガタとしたバイブレーションは感じず、一般的なテンションホイール(カーボンディープリム形状だったとして)と比較的も大差ないほど。カーボンスポーク構造の恩恵か、乗り味は優れている。

しかしながら上りにさしかかったときの軽さはトップクラスの性能だ。スポークやリムの撓みは最小限にとどめ、不安はまったく感じない。下りでのスムーズさ、コーナーワークはかなり優秀なレベルだろう。
もちろん空力にも優れている感触がある。スポークの太さそのものよりも、数の少なさによる恩恵が勝っているように感じる。特にフロントホイールの風抜けがよく、横風によるステアリングへの影響も少ない。
外周部が軽くなると慣性も低くなり、上りで軽快になるだけ不安定になる傾向がある。特に下りでは強く感じるだろう。このホイールもそれに近いフィーリングはあるものの慣れるレベルだった。この種類のホイールとしては扱いやすいといえる。
軽量ホイールはデリケートなモデルが多いが、MMCはシチュエーションを気にすることなく優れた走りを楽しめる。もちろんここ一番レースに使いたい超決戦ホイールだ。

コリマ エアロプラス MCC
リム素材:カーボン
スポーク素材:カーボン
ハブボディ:F/カーボン、R/カーボン
スポーク数:F/12H、R/12H
リムハイト:F&R/47mm
重量:1080g(前後セット)
カセットスプロケット互換性:シマノ、カンパニョーロ
体重制限:100kg
インプレライダーのプロフィール

身長187cm、体重68kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質はどちらかといえばスピードマンタイプで上りは苦手。1000mタイムトライアル1分10秒(10年前のベストタイム)がプチ自慢。インプレッションはじめ製品レビューなどがライフワーク的になっている。インプレ本のバイブル、ロードバイクインプレッション(エイ出版社)の統括エディターもつとめる。
ウェア協力:ETXE ONDO(エチェオンド)(サイクルクリエーション)
text&edit :Kenichi.YAMAMOTO
photo:Makoto.AYANO
フォトギャラリー
リンク
Amazon.co.jp