ウィリエールの国内担当者キット北村さんが、いよいよストラーデ・ビアンケ市民レースに挑みます。ル・トルフェの激坂、そして最後の難関サンタ・カテリーナ通りを何とか上り切り、美しきカンポ広場へ。白い道を堪能したレポートをお届けします。
記事末尾にはキット北村さんが参戦したモニュメント市民レースの評価も掲載しているため、気になる方はぜひチェックしてみてほしい。

スタート地点で願う事は唯一つ“カンポ広場に無事にゴールしたい!”そんな願いを持って、トスカーナの白い道を駆け抜けます photo:Kitto Kitamura
2019年から5大モニュメント制覇を目指しているウィリエールの日本国内担当者"キット北村さん"。 前日のプロレースではイタリアの友人のポッドキャストに出演。タデイ・ポガチャル選手の熱い走りに感動し、その勢いでストラーデ・ビアンケを乗り切るつもりでいた。毎週ちゃんと練習するようなサイクリストでは決してない私、どちらかと言えば運動不足でお医者さんからちゃんと運動しなさいと注意されるような私である。40代前半まではある程度の準備をすれば、調子が良い日を作る事は出来た。しかし、40代中盤(特にコロナでイベントや出張のルーティンが変わって、通っていたスポーツジムが閉業した)の頃からここ数年、調子良く脚が回る日というものが全く無い。
その原因は全く分からないが、2024年のアムステルゴールド市民レースのあの日だけ奇跡的に絶好調であった。数日前のマリオカートによる軽いギックリ腰から始まり、電車移動の疲れが取れない倦怠感、時差ボケに対応して出来ない疲労感、ポガチャル選手の姿に魅了されグランフォンドの137.7kmを走る気持ちにはなっているのに身体が断固拒否している。レース当日の当たらない天気予報に翻弄されつつ、キット北村が"第6のモニュメント"を制覇に向けて、美しいシエナの街に降り立つ。スタート地点で願う事は唯一つ"カンポ広場に無事にゴールしたい!"そんな願いを持って、トスカーナの白い道を駆け抜けます!
それでは、"ストラーデ・ビアンケ参戦記"のお話です。

軽量Verticale SLRレッドカラーに、ミケのホイールが頼もしい相棒 photo:Kitto Kitamura

サドルはNAGO R4 PAS 3D-MSS photo:Kitto Kitamura 
トップチューブにコースマップを貼り付け。ブースエリアで配っていました photo:Kitto Kitamura
ストラーデ・ビアンケの決戦バイクはVerticale SLRのレッドカラーです。2024年、ツール・ド・フランスでデビューした軽量バイクですが、太いタイヤを飲み込むクリアランスと軽量で耐久性のあるミケのKLEOS RDホイールとの組み合わせで、今回グルパマFDJチームではなくキット北村がストラーデ・ビアンケにVerticale SLRを実践投入します。
サドルもプロロゴの新作NAGO R4 PAS 3D-MSSを実践投入です。本当は147mm幅がベストマッチなのですが、まだワイドな3Dサドルは未完成なので137mm幅で参戦です。現在、キット北村用に製作を依頼しております。
トップチューブにコースマップを貼り付けます。他の市民レースでは受付ブースエリアでもらえましたが、ストラーデ・ビアンケでは受付ブースエリアの屋外で配っていました。

朝~昼までは晴れマークなので、アムステルゴールドとほぼ同じ装備で挑みます photo:Kitto Kitamura
前日のプロレースでは日中暖かく、当日の天気予報でも(夕方から少雨マークですが)気温が17度まで上昇し、朝~昼までは晴れマークなので、アムステルゴールドとほぼ同じ装備で挑みます。実は前夜にプロレースの走りに興奮してしまい、あまり眠れませんでした。
ナンバープレートが3桁番台のVIPもしくはガチな人達は、8時スタートの号砲と共にスタート出来ます。スタートラインには強そうな人達が並んでいますが、日本人っぽい方々が遠目に見えます。(レース後に彼らがシマノドリンキングの白石さん御一行だと判明。)

スタートラインには強そうな人達が並んでいます photo:Kitto Kitamura

2000番台の出走は10分遅れ。朝の予想外の寒さに少し後悔 photo:Kitto Kitamura 
いよいよスタート。ナーバスな集団に注意しつつ前方キープに集中 photo:Kitto Kitamura

セクター1:ヴィドリッタに到着 左折から突如始まるグラベルに戸惑いつつ進む photo:Kitto Kitamura
自分は2000番台なので、実際のスタートは8時10分ぐらいでした。予想よりも朝方寒くて、7時20分くらいからスタートエリアで待っているのですが、"スタート地点に並ぶのがもう15分遅くても良かったなぁ…。"と後悔。
スタートしました!最初の20kmはかなり集団がナーバスなので無理はしません。しかし、過去のイタリアでのグランフォンド参戦での失敗を反省し、序盤の写真撮影はそこそこにして、集団がばらける20km先までは集団に喰らい付いて行きます。
セクター1:ヴィドリッタに到着しました。道路を左に曲がると突然グラベル区間が始まるので、ちょっと面食らいました。それにしても肌寒い。天気予報では9時過ぎからぐっと気温が上がり始めるはずなんですが…。出走前までは心配していたグラベル区間ですが、硬く締まった路面なので全く怖くありませんでした。"ストラーデ・ビアンケ楽勝じゃない?"と錯覚してしまいました。

意外な走りやすさに一安心 photo:Kitto Kitamura

広大な農作地を抜ける道路の両端には大きな街路樹が。トスカーナの景色は美しいですね photo:Kitto Kitamura

プントロッソ・パドヴァのイゴールさんと合流 photo:Kitto Kitamura
広大な農作地を抜ける道路の両端には大きな街路樹が。トスカーナの景色は美しいですね。晴れたらもっと景色が良かったのに!
後ろから聞き憶えのある声がしました。プントロッソ・パドヴァのイゴールさんです。本当はイゴールさんがシエナまで運んでくれる予定だったのですが…。今度また機会があればイゴールさん家に泊まって一緒にイベント参加したいと思います。イゴールさんはFilante SLRのド派手なカベンディッシュカラーに乗っています。コンポもホイールもカンパニョーロです。さすが、お金持ちな自転車屋さんです。

イゴールさんはFilante SLRのド派手なカベンディッシュカラーに乗っています photo:Kitto Kitamura

予想以上にグラベルバイクで参戦している人が多い事に気付きました photo:Kitto Kitamura 
セクター2:バグナイアに到着しました photo:Kitto Kitamura
セクター2:バグナイアに到着しました。セクター1よりは小石が浮いていますが、走るのに全然問題ありません!
グラベルロードの上り区間で、多くの参加者に抜かれる際に自転車をチェックしたのですが、予想以上にグラベルバイクで参戦している人が多い事に気付きました。ウィリエールのJENAやRaveシリーズがこんなにも沢山走っている事に大変驚きました。

シマノのテクニカルサービスが待っていてくれました photo:Kitto Kitamura

ブースの中を覗いてみると、友達のマッシモさんがいましたよ! photo:Kitto Kitamura

グランフォンドとメディオフォンドの分岐点。その時の調子で選択します photo:Kitto Kitamura
いつも80~90km地点あたりから脚が重くなるのですが、もう既にセクター2を抜けた40kmあたりから脚に痛みを感じます。ここでシマノのテクニカルサービスです。ここに友達のマッシモ・ラヴァさんがいるかな?とブース内に興味津々です。ブースの中を覗いてみると、友達のマッシモさんがいましたよ! イル・ロンバルディアではグランフォンドレース中にも関わらず、バールでコーヒータイムをして完走ギリギリになってしまったので、今回は写真をさっと撮って先へと進みます。
シマノのテクニカルサービスを抜けると、グランフォンドとメディオフォンドの分岐点です。最初から参加者がどちらを走るのかを決めているのではなく、(レースナンバーやゼッケンも距離別にはなっていないという意味)自分の調子と相談してグランフォンドかメディオフォンドを参加者自らが選択します。私は既に脚が痛かったので、ここで迷わずメディオフォンド87kmを選択しました。

分岐点を過ぎると、第1補給ポイントです。ここでしこたま補給食を食べます photo:Kitto Kitamura

フィードゾーンの人達のお昼御飯であるポルケッタ(焼き豚)をスペシャル補給食として頂きました photo:Kitto Kitamura
分岐点を過ぎると、第1補給ポイントです。ここでしこたま補給食を食べます。日本では売っていないエナジーゼリーがとても美味しかったです。モリモリ補給食を食べていたのが気に入られたのか?フィードゾーンの人達のお昼御飯であるポルケッタ(焼き豚)をスペシャル補給食として頂きました。
セクター3:ラディに到着しました。8kmとかなりの長さで見通しの良いグラベルセクターです。走っていると普通に車がかっ飛ばして走ってくるので、砂埃に目がショボショボしてしまいます。見通しが良いのは良い事なんですが、街路樹等の風を遮る物がほとんど無いので横風にあおられます。

セクター3:ラディに到着しました。8kmとかなりの長さで見通しが良かったです photo:Kitto Kitamura 
街路樹等の風を遮る物がほとんど無いので横風にあおられます photo:Kitto Kitamura

ロードバイクでグラベルセクターを時速40km以上で下る事なんて、日本ではなかなか出来ない体験 photo:Kitto Kitamura
ロードバイクでグラベルセクターを時速40km以上で下る事なんて、日本ではなかなか出来ない体験だと思うのですが、元々MTB乗りなので心配しておりません。轍とかも無いのでハンドルを取られる事無く走りやすいのですが、急カーブのオーバースピードにだけ注意をします。
セクター3を過ぎると、第2補給ポイントです。第1補給ポイントで美味しかったエナジーゼリーが売り切れていました!致し方なくバナナとオレンジを口いっぱいに頬張ります。

セクター3を過ぎると、第2補給ポイントです photo:Kitto Kitamura 
セクター4:プレスキアーノに到着しました。ちょっと雲行きが怪しくなってきました photo:Kitto Kitamura

セクター4も少し斜度のキツイ上りがありますが、短いのであっと言う間に終了 photo:Kitto Kitamura

セクター5:コッレ・ピンツートに到着しましたが、いきなりガツンと来ます photo:Kitto Kitamura 
コース上には沢山のライダーが溢れています photo:Kitto Kitamura
セクター4:プレスキアーノに到着しました。ちょっと雲行きが怪しくなってきました。少しポツポツと雨粒を感じます。セクター4も少し斜度のキツイ上りがありますが、短いのであっと言う間に終了しました。
セクター5:コッレ・ピンツートに到着しましたが、いきなりガツンと来ます。セクター4と同じく距離は短いのですが、セクター4までと違って路面が硬く締まっていません。そしてかなり上りがキツイです!
グランフォンド組とメディオフォンド組が合流しているので、コース上には沢山のライダーが溢れています。ヘタレなのでキープライトです。速いライダーにはドンドンと抜いてもらいます。

セクター5で一番キツイ所では、トラクションを意識しないと滑ってしまいそう photo:Kitto Kitamura

一番キツイ所を上れたら、ちょっと休憩しました photo:Kitto Kitamura
セクター5で一番キツイ所では、リヤタイヤでちゃんと路面を掴む事を意識しながら走らないと、ズルッとタイヤが空転してしまいます。今回タイヤはスリックの28Cで参戦しておりますが、グラベル区間はあれどタイヤにブロックパターンは必要無いと思います。しかし、スリックタイヤで太めの32Cが私には正解な気がします。正直ストラーデ・ビアンケのグラベルをここまで楽勝だと感じていましたが、セクター5からグラベル区間の恐ろしさを知ることになりました。
一番キツイ所を上れたら、ちょっと休憩しました。エナジーバーを齧りながら休憩していると、去年のアムステルゴールドでツアーガイドしてくれたクリストフさんがやってきて、『ヘイ!キット、何やってんの?先に俺は行くぞ!』と抜かされてしまいました。

セクター6:ル・トルフェです。地獄の1丁目です photo:Kitto Kitamura

ル・トルフェの入口を勢いよく下って行くと、グイっと登り返しがやってきました photo:Kitto Kitamura
セクター6:ル・トルフェです。この地獄の1丁目の入口で写真を撮影していると、日本で数年間働いた事のあるというイタリア人のおじさんが『ル・トルフェを下るところまでは良いが、後は地獄の上り坂が待っているよ。』と脅されました。
ル・トルフェの入口を勢いよく下って行くと、グイっと登り返しがやってきました。初めは幅広い上りでしたが段々と道が狭くなり、あの観客でごった返したル・トルフェの観戦ポイントが訪れます。これでグラベル区間は終了なので安心していました。奇妙な事に、ル・トルフェからシエナの街まで4kmぐらいのはずなんですが、コースマップ的にはあと14kmも残っています!?直にシエナの街にゴールするのではなくシエナの街を大きく南に迂回して、地獄のサンタ・カテリーナ通りを上ってゴールするようです。

もうゴールまでラスト1.5kmにけっこう長めのフォンテ・ブランダ通りの坂が鎮座していました photo:Kitto Kitamura 
最後のメインディッシュ:地獄のサンタ・カテリーナ通り photo:Kitto Kitamura

残った最後の力を振り絞ってサンタ・カテリーナ通りを上り切ります photo:Kitto Kitamura
もうゴールまでラスト1.5kmぐらいのはずですが、地獄のサンタ・カテリーナ通りの前にけっこう長めのフォンテ・ブランダ通りの坂が鎮座していました。これは想定外だったのできつかったです。
フォンテ・ブランダ通りの坂を抜けると、セクター区間では無いのですが、最後のメインディッシュ:地獄のサンタ・カテリーナ通りです。下から見るとけっこう奥行きがあります。サンタ・カテリーナ通りからシエナの街にグイっと右に曲がるコーナーにはアマチュアライダーを応援する観客でいっぱいです。
もうキツイ区間はこれで最後なので、残った最後の力を振り絞ってサンタ・カテリーナ通りを上り切ります。気分はタデイ・ポガチャルのように軽快に上っているつもりなんですが、写真で見るとどう見ても重量級のライダーがもがき苦しんでいる姿にしか見えませんね。

プロと同じようにカンポ広場に戻ってきました photo:Kitto Kitamura
過去の経験からゴールライン付近でポーズを取れば、大会のオフィシャルカメラマンの写真にかっこよく映っているはずなんですが、ストラーデ・ビアンケのカメラマンはシャッターを切る位置が少し早かったようです。ガッツポーズを取る前の姿をゴール写真として撮られてしまいました。
ストラーデ・ビアンケを走り終えて思うのですが、MTB乗りの私には最近流行りの幅の狭いハンドルバーは性に合わないですね。やはり使い慣れた幅広のハンドルバーが良いと思います。また、シマノのコンポーネントに慣れ親しんでいるので、咄嗟にスラムのレバーを操作する際に何度かシフティングを間違えましたが、バッテリーのチャージ方法や使い心地は想像以上に良かったです。
スポルティブブレイクスのツアー参加者の多くはシマノ105DI2が搭載されたレンタルバイクで出走したのですが、どうもスポルティブブレイクスがレンタルバイクをシエナへ運搬中にDI2のバッテリーが消費してしまうような積み方をしてしまったようです。結果的にグランフォンド中にバッテリーが切れた参加者が幾人かいました。イベントには各所にシマノのテクニカルサービスがあったので、バッテリー切れで変速が出来ず困っていた参加者達はテクニカルサービスで充電してもらって、事なきを得たようですが、レンタルバイクを借りる際にはそういった点に注意しなければならない事を学びました。

ストラーデ・ビアンケ完走の雄叫びをあげます photo:Kitto Kitamura
ゴールラインを過ぎてから安全を確認し、Verticale SLRを頭上に掲げストラーデ・ビアンケ完走の雄叫びをあげます。この姿がスクリーンに映っていたようで、スポルティブブレイクスの仲間達が『お前がスクリーンに映った後に、カンポ広場で記念写真を撮っていたサイクリスト達の皆が自転車を持ち上げたポーズで記念撮影を始めたんだよ。それを見てたら可笑しくて笑ったよ!』との話でした。
スポルティブブレイクスのツアーを共にした仲間達とメダルをもらって記念撮影です。世界で一番美しいと言われるカンポ広場にゴールするというのは格別ですね。カンポ広場はパリオという競馬レースのイベントかストラーデ・ビアンケの聖地ですね。
後日、年齢別のランキングを見るとまさかの最下位(タイムは6時間10分41秒)でした。フィードゾーンで何人か私より遅かった方がいたのでマリアネッラを卒業したはずだったのですが、イル・ロンバルディア2023に続きストラーデ・ビアンケ2025でもマリアネッラジャージ獲得です。また、イタリアの友達連中が新たなマリアネッラジャージを作る予感がしますね。

スポルティブブレイクスのツアーを共にした仲間達とメダルをもらって記念撮影 photo:Kitto Kitamura

シマノ・ヨーロッパの友人であるジョースト・ホーテルマンスさん達とイタリアのビールで乾杯しました photo:Kitto Kitamura
ストラーデ・ビアンケのパスタパーティーに向かう途中で、シマノ・ヨーロッパの友人であるジョースト・ホーテルマンスさん達とイタリアのビールで乾杯しました。オランダ人だからオランダのビールかと思いましたがイタリアのビールでした。
一杯ビールを引っかけてから向かったパスタパーティーの会場で、『あなたは日本人ですか?』と突然声を掛けてくる若者に出会いました。 彼の顔を見て"どこかでお見かけした事がある顔だなぁ?"と思っていたら、シマノドリンキングの白石真吾さんでした。20年ぐらい前にMTBのJシリーズでマウンテンバイクチームの監督をしている時に、白石さんの姿をいつもお見かけしてはいましたが、実際にお話しするのは今回が初めてでした。白石さんの昔と変わらぬ元気ハツラツとした姿に懐かしく思いました。

シマノドリンキングの白石真吾さんにお会いしました photo:Kitto Kitamura
<エピローグ>
シマノドリンキングの白石さんとお話ししていると、白石さんのお友達からも声をかけて頂きました。お二人は浅野直也さんと二間瀬英利さん(黒縁のメガネの方)という方で、『キットさんのシクロワイアードの海外遠征の記事を参考にさせて頂いております。』という嬉しい言葉を頂きました。まさかイタリアでそんな言葉をかけて頂けるなんて、ただ感無量でした。
このお二人との出会いにより、私の記事を読んで海外レースに挑戦する一般ユーザーが増えている事に大変嬉しくなり、"クラシックレースに向かう前の段階のお話も記載すべきではないか?"、"クラシックレース参戦比較表を作ってみてはどうか?"と思い、今回のレポートは①プロローグ、②プロレース観戦記、③市民レース参戦記の3部作とし、ストラーデ・ビアンケのエピローグとして、クラシックレース参戦比較表を作りました。比較表はあくまで個人的な見解ですが、私の表を読んでおけば、初めてこれらのレースに参戦する人にとって数少ない手引書にはなると思います。

浅野直也さんと白石真吾さん、二間瀬英利さんにお会いできました photo:Kitto Kitamura
評価基準
1:公共交通機関の使いやすさ、大会駐車場の有無、スタート地点&ゴール地点から近い所にあるホテルの有無とホテル予約のしやすさ
2:レースエントリー申し込みのしやすさ
3:レースイベントの楽しさ、コースへの感動、走るコースの美しさ
4:レースイベント以外の観光のしやすさ
5:プロレースの勝負所へのアクセスのしやすさ
ロンド・ファン・フラーンデレン

プロレースのハイライトにもなっているパテルベルグ。石畳の登りは本当に辛い…
ヨーロッパのクラシックで海外旅行として一番ハードルが低いレース。市民レース参加者用の大会駐車場があり、レンタカーでも電車でもアクセス可能。チェントラム・ロンド・ファン・フラーンデレン博物館やアントワープ、ブリュッセルといった観光地に恵まれ、宿泊環境も非常に良い。ただし、街中を走るレースなので壮大な景色は期待できない。プロレース観戦を勝負所で見たい場合には、VIPエリアの予約(有償です)が必要
推奨タイヤ: セミスリックの28-32C(パリ~ルーベに比べると石畳の石はそれほど尖っていない)
シクロワイアードレポート:https://www.cyclowired.jp/lifenews/node/293228
パリ〜ルーべ

パリ〜ルーべ
ルーベ周辺に大きな町がなく、ホテル予約や公共交通機関での移動には苦労する可能性あり。観光地もほとんどないが、強烈な石畳と、その間をつなぐフランスの片田舎の風景のギャップが魅力的。総合点は低いものの、個人的には再挑戦したいレースNo.1(登りがないため)。
推奨タイヤ: ブロックの35C以上、頑丈なホイールが必須(グラベルバイクでの参加も検討すべき)
シクロワイアードレポート:https://www.cyclowired.jp/lifenews/node/293564
イル・ロンバルディア

イル・ロンバルディア (c)Kitto Kitamura
市民レースのスタート・ゴール地点であるカントゥへの公共交通機関でのアクセスは最悪(無人駅)。ムロ・ディ・ソルマーノとマドンナ・デル・ギザッロの登りは凶悪だが、コモ湖の美しい景色は良い思い出になる。レースエントリーには医師の診断書が必要。プロレースはコモ⇔ベルガモで開催され、拠点選びに悩む。個人的に再挑戦したくないレースNo.1。
推奨タイヤ: スリックの25-28C
シクロワイアードレポート:https://www.cyclowired.jp/news/node/386781
アムステルゴールドレース

アムステルゴールドレース photo:Kitto Kitamura
エントリーが毎年10月の1ヶ月間のみで、さらに抽選制のため参加確定が難しい。確実に参加したい場合はツアーオペレーターを通じての出場権購入がおすすめ。ファルケンブルグでホテルが取れれば、スタート・ゴール地点や勝負所のカウベルグまで近い。シマノエクスペリエンスセンターやマーストリヒトなど観光地も充実。レース後のアムステルビールのビアパーティーも魅力。
推奨タイヤ: スリックの25-28C
シクロワイアードレポート:https://www.cyclowired.jp/news/node/387938
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ (c)Kitto Kitamura
世界最凶にして最古のレース。リエージュに宿泊することになるが、市民レースの受付・スタート・ゴール地点であるバヌーが離れているため、レンタカーなしだと移動に苦労する。自転車関連の観光地はないが、リエージュ市内での観光は可能。平地区間が少なく気が抜けないコース。プロレース観戦は比較的しやすいが、勝負所は少し遠い。
推奨タイヤ: スリックの25-28C
シクロワイアードレポート:https://www.cyclowired.jp/news/node/388038
ストラーデ・ビアンケ

ストラーデ・ビアンケ photo:Kitto Kitamura
観光地シエナをスタート・ゴール地点とするレース。レース前後にフィレンツェ観光も楽しめる。人気が高く、エントリーはすぐに締め切られる。イル・ロンバルディアと同様、医師の診断書が必要。シエナでホテルが取れれば、スタート・ゴール地点や勝負所のル・トルフェまで近い。
推奨タイヤ: スリックの30-34C(硬く締まったグラベルのため)、雨天時はセミスリックの30C以上
Special Thanks to
Ufficiale Strade Bianche
Massimo Rava (Mania Bike & Shimano Technical Service)
Igor Zaggia (Punto Rosso Zerolite Padova)
Joost Hoetelmans (Shimano EU B.V.)
Shingo Shiraishi (Shimano Drinking)
Naoya Asano
Hidetoshi Futamase
Francesco Munaron (Selle Italia)
Akira Nakata (Kapermuur-Wave One)
Kaori Mishima (Kapermuur-Wave One)
Ryohei Wada (OGK Kabuto)
Kazuhiro Sakurai (Asahi Shuzo CO.,LTD)

フランチェスコさん一家との晩餐に柴犬のウンディ君にも来てもらいました photo:Kitto Kitamura
今に始まった事ではないですが、ここ数年で地球全体の異常気象具合がかなり深刻な状況ですね。元・生物学者としてはアフリカや南米の自然や野生生物達が見られなくなるのが悲しいです。そこで、最終決戦のミラノ~サンレモの事はもちろん大事なのですが、それよりも先に小学生の頃からの夢であった“アマゾン川を旅したい!”という夢に向かった方が良いのでは?とここ最近考えております。
この旅の最後の晩餐で、元ウィリエール社のセールスマーケティングで現在セッレ・イタリア社に転職していた友人のフランチェスコ・ムナロンさんとその家族にチッタデッラのレストランに招待されました。キット北村は無類の犬好き、特に柴犬が!この旅では犬エネルギーを全く充電していないので、フランチェスコさんに“ムナロン家の柴犬:ウンディ君を連れて来て!”とリクエストしていました。ウンディ君の柴犬臭を嗅ぐことで、次の海外遠征に向けての英気を養う事が出来ました。
ストラーデ・ビアンケ編おしまい。
Report:Kitto Kitamura
記事末尾にはキット北村さんが参戦したモニュメント市民レースの評価も掲載しているため、気になる方はぜひチェックしてみてほしい。

2019年から5大モニュメント制覇を目指しているウィリエールの日本国内担当者"キット北村さん"。 前日のプロレースではイタリアの友人のポッドキャストに出演。タデイ・ポガチャル選手の熱い走りに感動し、その勢いでストラーデ・ビアンケを乗り切るつもりでいた。毎週ちゃんと練習するようなサイクリストでは決してない私、どちらかと言えば運動不足でお医者さんからちゃんと運動しなさいと注意されるような私である。40代前半まではある程度の準備をすれば、調子が良い日を作る事は出来た。しかし、40代中盤(特にコロナでイベントや出張のルーティンが変わって、通っていたスポーツジムが閉業した)の頃からここ数年、調子良く脚が回る日というものが全く無い。
その原因は全く分からないが、2024年のアムステルゴールド市民レースのあの日だけ奇跡的に絶好調であった。数日前のマリオカートによる軽いギックリ腰から始まり、電車移動の疲れが取れない倦怠感、時差ボケに対応して出来ない疲労感、ポガチャル選手の姿に魅了されグランフォンドの137.7kmを走る気持ちにはなっているのに身体が断固拒否している。レース当日の当たらない天気予報に翻弄されつつ、キット北村が"第6のモニュメント"を制覇に向けて、美しいシエナの街に降り立つ。スタート地点で願う事は唯一つ"カンポ広場に無事にゴールしたい!"そんな願いを持って、トスカーナの白い道を駆け抜けます!
それでは、"ストラーデ・ビアンケ参戦記"のお話です。



ストラーデ・ビアンケの決戦バイクはVerticale SLRのレッドカラーです。2024年、ツール・ド・フランスでデビューした軽量バイクですが、太いタイヤを飲み込むクリアランスと軽量で耐久性のあるミケのKLEOS RDホイールとの組み合わせで、今回グルパマFDJチームではなくキット北村がストラーデ・ビアンケにVerticale SLRを実践投入します。
サドルもプロロゴの新作NAGO R4 PAS 3D-MSSを実践投入です。本当は147mm幅がベストマッチなのですが、まだワイドな3Dサドルは未完成なので137mm幅で参戦です。現在、キット北村用に製作を依頼しております。
トップチューブにコースマップを貼り付けます。他の市民レースでは受付ブースエリアでもらえましたが、ストラーデ・ビアンケでは受付ブースエリアの屋外で配っていました。

前日のプロレースでは日中暖かく、当日の天気予報でも(夕方から少雨マークですが)気温が17度まで上昇し、朝~昼までは晴れマークなので、アムステルゴールドとほぼ同じ装備で挑みます。実は前夜にプロレースの走りに興奮してしまい、あまり眠れませんでした。
ナンバープレートが3桁番台のVIPもしくはガチな人達は、8時スタートの号砲と共にスタート出来ます。スタートラインには強そうな人達が並んでいますが、日本人っぽい方々が遠目に見えます。(レース後に彼らがシマノドリンキングの白石さん御一行だと判明。)




自分は2000番台なので、実際のスタートは8時10分ぐらいでした。予想よりも朝方寒くて、7時20分くらいからスタートエリアで待っているのですが、"スタート地点に並ぶのがもう15分遅くても良かったなぁ…。"と後悔。
スタートしました!最初の20kmはかなり集団がナーバスなので無理はしません。しかし、過去のイタリアでのグランフォンド参戦での失敗を反省し、序盤の写真撮影はそこそこにして、集団がばらける20km先までは集団に喰らい付いて行きます。
セクター1:ヴィドリッタに到着しました。道路を左に曲がると突然グラベル区間が始まるので、ちょっと面食らいました。それにしても肌寒い。天気予報では9時過ぎからぐっと気温が上がり始めるはずなんですが…。出走前までは心配していたグラベル区間ですが、硬く締まった路面なので全く怖くありませんでした。"ストラーデ・ビアンケ楽勝じゃない?"と錯覚してしまいました。



広大な農作地を抜ける道路の両端には大きな街路樹が。トスカーナの景色は美しいですね。晴れたらもっと景色が良かったのに!
後ろから聞き憶えのある声がしました。プントロッソ・パドヴァのイゴールさんです。本当はイゴールさんがシエナまで運んでくれる予定だったのですが…。今度また機会があればイゴールさん家に泊まって一緒にイベント参加したいと思います。イゴールさんはFilante SLRのド派手なカベンディッシュカラーに乗っています。コンポもホイールもカンパニョーロです。さすが、お金持ちな自転車屋さんです。



セクター2:バグナイアに到着しました。セクター1よりは小石が浮いていますが、走るのに全然問題ありません!
グラベルロードの上り区間で、多くの参加者に抜かれる際に自転車をチェックしたのですが、予想以上にグラベルバイクで参戦している人が多い事に気付きました。ウィリエールのJENAやRaveシリーズがこんなにも沢山走っている事に大変驚きました。



いつも80~90km地点あたりから脚が重くなるのですが、もう既にセクター2を抜けた40kmあたりから脚に痛みを感じます。ここでシマノのテクニカルサービスです。ここに友達のマッシモ・ラヴァさんがいるかな?とブース内に興味津々です。ブースの中を覗いてみると、友達のマッシモさんがいましたよ! イル・ロンバルディアではグランフォンドレース中にも関わらず、バールでコーヒータイムをして完走ギリギリになってしまったので、今回は写真をさっと撮って先へと進みます。
シマノのテクニカルサービスを抜けると、グランフォンドとメディオフォンドの分岐点です。最初から参加者がどちらを走るのかを決めているのではなく、(レースナンバーやゼッケンも距離別にはなっていないという意味)自分の調子と相談してグランフォンドかメディオフォンドを参加者自らが選択します。私は既に脚が痛かったので、ここで迷わずメディオフォンド87kmを選択しました。


分岐点を過ぎると、第1補給ポイントです。ここでしこたま補給食を食べます。日本では売っていないエナジーゼリーがとても美味しかったです。モリモリ補給食を食べていたのが気に入られたのか?フィードゾーンの人達のお昼御飯であるポルケッタ(焼き豚)をスペシャル補給食として頂きました。
セクター3:ラディに到着しました。8kmとかなりの長さで見通しの良いグラベルセクターです。走っていると普通に車がかっ飛ばして走ってくるので、砂埃に目がショボショボしてしまいます。見通しが良いのは良い事なんですが、街路樹等の風を遮る物がほとんど無いので横風にあおられます。



ロードバイクでグラベルセクターを時速40km以上で下る事なんて、日本ではなかなか出来ない体験だと思うのですが、元々MTB乗りなので心配しておりません。轍とかも無いのでハンドルを取られる事無く走りやすいのですが、急カーブのオーバースピードにだけ注意をします。
セクター3を過ぎると、第2補給ポイントです。第1補給ポイントで美味しかったエナジーゼリーが売り切れていました!致し方なくバナナとオレンジを口いっぱいに頬張ります。





セクター4:プレスキアーノに到着しました。ちょっと雲行きが怪しくなってきました。少しポツポツと雨粒を感じます。セクター4も少し斜度のキツイ上りがありますが、短いのであっと言う間に終了しました。
セクター5:コッレ・ピンツートに到着しましたが、いきなりガツンと来ます。セクター4と同じく距離は短いのですが、セクター4までと違って路面が硬く締まっていません。そしてかなり上りがキツイです!
グランフォンド組とメディオフォンド組が合流しているので、コース上には沢山のライダーが溢れています。ヘタレなのでキープライトです。速いライダーにはドンドンと抜いてもらいます。


セクター5で一番キツイ所では、リヤタイヤでちゃんと路面を掴む事を意識しながら走らないと、ズルッとタイヤが空転してしまいます。今回タイヤはスリックの28Cで参戦しておりますが、グラベル区間はあれどタイヤにブロックパターンは必要無いと思います。しかし、スリックタイヤで太めの32Cが私には正解な気がします。正直ストラーデ・ビアンケのグラベルをここまで楽勝だと感じていましたが、セクター5からグラベル区間の恐ろしさを知ることになりました。
一番キツイ所を上れたら、ちょっと休憩しました。エナジーバーを齧りながら休憩していると、去年のアムステルゴールドでツアーガイドしてくれたクリストフさんがやってきて、『ヘイ!キット、何やってんの?先に俺は行くぞ!』と抜かされてしまいました。


セクター6:ル・トルフェです。この地獄の1丁目の入口で写真を撮影していると、日本で数年間働いた事のあるというイタリア人のおじさんが『ル・トルフェを下るところまでは良いが、後は地獄の上り坂が待っているよ。』と脅されました。
ル・トルフェの入口を勢いよく下って行くと、グイっと登り返しがやってきました。初めは幅広い上りでしたが段々と道が狭くなり、あの観客でごった返したル・トルフェの観戦ポイントが訪れます。これでグラベル区間は終了なので安心していました。奇妙な事に、ル・トルフェからシエナの街まで4kmぐらいのはずなんですが、コースマップ的にはあと14kmも残っています!?直にシエナの街にゴールするのではなくシエナの街を大きく南に迂回して、地獄のサンタ・カテリーナ通りを上ってゴールするようです。



もうゴールまでラスト1.5kmぐらいのはずですが、地獄のサンタ・カテリーナ通りの前にけっこう長めのフォンテ・ブランダ通りの坂が鎮座していました。これは想定外だったのできつかったです。
フォンテ・ブランダ通りの坂を抜けると、セクター区間では無いのですが、最後のメインディッシュ:地獄のサンタ・カテリーナ通りです。下から見るとけっこう奥行きがあります。サンタ・カテリーナ通りからシエナの街にグイっと右に曲がるコーナーにはアマチュアライダーを応援する観客でいっぱいです。
もうキツイ区間はこれで最後なので、残った最後の力を振り絞ってサンタ・カテリーナ通りを上り切ります。気分はタデイ・ポガチャルのように軽快に上っているつもりなんですが、写真で見るとどう見ても重量級のライダーがもがき苦しんでいる姿にしか見えませんね。

過去の経験からゴールライン付近でポーズを取れば、大会のオフィシャルカメラマンの写真にかっこよく映っているはずなんですが、ストラーデ・ビアンケのカメラマンはシャッターを切る位置が少し早かったようです。ガッツポーズを取る前の姿をゴール写真として撮られてしまいました。
ストラーデ・ビアンケを走り終えて思うのですが、MTB乗りの私には最近流行りの幅の狭いハンドルバーは性に合わないですね。やはり使い慣れた幅広のハンドルバーが良いと思います。また、シマノのコンポーネントに慣れ親しんでいるので、咄嗟にスラムのレバーを操作する際に何度かシフティングを間違えましたが、バッテリーのチャージ方法や使い心地は想像以上に良かったです。
スポルティブブレイクスのツアー参加者の多くはシマノ105DI2が搭載されたレンタルバイクで出走したのですが、どうもスポルティブブレイクスがレンタルバイクをシエナへ運搬中にDI2のバッテリーが消費してしまうような積み方をしてしまったようです。結果的にグランフォンド中にバッテリーが切れた参加者が幾人かいました。イベントには各所にシマノのテクニカルサービスがあったので、バッテリー切れで変速が出来ず困っていた参加者達はテクニカルサービスで充電してもらって、事なきを得たようですが、レンタルバイクを借りる際にはそういった点に注意しなければならない事を学びました。

ゴールラインを過ぎてから安全を確認し、Verticale SLRを頭上に掲げストラーデ・ビアンケ完走の雄叫びをあげます。この姿がスクリーンに映っていたようで、スポルティブブレイクスの仲間達が『お前がスクリーンに映った後に、カンポ広場で記念写真を撮っていたサイクリスト達の皆が自転車を持ち上げたポーズで記念撮影を始めたんだよ。それを見てたら可笑しくて笑ったよ!』との話でした。
スポルティブブレイクスのツアーを共にした仲間達とメダルをもらって記念撮影です。世界で一番美しいと言われるカンポ広場にゴールするというのは格別ですね。カンポ広場はパリオという競馬レースのイベントかストラーデ・ビアンケの聖地ですね。
後日、年齢別のランキングを見るとまさかの最下位(タイムは6時間10分41秒)でした。フィードゾーンで何人か私より遅かった方がいたのでマリアネッラを卒業したはずだったのですが、イル・ロンバルディア2023に続きストラーデ・ビアンケ2025でもマリアネッラジャージ獲得です。また、イタリアの友達連中が新たなマリアネッラジャージを作る予感がしますね。


ストラーデ・ビアンケのパスタパーティーに向かう途中で、シマノ・ヨーロッパの友人であるジョースト・ホーテルマンスさん達とイタリアのビールで乾杯しました。オランダ人だからオランダのビールかと思いましたがイタリアのビールでした。
一杯ビールを引っかけてから向かったパスタパーティーの会場で、『あなたは日本人ですか?』と突然声を掛けてくる若者に出会いました。 彼の顔を見て"どこかでお見かけした事がある顔だなぁ?"と思っていたら、シマノドリンキングの白石真吾さんでした。20年ぐらい前にMTBのJシリーズでマウンテンバイクチームの監督をしている時に、白石さんの姿をいつもお見かけしてはいましたが、実際にお話しするのは今回が初めてでした。白石さんの昔と変わらぬ元気ハツラツとした姿に懐かしく思いました。

<エピローグ>
シマノドリンキングの白石さんとお話ししていると、白石さんのお友達からも声をかけて頂きました。お二人は浅野直也さんと二間瀬英利さん(黒縁のメガネの方)という方で、『キットさんのシクロワイアードの海外遠征の記事を参考にさせて頂いております。』という嬉しい言葉を頂きました。まさかイタリアでそんな言葉をかけて頂けるなんて、ただ感無量でした。
このお二人との出会いにより、私の記事を読んで海外レースに挑戦する一般ユーザーが増えている事に大変嬉しくなり、"クラシックレースに向かう前の段階のお話も記載すべきではないか?"、"クラシックレース参戦比較表を作ってみてはどうか?"と思い、今回のレポートは①プロローグ、②プロレース観戦記、③市民レース参戦記の3部作とし、ストラーデ・ビアンケのエピローグとして、クラシックレース参戦比較表を作りました。比較表はあくまで個人的な見解ですが、私の表を読んでおけば、初めてこれらのレースに参戦する人にとって数少ない手引書にはなると思います。

クラシックレース参戦比較表
レース名 | 1:交通・宿泊 | 2:申込 | 3:体験 | 4:観光 | 5:観戦 | 総合得点 |
---|---|---|---|---|---|---|
ロンド・ファン・フラーンデレン (ベルギー) | 10 | 10 | 6 | 10 | 7 | 43 |
パリ~ルーベ (フランス) | 4 | 10 | 10 | 3 | 3 | 30 |
イル・ロンバルディア (イタリア) | 1 | 5 | 9 | 6 | 6 | 27 |
アムステルゴールドレース (オランダ) | 8 | 1 | 7 | 10 | 10 | 36 |
リエージュ〜バストーニュ 〜リエージュ(ベルギー) | 6 | 10 | 4 | 6 | 5 | 31 |
ストラーデ・ビアンケ (イタリア) | 7 | 3 | 7 | 7 | 9 | 33 |
評価基準
1:公共交通機関の使いやすさ、大会駐車場の有無、スタート地点&ゴール地点から近い所にあるホテルの有無とホテル予約のしやすさ
2:レースエントリー申し込みのしやすさ
3:レースイベントの楽しさ、コースへの感動、走るコースの美しさ
4:レースイベント以外の観光のしやすさ
5:プロレースの勝負所へのアクセスのしやすさ
ロンド・ファン・フラーンデレン

ヨーロッパのクラシックで海外旅行として一番ハードルが低いレース。市民レース参加者用の大会駐車場があり、レンタカーでも電車でもアクセス可能。チェントラム・ロンド・ファン・フラーンデレン博物館やアントワープ、ブリュッセルといった観光地に恵まれ、宿泊環境も非常に良い。ただし、街中を走るレースなので壮大な景色は期待できない。プロレース観戦を勝負所で見たい場合には、VIPエリアの予約(有償です)が必要
推奨タイヤ: セミスリックの28-32C(パリ~ルーベに比べると石畳の石はそれほど尖っていない)
シクロワイアードレポート:https://www.cyclowired.jp/lifenews/node/293228
パリ〜ルーべ

ルーベ周辺に大きな町がなく、ホテル予約や公共交通機関での移動には苦労する可能性あり。観光地もほとんどないが、強烈な石畳と、その間をつなぐフランスの片田舎の風景のギャップが魅力的。総合点は低いものの、個人的には再挑戦したいレースNo.1(登りがないため)。
推奨タイヤ: ブロックの35C以上、頑丈なホイールが必須(グラベルバイクでの参加も検討すべき)
シクロワイアードレポート:https://www.cyclowired.jp/lifenews/node/293564
イル・ロンバルディア

市民レースのスタート・ゴール地点であるカントゥへの公共交通機関でのアクセスは最悪(無人駅)。ムロ・ディ・ソルマーノとマドンナ・デル・ギザッロの登りは凶悪だが、コモ湖の美しい景色は良い思い出になる。レースエントリーには医師の診断書が必要。プロレースはコモ⇔ベルガモで開催され、拠点選びに悩む。個人的に再挑戦したくないレースNo.1。
推奨タイヤ: スリックの25-28C
シクロワイアードレポート:https://www.cyclowired.jp/news/node/386781
アムステルゴールドレース

エントリーが毎年10月の1ヶ月間のみで、さらに抽選制のため参加確定が難しい。確実に参加したい場合はツアーオペレーターを通じての出場権購入がおすすめ。ファルケンブルグでホテルが取れれば、スタート・ゴール地点や勝負所のカウベルグまで近い。シマノエクスペリエンスセンターやマーストリヒトなど観光地も充実。レース後のアムステルビールのビアパーティーも魅力。
推奨タイヤ: スリックの25-28C
シクロワイアードレポート:https://www.cyclowired.jp/news/node/387938
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

世界最凶にして最古のレース。リエージュに宿泊することになるが、市民レースの受付・スタート・ゴール地点であるバヌーが離れているため、レンタカーなしだと移動に苦労する。自転車関連の観光地はないが、リエージュ市内での観光は可能。平地区間が少なく気が抜けないコース。プロレース観戦は比較的しやすいが、勝負所は少し遠い。
推奨タイヤ: スリックの25-28C
シクロワイアードレポート:https://www.cyclowired.jp/news/node/388038
ストラーデ・ビアンケ

観光地シエナをスタート・ゴール地点とするレース。レース前後にフィレンツェ観光も楽しめる。人気が高く、エントリーはすぐに締め切られる。イル・ロンバルディアと同様、医師の診断書が必要。シエナでホテルが取れれば、スタート・ゴール地点や勝負所のル・トルフェまで近い。
推奨タイヤ: スリックの30-34C(硬く締まったグラベルのため)、雨天時はセミスリックの30C以上
Special Thanks to
Ufficiale Strade Bianche
Massimo Rava (Mania Bike & Shimano Technical Service)
Igor Zaggia (Punto Rosso Zerolite Padova)
Joost Hoetelmans (Shimano EU B.V.)
Shingo Shiraishi (Shimano Drinking)
Naoya Asano
Hidetoshi Futamase
Francesco Munaron (Selle Italia)
Akira Nakata (Kapermuur-Wave One)
Kaori Mishima (Kapermuur-Wave One)
Ryohei Wada (OGK Kabuto)
Kazuhiro Sakurai (Asahi Shuzo CO.,LTD)

今に始まった事ではないですが、ここ数年で地球全体の異常気象具合がかなり深刻な状況ですね。元・生物学者としてはアフリカや南米の自然や野生生物達が見られなくなるのが悲しいです。そこで、最終決戦のミラノ~サンレモの事はもちろん大事なのですが、それよりも先に小学生の頃からの夢であった“アマゾン川を旅したい!”という夢に向かった方が良いのでは?とここ最近考えております。
この旅の最後の晩餐で、元ウィリエール社のセールスマーケティングで現在セッレ・イタリア社に転職していた友人のフランチェスコ・ムナロンさんとその家族にチッタデッラのレストランに招待されました。キット北村は無類の犬好き、特に柴犬が!この旅では犬エネルギーを全く充電していないので、フランチェスコさんに“ムナロン家の柴犬:ウンディ君を連れて来て!”とリクエストしていました。ウンディ君の柴犬臭を嗅ぐことで、次の海外遠征に向けての英気を養う事が出来ました。
ストラーデ・ビアンケ編おしまい。
Report:Kitto Kitamura
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