ミュール・カペルミュールが登場したオムロープ・ヘットニュースブラットは、約50名のスプリントで決着。195cmのソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)がフィリプセンら強豪を退け、キャリアハイとなるセミクラシック勝利を飾った。



スタート前に言葉を交わすファンアールトとピドコック photo:CorVos

オムロープ・ヘットニュースブラット2025 コースプロフィール image:Omloop Nieuwsblad

オセアニアから南米大陸、南ヨーロッパ、そして中東と温暖な地域を抜け出したロードレースは、ついに"北のクラシック"シーズンの開幕を迎えた。第80回オムロープ・ヘットニュースブラット(UCIワールドツアー)には、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)に代表されるクラシックハンターたちが集結。マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)は不在なものの、今年のクラシックシーズンを占うべく曇り空のヘントに並んだ。

197kmコースに設定されたのは8つの石畳”セクター”と7つの登り、そして4つの石畳の登り。特にロンド・ファン・フラーンデレンでお馴染みとなったものの、本家には登場しない「ミュール・カペルミュール」と「ボスベルグ」が最後の勝負所となる。気温6度という寒さのなかスタートしたクラシックシーズン開幕戦は、7名が逃げグループが形成した。

ジュリアス・ファンデンベルフ(ピクニック・ポストNL)ら7名が逃げグループを組んだ photo:CorVos

プロトンではヴィスマ・リースアバイクとUAEチームエミレーツXRGが積極的にペースを作る photo:CorVos

ジュリアス・ファンデンベルフ(ピクニック・ポストNL)などオランダ出身者が4名入った逃げは、ヴィスマ・リースアバイクが牽引するメイン集団に対し最大7分リードを得る。レース中盤に入りUAEチームエミレーツXRGにプロトンのコントロールが変わると、その差は一気に減少。1分37秒まで詰めたプロトンから、残り51km地点でジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が抜け出した。

「ウォルベンベルグ」から「レベルグ」「ベレンドリー」「フォッセンホール」と石畳&急坂のラッシュが続くなか、先頭との1分半の差がなかなか縮まらない。そのためアルペシン・ドゥクーニンクを中心にペースを作り、そのスピードと急坂にターリングを引き戻したプロトンの人数は絞られていく。そこからはファンアールトが遅れたものの、不運を避けるべくゼッケン13を逆さに付けたティシュ・ベノート(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)がアシストとして前を追った。

カペルミュールを登るワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

先頭集団に食らいつくヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

残り31kmでようやく逃げを捉えたプロトンにはファンアールトが合流する。グルパマFDJを先頭に最大勾配19.8%の「ミュール・カペルミュール(距離890m/平均8.8%)」に突入すると、ディフェンディング王者であるヤン・トラトニク(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)がパンクの不運に見舞われる。「ボスベルグ」までの繋ぎ区間では、ファンアールトからチームメイトのマッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ)、ティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG)とアタックが連続したものの、いずれも決め手に欠く。

「ボスベルグ」でもアタックは決まらず、17名に絞られた先頭集団から今度はシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)が仕掛ける。元TT欧州王者は17秒のリードを得ると、ペースが緩んだ追走集団には「ボスベルグ」で遅れたスプリンターを含む選手たちが次々と合流。その数は50名を超え、残り1kmバナーを前にプロトンはキュングを引き戻し、第80回大会の勝者を決める集団スプリントが幕開けた。

最終ストレートへと続く緩い右コーナーで集団先頭はアルペシンからイネオスへと変わり、残り200mからサムエル・ワトソン(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が先んじて踏み込む。その背後からソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)、大外からヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)とポール・マニエ(フランス、スーダル・クイックステップ)が迫る。ワトソンのスピードが伸び悩むなか、フィニッシュ手前でヴァーレンショルトとフィリプセン、マニエの3名が並ぶ。

そして最初にフィニッシュラインを通過したのは、ノルウェー出身の24歳であるヴァーレンショルトだった。

ハンドルを投げるソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)とポール・マニエ(フランス、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

勝利を喜ぶソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) photo:CorVos

ワールドチームの強豪らを抑え、金星とも言える勝利を手に入れたヴァーレンショルト。「接戦のスプリントで勝てたなんて信じられない。キャリア最大の勝利であり、こんなことが起こるなんて思ってもいなかった。この喜びを表現する言葉が見つからないよ」と笑顔で語った。

195cmと長身のヴァーレンショルトは2021年プロデビューし、翌2022年にTT世界選手権のU23で優勝したTTスペシャリスト。また2023、24年と国内TT選手権でも連覇を達成している期待の若手選手だ。

2位にはフランス人初優勝を逃した20歳のマニエが入り、フィニッシュ手前で失速したフィリプセンが3位。積極的に動いたファンアールトは11位とチーム4連覇を逃した。

表彰台に上がったソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) photo:CorVos
オムロープ・ヘットニュースブラット2025結果
1位 ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) 4:37:53
2位 ポール・マニエ(フランス、スーダル・クイックステップ)
3位 ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
4位 ブレント・ファンムール(ベルギー、ロット)
5位 サムエル・ワトソン(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
6位 ルカシュ・クビシュ(スロバキア、ユニベット・ティテマ・ロケッツ)
7位 ピート・アレハールト(ベルギー、コフィディス)
8位 ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)
9位 マライン・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト)
10位 ルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ)
11位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos