シマノがリリースした新型アイウェアのフラッグシップ”S-PHYRE SL”、トレンド志向の”EQUINOX”、オフロード用の”PULSAR”まで、多様化するニーズに応えながら貫かれているのは妥協のない開発姿勢だ。開発者の声から見えてきたその革新に迫る。

クリアなフレームと大きめのレンズが特徴のS-PHYRE SL
シマノが展開する最新の自転車用アイウェア3モデル。フラッグシップモデルのS-PHYRE SLを筆頭に、トレンドを意識したEQUINOX、そしてマウンテンバイク向けのPULSAR。軽量性と剛性、快適なフィット感を両立させながら、各モデルに独自の特徴を持たせることで、多様化するサイクリストのニーズに応えている。開発者の入江氏への取材を通じて、シマノが追求する技術革新と細部へのこだわりが見えてきた。
今回の記事では開発者の言葉と、インプレッションを通じて新モデルを深掘りしよう。各モデルの概要はこちらの記事をチェックしてもらいたい。
S-PHYRE SL:最高峰の技術で生まれた軽量モデル

大きめのレンズが搭載されている
S-PHYRE SL最大の特徴は軽量性とフィット性の両立だ。「とにかく軽いです。軽いだけのアイウェアが存在する中で、S-PHYRE SLはしっかりフィットします」と入江氏は胸を張る。というのも、軽量性のためのフレームレスデザインはアイウェア全体の剛性がトレードオフとなっており、剛性が足りないとフィット性が損なわれる可能性もあるため、その両立を果たすことに成功しているということだ。
S-PHYRE SLではシマノは剛性を確保するためにテンプルを横に張り出した形状を採用することで頭へのホールド力を高めている。機能だけではなく他にはないデザインでもあるため、ルックス面でも際立つアイウェアを実現する一石二鳥の設計だ。

球面レンズが採用されている
剛性面では球面レンズも貢献しているという。現在のトレンドは円筒(シリンドリカル)形状のレンズだが、S-PHYRE SLには機能性を重視するために球面形状を採用した。もちろん剛性のためだけではなく、歪みの少ない視界をライダーに提供するという本来の役割も果たしている。
「人の目では感じないレベルではありますが、球面形状は上下左右どちらに目線を向けても目とレンズの距離が一定になるので、レンズによる歪みが発生しにくいです」とは入江さん。感じ取れない歪みであってもレースでの使用を想定しているS-PHYREにおいては可能な限り排除するというシマノの実直な姿勢が表れていると言えよう。
顔の大きな面積を覆うレンズの場合、レンズ内側の通気性(曇りやすさ)は気になるところ。入江さんは「レンズのカーブが緩く、上下左右に隙間ができているので、動いていれば曇らないです」と説明する。ポイントはシマノが開発するアイウェアは自転車用に特化していること。S-PHYRE SLであればロードライドで風を受け続けている状況で快適になることが特徴だ。

レンズとテンプルは超音波溶着されている
テンプルとレンズの固定方法もユニークなポイントの一つ。S-PHYRE SLは超音波溶着という技術で接合しており、接着剤などは使用しない。フレームとレンズそれぞれをピンポイントで溶かして接着するため、ある種溶接のようなもの。この技術はサイクルコンピューターにも用いられているものであり、落とした衝撃では外れない「一つの塊」として強固なアイウェアを実現しているという。
またテンプルは3つの新モデル全てで短く設計されている。長めのテンプルは耳の後ろを抱え込むことでアイウェアをホールドするという役割があったのだが、テンプルがヘルメットのアジャスターパーツと干渉するという声があった。その問題を解消するために、先述した設計などで剛性を調整することで、フィット感を犠牲にしない範囲内でギリギリまで短いテンプルを実現させた。

眉間部分に通気孔が設けられている 
横に張り出したテンプルデザイン

耳にかかる部分はソフトなラバーが採用されている 
サイズ変更が可能なノーズパッドが採用される
「シマノのアイウェアは一つのモデルでアジアの方、ヨーロッパの方に心地よく掛けられるように、細かい部分の設計を煮詰めています。そのフィット感は、シマノがこれまで開発してきたアイウェアの中で好評だったモデルをベースとしながら、日本やヨーロッパの社員に顔のサイズを測らせてもらったり、ヨーロッパのプロ選手には3Dで計測させてもらったりして、寸法を作り上げています」。
S-PHYREアイウェアが登場してから3世代となる現在はシマノにも顔のフィッティングデータが蓄積しており、それを応用してサイズを作り上げているため、狙ったフィット感を作り上げられるようになってきたと入江さんは言う。
EQUINOX:トレンドと技術が融合したマルチユースアイウェア

シマノ EQUINOX
「シリンドリカルレンズのハーフリム、レンズ上端から一段下に下ろしたテンプルという市場のトレンドをフォロー」したモデルがEQUINOX。開発においてはそのトレンドを押さえながらも、思い切って一番カッコよく、目立つものというオーダーでデザインしたという一本だ。
その要望が反映されたのは唯一無二のテンプルデザイン。非常に大きな開口部は風抜けの良さと新型EQUINOXが”目立つ”ことを両立するために、デザイナーが機能美を意識して形作ったものだという。耳がかかる部分のラバーもソフトな着用感とグリップ力を兼ね備えている設計となっている。

非常に特徴的なテンプルが採用される

トレンドとシマノらしさを融合させたレンズデザインだ 
耳がかかる部分は非常にソフトに作られている
「ある程度トレンドに沿ったものが欲しいけれど、定番ではないものを使いたいという方にはぜひ使ってもらいたいです。使用用途も限定しておらず、様々なライディングスタイルに合わせやすいカラー展開や、調光仕様などレンズのバリエーションも豊富に揃えています」。
シマノの調光レンズは透過率がほぼクリアに近い85%から17%までカバーしているため、夜でも問題なく使用可能。「ブルベで長時間ライドする人も使っていますし、1日と言わず1日半は掛け続けられるレンズにはなっています」という。
PULSAR:マウンテンバイク用ヘルメットにフィットする設計の一本

シマノ PULSAR
PULSARはマウンテンバイクのトレイルライド用に開発し、ゴーグルのようなフルリムでしっかりとした作りの一本だ。先述したアイウェアはロードを意識していますが、PULSARはトレイルライド用ヘルメットに合わせたデザインが採用されているという。
具体的には先述した短めのテンプルに加えて、こめかみ部分まで覆うような深めのヘルメットを想定してテンプルを薄く作っている。この設計を採用しながら確かな剛性を備え、自由に調節できるノーズパッドを採用することで、激しいライディングでもずれにくいアイウェアを実現した。
レンズ下部のボトムフレームは取り外すこともでき、ハーフリムアイウェアとして着用することも可能。グラベルライドなどで軽快感を出したい時はハーフリムという使い方もできるマルチな一本だ。「カラーラインアップも揃えていますので、こだわりのあるマウンテンバイカーにはオススメしたいと思っています」と語る。

アッパーフレームに通気孔が設けられるのもゴーグルライクだ 
ノーズパッドは自由に調節できる

ヘルメットと干渉しにくい薄型テンプルだ 
耳がかかる部分も細かな設計が施されている

フレーム下部のバンパーは外すことが可能 
バンパーを外すだけで印象も変化する
今回紹介するアイウェアは全てリルサン®クリアG850という素材を採用している。そのことについて、入江さんは「バイオベースのマテリアルを採用しているのは、石油由来のプラスチックによるCO2排出の削減など環境問題に対して、小さなことでもできることから実践するためです。もう一つは、これまで使用していたグリルアミド同等以上の物性を備えているからです。透明度が高く、強度や剛性、軽量性がしっかりしています。非常に高機能な素材なんです」という。
シマノ独自開発のRIDESCAPEレンズ

シマノが誇るRIDESCAPEレンズ
シマノは独自開発した高コントラストのRIDESCAPEレンズをどのモデルにも搭載している。このレンズの特徴を入江さんは「余分な眩しさを取り除き、見たいものが見えるレンズ」と表現する。
「ロードライドで説明するとアスファルトの凹凸や割れ、小石などをしっかりと見えるように作っています。これらの見たい物以外の色を狙ってフィルターし、透過率を下げていくことで、見たい物の色が残り、結果としてコントラストが上がるという設計です」と入江さん。ライド中に見る必要がある信号機の色などは残し、波長の短い青色はカットというように計算し尽くされてレンズは開発されている。

レンズなしの場合細かな段差などがわかりにくい 
RIDESCAPE RDはアスファルトの割れ目などを見るのに適している

RIDESCAPE ORは木の根などを確認しやすい 
RIDESCAPE GRは特徴的な黄緑色の色味とされている
高コントラストレンズは必要な情報のみを提供してくれることにメリットがある。「天気が良い時は路面が反射する中で路面情報を得ようと一生懸命見てしまうから疲れてしまうことがあります。レンズを通すことで頑張らなくても情報を得られるようになるので、長時間のライドでも疲れにくくなっています」と入江さんは説明する。
シマノのレンズは雨天など厳しいコンディションで走るプロライダーからの意見を受けて、全てのモデルでハイドロフォビック(撥水)コーティングを施している。S-PHYREはさらにオレオフォビック(撥油)コートを施し、汗や指紋の汚れが付着しにくくなった。この改善を行ってからプロ選手も満足できているという。

調光レンズモデルもラインアップされている
さらにレンズは一般的なポリカーボネートではなくポリアミドを素材に採用している。その理由は光学特性が良く軽量だから。ポリカーボネートに対して16.4%軽量であり、レンズの重量にして2g程度も異なる場合もある。耐衝撃性については軍事レベルの要件を満たすのはポリカーボネートに軍配が上がるが、自転車用として開発されているため各国の基準を満たせるポリアミドを採用しているのだとか。
またレンズには メーカーが施工できる最上級のハードコートを施している。これによってシクロクロッサーがレース中にレンズを拭っても深傷が入りにくいのだとか。レースモデルはもちろんカジュアル系にも施しているため、ホビーサイクリストが大胆に扱っても問題なさそう。その高品質で全てのアイウェアを作り上げるところにシマノのものづくりへの真摯さが反映されている。
編集部インプレッション

軽やかで確かなフィット感を実現しているシマノ S-PHYRE SL
過去作をインプレッションしたシクロワイアード編集部の高木が3モデル通して感じたのは、前作よりもフィット感が高まっており、着用感がさらに良好に進化しているということだった。加えてテンプルが短く設定されている恩恵もあり、ヘルメットとの干渉による心配事がないと好印象を抱いた。
特にS-PHYRE SLの軽さは、アイウェアをかけていることを忘れさせるほど。剛性についても今まで試したフレームレスモデルと比較しても高めだが、フレームレスがゆえに顔に程よいタイト感、心地よい着用感でかけることができる。

テンプルがヘルメットのバスケットに干渉しない
EQUINOXはS-PHYRE SLよりもかっちりとした着用感。顔のカーブにもぴたりとフィットするため、アイウェアがしっかりと守ってくれる印象が強い。レンズの縦幅が短めで、シャープなルックスに仕上げられており、ロードレースで似合うオーソドックスなモデルだ。
PULSARはさらにフィット感が高く、オフロードライドでもズレなさそうな安心感がある。EQUINOXよりもレンズが大きく顔を覆う面積が広いため、プロテクション性能に不安はないことが特徴だ。

ロードライドにぴったりなルックスのEQUINOX

オフロードヘルメットとの相性を考えて作られたPULSAR
各モデルにアセンブルされるRIDESCAPEレンズはRD(ロード)、OR(オフロード)、GR(グラベル)のどれも路面の陰影をくっきりと表現してくれる。それぞれ明るさが異なっていてRDがもっとも暗めで、黄緑色の視界を提供するGRはかつてのイエローレンズのような印象を抱いた。全体的に明るく、日の出や日没のようなシチュエーションでもしっかりと状況に適した明るさを提供してくれる。
ORはGRよりも明るく、森などで薄暗い状況でマッチした視界をもたらす。レンズを通して見える世界は全体的に赤っぽく、かつ鮮明だ。木の根や路面のちょっとしたギャップも把握しやすく、オフロードを走る時の安心感は高めだ。
シマノアイウェアは国内ではオンライン専売

クリアフレームは軽やかな印象を与える
今回紹介したシマノのアイウェアは公式オンラインストア限定での販売となる。そのため価格設定もこだわっており、S-PHYRE SLはシマノのフラッグシップシリーズだが価格は15,400円(税込)と高いコストパフォーマンスを誇っている。
EQUINOXは撥油コートなどを省略したり、RIDESCAPEではないクリアレンズを同梱することで、ホビーサイクリストに適した性能と価格をバランスさせている。価格は13,200円(税込)。PULSARはアグレッシブなマウンテンバイカーが使用し、消耗の進行具合もロードより早いということを考慮し、手の届きやすい9,900円(税込)に設定されている。

調光レンズ仕様は非常に広い状況をカバーできるという
これらのアイウェアを手がけた入江さんは「シマノのアイウェアに興味を持っていただき、できるだけ試してもらいたい」と胸を張る。さらにオンラインストアに投稿いただいたアイウェアの商品レビューは日本の企画開発を行っている部門にも共有されるので、日本のユーザーの声でシマノのアイウェアがより魅力的になる可能性を秘めている。
オンラインストア専売という事前にフィット感を試せない状況ではあるものの、一度の試着であれば購入から14日以内であれば返品受付に対応してくれるという。フィット感には自負があるというシマノのアイウェアを一度試してみても良さそうだ。

シマノが展開する最新の自転車用アイウェア3モデル。フラッグシップモデルのS-PHYRE SLを筆頭に、トレンドを意識したEQUINOX、そしてマウンテンバイク向けのPULSAR。軽量性と剛性、快適なフィット感を両立させながら、各モデルに独自の特徴を持たせることで、多様化するサイクリストのニーズに応えている。開発者の入江氏への取材を通じて、シマノが追求する技術革新と細部へのこだわりが見えてきた。
今回の記事では開発者の言葉と、インプレッションを通じて新モデルを深掘りしよう。各モデルの概要はこちらの記事をチェックしてもらいたい。
S-PHYRE SL:最高峰の技術で生まれた軽量モデル

S-PHYRE SL最大の特徴は軽量性とフィット性の両立だ。「とにかく軽いです。軽いだけのアイウェアが存在する中で、S-PHYRE SLはしっかりフィットします」と入江氏は胸を張る。というのも、軽量性のためのフレームレスデザインはアイウェア全体の剛性がトレードオフとなっており、剛性が足りないとフィット性が損なわれる可能性もあるため、その両立を果たすことに成功しているということだ。
S-PHYRE SLではシマノは剛性を確保するためにテンプルを横に張り出した形状を採用することで頭へのホールド力を高めている。機能だけではなく他にはないデザインでもあるため、ルックス面でも際立つアイウェアを実現する一石二鳥の設計だ。

剛性面では球面レンズも貢献しているという。現在のトレンドは円筒(シリンドリカル)形状のレンズだが、S-PHYRE SLには機能性を重視するために球面形状を採用した。もちろん剛性のためだけではなく、歪みの少ない視界をライダーに提供するという本来の役割も果たしている。
「人の目では感じないレベルではありますが、球面形状は上下左右どちらに目線を向けても目とレンズの距離が一定になるので、レンズによる歪みが発生しにくいです」とは入江さん。感じ取れない歪みであってもレースでの使用を想定しているS-PHYREにおいては可能な限り排除するというシマノの実直な姿勢が表れていると言えよう。
顔の大きな面積を覆うレンズの場合、レンズ内側の通気性(曇りやすさ)は気になるところ。入江さんは「レンズのカーブが緩く、上下左右に隙間ができているので、動いていれば曇らないです」と説明する。ポイントはシマノが開発するアイウェアは自転車用に特化していること。S-PHYRE SLであればロードライドで風を受け続けている状況で快適になることが特徴だ。

テンプルとレンズの固定方法もユニークなポイントの一つ。S-PHYRE SLは超音波溶着という技術で接合しており、接着剤などは使用しない。フレームとレンズそれぞれをピンポイントで溶かして接着するため、ある種溶接のようなもの。この技術はサイクルコンピューターにも用いられているものであり、落とした衝撃では外れない「一つの塊」として強固なアイウェアを実現しているという。
またテンプルは3つの新モデル全てで短く設計されている。長めのテンプルは耳の後ろを抱え込むことでアイウェアをホールドするという役割があったのだが、テンプルがヘルメットのアジャスターパーツと干渉するという声があった。その問題を解消するために、先述した設計などで剛性を調整することで、フィット感を犠牲にしない範囲内でギリギリまで短いテンプルを実現させた。




「シマノのアイウェアは一つのモデルでアジアの方、ヨーロッパの方に心地よく掛けられるように、細かい部分の設計を煮詰めています。そのフィット感は、シマノがこれまで開発してきたアイウェアの中で好評だったモデルをベースとしながら、日本やヨーロッパの社員に顔のサイズを測らせてもらったり、ヨーロッパのプロ選手には3Dで計測させてもらったりして、寸法を作り上げています」。
S-PHYREアイウェアが登場してから3世代となる現在はシマノにも顔のフィッティングデータが蓄積しており、それを応用してサイズを作り上げているため、狙ったフィット感を作り上げられるようになってきたと入江さんは言う。
EQUINOX:トレンドと技術が融合したマルチユースアイウェア

「シリンドリカルレンズのハーフリム、レンズ上端から一段下に下ろしたテンプルという市場のトレンドをフォロー」したモデルがEQUINOX。開発においてはそのトレンドを押さえながらも、思い切って一番カッコよく、目立つものというオーダーでデザインしたという一本だ。
その要望が反映されたのは唯一無二のテンプルデザイン。非常に大きな開口部は風抜けの良さと新型EQUINOXが”目立つ”ことを両立するために、デザイナーが機能美を意識して形作ったものだという。耳がかかる部分のラバーもソフトな着用感とグリップ力を兼ね備えている設計となっている。



「ある程度トレンドに沿ったものが欲しいけれど、定番ではないものを使いたいという方にはぜひ使ってもらいたいです。使用用途も限定しておらず、様々なライディングスタイルに合わせやすいカラー展開や、調光仕様などレンズのバリエーションも豊富に揃えています」。
シマノの調光レンズは透過率がほぼクリアに近い85%から17%までカバーしているため、夜でも問題なく使用可能。「ブルベで長時間ライドする人も使っていますし、1日と言わず1日半は掛け続けられるレンズにはなっています」という。
PULSAR:マウンテンバイク用ヘルメットにフィットする設計の一本

PULSARはマウンテンバイクのトレイルライド用に開発し、ゴーグルのようなフルリムでしっかりとした作りの一本だ。先述したアイウェアはロードを意識していますが、PULSARはトレイルライド用ヘルメットに合わせたデザインが採用されているという。
具体的には先述した短めのテンプルに加えて、こめかみ部分まで覆うような深めのヘルメットを想定してテンプルを薄く作っている。この設計を採用しながら確かな剛性を備え、自由に調節できるノーズパッドを採用することで、激しいライディングでもずれにくいアイウェアを実現した。
レンズ下部のボトムフレームは取り外すこともでき、ハーフリムアイウェアとして着用することも可能。グラベルライドなどで軽快感を出したい時はハーフリムという使い方もできるマルチな一本だ。「カラーラインアップも揃えていますので、こだわりのあるマウンテンバイカーにはオススメしたいと思っています」と語る。






今回紹介するアイウェアは全てリルサン®クリアG850という素材を採用している。そのことについて、入江さんは「バイオベースのマテリアルを採用しているのは、石油由来のプラスチックによるCO2排出の削減など環境問題に対して、小さなことでもできることから実践するためです。もう一つは、これまで使用していたグリルアミド同等以上の物性を備えているからです。透明度が高く、強度や剛性、軽量性がしっかりしています。非常に高機能な素材なんです」という。
シマノ独自開発のRIDESCAPEレンズ

シマノは独自開発した高コントラストのRIDESCAPEレンズをどのモデルにも搭載している。このレンズの特徴を入江さんは「余分な眩しさを取り除き、見たいものが見えるレンズ」と表現する。
「ロードライドで説明するとアスファルトの凹凸や割れ、小石などをしっかりと見えるように作っています。これらの見たい物以外の色を狙ってフィルターし、透過率を下げていくことで、見たい物の色が残り、結果としてコントラストが上がるという設計です」と入江さん。ライド中に見る必要がある信号機の色などは残し、波長の短い青色はカットというように計算し尽くされてレンズは開発されている。




高コントラストレンズは必要な情報のみを提供してくれることにメリットがある。「天気が良い時は路面が反射する中で路面情報を得ようと一生懸命見てしまうから疲れてしまうことがあります。レンズを通すことで頑張らなくても情報を得られるようになるので、長時間のライドでも疲れにくくなっています」と入江さんは説明する。
シマノのレンズは雨天など厳しいコンディションで走るプロライダーからの意見を受けて、全てのモデルでハイドロフォビック(撥水)コーティングを施している。S-PHYREはさらにオレオフォビック(撥油)コートを施し、汗や指紋の汚れが付着しにくくなった。この改善を行ってからプロ選手も満足できているという。

さらにレンズは一般的なポリカーボネートではなくポリアミドを素材に採用している。その理由は光学特性が良く軽量だから。ポリカーボネートに対して16.4%軽量であり、レンズの重量にして2g程度も異なる場合もある。耐衝撃性については軍事レベルの要件を満たすのはポリカーボネートに軍配が上がるが、自転車用として開発されているため各国の基準を満たせるポリアミドを採用しているのだとか。
またレンズには メーカーが施工できる最上級のハードコートを施している。これによってシクロクロッサーがレース中にレンズを拭っても深傷が入りにくいのだとか。レースモデルはもちろんカジュアル系にも施しているため、ホビーサイクリストが大胆に扱っても問題なさそう。その高品質で全てのアイウェアを作り上げるところにシマノのものづくりへの真摯さが反映されている。
編集部インプレッション

過去作をインプレッションしたシクロワイアード編集部の高木が3モデル通して感じたのは、前作よりもフィット感が高まっており、着用感がさらに良好に進化しているということだった。加えてテンプルが短く設定されている恩恵もあり、ヘルメットとの干渉による心配事がないと好印象を抱いた。
特にS-PHYRE SLの軽さは、アイウェアをかけていることを忘れさせるほど。剛性についても今まで試したフレームレスモデルと比較しても高めだが、フレームレスがゆえに顔に程よいタイト感、心地よい着用感でかけることができる。

EQUINOXはS-PHYRE SLよりもかっちりとした着用感。顔のカーブにもぴたりとフィットするため、アイウェアがしっかりと守ってくれる印象が強い。レンズの縦幅が短めで、シャープなルックスに仕上げられており、ロードレースで似合うオーソドックスなモデルだ。
PULSARはさらにフィット感が高く、オフロードライドでもズレなさそうな安心感がある。EQUINOXよりもレンズが大きく顔を覆う面積が広いため、プロテクション性能に不安はないことが特徴だ。


各モデルにアセンブルされるRIDESCAPEレンズはRD(ロード)、OR(オフロード)、GR(グラベル)のどれも路面の陰影をくっきりと表現してくれる。それぞれ明るさが異なっていてRDがもっとも暗めで、黄緑色の視界を提供するGRはかつてのイエローレンズのような印象を抱いた。全体的に明るく、日の出や日没のようなシチュエーションでもしっかりと状況に適した明るさを提供してくれる。
ORはGRよりも明るく、森などで薄暗い状況でマッチした視界をもたらす。レンズを通して見える世界は全体的に赤っぽく、かつ鮮明だ。木の根や路面のちょっとしたギャップも把握しやすく、オフロードを走る時の安心感は高めだ。
シマノアイウェアは国内ではオンライン専売

今回紹介したシマノのアイウェアは公式オンラインストア限定での販売となる。そのため価格設定もこだわっており、S-PHYRE SLはシマノのフラッグシップシリーズだが価格は15,400円(税込)と高いコストパフォーマンスを誇っている。
EQUINOXは撥油コートなどを省略したり、RIDESCAPEではないクリアレンズを同梱することで、ホビーサイクリストに適した性能と価格をバランスさせている。価格は13,200円(税込)。PULSARはアグレッシブなマウンテンバイカーが使用し、消耗の進行具合もロードより早いということを考慮し、手の届きやすい9,900円(税込)に設定されている。

これらのアイウェアを手がけた入江さんは「シマノのアイウェアに興味を持っていただき、できるだけ試してもらいたい」と胸を張る。さらにオンラインストアに投稿いただいたアイウェアの商品レビューは日本の企画開発を行っている部門にも共有されるので、日本のユーザーの声でシマノのアイウェアがより魅力的になる可能性を秘めている。
オンラインストア専売という事前にフィット感を試せない状況ではあるものの、一度の試着であれば購入から14日以内であれば返品受付に対応してくれるという。フィット感には自負があるというシマノのアイウェアを一度試してみても良さそうだ。
シマノ S-PHYRE SL、EQUINOX、PALSAR
製品名 | フレームカラー | レンズ種類 | 税込価格 |
---|---|---|---|
S-PHYRE SL | グリーンサファイア | RIDESCAPE GR | 15,400円 |
S-PHYRE SL | ブラックサファイア | RIDESCAPE OR | 15,400円 |
S-PHYRE SL | イエローサファイア | RIDESCAPE OR | 15,400円 |
S-PHYRE SL | ピンクサファイア | RIDESCAPE RD | 15,400円 |
S-PHYRE SL | ブラックサファイア | RIDESCAPE RD | 15,400円 |
S-PHYRE SL | パープルサファイア | RIDESCAPE RD | 15,400円 |
S-PHYRE SL | マットクリスタル | RIDESCAPE RD | 15,400円 |
EQUINOX | トランスパレントグレー | PHOTOCHROMIC GRAY | 15,400円 |
EQUINOX | マットホワイト | PHOTOCHROMIC GRAY | 15,400円 |
EQUINOX | ティール | RIDESCAPE GR | 13,200円 |
EQUINOX | トランスパレントグレー | RIDESCAPE GR | 13,200円 |
EQUINOX | ティール | RIDESCAPE OR | 13,200円 |
EQUINOX | マットホワイト | RIDESCAPE OR | 13,200円 |
EQUINOX | スモーキーピンク | RIDESCAPE RD | 13,200円 |
EQUINOX | マットブラック | RIDESCAPE RD | 13,200円 |
EQUINOX | マットホワイト | RIDESCAPE RD | 13,200円 |
PULSAR | アイボリー | PHOTOCHROMIC GRAY | 12,100円 |
PULSAR | マットブラック | PHOTOCHROMIC GRAY | 12,100円 |
PULSAR | セージグリーン | RIDESCAPE GR | 9,900円 |
PULSAR | ティール | RIDESCAPE OR | 9,900円 |
PULSAR | フロストグレー | RIDESCAPE OR | 9,900円 |
PULSAR | ティーベリー | RIDESCAPE OR | 9,900円 |
PULSAR | マットブラック | RIDESCAPE OR | 9,900円 |
PULSAR | ライラック | RIDESCAPE OR | 9,900円 |
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