2025/03/23(日) - 08:15
歴史的な熱戦となった第116回ミラノ〜サンレモは、3名によるスプリントで決着。マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)がチプレッサから仕掛けたポガチャルの攻勢に耐え、ガンナを退け自身2度目の優勝を掴んだ。

フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos 
マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:CorVos

談笑しながらスタートを待つファンデルプールとポガチャル photo:CorVos

ミラノ〜サンレモ2025 コースプロフィール image:RCS Sport 総距離はシーズン最長である289km、レース時間は6時間半に渡るミラノ〜サンレモ(UCIワールドツアー)が3月22日に行われた。スタート地点は昨年同様ミラノ近郊のパヴィーアで、そこから南下してリグーリア海を沿うようにフィニッシュ地点のサンレモを目指す。勝負所となるのはもちろん、残り27.35kmからのチプレッサと残り9.3kmから始まるポッジオだ。
今年で116回目を迎えた別名「ラ・プリマヴェーラ(春)」は、止んでいた雨がスタート直後から降り始めた。新城幸也の所属するソリューションテック・ヴィーニファンティーニが3名を送った逃げグループは8名。同じイタリアのプロチームであるVFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネからも2名が乗り、その中にはプロトン最年少である19歳フィリッポ・トゥルコーニ(イタリア)の姿もあった。

雨と寒さの中、スタートを切った175名の選手たち photo:CorVos

最終的に8名となった逃げグループ photo:CorVos 
長い時間、シルヴァン・ディリエ(スイス、アルペシン・ドゥクーニンク)がプロトンを牽引した photo:CorVos
一気に6分弱のリードを得た逃げに対し、メイン集団はベテランのシルヴァン・ディリエ(スイス、アルペシン・ドゥクーニンク)が牽引。その背後ではチームメイトであるマチュー・ファンデルプール(オランダ)が笑顔を見せ、ライバルのタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)は何度もレインウェアを着替える。そして選手たちは残り149.7kmのトゥルキーノ峠を越え、リグーリア海に出る頃に冷たい雨は上がり、代わって暖かい日差しが降り注いだ。

選手たちがリグーリア海岸沿いに出る頃に、雨は上がった photo:CorVos
前哨戦で負傷しながらも出場した前年覇者ヤスペル・フィリプセン(ベルギー)とファンデルプール、そして初出場のカーデン・グローブス(オーストラリア)と強豪メンバーを揃えるアルペシンはディリエ1人に牽引を任せる。ディリエは背後に選手を並べたリドル・トレックに協力を仰ぐも、マッズ・ピーダスン(デンマーク)とジョナタン・ミラン(イタリア)を揃えるチームはこれを拒否。そして残り65km地点でディリエが役割を終えると、現役最後のミラノ〜サンレモを走るゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がプロトン先頭に出た。
残り51.6kmより始まる「トレ・カーピ(3つの岬)」の1つ目、カーポ・メーレに突入する頃に逃げのリードは2分15秒まで縮まる。プロトンではニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)ら5名が落車し、その後フィリプセンがパンクに見舞われる。逃げは3つ目のカーポ・ベルタでバラバラとなり、ローマ出身のマルティン・マルチェルージ(VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)が最後まで単独先頭で粘り続けた。

ガンナのため集団牽引をするゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
そのマルチェルージも、残り27.35kmから始まるチプレッサ(距離5.65km/平均4.1%)で吸収される。ティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG)が牽引するペースに集団復帰したフィリプセンが遅れ、代わって先頭に出たジョナタン・ナルバエス(エクアドル)が更に人数を絞っていく。その背後にはポガチャルはつき、2023年大会で2位のフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)とファンデルプールが世界王者をマークした。
そしてチプレッサの頂上まで残り3km、最大勾配9%の区間を前にポガチャルが早くも仕掛ける。ダンシングで駆け上がるアルカンシエルにロマン・グレゴワール(フランス、グルパマFDJ)が遅れ、ガンナとファンデルプールが食らいつく。例年は静かに越えることの多いチプレッサで、レース先頭は3名に絞られた。

チプレッサで仕掛けたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos
新旧ロード世界王者に、タイムトライアル世界選手権で連覇経験者という豪華な3名。グレゴワールを捉え、バーレーン・ヴィクトリアスが牽引する追走集団に一気に1分のリードを得ると、残り9.3kmから始まるポッジオ(距離3.7km/平均3.7%)に突入。3名の中で最も登坂力に優れるポガチャルが、登り口からアタックした。
ガンナを引き離したポガチャルだったが、ファンデルプールを振り切ることはできない。最大勾配9%区間を通過し、アタックで疲弊したポガチャルに対し、頂上まで残り500m地点で今度はファンデルプールが仕掛ける。しかしこれも決まらず、ポガチャルを先頭にポッジオの頂上を通過した。

ポッジオでも仕掛けたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)にファンデルプールが追従 photo:CorVos
1996年以来となる、チプレッサで勝利に繋がる動きのあった戦いは、ファンデルプールとポガチャルがローテーションを回しながら下りをクリア。そして平坦路に入ると牽制に入った2名に最終ストレートでガンナが追いつく。そのため勝負は、3名によるスプリント勝負に持ち込まれた。
昨年3位の悔しさを払拭したいポガチャルが、ガンナとファンデルプールを前に出す。そして残り300mからファンデルプールがスプリントを開始。ハンドルを振りながら一直線にフィニッシュを目指すファンデルプールに、ガンナとポガチャルが迫る。しかし、時にスプリンターを負かすほどのスピードを有するファンデルプールは、そのまま先頭でフィニッシュラインを通過。信じられないと言わんばかりに両手で顔を覆いながら、2度目のミラノ〜サンレモ制覇を喜んだ。

スプリント勝利したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos
ポガチャルによる強烈なアタックに追従し、ポッジオの頂上では逆に仕掛け、スプリントから2度目の優勝を手に入れたファンデルプール。「信じられない勝利だ。優勝を狙っていたものの、皆タデイ(ポガチャル)がとても強いことを知っている。序盤は雨と寒さで酷い状態だったが、海岸線に出てから徐々に調子が上がっていった。チーム3連覇はとても嬉しい結果だ」とコメント。
そして、「他の2人(ポガチャルとガンナ)がロングスプリントに持ち込みたがっていることは分かっていた。だからこそ残り300mの標識から加速し、彼らを驚かせたんだ。スプリントを始め、フィニッシュまで十分踏み切れる力を感じていた」とレースを振り返った。
43秒遅れでやってきた追走集団はマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)が先着。前年2位の悔しさを晴らすことはできなかったものの、34歳にして衰えの知らない力を示した。
ファンデルプールやガンナ、2年連続の3位に終わったポガチャルらの言葉は別記事にてお伝えします。

ミラノ〜サンレモ2025表彰台:2位ガンナ、1位ファンデルプール、3位ポガチャル photo:CorVos




今年で116回目を迎えた別名「ラ・プリマヴェーラ(春)」は、止んでいた雨がスタート直後から降り始めた。新城幸也の所属するソリューションテック・ヴィーニファンティーニが3名を送った逃げグループは8名。同じイタリアのプロチームであるVFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネからも2名が乗り、その中にはプロトン最年少である19歳フィリッポ・トゥルコーニ(イタリア)の姿もあった。



一気に6分弱のリードを得た逃げに対し、メイン集団はベテランのシルヴァン・ディリエ(スイス、アルペシン・ドゥクーニンク)が牽引。その背後ではチームメイトであるマチュー・ファンデルプール(オランダ)が笑顔を見せ、ライバルのタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)は何度もレインウェアを着替える。そして選手たちは残り149.7kmのトゥルキーノ峠を越え、リグーリア海に出る頃に冷たい雨は上がり、代わって暖かい日差しが降り注いだ。

前哨戦で負傷しながらも出場した前年覇者ヤスペル・フィリプセン(ベルギー)とファンデルプール、そして初出場のカーデン・グローブス(オーストラリア)と強豪メンバーを揃えるアルペシンはディリエ1人に牽引を任せる。ディリエは背後に選手を並べたリドル・トレックに協力を仰ぐも、マッズ・ピーダスン(デンマーク)とジョナタン・ミラン(イタリア)を揃えるチームはこれを拒否。そして残り65km地点でディリエが役割を終えると、現役最後のミラノ〜サンレモを走るゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がプロトン先頭に出た。
残り51.6kmより始まる「トレ・カーピ(3つの岬)」の1つ目、カーポ・メーレに突入する頃に逃げのリードは2分15秒まで縮まる。プロトンではニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)ら5名が落車し、その後フィリプセンがパンクに見舞われる。逃げは3つ目のカーポ・ベルタでバラバラとなり、ローマ出身のマルティン・マルチェルージ(VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)が最後まで単独先頭で粘り続けた。

そのマルチェルージも、残り27.35kmから始まるチプレッサ(距離5.65km/平均4.1%)で吸収される。ティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG)が牽引するペースに集団復帰したフィリプセンが遅れ、代わって先頭に出たジョナタン・ナルバエス(エクアドル)が更に人数を絞っていく。その背後にはポガチャルはつき、2023年大会で2位のフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)とファンデルプールが世界王者をマークした。
そしてチプレッサの頂上まで残り3km、最大勾配9%の区間を前にポガチャルが早くも仕掛ける。ダンシングで駆け上がるアルカンシエルにロマン・グレゴワール(フランス、グルパマFDJ)が遅れ、ガンナとファンデルプールが食らいつく。例年は静かに越えることの多いチプレッサで、レース先頭は3名に絞られた。

新旧ロード世界王者に、タイムトライアル世界選手権で連覇経験者という豪華な3名。グレゴワールを捉え、バーレーン・ヴィクトリアスが牽引する追走集団に一気に1分のリードを得ると、残り9.3kmから始まるポッジオ(距離3.7km/平均3.7%)に突入。3名の中で最も登坂力に優れるポガチャルが、登り口からアタックした。
ガンナを引き離したポガチャルだったが、ファンデルプールを振り切ることはできない。最大勾配9%区間を通過し、アタックで疲弊したポガチャルに対し、頂上まで残り500m地点で今度はファンデルプールが仕掛ける。しかしこれも決まらず、ポガチャルを先頭にポッジオの頂上を通過した。

1996年以来となる、チプレッサで勝利に繋がる動きのあった戦いは、ファンデルプールとポガチャルがローテーションを回しながら下りをクリア。そして平坦路に入ると牽制に入った2名に最終ストレートでガンナが追いつく。そのため勝負は、3名によるスプリント勝負に持ち込まれた。
昨年3位の悔しさを払拭したいポガチャルが、ガンナとファンデルプールを前に出す。そして残り300mからファンデルプールがスプリントを開始。ハンドルを振りながら一直線にフィニッシュを目指すファンデルプールに、ガンナとポガチャルが迫る。しかし、時にスプリンターを負かすほどのスピードを有するファンデルプールは、そのまま先頭でフィニッシュラインを通過。信じられないと言わんばかりに両手で顔を覆いながら、2度目のミラノ〜サンレモ制覇を喜んだ。

ポガチャルによる強烈なアタックに追従し、ポッジオの頂上では逆に仕掛け、スプリントから2度目の優勝を手に入れたファンデルプール。「信じられない勝利だ。優勝を狙っていたものの、皆タデイ(ポガチャル)がとても強いことを知っている。序盤は雨と寒さで酷い状態だったが、海岸線に出てから徐々に調子が上がっていった。チーム3連覇はとても嬉しい結果だ」とコメント。
そして、「他の2人(ポガチャルとガンナ)がロングスプリントに持ち込みたがっていることは分かっていた。だからこそ残り300mの標識から加速し、彼らを驚かせたんだ。スプリントを始め、フィニッシュまで十分踏み切れる力を感じていた」とレースを振り返った。
43秒遅れでやってきた追走集団はマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)が先着。前年2位の悔しさを晴らすことはできなかったものの、34歳にして衰えの知らない力を示した。
ファンデルプールやガンナ、2年連続の3位に終わったポガチャルらの言葉は別記事にてお伝えします。

ミラノ〜サンレモ2025結果
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) | 6:22:53 |
2位 | フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) | |
3位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | |
4位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) | +0:43 |
5位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
6位 | マグナス・コルト(デンマーク、ウノエックス・モビリティ) | |
7位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | |
8位 | オラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) | |
9位 | マッテオ・トレンティン(イタリア、チューダー・プロサイクリング) | |
10位 | フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
Amazon.co.jp