ウィリエールが誇るヒルクライムマシン、Verticale SLR。1gの削減を地道に積み上げて生まれたというこの最軽量モデルのインプレッションを行った。

ウィリエール Verticale SLR
1906年の創業から一世紀を優に超える歴史を重ねるウィリエール。軽量性を追い求めるストイックな姿勢により、幾つもの名車を生み出してきた名門の一角だ。
1990年代にはマルコ・パンターニのためにイーストンチューブを用いた当時7.2kgという超軽量バイクを仕立て、レースの歴史に名前を刻んだ。2006年には創立100周年を記念するCentoを発表。続くCento 1、Cento 1 SLでも軽さと造形美を両立させ、2011年には当時としては世界最軽量級となるフレーム重量700g台のZero.7を投入した。ミケーレ・スカルポーニのジロ総合優勝を陰で支えたのも、このモデルである。

細めのシートステーで軽量性を狙う 
プレーンな丸型断面のダウンチューブを備える 
シンプルな形状のヘッドチューブからフォーク周り
創立110周年を刻む2016年にはフレーム単体680gのZero.6へ、そして2019年にはディスクブレーキ専用の軽量機Zero SLRへと、軽さの探究は途切れることなく続いてきた。そのZero SLRの後を継ぐのが、Verticale SLRだ。イタリア語で垂直、つまり獲得標高差をイメージさせるモデル名は登坂性能に特化したクライマーであることを主張する。
Vertcale SLRの名は体を表す。フレーム造形は至ってプレーン。エアロ全盛期の現代において、Verticale SLRのシンプルな見た目は、このモデルが余計なものを全て削ぎ落とし、軽量性を追求したモデルであることが明らかだ。

ボルトオンされるリアライトも用意されている 
専用設計のステム一体型ハンドル「V-Bar」もマッチペイントされている

シートポストは若干楕円形となっている 
先細りのフォークレッグには、ミケ製の軽量スルーアクスルが装備される
しかし、シンプルな形状だからこそ、開発陣は1gの軽量化に心血を注いだ。わずかな改良を積み重ねていき、全体でのダイエットを果たしている。Mサイズの塗装済みフレームで720g、塗装前の状態なら648g。これはZero SLRの同条件766.5gを100g以上も下回る数値だ。フレーム、フォーク、ハンドル、シートポストを合わせたキット重量では1,623gと、Zero SLRの1,798gに対して9.73%、フレームセット単位では実に175gもの軽量化を達成している。
軽量化はカーボンの成形から徹底に煮詰めている。使用する素材は、高強度を担うT1100とT800をメインに、ねじれ方向の強さを稼ぐ高弾性率のM46JBを織り交ぜる。400ピースにものぼるカーボン素材を精密に重ね合わせ、硬化の段階では発泡ポリマーを使って内側から素材を押し固める新工法「アクティブモールディングシステム」で成形。内部に残る気泡を徹底的に追い出すことで、剛性を保ったまま軽さへとつなげているという。

若干くびれるヘッドチューブとなっている 
若干扁平したシートチューブ下部
一見シンプルな形状も開発陣が軽量性と剛性のバランスを見出した答えだ。ディスクブレーキ制動力の左右差を受け止めるべく、フォークレッグは左右で非対称に。左レッグのみカーボンレイアップもブレーキの応力に対応できるように素材が配置されており、常に安定したフォークを実現する。さらにクラウン部分も作り込んでおり、軽量性と剛性を高次元でバランスさせている。
フレームに奢られるスモールパーツも抜かりない。シートポストの固定方法も斜臼式クランプのネジをトップチューブの下側から締める方式に切り替え、素材の使用量を削減。さらにスルーアクスルはウィリエール傘下のミケ製の専用軽量モデルが採用された。このスルーアクスルは前後で64gに収まるほど軽く、これらの積み重ねで上述の軽量化を達成している。
軽量性を主眼に置いたモデルながら、エアロを無視できないのが現代のレーシングバイクだ。Verticale SLRも例に漏れずエアロ設計が与えられており、先代Zero SLRよりも空気抵抗を抑えることに成功しているという。激しいヒルクライムが登場するコースであっても、エアロのマージナルゲインによってライダーへの負担を減らし、ライド終了時まで最高のパフォーマンスを発揮できるバイクに仕上がっている。

トレードマークである三又の槍がダウンチューブ裏側に描かれる 
プレーンなボトムブラケット周り 
シートクランプは下側から締める方式となっている
エアロダイナミクスへの配慮はフレームの造形だけではなく、ライダーのポジションにまで行き届いている。専用設計のステム一体型ハンドル「V-Bar」は、ブラケット部の幅が狭くエンド幅が広い、いわゆるフレア型が採用されている。トップ部を握る時はコンパクトなエアロポジションを取りやすく、スプリント時は幅広のドロップ部でライダーのパワーを受け止める。
ジオメトリーはライダーの手とフレームのBBの位置関係が最適になるようにデザイン。XSとSサイズではリーチはMよりも短く作り、XLとXXLは長めに設計する。スタック量は同一だ。タイヤクリアランスは最大で32mm。
今回テストするのは、シマノULTEGRA Di2にミケ KLEOS RD 36カーボンホイールを組み合わせた完成車仕様だ。勾配がきつくダンシングで踏み込むヒルクライムで性能が発揮されるVerticale SLRの実力に迫る。
ーインプレッション
「とにかく軽くて、踏み出しも軽い。オールラウンドで扱いやすいバイク」小畑郁(なるしまフレンド)

「とにかく軽くて、踏み出しも軽い。オールラウンドで扱いやすいバイク」小畑郁(なるしまフレンド)
全体の印象としては、リムブレーキ時代のヒルクライムバイクのようでした。軽量で、走りも軽快なあの感じを、ディスクブレーキで再現したような一台ですね。オーソドックスだからこそ語るのが難しいんですけど、当たり前のようにクオリティが高く、これがロードバイクのスタンダードだよね、という感じ。全体を簡単に言うならノーマルな軽量バイク、という言い方になりますね。
走りの印象はとにかく軽くて、踏み出しも軽い。カーボンの質がいいのか、ウィップが気持ちよく出て、かつ反応も速いのでスピードを乗せやすいです。ある程度の斜度ならアウタートップからでも加速できますね。少しギアをかけて低回転でトルクをかけるときも、フレームが適度にしなるので、とても踏み込みやすい。
軽量バイクにありがちなヒラヒラした挙動がなく、余計な動きがほとんどない。扱いやすく、よどみなく全体のバランスが取れています。軽快さを武器に、ロードバイクでいろいろ遊んで楽しむ、という感じの一台です。
試乗車はUltegra Di2の完成車でしたが、Dura-Ace Di2かと思うくらいの軽快感。ミケのKLEOSホイールも軽い。ディスクの軽量バイクが出始めた頃にあった、フォークやリアエンドだけが妙に硬い感じも、Verticale SLRには一切なくて、乗っていて気になる部分がほとんどないんですよね。

「ウィップが気持ちよく出て、かつ反応も速い。とても踏み込みやすい」小畑郁(なるしまフレンド)
軽量バイクで思い浮かべるのはスペシャライズドのAethos 2や、オルベア Orca、サーヴェロ R5でしょうか。これらのバイクは三者三様で、Verticale SLRはどれとも違う、オールラウンドで扱いやすいバイクに仕上がっています。
この自転車を選ぶ人は、やっぱり軽量感を求める人だと思います。ハイパワーでスプリントしたいならエアロを選んだほうがいい。エアロを取りにいっていないぶん、山の登り下りを楽しむ人にはとても軽快で、扱いやすいし、登りを楽に登らせてくれる。
レーサーという話になると少しエアロが欲しくなってくると思うんですけど、剛性の高いエアロバイクにエアロホイールを合わせると、硬すぎて扱いきれないこともある。その点、フレームがノーマルなキャラクターなら、硬いエアロホイールを入れてちょうどいいバランスに持っていける。それがVerticaleかと思います。
「登りが一番気持ちよく走れるバイク。ヒルクライムでこそ、真価を感じる」高木三千成(シクロワイアード編集部)

「登りが一番気持ちよく走れるバイク。ヒルクライムでこそ、真価を感じる」高木三千成(シクロワイアード編集部)
登りが一番気持ちよく走れるバイクです。特に10%前後の激坂をゴリゴリ登っていくようなシチュエーションがすごく良くて、緩斜面より、そういう激坂でこそ真価を感じました。全体が軽いぶん漕ぎ出しの初速が軽くて、登りも軽快です。
足回りはちょっと柔らかめなんですけど、この状態でもすごく軽快に登れて、上りの反復も全然苦になりませんでした。完成車のパッケージとして、もう登りはしっかり良い。そのうえで、もう少し張りのあるホイールを入れてあげると、一踏みごとに鋭く前へ出るような、キレのある登り方に振れていく。本来そうやって登らせたいバイクなんですよね。
剛性はあるんですけど全体的にマイルドで、その中で乗り心地がいい。エアロロードのFilanteがパチッと硬い、ひと世代前のハイエンドらしい剛性感だとすると、Verticaleはそこからマイルドさが乗った感じ。
踏み込んだときのたわみがリズミカルで、少し柔らかいんですよね。そのおかげで乗り心地も良くて、荒れた路面の突き上げやコツコツした衝撃がすごく滑らか。ホイールがいなしてるのか、フレームがいなしてるのかわからないですけど、体への衝撃が少なくて、今まで乗ったレーシングバイクの中でもかなり乗り心地がいい部類に入ります。
平坦の直線の安定感も良かったですね。手放しをしたときの直進安定性がすごく高くて、ヒルクライムで2、3人に絞られて、ヘロヘロでスプリント、みたいな場面でも、フラフラのままちゃんとまっすぐ走ってくれる。何も考えず、ただただフィニッシュラインを目指せます。

「クイックに反応するというより、リズムが取りやすい。速すぎず遅すぎず、懐が広い」高木三千成(シクロワイアード編集部)
ダンシングのリズムは、フォークが寝ているぶん少し遅め。クイックに反応するというより、リズムが取りやすくて、速すぎず遅すぎず、懐が広い感じです。スラローム走行ではバイクの倒れ方がイメージよりもワンテンポゆっくりで、意識的に倒してあげないとリズムに乗れないです。ダンシングは感じませんでしたが、平地で倒したときと下りはそういう傾向です。ただ安定感があるんで下りも怖くなかった。こういう軽量バイクだと挙動が全部ヒラヒラしてるんじゃないかと思いがちですけど、そんなことはなくて。ヒラヒラ系ではあるけど安定感もある、そのバランスで乗りやすいんですよね。
ハンドルは軽量系で、剛性感は十分にありつつ硬すぎない。ちょっとフレアしてて上は狭く下は広いので、ポジションを変えながら走るレースにも最適だし、ロングライドにもいい。
ただ用途はもちろんレース向け。速く走りたい、登りも速く走りたい人、坂が好きな人にすごくピッタリです。国内のレース全般で使うのであればFilanteの方が合っているかと思いますが、Filanteよりもシャープな反応が欲しい人とか、登りを重視したい方はVerticaleの方が似合いますね。乗鞍や美ヶ原みたいな高原系ヒルクライムにはバッチリです。タイヤも太めで、今は30Cが入ってますけど32Cくらいまでいけそうです。
とにかく上りはピカイチでした。現状でも上りは十分なんですけど、もっと軽いホイール、むしろ軽くてエアロなディープリムを入れたい。エンヴィみたいに軽くてディープなものとか、ロヴァールっぽいパリッとしたレーシングホイール、スプリント系も合うかもしれませんね。平坦まで狙うなら40〜50mm。上りなら今の組み合わせでも十分に性能を引き出せます。

ウィリエール Verticale SLR
ウィリエール Verticale SLR
フレーム素材:東レ T1100/T800/M46JB カーボン
フレーム重量:720g(塗装済みMサイズ、±5%)
フォーク:左右非対称カーボン(320g、±5%)
ハンドルバー:V-Bar ステム一体型カーボン
シートポスト:専用カーボン
スルーアクスル:ミケ製 軽量スルーアクスル(AL 7075-T6、前後ペア64g)
タイヤクリアランス:実測32mm
コンポーネント:シマノ ULTEGRA Di2
ホイール:ミケ KLEOS RD 36
価格:1,727,000円(税込)
インプレッションライダープロフィール

小畑郁(なるしまフレンド) 小畑郁(おばたかおる)
圧倒的な知識量と優れた技術力から国内No.1メカニックとの呼び声高い、なるしまフレンドの技術チーフ。勤務の傍ら精力的に競技活動を行っており、ツール・ド・おきなわ市民210kmでは2010年に2位、2013年と2014年に8位に入った他、国内最高峰のJプロツアーではプロを相手に多数の入賞経験を持つ。2020年以来、ベルマーレレーシングチームの一員として国内レースを走る。
なるしまフレンド神宮店(レコメンドショップページ)
なるしまフレンド HP

高木三千成(シクロワイアード編集部) 高木三千成(シクロワイアード編集部)
学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経て、さいたまディレーブでJCLに参戦し、チームを牽引。今シーズンも稲城FIETSクラスアクトでキャプテンを務め、Jプロツアーで全国を参戦する。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位に入賞し、UCIポイントを獲得した。2025-2026のJCXシリーズランキングは総合11位とロードレースとシクロクロスで活躍する。

1906年の創業から一世紀を優に超える歴史を重ねるウィリエール。軽量性を追い求めるストイックな姿勢により、幾つもの名車を生み出してきた名門の一角だ。
1990年代にはマルコ・パンターニのためにイーストンチューブを用いた当時7.2kgという超軽量バイクを仕立て、レースの歴史に名前を刻んだ。2006年には創立100周年を記念するCentoを発表。続くCento 1、Cento 1 SLでも軽さと造形美を両立させ、2011年には当時としては世界最軽量級となるフレーム重量700g台のZero.7を投入した。ミケーレ・スカルポーニのジロ総合優勝を陰で支えたのも、このモデルである。



創立110周年を刻む2016年にはフレーム単体680gのZero.6へ、そして2019年にはディスクブレーキ専用の軽量機Zero SLRへと、軽さの探究は途切れることなく続いてきた。そのZero SLRの後を継ぐのが、Verticale SLRだ。イタリア語で垂直、つまり獲得標高差をイメージさせるモデル名は登坂性能に特化したクライマーであることを主張する。
Vertcale SLRの名は体を表す。フレーム造形は至ってプレーン。エアロ全盛期の現代において、Verticale SLRのシンプルな見た目は、このモデルが余計なものを全て削ぎ落とし、軽量性を追求したモデルであることが明らかだ。




しかし、シンプルな形状だからこそ、開発陣は1gの軽量化に心血を注いだ。わずかな改良を積み重ねていき、全体でのダイエットを果たしている。Mサイズの塗装済みフレームで720g、塗装前の状態なら648g。これはZero SLRの同条件766.5gを100g以上も下回る数値だ。フレーム、フォーク、ハンドル、シートポストを合わせたキット重量では1,623gと、Zero SLRの1,798gに対して9.73%、フレームセット単位では実に175gもの軽量化を達成している。
軽量化はカーボンの成形から徹底に煮詰めている。使用する素材は、高強度を担うT1100とT800をメインに、ねじれ方向の強さを稼ぐ高弾性率のM46JBを織り交ぜる。400ピースにものぼるカーボン素材を精密に重ね合わせ、硬化の段階では発泡ポリマーを使って内側から素材を押し固める新工法「アクティブモールディングシステム」で成形。内部に残る気泡を徹底的に追い出すことで、剛性を保ったまま軽さへとつなげているという。


一見シンプルな形状も開発陣が軽量性と剛性のバランスを見出した答えだ。ディスクブレーキ制動力の左右差を受け止めるべく、フォークレッグは左右で非対称に。左レッグのみカーボンレイアップもブレーキの応力に対応できるように素材が配置されており、常に安定したフォークを実現する。さらにクラウン部分も作り込んでおり、軽量性と剛性を高次元でバランスさせている。
フレームに奢られるスモールパーツも抜かりない。シートポストの固定方法も斜臼式クランプのネジをトップチューブの下側から締める方式に切り替え、素材の使用量を削減。さらにスルーアクスルはウィリエール傘下のミケ製の専用軽量モデルが採用された。このスルーアクスルは前後で64gに収まるほど軽く、これらの積み重ねで上述の軽量化を達成している。
軽量性を主眼に置いたモデルながら、エアロを無視できないのが現代のレーシングバイクだ。Verticale SLRも例に漏れずエアロ設計が与えられており、先代Zero SLRよりも空気抵抗を抑えることに成功しているという。激しいヒルクライムが登場するコースであっても、エアロのマージナルゲインによってライダーへの負担を減らし、ライド終了時まで最高のパフォーマンスを発揮できるバイクに仕上がっている。



エアロダイナミクスへの配慮はフレームの造形だけではなく、ライダーのポジションにまで行き届いている。専用設計のステム一体型ハンドル「V-Bar」は、ブラケット部の幅が狭くエンド幅が広い、いわゆるフレア型が採用されている。トップ部を握る時はコンパクトなエアロポジションを取りやすく、スプリント時は幅広のドロップ部でライダーのパワーを受け止める。
ジオメトリーはライダーの手とフレームのBBの位置関係が最適になるようにデザイン。XSとSサイズではリーチはMよりも短く作り、XLとXXLは長めに設計する。スタック量は同一だ。タイヤクリアランスは最大で32mm。
今回テストするのは、シマノULTEGRA Di2にミケ KLEOS RD 36カーボンホイールを組み合わせた完成車仕様だ。勾配がきつくダンシングで踏み込むヒルクライムで性能が発揮されるVerticale SLRの実力に迫る。
ーインプレッション
「とにかく軽くて、踏み出しも軽い。オールラウンドで扱いやすいバイク」小畑郁(なるしまフレンド)

全体の印象としては、リムブレーキ時代のヒルクライムバイクのようでした。軽量で、走りも軽快なあの感じを、ディスクブレーキで再現したような一台ですね。オーソドックスだからこそ語るのが難しいんですけど、当たり前のようにクオリティが高く、これがロードバイクのスタンダードだよね、という感じ。全体を簡単に言うならノーマルな軽量バイク、という言い方になりますね。
走りの印象はとにかく軽くて、踏み出しも軽い。カーボンの質がいいのか、ウィップが気持ちよく出て、かつ反応も速いのでスピードを乗せやすいです。ある程度の斜度ならアウタートップからでも加速できますね。少しギアをかけて低回転でトルクをかけるときも、フレームが適度にしなるので、とても踏み込みやすい。
軽量バイクにありがちなヒラヒラした挙動がなく、余計な動きがほとんどない。扱いやすく、よどみなく全体のバランスが取れています。軽快さを武器に、ロードバイクでいろいろ遊んで楽しむ、という感じの一台です。
試乗車はUltegra Di2の完成車でしたが、Dura-Ace Di2かと思うくらいの軽快感。ミケのKLEOSホイールも軽い。ディスクの軽量バイクが出始めた頃にあった、フォークやリアエンドだけが妙に硬い感じも、Verticale SLRには一切なくて、乗っていて気になる部分がほとんどないんですよね。

軽量バイクで思い浮かべるのはスペシャライズドのAethos 2や、オルベア Orca、サーヴェロ R5でしょうか。これらのバイクは三者三様で、Verticale SLRはどれとも違う、オールラウンドで扱いやすいバイクに仕上がっています。
この自転車を選ぶ人は、やっぱり軽量感を求める人だと思います。ハイパワーでスプリントしたいならエアロを選んだほうがいい。エアロを取りにいっていないぶん、山の登り下りを楽しむ人にはとても軽快で、扱いやすいし、登りを楽に登らせてくれる。
レーサーという話になると少しエアロが欲しくなってくると思うんですけど、剛性の高いエアロバイクにエアロホイールを合わせると、硬すぎて扱いきれないこともある。その点、フレームがノーマルなキャラクターなら、硬いエアロホイールを入れてちょうどいいバランスに持っていける。それがVerticaleかと思います。
「登りが一番気持ちよく走れるバイク。ヒルクライムでこそ、真価を感じる」高木三千成(シクロワイアード編集部)

登りが一番気持ちよく走れるバイクです。特に10%前後の激坂をゴリゴリ登っていくようなシチュエーションがすごく良くて、緩斜面より、そういう激坂でこそ真価を感じました。全体が軽いぶん漕ぎ出しの初速が軽くて、登りも軽快です。
足回りはちょっと柔らかめなんですけど、この状態でもすごく軽快に登れて、上りの反復も全然苦になりませんでした。完成車のパッケージとして、もう登りはしっかり良い。そのうえで、もう少し張りのあるホイールを入れてあげると、一踏みごとに鋭く前へ出るような、キレのある登り方に振れていく。本来そうやって登らせたいバイクなんですよね。
剛性はあるんですけど全体的にマイルドで、その中で乗り心地がいい。エアロロードのFilanteがパチッと硬い、ひと世代前のハイエンドらしい剛性感だとすると、Verticaleはそこからマイルドさが乗った感じ。
踏み込んだときのたわみがリズミカルで、少し柔らかいんですよね。そのおかげで乗り心地も良くて、荒れた路面の突き上げやコツコツした衝撃がすごく滑らか。ホイールがいなしてるのか、フレームがいなしてるのかわからないですけど、体への衝撃が少なくて、今まで乗ったレーシングバイクの中でもかなり乗り心地がいい部類に入ります。
平坦の直線の安定感も良かったですね。手放しをしたときの直進安定性がすごく高くて、ヒルクライムで2、3人に絞られて、ヘロヘロでスプリント、みたいな場面でも、フラフラのままちゃんとまっすぐ走ってくれる。何も考えず、ただただフィニッシュラインを目指せます。

ダンシングのリズムは、フォークが寝ているぶん少し遅め。クイックに反応するというより、リズムが取りやすくて、速すぎず遅すぎず、懐が広い感じです。スラローム走行ではバイクの倒れ方がイメージよりもワンテンポゆっくりで、意識的に倒してあげないとリズムに乗れないです。ダンシングは感じませんでしたが、平地で倒したときと下りはそういう傾向です。ただ安定感があるんで下りも怖くなかった。こういう軽量バイクだと挙動が全部ヒラヒラしてるんじゃないかと思いがちですけど、そんなことはなくて。ヒラヒラ系ではあるけど安定感もある、そのバランスで乗りやすいんですよね。
ハンドルは軽量系で、剛性感は十分にありつつ硬すぎない。ちょっとフレアしてて上は狭く下は広いので、ポジションを変えながら走るレースにも最適だし、ロングライドにもいい。
ただ用途はもちろんレース向け。速く走りたい、登りも速く走りたい人、坂が好きな人にすごくピッタリです。国内のレース全般で使うのであればFilanteの方が合っているかと思いますが、Filanteよりもシャープな反応が欲しい人とか、登りを重視したい方はVerticaleの方が似合いますね。乗鞍や美ヶ原みたいな高原系ヒルクライムにはバッチリです。タイヤも太めで、今は30Cが入ってますけど32Cくらいまでいけそうです。
とにかく上りはピカイチでした。現状でも上りは十分なんですけど、もっと軽いホイール、むしろ軽くてエアロなディープリムを入れたい。エンヴィみたいに軽くてディープなものとか、ロヴァールっぽいパリッとしたレーシングホイール、スプリント系も合うかもしれませんね。平坦まで狙うなら40〜50mm。上りなら今の組み合わせでも十分に性能を引き出せます。

ウィリエール Verticale SLR
フレーム素材:東レ T1100/T800/M46JB カーボン
フレーム重量:720g(塗装済みMサイズ、±5%)
フォーク:左右非対称カーボン(320g、±5%)
ハンドルバー:V-Bar ステム一体型カーボン
シートポスト:専用カーボン
スルーアクスル:ミケ製 軽量スルーアクスル(AL 7075-T6、前後ペア64g)
タイヤクリアランス:実測32mm
コンポーネント:シマノ ULTEGRA Di2
ホイール:ミケ KLEOS RD 36
価格:1,727,000円(税込)
インプレッションライダープロフィール

圧倒的な知識量と優れた技術力から国内No.1メカニックとの呼び声高い、なるしまフレンドの技術チーフ。勤務の傍ら精力的に競技活動を行っており、ツール・ド・おきなわ市民210kmでは2010年に2位、2013年と2014年に8位に入った他、国内最高峰のJプロツアーではプロを相手に多数の入賞経験を持つ。2020年以来、ベルマーレレーシングチームの一員として国内レースを走る。
なるしまフレンド神宮店(レコメンドショップページ)
なるしまフレンド HP

学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経て、さいたまディレーブでJCLに参戦し、チームを牽引。今シーズンも稲城FIETSクラスアクトでキャプテンを務め、Jプロツアーで全国を参戦する。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位に入賞し、UCIポイントを獲得した。2025-2026のJCXシリーズランキングは総合11位とロードレースとシクロクロスで活躍する。
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