タデイ・ポガチャルとマチュー・ファンデルプールが独占した今年のモニュメント。ジロ・デ・イタリアではイサーク・デルトロが台頭し、最終盤でサイモン・イェーツが逆転の総合優勝に輝いた。激動の2025年シーズン前半を振り返る。



ポガチャルとファンデルプールが主役となった初春

最多タイとなる3勝目のストラーデビアンケを優勝したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

例年通りツアー・ダウンアンダーから走り出した2025年のUCIワールドツアー。オーストラリア最大のステージレースは、地元出身のサム・ウェルスフォード(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)による初日、2日目と連続でのスプリント勝利(最終的に区間2勝&ポイント賞)で幕を開けた。そして総合優勝はUAEチームエミレーツXRG新加入のジョナタン・ナルバエス(エクアドル)が飾り、これがUAEの史上最多勝利記録の更新に向けた狼煙となった。

世界王者であるタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)がUAEツアーで総合優勝を決め、3月に入り、ヨーロッパのクラシックシーズンがスタート。その幕開けを告げるストラーデビアンケも、勝ったのはポガチャル。それも右半身のジャージが破れる落車に見舞われながらも、先頭に追いつき、18.6kmの独走を決めての連覇だった。

2強が火花を散らした石畳のモニュメント決戦

ミラノ〜サンレモのポッジオで仕掛けたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)にファンデルプールが追従 photo:CorVos

ミラノ〜サンレモで勝利したマチュー・ファンデルプール photo:CorVos
パリ〜ルーベの終盤、コーナーで曲がりきれず落車したタデイ・ポガチャル photo:CorVos


今年の5大クラシックと呼ばれるモニュメントは、ポガチャルとマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)によって独占された。1つ目のミラノ〜サンレモはポガチャルを含む三つ巴スプリントでファンデルプールが2年ぶり2度目の優勝。続くロンド・ファン・フラーンデレンでリベンジを果たしたポガチャルは、パリ〜ルーベに初出場した。

その結果は、ファンデルプールが史上3人目となる3連覇を達成。ポガチャルはファンデルプールのアタックに食らいついたものの、コーナーを曲がりきれず落車。しかし1分18秒差の2位と初出場で表彰台に上がり、石畳への適性を見せつけた。春のクラシックを締めくくるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュはポガチャルが自身3度目の優勝を飾り、大会連覇を達成。そして2024年に総合優勝したジロ・デ・イタリアをスキップし、ツール・ド・フランスのために高地合宿へと向かっていた。

バイクを掲げ、パリ〜ルーベ3連覇を喜ぶマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

リエージュで3度目の優勝を決めたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

シーズン前半戦に目立つ成績を残したのはポガチャルだけではなく、チームメイトであるジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)もその1人。総合エースとしてイツリア・バスクカントリーで総合優勝すると、その後のツール・ド・ロマンディ、ツール・ド・スイスと、ワールドツアーのステージレースを3連続総合優勝する覚醒を見せた。

新星デルトロの衝撃とリドル・トレックの躍進

春のクラシックが終わり、シーズン1つ目のグランツールであるジロ・デ・イタリアが開幕した。その主役の1人もまたUAEに所属するイサーク・デルトロ(メキシコ)だった。

ジロで長期間マリアローザを着用したイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

マリアチクラミーノを獲得したピーダスン photo:CorVos
個人TTを制したダーン・ホーレ photo:CorVos


自身初のステージ優勝を飾ったイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)のスプリント勝利で幕を開けた3週間の戦いは、ピーダスンがそのまま区間4勝を挙げ、マリアチクラミーノ(ポイント賞)を獲得。リドルはダーン・ホーレ(オランダ)とカルロス・ベローナ(スペイン)も区間優勝を飾り、リドルは合計6勝をゲット。大会を席巻した。

総合では当時21歳のデルトロが第9ステージから首位に浮上。第17ステージでは終盤にアタックを成功させ、マリアローザを着て勝利。デルトロの名を世界に知らしめるお辞儀の勝利パフォーマンスと共に、次代の総合エースが華々しく事実上のデビューを果たした。しかし、最終的にピンク色をまとったのは、今年ジェイコ・アルウラーからヴィスマ・リースアバイクに移籍したばかりのサイモン・イェーツ(イギリス)だった。

フィネストレの悲劇から7年、イェーツ執念の逆転劇

フィネストレでライバルを振り切ったサイモン・イェーツ(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

決して得意とは言えない個人タイムトライアルに苦戦しながらも、徐々に総合順位を上げていき、第2週で2位まで迫ったイェーツ。最終決戦である第20ステージの時点でデルトロと総合3位イェーツとの差は1分21秒。最終山岳の序盤、精鋭集団はデルトロとイェーツ、そして総合2位リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)の3名に絞られ、ここでイェーツがアタックを繰り返し、独走態勢に入る。

元チームメイトであるクリス・ハーパー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)がステージ優勝し、その1分57秒遅れの区間3位でイェーツがフィニッシュ。先頭からデルトロは7分10秒遅れ、カラパスは7分14秒遅れだったため、この時点でイェーツの逆転での総合優勝が決まった。

2018年に総合優勝を逃したフィネストレ峠で、7年越しの逆転劇を演出したイェーツ。2018年のブエルタ・ア・エスパーニャに続く、自身2度目となるグランツールでの総合優勝となった。

7年越しにマリアローザを獲得したサイモン・イェーツ(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク) photo:RCS Sport


プレイバック下半期は、ツール・ド・フランスから史上初のアフリカ開催となったロード世界選手権、そしてイル・ロンバルディアまでを振り返る。
2025年シーズン男子ロード 上半期海外主要レース結果
開催日 レース 優勝者
1月21-1月26日 ツアー・ダウンアンダー 総合優勝:ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、UAEチームエミレーツXRG)
2月17-23日 UAEツアー 総合優勝:タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)
3月8日 ストラーデビアンケ タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)
3月9-16日 パリ〜ニース 総合優勝:マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)
3月10-16日 ティレーノ〜アドリアティコ 総合優勝:フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)
3月22日 ミラノ〜サンレモ マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)
4月6日 ロンド・ファン・フラーンデレン タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)
4月13日 パリ〜ルーベ マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)
4月20日 アムステルゴールドレース マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック)
4月23日 ラ・フレーシュ・ワロンヌ スティーブン・ウィリアムズ(イギリス、イスラエル・プレミアテック)
4月27日 リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)
5月9日-6月1日 ジロ・デ・イタリア 総合優勝:サイモン・イェーツ(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos