9月7日(日)に千葉県成田市の下総運動公園で「しもふさクリテリウム9月が開催され、QNリーグのシリーズ第7戦が併催された。Nリーグ男子で優勝した渡邉公太(ブラウ・ブリッツエン U15)がリーダージャージを奪還した。QNリーグ主催者からのレポートで紹介する。



強い日差しが照りつける中、スタートを切る中学生クラスの参加選手たち Photo:gg_kasai

9月7日(日)、台風一過の残暑のなか、千葉県成田市・下総運動公園でリーグ第7戦「しもふさクリテリウム9月」が開催され、それぞれの対象レースで今期の後半戦を占うようなレース展開が繰り広げられ、その走りで会場が大いに沸いた。

この大会はサイクルロードレース協会東日本(MATRIX)主催で、会場内にある1周回・約1.5kmの常設サイクリングコースで行なわれ、“しもふさクリテ”の通称で親しまれている人気の高い大会。今回もトップクラスのほか、ジュニアやキッズ、女子でも多くの参加者が集まるなか、対象レースをQリーグとNリーグ中学生女子NWはレディースクラス、Nリーグ中学生男子Nは中学生クラスに設定した。

元実業団ロード選手の経験を活かした指導が中川氏から受けられるサイクルクリニックは好評 Photo:QNリーグ事務局
成田市の人気マスコットうなりくんと並ぶチーム MATRIX POWERTAG 所属選手達、そして小林海氏(左端) Photo:QNリーグ事務局

プログラムはサイクルクリニックからスタート。今回は特別に大会実行委員⻑の中川康二郎氏が講師を担当し、走行前のヘルメット装着や自転車のチェックから、今大会のコースで注意するべきポイントなどきめ細かいアドバイスをしてコース試走へ。この流れは 5 回のレース試走ごとにレース普及目的で毎回実施される。


初参戦や、久しぶりの出場になるライダーはもちろん、普段からレース出場しているライダーにとっても再確認にもなり、安心・安全にレースに臨める配慮だ。さらにサイクルクリニックの時間外でも、会場内にスラローム走行ができるスペースも設け、特にキッズ選手達にはレース前のちょっとしたウォームアップにも利用されていた。

今回も多くの出展ブースが並んだ会場ではメーカーなどに直接、気になることが聞けるチャンスの場 Photo:QNリーグ事務局

昨年のNリーグ中学生男子N総合ポイントリーダー⻄澤崇介は、リーグ年間特別賞・協賛であるAirflyのブースで選定と調整を担当してもらっていた Photo:QNリーグ事務局

今回はうれしいサプライズが2つも。1つ目は成田市のマスコットキャラクター・うなりくん登場!レース表彰式を盛り上げ、会場に居合わせた観客や参加者の皆さんとの撮影にも応じていた。

成田市は昨年、市政70周年を迎え、その市内で⻑年定期的に開催されている定番自転車レースとして、特別に来場したようだ。うなりくんは「ゆるキャラ グランプリ 2017」優勝の実力を持ち人気が高く、さまざまなイベントに呼ばれ成田市⺠でも直接会える機会が少ないので、出会えた皆さんは非常にラッキーだった。

大会MCシンジ氏の紹介アナウンスに応えるバトルマリンジャージ姿のブラウ岡田 Photo:gg_kasai

メイン集団の隙を衝いて時折、アタックしながら様子を見る小田島(写真右) Photo:gg_kasai

2つ目のサプライズは、大会ホストチームで J プロツアーを中心に活躍するマトリックスパワータグの所属選手達とともに、今年6月に開催された全日本選手権ロードレース・男子エリートで2連覇を果たし、その表彰式の場で電撃引退を発表した小林海が来場! 昨年に初めて全日本チャンピオンとなった際、着用したマトリックスパワータグのロゴ入りチャンピオンジャージ姿で登場した際には、会場にどよめきが起こった。

第1レースとなる120分エンデューロは朝8時10分からスタート。参戦ライダーをマトリックスパワータグの所属選手達がエスコート。会場では今回も協賛の出展ブースや飲食屋台が立ち並び、さまざまな自転車関連ブースでの買い物や、朝から晴れて気温が上がるなかで冷たい飲み物やカキ氷などに人気が集まった。

右:中盤からのスピードアップに対応する根本(写真左)と岡田(写真中央)は先頭集団に残る Photo:gg_kasai

その後は個人タイムトライアル、キッズの年齢別クラスレースを経て、「レースイベント参加に不安を感じている方や以前、レースに参加したことはあるが期待ほどの結果を残せず参加を諦めてしまった方などのために、今回30分の疑似レースを経験してもらいたい」という狙いで、以前より改定された“フレッシュ・エンデューロ”も開催。今後さまざまな自転車レースにチャレンジしてみたいと考えるビギナーには、非常に良いレース体験の機会だ。

昼過ぎの12時55分にはレディースクラス、そして小学生チャンピオンクラスが時差スタート。11名エントリーのスタート地点には、Nリーグ中学生女子NWはバトルマリンジャージの岡田愛裕來(ブラウ・ブリッツエン U15)が最前列の中央に陣取り、その横には現在NWポイントランキング2位に付ける板垣美希(ベルエキップ)、さらには久しぶりに今大会へ参戦するN リーグNW卒業生の小田島寛奈(#1-PRIMERA-)が並び、女子ジュニア選手達の闘いが楽しみとなった。

追いかける後続集団から最後まで逃げ切った小田島。この後はアジア選手権が待っている Photo:gg_kasai

女子エリート勢もQリーグの現ポイントランキング2位につける根本香織(Team 一匹狼)や、増輪心(Team 一匹狼)などメンバーが揃い気合十分。一方で、Qリーグ現ポイントリーダーの岡本彩那(SPECIALIZED UTSUNOMIYA)、そして佐藤 直美(Yahoo! JAPAN Cycle Racing team)が欠場とな
り、強豪選手によるトップ空席を⻁視眈々と狙う展開が予想された。


1周回1.5kmのコースを5周回するレディースクラスの1周目は集団がひとつ。リーグ開幕戦だった“しもふさクリテリウム 5月”では、序盤からハイスピードの展開となったが、今回も 1 周目は2分23秒、2 周目には 2 分 26 秒と若干、速いペースで進む。そのため3周目から小田島を先頭に、岡田、根本、そして中島深希(TEAM KOBATON)の4名が先頭集団を形成。その後ろ約10秒のタイム差でNリーグNWの板垣を含む3名が追いかける展開となった。

3名の集団から早く飛び出した岡田が2位に入り、バトルマリンジャージを守った Photo:gg_kasai

レースは残り1周に入ったコントロールラインで若干、先行していた小田島が、そのまま先行を守り優勝を決めた。ゴール後に本人に聞くと、じつは体調があまり良くなかったので、スタートから中盤までは一緒にいた集団の様子を見ながら走っていたとのこと。

「中盤を過ぎて少しスピードを上げながら、残り1周回に入る少し前の短い登坂でペースを一気に上げて、再度様子を見ようと思ったら予想よりも後ろの集団が離れたので、ゴールまで頑張って踏んで(後続集団から)ギリギリ逃げ切られました」と安堵の表情を見せていた。

レディースクラス表彰。表彰台の左より2位・岡田、優勝・小田島、3位・中島 Photo:gg_kasai

中学1年生の頃から N リーグに登録し、バトルマリンジャージを守り続けるブラウ・ブリッツェン岡田 Photo:gg_kasai

彼女は10月にバーレーンで開催されるロードレースの日本代表チームメンバーに選ばれていており、ロードレースだけでなくタイムトライアルレースにも出場するとのことで、「その準備も含めて今後もトレーニングを積みます!」と元気に語ってくれた。Nリーグでの経験をぜひ海外のレースでも糧にして発揮して欲しい。

優勝を決めた小田島に遅れること3秒で、3名のゴールスプリントを制した岡田が2位となり、ポイントを積み上げバトルマリンジャージを守った。3位には中島、4位にはスタート前に「最近、練習が不足していたので自信がない」と不安を滲ませていた根本が入り、最後まで先頭集団に残る粘りを見せた。

EXLUB・Nリーグ中学生女子NWポイントリーダー授与式で、岡田は今回のレースを振り返って「今回のレースはスピードも速くて、残り1周で判断をミスって思いきりいけなかったので、次はシッカリ(先頭に)付いていけるように頑張ります!」と力強いコメント。優勝した小田島の走りについては「カッコ良かったです」と答えながらも、良きライバルとして目標にしているようだ。次戦の参加は箱根ヒルクライムとなるようで「タイム更新を狙います!」と第4戦あぶくま洞ヒルクライムで達成したタイム更新を再び狙う勢いを宣言した。

中学生クラスのスタートを前に緊張の面持ちを見せるブラウ渡邉(左)と FITTE 柬理(右) Photo:gg_kasai

この後も強い日差しのなか、ジュニア強化レースなどさまざまなレースが行なわれ、いよいよ中学生クラスがスタートとなる午後3時過ぎには風も一層強くなった。特にゴールに向かう登り坂が向かい風のため、ここでの早めの動きがポイントとなりそうだ。

スタートラインでは、前回の第5戦「小野こまちロードレース」で獲得したバトルマリンジャージを纏う柬理 日楠詩(Team FITTE)が、MCシンジ氏から紹介コールを受けて観客の声援に応えるも、少し緊張の様子。その隣にいる、ポイントランキング2位の渡邉公太(ブラウ・ブリッツエン U15)と軽く言葉を交わしながら号砲を待つ。そして3時17分の定刻に、総勢24名が8周回=12kmの闘いに挑んでいった。

未来を担う中学生達の熱い走りを応援する観客の皆さん。声援も熱い! Photo:gg_kasai

拮抗するメイン集団の中でバトルマリンジャージ姿の柬理(中央)はマークされる Photo:gg_kasai

1周目からペースは速く、真新しいバトルマリンジャージ姿の柬理を先頭にした大きな集団が2 分8秒で周回を終えてコントロールラインを通過。そのため早々に4名がメイン集団からこぼれてしまう。2周目からは少しペースが落ち着いたものの、続々とメイン集団から遅れて3周目にはメイン集団は13名にまで絞られ、そのタイミングでいったんペースが落ちつく。

しかし5周目に、今大会でNリーグ対象レース初参加となった佐谷輝成(#1-PRIMERA-)がアタッ
クをかけて、追いかけるメイン集団のペースが一気に上がり⻑く引き伸ばされる状況に。この佐谷の逃げはほどなく集団に吸収されたものの、このアタックで目が覚めたように集団は活性化、中盤では2分20秒近いペースまで落ちていたラップタイムが、残り1周回では2分6秒までペースアップした。

狙いすませたアタックで優勝を決め、バトルマリンジャージ奪還に成功したブラウ渡邉 Photo:gg_kasai

そして13名に戻ったメイン集団から、強い向かい風の吹く登りの左カーブでいち早く飛び出したのは渡邉。ゴール後のインタビューでも教えてくれたように「最後は行ける!となったタイミングで行け!とコーチにアドバイスをもらっていたので、思い切って飛び出しました」と⻑くブラウ・ブリッツェンのコーチを務める、現・宇都宮ブリッツェンコーチ鈴木真理氏のアドバイスが非常に役立ったようだ。そのままタイミング良く飛び出した勢いで、見事優勝を果たした。


その後ろでは1秒差まで迫った植松大晃(COWGUNMA)とPRIMERA佐谷の一気撃ちで植松に軍配が上がり2位、3位に佐谷が入った。ゴール後に佐谷は「作戦どおりに走れたと思います。スタートから積極的に集団の前方で動いてとにかく前で! 前で! を意識していました」と上手くコントロールし動けたことを冷静に振り返っていた。

メイン集団のゴールスプリントは中央から右へ2、3、4位となった。ライン取りも成敗を分けたようだ Photo:gg_kasai

次戦の抱負は「前回はメイン集団に付いていけなかったので、今回はシッカリと最後まで付いていって表彰台を獲得したいです」と自信をみせた。一方で、ゴール後に「最後(佐谷と渡邉)2人の番手も見えていたのでしたが、スプリントの体制に入るのが遅れてしまって。(ラインも)膨らんでしまったので、一生懸命に追い上げたのですが 3 位に入れなかったです」と語ったように、ライン取りの運が悪く柬理は4位に。

このためNリーグのランキングは、優勝した渡邊が28ポイントを獲得し合計100ポイント。柬理は4位のため12ポイントの獲得で合計96ポイントとなり、僅か4ポイント差でランキングトップが逆転し、渡邉がバトルマリンジャージの奪還に成功した。R×L・Nリーグ中学生男子Nポイントリーダー授与式では、バトルマリンジャージ姿で臨む次戦が地元でのレースとなる渡邉は笑顔をみせながら「自分でレースを動かして、勝てるようにします!」とバトルマリンジャージを守り通すことを誓った。

中学生クラス表彰式。左から2位・植松、優勝の渡邉、3位・佐谷 Photo:gg_kasai

久しぶりの対象レース優勝とバトルマリンジャージ奪還で笑顔を見せるブラウ渡邉 Photo:gg_kasai
レース後のインタビューに答えてくれたNリーグ登録勢は普段から仲良し!左から PRIMERA 佐谷、FITTE 柬理、ブラウ・ブリッツェンの渡邉と岡田 Photo:gg_kasai


そんな渡邉にジャージを奪われた柬理は、バトルマリンジャージの重さを感じたのでは?という問いに対して「いやあ、重いっすねー」と苦笑。力が拮抗していた今レースは難しかったのでは?という問いには「難しかったのは確かなのですが、逃げるのにビビッてしまったのが何よりも良くなかったので克服したい」と反省しつつ、「スプリントはもちろんですが、思い切った走りで逃げられるように頑張ります。次回は勝つしかないです。出し切れる力を出し切って走りたいです!」とバトルマリンジャージの奪還を誓った。

6年目の今シーズンも日本国内の女子やジュニア選手達の活躍の場を広げるため弊リーグ運営をおこなってまいりますので、引き続きご注目とご声援のほど、よろしくお願い申し上げます。

ジュニア強化レースでは、小林海氏(写真前列右)が敢闘賞ライダーの選出とプレゼンターを担当。「勇気を持って参加した、素晴らしい!」とジュニア選手達にエールを送った Photo:gg_kasai

久しぶりに会えた仲間同士で和気あいあい!これからも切磋琢磨して活躍してほしい Photo:gg_kasai

photo:gg_kasai、QNリーグ事務局
text:須藤むつみ(QNリーグ事務局)
協力:サイクルロードレース協会東日本(MATRIX)
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