2024/12/28(土) - 15:55
サイパンで行われたヘル・オブ・マリアナに今年も参戦したさいたま佐渡サンブレイブの3選手。昨年はレース中にチームメイトの藤田涼平に自身のホイールを渡して献身のリタイアをした鈴木道也が、今年は仲間たちの全面サポートを受けるエースとして走った。厳しくも楽しい南国レースの体験を振り返ります。

左から鈴木道也、藤田涼平、重田倫一郎。バードアイランドで、サンブレイブの「S」ポーズ
前回勝利チームとして招待され、再びサイパンへ
昨年に続き、今年も「ヘル・オブ・マリアナ」に出場することになった。昨年の優勝チームということで、マリアナ政府観光局さんのご協力もあり、今年も再び招待していただけることになったのだ。

大量の荷物とともにチームカーで成田空港へとやってきた 
バイクの梱包パッキングは慎重に行った
9月の新城ロードレースで助骨を骨折し、さらに10月に出場予定だったJプロツアー最終戦の石川ロードが中止になったことで、シーズン後半は不完全燃焼気味だった。そんな中、チームメイトの藤田さんから「今年もサイパン行けるよ」と連絡が入った。「もうオフにして休みたい」という気持ちもあったが、サイパンという素晴らしい地でまたレースをしたい、去年のリベンジを果たしたいという気持ちが勝り、出場を決めた。

成田空港に集合、今年もこの3人でサイパンへ行ってきます 
きっちり無料規定内の22.9kgで収まった
昨年は藤田さんが優勝、重田が2位となりチームでワン・ツー・フィニッシュを達成した。チームとしては最高の結果だったが、私は活躍することができず悔しい結果に終わった。行きの飛行機輸送でバイクが破損し、現地で急遽探し当てた借りものバイクで出走したものの、厳しいレースとなった。そしてレース中盤にパンクした藤田さんに自分のホイールを渡し、レースを降りた。昨年の詳しい内容については、藤田さんの参戦レポートをぜひ読んでほしい。

昨年のヘル・オブ・マリアナ。パンクした藤田にホイールを渡してレースを降りた鈴木道也 photo:MakotoAYANO さいたま佐渡サンブレイブからの出場メンバーは、昨年と同じく藤田涼平、重田倫一郎、鈴木道也の3名。さらに、ツール・ド・おきなわが中止になった影響もあり、2023年おきなわ市民200kmレースチャンピオンの井上亮さん(Magellan Systems Japan)も同行することになった。井上さんも私と同じく、不完全燃焼だったシーズンの悔しさを晴らすために出場を決めたようだ。
藤田さんと重田はコンディションが昨年ほどではなく、今年は私がチームのエースを務めることになった。エースという大役にプレッシャーは感じたが、チームの2連覇を目指し、最善を尽くしたいと思った。
渡航と現地入り

バイク破損が無いことを確認して「今年はセーフ!」
昨年の反省を踏まえ、今年は念入りにバイクの梱包を行った。今年から新潟県の佐渡島に移住し、輪行の機会が増えたことで、輪行にもだいぶ慣れてきた。
埼玉で藤田さんと合流し、チームカーで成田空港へ向かった。到着後、まず空港のカウンターで自転車を預けた。ユナイテッド航空では23kgまで追加料金がかからないのがありがたい。自転車1台なら余裕があるため、シューズやウェア類を一緒に収納することができる。藤田さんの輪行箱にはスペアホイールやフロアポンプも入れた状態でちょうど23kgだった。

若杉さんのサポートで空港からホテルへ向かう
サイパン行きの機内はほぼ満席だった。今年は日本人観光客が増えているようで、昨年の空席が目立った印象とは大きく異なっていた。約3時間半のフライトでサイパンに到着。佐渡から東京に行くよりも近いのでは?と思うほどだ(笑)。
入国手続きも昨年と変わっていた。昨年は機内で必要な書類を記入したが、今年はオンラインで事前申請する方式に変更されていた。税関申告も事前申請が可能で、QRコードを提示するだけでスムーズに入国できた。

ホテルクラウンプラザ サイパン photo:Makoto AYANO
サイパン国際空港に到着したのは22時頃。昨年は就航便の運行時間が違って深夜2時到着だったので、この点でも便利になった。身体への負担も少ない。
手荷物受取所に自転車が10台ほど並んでおり、日本からの参加者も増えているようだった。昨年は通常の手荷物と同じベルトコンベアから自転車が出てきていたが、今回は別扱いで出てきた。空港での自転車の扱いも改善されていたのは嬉しい。

さっそくホテルのプライベートビーチでくつろぐ
現地ガイドは昨年同様にダイビングショップ アクアゲート・サイパンの若杉さんにお願いした。若杉さんのピックアップトラックにバイクを積み込み、ホテルへ向かった。井上さんは宿泊ホテルが違うため、ここで一旦お別れ。井上さんはホテルの送迎サービスを利用したようだ。若杉さんのサポートがなくてもなんとかなりそうだ。

日本は冬だったけどホテルのプールでさっそく泳ぐ 
プールサイドでのんびりする至福の時間...

リゾートホテルのお庭でラブラブなふたり...笑
今回のホテルはクラウンプラザリゾート・サイパン。昨年利用したヒマワリホテルも便利で良かったが、今回は高級リゾートホテルだ。綺麗な客室、ビーチ。プールもあってテンションが上がった。サイパンと日本の時差は1時間しかないので時差ボケはなく、明日に備えてすぐに就寝した。
レース前日 コース試走で危険箇所をチェック

路面の状況を確かめながらコース試走した
レース前日は朝から井上さんと合流して4人でコース試走をした。私は去年のレースは途中リタイアしているため、コースの後半を知らなかったので藤田さんと重田にポイントを教えてもらいながら念入りにチェックした。

バードアイランドビーチに通じる椰子の木並木 photo:Satoru Kato

もっとも長いレーダータワーへの登りを試走した photo:Satoru Kato
試走は後半の勝負どころとなるレーダータワーやスーサイドクリフの登り、下りのコーナーを重点的に確認した。サイパンの路面は滑りやすいため、スコールで濡れた場合は特に注意したい。レーダータワーの登りは15分程度で、自分の得意な長さと勾配だった。

ダイビングの名所グロットで。またレース後に来るのが楽しみ! 
青空と青い海が広がるバードアイランドビーチ photo:Satoru Kato
気温は30度で、日本との気温差は20度以上。無理はせず、観光スポットでは景色を楽しみながら走った。バードアイランドは佐渡の「大野亀」と似ていて、どこか親近感を感じた。

レース前日の午後から参加受付 ゼッケンと計測チップ付きバイクナンバー、参加賞などを受け取る 
ヘル・オブ・マリアナのバナー前で
午後は受付と明日の朝食の買い出しに行った。受付をするとゼッケンのほかにオリジナルのTシャツとボトルがもらえる。今年のTシャツはワインレッドでかっこよかった。

ハファダイスーパーで買い出し。ショッピングは楽しい 
中華でカーボローディング。質・量・味に満足
買い出しは日本の商品が沢山揃っている安定のヒマワリスーパーではなく、ハファダイショッピングセンターへ行ってみた。海外のスーパーは見たことない物が沢山あり、見ているだけでも楽しい。明日用のパンや飲み物を購入した。夕食は中華料理屋へ。サイパンの中華は安くて量が多くてうまい!カーボローディングには最適だった。
レース当日

バイクをピックアップトラックに積み込み、スタート地点へ向かう
レースは6時15分スタート。当日はホテルを5時に出発した。スタート地点までは10キロほどなので自走移動も可能だが、日の出前で真っ暗なので、若杉さんのピックアップトラックで向かうことにした。私は自転車と一緒に荷台に乗り、風を浴びながらスタート地点へ向かった。

100kmプロ/エリートに出場したさいたま佐渡サンブレイブの3名と、井上亮(Magellan Systems Japan)。後方には女子の鈴木友佳子(MIVRO)の姿も photo:Satoru Kato
暗いこともあり、十分にアップができないままスタートに並んだ。今年もみんなで先頭に並んだ。スタートには去年一緒に戦ったグアムの選手の他、韓国の選手やセブンイレブン・フィリピンの選手もいた。その中にオランダのコンチネンタルチームのユニバースサイクリングのリック・ノベル選手がいた。2023年のツールド熊野で一緒にレースを走ったことのある選手で、身長195cmの長身でパワーがあるタイプの選手だ。去年より選手層が厚くなっていて、「これは一筋縄ではいかないな」と思った。

スタート直後の平坦区間で集団を引く鈴木道也(さいたま佐渡サンブレイブ) photo:Satoru Kato
日が昇り、明るくなってきた頃に定刻通りスタートした。すぐに30人ほどの先頭グループが形成され、その集団からアタックが頻発したが、なかなか逃げはできず、お見合い状態が続いた。

幹線道路もアップダウンに富んでいるため脚にくる photo:Satoru Kato

「今回はチームメイトのサポートに回った」と言う藤田涼平(さいたま佐渡サンブレイブ) photo:Satoru Kato
集団のまま20キロ地点の最初の登りへ入った。ここでリック選手がペースアップし、集団を崩壊させようとしてきた。この動きで中切れが起き、自分と重田は後方集団に取り残されてしまった。私はしっかりアップをしないと体が動かないタイプなので、序盤のハイペースが特に苦しかった。この時は「今日はダメかもしれない」とも思った。

最初の登り区間に差し掛かった集団 photo:Satoru Kato

昨年は藤田涼平のサポートでリタイアした鈴木道也(さいたま佐渡サンブレイブ) photo:Satoru Kato
藤田さんが前の集団にいたので「あとは頼みます」という諦めの気持ちでいたが、遅れた集団にいた重田が「道也さん、前に行きましょう!引きます!」と声をかけてくれた。彼が積極的に先頭を引いてくれたおかげで、なんとか先頭集団に追いつくことができた。この時、藤田さんも先頭集団のペースを抑える動きをしてくれていたようだ。チームプレイでピンチを乗り切ることができた。

教会前を通過する100kmのメイン集団。井上亮と鈴木道也(さいたま那須サンブレイブ) photo:Satoru Kato
その後、セブンイレブンのガレド選手がアタックを仕掛け、自分も反応して2名の逃げが形成された。しかし、このまま逃げ続けると後半で勝負できなくなる可能性が高かったため、しばらくして集団に戻ることを選択した。集団には井上さんやリック選手がいる状況で、エースである自分が序盤から消耗するのはチームとして得策ではないと判断した。一方、ガレド選手はそのまま単独で逃げを継続した。

30km過ぎから単独先行したガレド選手(セブンイレブン・クリック・フィリピン) 
井上亮らの追走集団と、後方に鈴木道也(さいたま那須サンブレイブ)

鈴木道也の後方で苦しげな表情を見せる藤田涼平(さいたま佐渡サンブレイブ) photo:Satoru Kato
リック選手や井上さんと共にハイペースで追走を開始したが、ガレド選手との差は1分から1分30秒ほどで推移し、なかなか縮まらない。直線では後ろ姿が見える距離ではあるものの、アップダウンの多いコースでタイムを詰めるのは難しかった。

60km過ぎ、降り出した雨の中、井上亮(Magellan Systems Japan)と鈴木道也(さいたま佐渡サンブレイブ)が先行していた選手に追いつく photo:Satoru Kato
40キロ地点に到達する頃には藤田さんと重田も集団から遅れてしまい、追走集団は自分、井上さん、リック選手、韓国のソ・ジュンヨン選手の4人となった。
その後、キャピタルヒルの登りで井上さんが「前にジョインしよう」と声をかけながらペースを上げた。この動きによりリック選手とジュンヨン選手が脱落し、自分と井上さんの2名でガレド選手に追いつくことができた。こうして先頭は自分、井上さん、ガレド選手の3人という展開に。中盤ながらも既にハイスピードで過酷なサバイバルレースが繰り広げられていた。

椰子の木並木の道を独走する井上亮(Magellan Systems Japan) photo:Satoru Kato
勝負の分かれ目となるレーダータワーの登りでは、登り始めてすぐにガレド選手が遅れ始めた。井上さんのペースについて行こうと試みたが、頂上まで持たないと判断し、自分は途中でマイペースに切り替えた。ここから井上さんの独走が始まった。

井上亮選手が単独で先行するが、差を測りながら追走することを選択した photo:Satoru Kato

サポートスタッフから補給を受け取る鈴木道也(さいたま佐渡サンブレイブ) photo:Satoru Kato
必死に追いかけたものの、井上さんのスピードはその愛称である「マグロ」の通り、後半になっても全く衰えず、むしろどんどん差を広げられてしまった。歯を食いしばりながら懸命に踏み続けたが、差が開いていくのを目の当たりにして、悔しい気持ちで胸がいっぱいになった。何度も「もっと力があれば」と思いながら走り続ける自分がいた。

残り30kmを独走逃げ切りでフィニッシュする井上亮(Magellan Systems Japan) photo:Satoru Kato
最終的に、井上さんが大会最速となる3時間切りのタイムで独走優勝。自分は5分差でゴールし、2位となった。3位にはリック選手が入った。

ジャージをアピールしながら2位でフィニッシュする鈴木道也(さいたま佐渡サンブレイブ) photo:Satoru Kato

昨年覇者の藤田涼平(さいたま佐渡サンブレイブ)は6位でフィニッシュ 
重田倫一郎が最後のスプリントで競り合う
レース後には「あの時こうすれば良かった」と毎回反省するが、今回は特に悔しさが大きく、次回こそは井上さんに食らいつけるよう、より入念に準備を整えたいと強く感じた。

ヘル・オブ・マリアナ2024を制した井上亮(Magellan Systems Japan、写真右)と、2位の鈴木道也(さいたま佐渡サンブレイブ) photo:Satoru Kato
今回2位という結果を得られたのは、前半の厳しい局面で藤田さんや重田のサポートがあったおかげであり、また、マリアナ政府観光局の皆様や、現地でサポートしてくださった若杉さんの助けがあったからこそだと思う。本当にありがとうございました。

最高の体験をサポートしてくれた現地の若杉さん、井上亮選手、マリアナ政府観光局スタッフと一緒に記念撮影 photo:Satoru Kato
レース後は念願のオフシーズンに突入!

現地マクドナルドのバーガーも大きめで満足
レースが終わり、ついに念願のオフシーズン突入。まずは本場アメリカのマクドナルドへ直行!日本よりバーガーのサイズが大きくて大満足。

アフターパーティーのテーブルを囲む日本チーム photo:Satoru Kato

100kmプロ/エリートの部 表彰式 photo:Satoru Kato
夕方からは表彰式を兼ねたアフターパーティーへ。この大会の恒例イベントで、食事やお酒が食べ放題・飲み放題という最高の時間。さらに、今年は昨年にはなかったポリネシアンダンスも楽しめた。優勝者として踊る井上さんを見て、少し羨ましさを感じた。

井上亮もダンスコンテストに(無理矢理)参加 
ダンスコンテストは女子100km優勝者のKim Misoが優勝

優勝した井上亮(右)、2位の鈴木道也が賞金を手にした photo:Satoru Kato
パーティー中、昨年ロードバイクを貸してくれたキミコさんとも再会した。キミコさんはサイパン在住の日本人サイクリストで、今年は一般クラスで2位だったとのこと。「来年も絶対来てね!」と熱烈なラブコールを受け、指切りをして約束した(させられた)。

昨年ロードバイクを貸してくれたサイパン在住のキミコさんとも再会! photo:Satoru Kato

日本から参加したメンバーで記念撮影 photo:Satoru Kato
翌日は若杉さんの案内でダイビングの予定だったが、朝起きると喉の痛みと体調不良で、直前に自分だけ泣く泣くキャンセル。体験したメンバーからは「水族館みたいで最高だった」「ウミガメと写真撮った」と楽しそうな報告を聞き、後悔が募るばかりだった。井上さんも「マグロ」を目撃するというエピソードを披露し、やっぱりチャンピオンは「持っている男」だと実感した。

井上亮さんと一緒にダイビングに向かった藤田と重田から写真が届いた

「ダイビングでたくさんのお魚に囲まれて大満足」という写真が送られてきた...

こんな立派な珊瑚が見られたとか 
ウミガメさんにも会えたらしい
お昼頃には体調が回復し、「やっぱり行けばよかった」と悔やむばかり。レースもダイビングもリベンジしたいと心から思った。 ヘル・オブ・マリアナは今年もまた素晴らしい体験ができた。南国の楽園サイパンに、また来年も行きたい!
text:鈴木道也(さいたま佐渡サンブレイブ)

前回勝利チームとして招待され、再びサイパンへ
昨年に続き、今年も「ヘル・オブ・マリアナ」に出場することになった。昨年の優勝チームということで、マリアナ政府観光局さんのご協力もあり、今年も再び招待していただけることになったのだ。


9月の新城ロードレースで助骨を骨折し、さらに10月に出場予定だったJプロツアー最終戦の石川ロードが中止になったことで、シーズン後半は不完全燃焼気味だった。そんな中、チームメイトの藤田さんから「今年もサイパン行けるよ」と連絡が入った。「もうオフにして休みたい」という気持ちもあったが、サイパンという素晴らしい地でまたレースをしたい、去年のリベンジを果たしたいという気持ちが勝り、出場を決めた。


昨年は藤田さんが優勝、重田が2位となりチームでワン・ツー・フィニッシュを達成した。チームとしては最高の結果だったが、私は活躍することができず悔しい結果に終わった。行きの飛行機輸送でバイクが破損し、現地で急遽探し当てた借りものバイクで出走したものの、厳しいレースとなった。そしてレース中盤にパンクした藤田さんに自分のホイールを渡し、レースを降りた。昨年の詳しい内容については、藤田さんの参戦レポートをぜひ読んでほしい。

藤田さんと重田はコンディションが昨年ほどではなく、今年は私がチームのエースを務めることになった。エースという大役にプレッシャーは感じたが、チームの2連覇を目指し、最善を尽くしたいと思った。
渡航と現地入り

昨年の反省を踏まえ、今年は念入りにバイクの梱包を行った。今年から新潟県の佐渡島に移住し、輪行の機会が増えたことで、輪行にもだいぶ慣れてきた。
埼玉で藤田さんと合流し、チームカーで成田空港へ向かった。到着後、まず空港のカウンターで自転車を預けた。ユナイテッド航空では23kgまで追加料金がかからないのがありがたい。自転車1台なら余裕があるため、シューズやウェア類を一緒に収納することができる。藤田さんの輪行箱にはスペアホイールやフロアポンプも入れた状態でちょうど23kgだった。

サイパン行きの機内はほぼ満席だった。今年は日本人観光客が増えているようで、昨年の空席が目立った印象とは大きく異なっていた。約3時間半のフライトでサイパンに到着。佐渡から東京に行くよりも近いのでは?と思うほどだ(笑)。
入国手続きも昨年と変わっていた。昨年は機内で必要な書類を記入したが、今年はオンラインで事前申請する方式に変更されていた。税関申告も事前申請が可能で、QRコードを提示するだけでスムーズに入国できた。

サイパン国際空港に到着したのは22時頃。昨年は就航便の運行時間が違って深夜2時到着だったので、この点でも便利になった。身体への負担も少ない。
手荷物受取所に自転車が10台ほど並んでおり、日本からの参加者も増えているようだった。昨年は通常の手荷物と同じベルトコンベアから自転車が出てきていたが、今回は別扱いで出てきた。空港での自転車の扱いも改善されていたのは嬉しい。

現地ガイドは昨年同様にダイビングショップ アクアゲート・サイパンの若杉さんにお願いした。若杉さんのピックアップトラックにバイクを積み込み、ホテルへ向かった。井上さんは宿泊ホテルが違うため、ここで一旦お別れ。井上さんはホテルの送迎サービスを利用したようだ。若杉さんのサポートがなくてもなんとかなりそうだ。



今回のホテルはクラウンプラザリゾート・サイパン。昨年利用したヒマワリホテルも便利で良かったが、今回は高級リゾートホテルだ。綺麗な客室、ビーチ。プールもあってテンションが上がった。サイパンと日本の時差は1時間しかないので時差ボケはなく、明日に備えてすぐに就寝した。
レース前日 コース試走で危険箇所をチェック

レース前日は朝から井上さんと合流して4人でコース試走をした。私は去年のレースは途中リタイアしているため、コースの後半を知らなかったので藤田さんと重田にポイントを教えてもらいながら念入りにチェックした。


試走は後半の勝負どころとなるレーダータワーやスーサイドクリフの登り、下りのコーナーを重点的に確認した。サイパンの路面は滑りやすいため、スコールで濡れた場合は特に注意したい。レーダータワーの登りは15分程度で、自分の得意な長さと勾配だった。


気温は30度で、日本との気温差は20度以上。無理はせず、観光スポットでは景色を楽しみながら走った。バードアイランドは佐渡の「大野亀」と似ていて、どこか親近感を感じた。


午後は受付と明日の朝食の買い出しに行った。受付をするとゼッケンのほかにオリジナルのTシャツとボトルがもらえる。今年のTシャツはワインレッドでかっこよかった。


買い出しは日本の商品が沢山揃っている安定のヒマワリスーパーではなく、ハファダイショッピングセンターへ行ってみた。海外のスーパーは見たことない物が沢山あり、見ているだけでも楽しい。明日用のパンや飲み物を購入した。夕食は中華料理屋へ。サイパンの中華は安くて量が多くてうまい!カーボローディングには最適だった。
レース当日

レースは6時15分スタート。当日はホテルを5時に出発した。スタート地点までは10キロほどなので自走移動も可能だが、日の出前で真っ暗なので、若杉さんのピックアップトラックで向かうことにした。私は自転車と一緒に荷台に乗り、風を浴びながらスタート地点へ向かった。

暗いこともあり、十分にアップができないままスタートに並んだ。今年もみんなで先頭に並んだ。スタートには去年一緒に戦ったグアムの選手の他、韓国の選手やセブンイレブン・フィリピンの選手もいた。その中にオランダのコンチネンタルチームのユニバースサイクリングのリック・ノベル選手がいた。2023年のツールド熊野で一緒にレースを走ったことのある選手で、身長195cmの長身でパワーがあるタイプの選手だ。去年より選手層が厚くなっていて、「これは一筋縄ではいかないな」と思った。

日が昇り、明るくなってきた頃に定刻通りスタートした。すぐに30人ほどの先頭グループが形成され、その集団からアタックが頻発したが、なかなか逃げはできず、お見合い状態が続いた。


集団のまま20キロ地点の最初の登りへ入った。ここでリック選手がペースアップし、集団を崩壊させようとしてきた。この動きで中切れが起き、自分と重田は後方集団に取り残されてしまった。私はしっかりアップをしないと体が動かないタイプなので、序盤のハイペースが特に苦しかった。この時は「今日はダメかもしれない」とも思った。


藤田さんが前の集団にいたので「あとは頼みます」という諦めの気持ちでいたが、遅れた集団にいた重田が「道也さん、前に行きましょう!引きます!」と声をかけてくれた。彼が積極的に先頭を引いてくれたおかげで、なんとか先頭集団に追いつくことができた。この時、藤田さんも先頭集団のペースを抑える動きをしてくれていたようだ。チームプレイでピンチを乗り切ることができた。

その後、セブンイレブンのガレド選手がアタックを仕掛け、自分も反応して2名の逃げが形成された。しかし、このまま逃げ続けると後半で勝負できなくなる可能性が高かったため、しばらくして集団に戻ることを選択した。集団には井上さんやリック選手がいる状況で、エースである自分が序盤から消耗するのはチームとして得策ではないと判断した。一方、ガレド選手はそのまま単独で逃げを継続した。



リック選手や井上さんと共にハイペースで追走を開始したが、ガレド選手との差は1分から1分30秒ほどで推移し、なかなか縮まらない。直線では後ろ姿が見える距離ではあるものの、アップダウンの多いコースでタイムを詰めるのは難しかった。

40キロ地点に到達する頃には藤田さんと重田も集団から遅れてしまい、追走集団は自分、井上さん、リック選手、韓国のソ・ジュンヨン選手の4人となった。
その後、キャピタルヒルの登りで井上さんが「前にジョインしよう」と声をかけながらペースを上げた。この動きによりリック選手とジュンヨン選手が脱落し、自分と井上さんの2名でガレド選手に追いつくことができた。こうして先頭は自分、井上さん、ガレド選手の3人という展開に。中盤ながらも既にハイスピードで過酷なサバイバルレースが繰り広げられていた。

勝負の分かれ目となるレーダータワーの登りでは、登り始めてすぐにガレド選手が遅れ始めた。井上さんのペースについて行こうと試みたが、頂上まで持たないと判断し、自分は途中でマイペースに切り替えた。ここから井上さんの独走が始まった。


必死に追いかけたものの、井上さんのスピードはその愛称である「マグロ」の通り、後半になっても全く衰えず、むしろどんどん差を広げられてしまった。歯を食いしばりながら懸命に踏み続けたが、差が開いていくのを目の当たりにして、悔しい気持ちで胸がいっぱいになった。何度も「もっと力があれば」と思いながら走り続ける自分がいた。

最終的に、井上さんが大会最速となる3時間切りのタイムで独走優勝。自分は5分差でゴールし、2位となった。3位にはリック選手が入った。



レース後には「あの時こうすれば良かった」と毎回反省するが、今回は特に悔しさが大きく、次回こそは井上さんに食らいつけるよう、より入念に準備を整えたいと強く感じた。

今回2位という結果を得られたのは、前半の厳しい局面で藤田さんや重田のサポートがあったおかげであり、また、マリアナ政府観光局の皆様や、現地でサポートしてくださった若杉さんの助けがあったからこそだと思う。本当にありがとうございました。

レース後は念願のオフシーズンに突入!

レースが終わり、ついに念願のオフシーズン突入。まずは本場アメリカのマクドナルドへ直行!日本よりバーガーのサイズが大きくて大満足。


夕方からは表彰式を兼ねたアフターパーティーへ。この大会の恒例イベントで、食事やお酒が食べ放題・飲み放題という最高の時間。さらに、今年は昨年にはなかったポリネシアンダンスも楽しめた。優勝者として踊る井上さんを見て、少し羨ましさを感じた。



パーティー中、昨年ロードバイクを貸してくれたキミコさんとも再会した。キミコさんはサイパン在住の日本人サイクリストで、今年は一般クラスで2位だったとのこと。「来年も絶対来てね!」と熱烈なラブコールを受け、指切りをして約束した(させられた)。


翌日は若杉さんの案内でダイビングの予定だったが、朝起きると喉の痛みと体調不良で、直前に自分だけ泣く泣くキャンセル。体験したメンバーからは「水族館みたいで最高だった」「ウミガメと写真撮った」と楽しそうな報告を聞き、後悔が募るばかりだった。井上さんも「マグロ」を目撃するというエピソードを披露し、やっぱりチャンピオンは「持っている男」だと実感した。




お昼頃には体調が回復し、「やっぱり行けばよかった」と悔やむばかり。レースもダイビングもリベンジしたいと心から思った。 ヘル・オブ・マリアナは今年もまた素晴らしい体験ができた。南国の楽園サイパンに、また来年も行きたい!
text:鈴木道也(さいたま佐渡サンブレイブ)
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