アルプ・デュエズ2日目、総合上位に動きはなかった。しかしマイヨジョーヌをはじめ、各賞ジャージや総合表彰台を巡る3週間の戦いが事実上終結。デルトロをマイヨブランと総合3位へ導いたポガチャルは、記者会見の最後に頭上で雄牛の角を作り、「トーロ、トーロ、トーロ」と言い残してパリへ向かった。

今大会2度目のステージ優勝を掴んだリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos
様々な戦いが繰り広げられ、アルプ・デュエズの頂上でそれらは結実した。カラパスは2日ぶりのツール区間優勝を手に入れると共に、自身2度目のマイヨアポワを決めた一方、クスはヴィンゲゴーに贈る勝利を2度の落車で逃す。総合上位勢の集団から飛び出し、今大会3度目の区間優勝を狙ったエヴェネプールはカラパスに26秒届かず、悔しさのあまりフィニッシュ後にハンドルを叩いた。
そして今大会の主役であるポガチャルは、歴代トップタイとなる総合5勝目に王手をかけただけではなく、デルトロをマイヨブランと総合3位へと導いた。そしてフランスの新星ポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM)は、パリの表彰台には上がらないまでも、プロトン最年少として大きなインパクトを残した。
しかし超級山岳3つと1級山岳1つ、獲得標高差5450 mという、今大会文句なしのクイーンステージでありながら、手に汗握るマイヨジョーヌ争いは起こらず、劇的な総合順位の入れ替わりもなかった。
勝者に焦点を当てて今大会を見てみれば、大方予想通りの展開となったのではないだろうか。ヴィンゲゴーの落車というイレギュラーはあったものの、結局のところ、王者ポガチャルと過去最強と目されたUAEチームエミレーツXRGを、誰も止めることはできなかった。特に、伸び盛りのイサーク・デルトロ(メキシコ)の存在は大きく、ポガチャルにデルトロをアシストするという新しい役割を与えたことで、新たな輝きをもたらしたように見えた。

タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)がイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG)のアシストを務める photo:A.S.O.
もちろんポガチャルにも疲れはあるだろう。記者会見でも4、5問目になると、椅子に深く座り、流暢だが母国語ではない英語の単語が出てこず、何度も言葉に詰まるシーンがあった。しかし記者会見を仕切るスタッフの「次が最後の質問です」という言葉に姿勢を正す。そして最後に「フィニッシュの時にデルトロとやったポーズはなにか」と聞かれると、「これを知らないのか?」と頭の上に2本の角を作り、「デルトロ。トロだよ。雄牛だよ」と答えた。
すかさず「みんなありがとう。これから(パリへ向かう)電車に乗らなくちゃ」と立ち上がり、「トーロ、トーロ、トーロ」とマイクにつぶやきながら、颯爽と記者会見場を後にした。
一方、カラパスは淡々と冷静に言葉を紡ぐ姿が印象的だった。カラパスは、年々上がるレベルが、ステージの平均時速や山岳の登坂タイムの更新からも明らかだと語り、2年前よりもレベルの高い大会でマイヨアポワと区間2勝を掴んだことを喜んだ。

2度目のステージ優勝とマイヨアポワを決めたリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:A.S.O.
こうしてアルプ・デュエズでそれぞれの戦いが結実した。ここからは少し、取材する側の大会を通して積み重ねてきた日課を紹介したい。
ツール・ド・フランスを取材する3週間は、スタートで取材を終えると一路フィニッシュ地点にあるプレスセンターに向かう。到着すると用意されたケータリングで食事を済ませ、その後は席につき、日本人取材班に大不評のまずいコーヒーをすすりながら、それまでのレース展開を確認し、スタート地点で撮影した写真の確認や編集作業、アップロードなどを終える。
そのなかで日課にしているのが、前日の違反者とその罰金の一覧を確認することだ。A.S.O.から送られてくるプレスリリースの1ページにまとめられており、大体はスティキーボトルや、指定区間外での補給などが主。だが、たまに観客の前でトイレ休憩してしまい、「競技のイメージを損なった」として罰金を受ける選手など、興味深いペナルティもある。また、かつての選手が引退後に監督となっていることを知らず、その人物が罰金を科されたことで初めて知るなど、決して無視できない情報源となっている。
この日、そのページで確認したかったのは、前日の第19ステージでUAEチームエミレーツXRGのチームカーの後部にエイネル・ルビオ(コロンビア、モビスター)が衝突し、棄権となってしまった件だ。だが、UAEに対してペナルティ等は科されておらず、モビスターの発表によると、ルビオは顔面を20針縫う怪我を負ったが、その翌日には無事退院できたのだという。

5回目の総合優勝に王手をかけたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.
カラパスの華やかな勝利やポガチャル、デルトロらの表彰台の裏で起きたルビオの事故。その後に下される処分の有無もまた、ツール・ド・フランスの3週間を形作る一部だ。さらにジュリアン・アラフィリップはフィニッシュ後に突然、ツール・ド・フランスからの引退を示唆。アルプ・デュエズで様々な戦いに決着がつき、選手もスタッフも取材陣も、それぞれの3週間を抱え、最後の舞台パリへと向かう。
text&photo:Sotaro.Arakawa in Grenoble, France
photo:A.S.O.

様々な戦いが繰り広げられ、アルプ・デュエズの頂上でそれらは結実した。カラパスは2日ぶりのツール区間優勝を手に入れると共に、自身2度目のマイヨアポワを決めた一方、クスはヴィンゲゴーに贈る勝利を2度の落車で逃す。総合上位勢の集団から飛び出し、今大会3度目の区間優勝を狙ったエヴェネプールはカラパスに26秒届かず、悔しさのあまりフィニッシュ後にハンドルを叩いた。
そして今大会の主役であるポガチャルは、歴代トップタイとなる総合5勝目に王手をかけただけではなく、デルトロをマイヨブランと総合3位へと導いた。そしてフランスの新星ポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM)は、パリの表彰台には上がらないまでも、プロトン最年少として大きなインパクトを残した。
しかし超級山岳3つと1級山岳1つ、獲得標高差5450 mという、今大会文句なしのクイーンステージでありながら、手に汗握るマイヨジョーヌ争いは起こらず、劇的な総合順位の入れ替わりもなかった。
勝者に焦点を当てて今大会を見てみれば、大方予想通りの展開となったのではないだろうか。ヴィンゲゴーの落車というイレギュラーはあったものの、結局のところ、王者ポガチャルと過去最強と目されたUAEチームエミレーツXRGを、誰も止めることはできなかった。特に、伸び盛りのイサーク・デルトロ(メキシコ)の存在は大きく、ポガチャルにデルトロをアシストするという新しい役割を与えたことで、新たな輝きをもたらしたように見えた。

もちろんポガチャルにも疲れはあるだろう。記者会見でも4、5問目になると、椅子に深く座り、流暢だが母国語ではない英語の単語が出てこず、何度も言葉に詰まるシーンがあった。しかし記者会見を仕切るスタッフの「次が最後の質問です」という言葉に姿勢を正す。そして最後に「フィニッシュの時にデルトロとやったポーズはなにか」と聞かれると、「これを知らないのか?」と頭の上に2本の角を作り、「デルトロ。トロだよ。雄牛だよ」と答えた。
すかさず「みんなありがとう。これから(パリへ向かう)電車に乗らなくちゃ」と立ち上がり、「トーロ、トーロ、トーロ」とマイクにつぶやきながら、颯爽と記者会見場を後にした。
一方、カラパスは淡々と冷静に言葉を紡ぐ姿が印象的だった。カラパスは、年々上がるレベルが、ステージの平均時速や山岳の登坂タイムの更新からも明らかだと語り、2年前よりもレベルの高い大会でマイヨアポワと区間2勝を掴んだことを喜んだ。

こうしてアルプ・デュエズでそれぞれの戦いが結実した。ここからは少し、取材する側の大会を通して積み重ねてきた日課を紹介したい。
ツール・ド・フランスを取材する3週間は、スタートで取材を終えると一路フィニッシュ地点にあるプレスセンターに向かう。到着すると用意されたケータリングで食事を済ませ、その後は席につき、日本人取材班に大不評のまずいコーヒーをすすりながら、それまでのレース展開を確認し、スタート地点で撮影した写真の確認や編集作業、アップロードなどを終える。
そのなかで日課にしているのが、前日の違反者とその罰金の一覧を確認することだ。A.S.O.から送られてくるプレスリリースの1ページにまとめられており、大体はスティキーボトルや、指定区間外での補給などが主。だが、たまに観客の前でトイレ休憩してしまい、「競技のイメージを損なった」として罰金を受ける選手など、興味深いペナルティもある。また、かつての選手が引退後に監督となっていることを知らず、その人物が罰金を科されたことで初めて知るなど、決して無視できない情報源となっている。
この日、そのページで確認したかったのは、前日の第19ステージでUAEチームエミレーツXRGのチームカーの後部にエイネル・ルビオ(コロンビア、モビスター)が衝突し、棄権となってしまった件だ。だが、UAEに対してペナルティ等は科されておらず、モビスターの発表によると、ルビオは顔面を20針縫う怪我を負ったが、その翌日には無事退院できたのだという。

カラパスの華やかな勝利やポガチャル、デルトロらの表彰台の裏で起きたルビオの事故。その後に下される処分の有無もまた、ツール・ド・フランスの3週間を形作る一部だ。さらにジュリアン・アラフィリップはフィニッシュ後に突然、ツール・ド・フランスからの引退を示唆。アルプ・デュエズで様々な戦いに決着がつき、選手もスタッフも取材陣も、それぞれの3週間を抱え、最後の舞台パリへと向かう。
text&photo:Sotaro.Arakawa in Grenoble, France
photo:A.S.O.
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