イタリアンヘルメットブランドのMETが手掛けるセミエアロヘルメット「MANTA MIPS」。ポガチャルが使用し、空力性能と安全性を兼ね備えたエアロヘルメットを編集部員の高木が実走テストした。

MET MANTA MIPS photo:Michinari TAKAGI
世界チャンピオンのタデイ・ポガチャル(スロベニア)を有するUAEチームエミレーツXRGの選手たちが使用し、高い知名度を誇るイタリアンヘルメットのMET。
ロングセラーモデルのオールラウンドモデルである「TRENTA」シリーズを筆頭に、イタリアらしいデザインと高い性能を両立したヘルメットをラインアップする中で、セミエアロモデルに位置づけられるのが「MANTA」だ。

前面に6カ所のエアインテークを配置する photo:Michinari TAKAGI

空力に優れるテールデザイン photo:Michinari TAKAGI
凹凸が少なく、滑らかなエアロヘルメットらしいシェルデザインの中に、前面に6カ所、頭頂部に1か所のエアインテイクを配置。NACA VENTと名付けられた頭頂部のベンチレーションは、ベンチュリー効果によって効率的に空気を取り込む形状とされている。更に後頭部に配置された排気口とそこに繋がるヘルメット内部のエアチャネル形状も最適化され、エアロモデルながら優れた冷却性能を実現した。
エアロモデルの本懐である空力性能については、イタリアのミラノにあるNEWTON研究所の折り紙付き。同研究所で行われた風洞実験では前作よりも優れた数値をマークし、レーシングヘルメットとして正統な進化を果たしている。

エアチャネルの設計も最適化され冷却性能を向上。MIPSも採用し安全性も改善した。 photo:Michinari TAKAGI
プロテクション性能も向上し、より安心できる一着に。もともと厳格な安全基準で知られているCE EN1078やAS、COSCをクリアし、安全性には定評のあるヘルメットであったが、今回のモデルチェンジに際しMIPSを搭載することで回転衝撃への対策も万全となった。
また、フィッティング周りのパーツ類も最新のスペックへと改められている。チンストラップにはフィドロック製のマグネットバックルが搭載され、片手でも着脱できるように。クロージャーもSAFE-T Orbitalフィッティングシステムへと進化しており、より細かく調整が可能となった。

フィドロック製のマグネットバックルが搭載 photo:Michinari TAKAGI

SAFE-T Orbitalフィッティングシステムを採用 photo:Michinari TAKAGI 
JCF公認のヘルメット photo:Michinari TAKAGI
サイズはMサイズ(56~58cm)とLサイズ(58~61cm)の2サイズ展開。重量は250g(Mサイズ)、270g(Lサイズ)と、非常に軽量なこともMANTAの特徴。通常モデルのTRENTA MIPSに匹敵する重量に仕上がっている。
カラーはMotion Blur / Matt、Greige / Glossy、White Holographic / Glossy、Black / Matt Glossy、Navy Silver / Matt、Dark Slate Red / Matt、Undyed White Lime / Matt、Black Red Metallic / Matt Glossyと、計8色の豊富なラインアップが展開されている。リフレクティブデカールが後部に備わり、被視認性にも優れた仕様に。価格は34,100円(税込)。取扱いはミズタニ自転車だ。
それではインプレッションに移ろう。
―編集部インプレッション

DMT MANTA MIPSのテストを担当するのは前作のMANTAを使用していたCW編集部の高木 photo:Gakuto Fujiwara
ジロ、ツール、世界選の全てを同一年に制するトリプルクラウンを成し遂げたタデイ・ポガチャル。TRENTAのベンチレーションホールから飛び出た「ポガ毛」のイメージが強いけれど、昨年のロード世界選手権を制した際に彼が被っていたのは新型のMANTAだった。
その時から気になっていた新型MANTAをテストする機会に恵まれた。(ポガ毛が飛び出しそうもないデザインだけど、しっかり「NACA VENT」からポガ毛が覗いていたのも気になっていた。わざと出すのも難しくないですか?)
参考までに記しておくと、筆者はアジアンフィットのヘルメットが合う丸型頭の持ち主で、カスクやスペシャライズド、レイザーはMサイズ、カブトではS/Mサイズを着用。現在メインで使っているのはTRENTA MIPSで、MANTAの前モデルもMサイズを愛用していた。

ダイヤルの側面には凹凸があるデザインとなっているため、指がかかりやすい photo:Gakuto Fujiwara
モデルチェンジに際し、MIPSが採用されたことでフィット感が変化している可能性を危惧していたものの、それは杞憂に。むしろ、MIPSレイヤーを前提としたシェルデザインやインナーパッドの配置の妙により、フィット感は向上しているようにも感じられた。サイズも従来通りMサイズでジャストフィット。額や後頭部までしっかり深く被る事ができるため、頭を守られている安心感を強く感じられる被り心地だ。
新たに採用されたSAFE-T Orbitalフィッティングシステムの使い勝手も良好。自身の後頭部に合わせた位置調整も容易かつ、ダイヤル側面には凹凸があるため、指がかかりやすい。寒い時期に出番が増えがちなエアロモデルだけに、ロングフィンガーグローブでも扱いやすいのは嬉しいポイント。その意味では、フィドロックのマグネットバックルの採用も理に適っている。

頭頂部に備わっているNACA VENTのおかげで、熱がこもりやすい頭頂部の熱気も後方へ抜けていく印象 photo:Gakuto Fujiwara
さて、エアロメットは寒い時期に活躍する、なんて書いては見たものの、実際に着用してみればMANTAの通気性は非常に高い。冬場では防風キャップが必須なレベルで、新鮮な空気がヘルメット内を冷やしてくれる。
額の部分に設けられた3つのエアインテークからは、額、頭頂部そしてその左右に風が駆け抜けていく。さらに、頭頂部に備わっているNACA VENTのおかげで、頭頂部にこもった熱気も後方へと押し流されていく。通気性に関しては前作の時点で相当に高いレベルにあると感じていたが、新型のMANTAでは更に快適性が向上しているように感じた。

額の部分には風を取り込むに3つのエアインテークが設けられ、ここからヘルメット内部から後方へ空気が流れていく photo:Michinari TAKAGI
肝心の空力性能についても、更に高いレベルへと到達した。今回のテストでは強い向かい風のシーンが多かったが、頭の周囲の空気が非常にスムーズに流れていく。ダウンヒルはもちろんのこと、30~40km/hの平坦での巡航でもエアロ効果を体感できるほどで、平均スピードの高いロードレースやクリテリウムにうってつけ。
空力性能と快適性、そして高い安全性を兼ね備えたMANTA MIPSは、高速化していくロードレースやクリテリウムで使うレーサーにおすすめしたいエアロヘルメットだ。そして、NACA VENTから髪の毛を出すのは至難の業であることもここに記しておこう。

30~40km/hの平坦の巡航やダウンヒルでもエアロ効果を体感できる photo:Gakuto Fujiwara
MET MANTA MIPS
サイズ:Mサイズ(56~58cm)、Lサイズ(58~61cm)
重量:250g(Mサイズ)、270g(Lサイズ)
カラー:Motion Blur / Matt、Greige / Glossy、White Holographic / Glossy、Black / Matt Glossy、Navy Silver / Matt、Dark Slate Red / Matt、Undyed White Lime / Matt、Black Red Metallic / Matt Glossy
備考:MIPS搭載、JCF公認
価格:34,100円(税込)
photo:Gakuto Fujiwara、Michinari TAKAGI
text:Michinari TAKAGI

世界チャンピオンのタデイ・ポガチャル(スロベニア)を有するUAEチームエミレーツXRGの選手たちが使用し、高い知名度を誇るイタリアンヘルメットのMET。
ロングセラーモデルのオールラウンドモデルである「TRENTA」シリーズを筆頭に、イタリアらしいデザインと高い性能を両立したヘルメットをラインアップする中で、セミエアロモデルに位置づけられるのが「MANTA」だ。


凹凸が少なく、滑らかなエアロヘルメットらしいシェルデザインの中に、前面に6カ所、頭頂部に1か所のエアインテイクを配置。NACA VENTと名付けられた頭頂部のベンチレーションは、ベンチュリー効果によって効率的に空気を取り込む形状とされている。更に後頭部に配置された排気口とそこに繋がるヘルメット内部のエアチャネル形状も最適化され、エアロモデルながら優れた冷却性能を実現した。
エアロモデルの本懐である空力性能については、イタリアのミラノにあるNEWTON研究所の折り紙付き。同研究所で行われた風洞実験では前作よりも優れた数値をマークし、レーシングヘルメットとして正統な進化を果たしている。

プロテクション性能も向上し、より安心できる一着に。もともと厳格な安全基準で知られているCE EN1078やAS、COSCをクリアし、安全性には定評のあるヘルメットであったが、今回のモデルチェンジに際しMIPSを搭載することで回転衝撃への対策も万全となった。
また、フィッティング周りのパーツ類も最新のスペックへと改められている。チンストラップにはフィドロック製のマグネットバックルが搭載され、片手でも着脱できるように。クロージャーもSAFE-T Orbitalフィッティングシステムへと進化しており、より細かく調整が可能となった。



サイズはMサイズ(56~58cm)とLサイズ(58~61cm)の2サイズ展開。重量は250g(Mサイズ)、270g(Lサイズ)と、非常に軽量なこともMANTAの特徴。通常モデルのTRENTA MIPSに匹敵する重量に仕上がっている。
カラーはMotion Blur / Matt、Greige / Glossy、White Holographic / Glossy、Black / Matt Glossy、Navy Silver / Matt、Dark Slate Red / Matt、Undyed White Lime / Matt、Black Red Metallic / Matt Glossyと、計8色の豊富なラインアップが展開されている。リフレクティブデカールが後部に備わり、被視認性にも優れた仕様に。価格は34,100円(税込)。取扱いはミズタニ自転車だ。
それではインプレッションに移ろう。
―編集部インプレッション

ジロ、ツール、世界選の全てを同一年に制するトリプルクラウンを成し遂げたタデイ・ポガチャル。TRENTAのベンチレーションホールから飛び出た「ポガ毛」のイメージが強いけれど、昨年のロード世界選手権を制した際に彼が被っていたのは新型のMANTAだった。
その時から気になっていた新型MANTAをテストする機会に恵まれた。(ポガ毛が飛び出しそうもないデザインだけど、しっかり「NACA VENT」からポガ毛が覗いていたのも気になっていた。わざと出すのも難しくないですか?)
参考までに記しておくと、筆者はアジアンフィットのヘルメットが合う丸型頭の持ち主で、カスクやスペシャライズド、レイザーはMサイズ、カブトではS/Mサイズを着用。現在メインで使っているのはTRENTA MIPSで、MANTAの前モデルもMサイズを愛用していた。

モデルチェンジに際し、MIPSが採用されたことでフィット感が変化している可能性を危惧していたものの、それは杞憂に。むしろ、MIPSレイヤーを前提としたシェルデザインやインナーパッドの配置の妙により、フィット感は向上しているようにも感じられた。サイズも従来通りMサイズでジャストフィット。額や後頭部までしっかり深く被る事ができるため、頭を守られている安心感を強く感じられる被り心地だ。
新たに採用されたSAFE-T Orbitalフィッティングシステムの使い勝手も良好。自身の後頭部に合わせた位置調整も容易かつ、ダイヤル側面には凹凸があるため、指がかかりやすい。寒い時期に出番が増えがちなエアロモデルだけに、ロングフィンガーグローブでも扱いやすいのは嬉しいポイント。その意味では、フィドロックのマグネットバックルの採用も理に適っている。

さて、エアロメットは寒い時期に活躍する、なんて書いては見たものの、実際に着用してみればMANTAの通気性は非常に高い。冬場では防風キャップが必須なレベルで、新鮮な空気がヘルメット内を冷やしてくれる。
額の部分に設けられた3つのエアインテークからは、額、頭頂部そしてその左右に風が駆け抜けていく。さらに、頭頂部に備わっているNACA VENTのおかげで、頭頂部にこもった熱気も後方へと押し流されていく。通気性に関しては前作の時点で相当に高いレベルにあると感じていたが、新型のMANTAでは更に快適性が向上しているように感じた。

肝心の空力性能についても、更に高いレベルへと到達した。今回のテストでは強い向かい風のシーンが多かったが、頭の周囲の空気が非常にスムーズに流れていく。ダウンヒルはもちろんのこと、30~40km/hの平坦での巡航でもエアロ効果を体感できるほどで、平均スピードの高いロードレースやクリテリウムにうってつけ。
空力性能と快適性、そして高い安全性を兼ね備えたMANTA MIPSは、高速化していくロードレースやクリテリウムで使うレーサーにおすすめしたいエアロヘルメットだ。そして、NACA VENTから髪の毛を出すのは至難の業であることもここに記しておこう。

MET MANTA MIPS
サイズ:Mサイズ(56~58cm)、Lサイズ(58~61cm)
重量:250g(Mサイズ)、270g(Lサイズ)
カラー:Motion Blur / Matt、Greige / Glossy、White Holographic / Glossy、Black / Matt Glossy、Navy Silver / Matt、Dark Slate Red / Matt、Undyed White Lime / Matt、Black Red Metallic / Matt Glossy
備考:MIPS搭載、JCF公認
価格:34,100円(税込)
photo:Gakuto Fujiwara、Michinari TAKAGI
text:Michinari TAKAGI
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