2025/01/01(水) - 15:25
ベルギーに拠点を構えるリドレーの新型ミドルグレードFALCNをインプレッション。FALCNはフラッグシップの性能を受け継ぎつつ、汎用性を高めたセカンドグレードの実力に迫る。
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リドレー FALCN
現在のプロレースで用いられるバイクの中で、エアロダイナミクスが考慮されていないモデルは存在しない。1ワットでも走行抵抗を低減し、ライダーにアドバンテージをもたらすものとして、軽量バイクにも空気抵抗を低減するための設計は採用されるようになっている。
そんな中、ベルギーの名門ブランド、リドレーは着実な進化を遂げてきた。軽量モデルのHelium、エアロロードのNoah、エンデュランスバイクのFenixという定番の三本柱を軸に、各モデルの性能を磨き上げてきたリドレーだが、ついに新たなコンセプトを持つFALCNをリリースした。
コンセプトはヒルクライムでの扱いやすさを備えつつも、エアロダイナミクスを随所に取り入れたオールラウンドな性能。軽量性が際立ったHeliumを置き換える、新たな三本柱の一角としてラインアップに加わっている。
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リアセクションもエアロを意識したチューブ形状とされている 
ボトルケージの位置を調整することが可能となっている 
エアロを意識した形状のフロントフォーク
優れたエアロダイナミクスを獲得するべく採用されたのは、CFD解析を経て生み出されたカムテールのチューブ。これによって前方からの風だけではなく、横風でもコントローラブルかつ低抵抗のエアロ性能と重量、剛性のバランスを整えた。
その上で風が最初に当たるフロントセクションのエアロ設計に力を入れている。まず1つ目のポイントはD型コラムを採用するF-Steererというテクノロジーでケーブル完全内装を実現。そしてヘッドチューブ周りも空気の流れを意識した造形とすることで空気抵抗の低減を狙っている。
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FALCNはカーボンや各種仕様をモディファイしたミドルグレードだ 
Forza Cirrus Pro Road Integrated Cockpitが装備されている
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ディレイラーハンガーはスラムのUDHが採用されている 
ヘッドチューブは後方に綺麗な気流を流すような設計とされている
またフロントフォークのディフューザー設計はユニークなアイデアを具現化している。これはダウンチューブ側のフォーククラウンを薄く作ることで、フォーク内側に巻き込まれた風の流速を高め、ダウンチューブ周囲の抵抗を最小限に抑えているという。ディフューザー設計ではないフォークと比較して、50km/hで10%の空気抵抗低減に成功したとリドレーは言う。
ここまではトップグレードのFALCN RSと共通する設計だが、ミドルグレードのFALCNではコラムの上側を1-1/4(RSは1-1/8)としており、ヘッドが若干ボリュームアップ。さらに27.2mm径の丸型シートポストを採用し、シートチューブも若干丸みを帯びたデザインとなっている。
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シートチューブまでも丸型断面とされている 
リドレーのミドルグレードはEssentialシリーズとしてラインアップされている
さらにFALCNはFALCN RSと同様に2種類の弾性率の異なるカーボン素材を使用しているが、Falcn RSの60T/40T HM UDカーボンから30T/24T HM UDカーボンに変更。これにより、コストを抑えつつ上位モデルに迫る性能を発揮する。
フレーム重量はSサイズで140g増に抑えられており、高い剛性と快適性を両立している。また装着するタイヤ幅はレースシーンのトレンドでもある28Cを想定しつつ、最大34mmまでを許容するため、ワイドタイヤで快適性を高めるカスタマイズも可能だ。
リアディレイラーハンガーはスラムが提唱するUDH規格を採用。フロントディレイラーマウントは取り外し可能となっているため、フロントシングルでもすっきりとしたルックスで組み上げられる。
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フォーククラウンの裏側は薄く作るディフューザー設計が採用されている 
シートチューブは上側が丸型断面で、BB付近はカットアウトされたデザインだ 
FALCNは汎用の丸型シートポストを採用している
販売パッケージはミズタニ自転車のバイククラフト(フレームセット+コンポーネント)とフレームセット。バイククラフトではDURA-ACE DI2、ULTEGRA DI2、105 DI2の三種類から選ぶことができる。
上位モデルの性能を受け継ぎながら、優れたコストパフォーマンスを実現した魅力的なミドルグレードロードバイクのFALCN。なるしまフレンドの小畑郁と、シクロワイアード編集部の高木三千成がインプレッションを行う。
ーインプレッション
「ロードレーサーらしい走りと、バランスの良い剛性感の一台」小畑郁(なるしまフレンド)
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「ロードレーサーらしい走りと、バランスの良い剛性感の一台」小畑郁(なるしまフレンド)
第一印象としては乗りやすく、踏み心地も軽やかなバイクでした。数年前のディスクブレーキを採用したハイエンドフレームに近いペダリング感覚があります。カーボンの使い方も絶妙で、30T程度のグレードを採用しながら肉厚で剛性を調整することで、非常に良いバランスを実現しています。
ハイエンドフレームは少し前までは剛性過多の状態でしたが、時代が進むと少し軽量かつ乗りやすくした上で反応までも良好なバランスに整ったバイクが出てきました。FALCNも最新の乗り味になっていて、ペダリングの入力に対して一瞬のタメがあって軽く踏み抜けるような感覚があります。乗り手のリズムに合わせやすい特性を持った一台と言えるでしょう。
ペダリング時の踏み心地も程よい軽さがあり、登りでも軽快に回せます。これは現代のミドルグレードフレームの性能の高さを示していると言えるでしょう。実際、かつてのトップモデルと遜色のない性能を持っています。
スプリント性能について言えば、剛性感は乗りこなしやすいレベルに設定されています。スプリンターの好み次第ですが、極端な高剛性は必ずしもベストではありません。このバイクの踏みやすさは、最後までギアを踏み込んでスピードを伸ばしていけるような感覚があります。
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「剛性は乗りこなしやすいバランスに整えられている」小畑郁(なるしまフレンド)
ジオメトリー面では、明確にレーシングバイクとしての意思を感じます。ヘッドアングルは73度、フォークオフセットは45mm(XSのみ50mm)で、クイックなハンドリングとなっています。平地巡航を重視したバイクなどから乗り換えるとなると、やや慣れる必要がありそうです。
ハンドルはステム一体型ですが、エアロが求められる部分はしっかりと扁平デザインで、全体的に剛性過多ではなく、フレアの角度もマイルドで乗りやすかったです。リーチが短めなので、ショップでポジションを出してもらうのがおすすめです。軽量モデルなどでユーザーがカスタムしやすい丸型シートポストを採用しているのも面白いポイントですね。
またホイール選択もユーザーの好みの走り方に合わせられます。軽快さを活かしたいのであれば40mm前後のリムハイトで軽量なモデル、平地の高速巡航を楽しみたいのであれば50mm程度のモデルというように、どのようなホイールも違和感なく収まります。タイヤも実測30mmのタイヤを低空気圧で運用すれば快適にもなりますし、足回りのセッティングでキャラクターを変えられそうです。
結論として、このバイクは幅広いユーザーに対応できる一台だと言えます。レースやイベントへの参加を考えている人はもちろん、かつてのリムブレーキ時代のような軽快な乗り味を求める人にも満足いただけるでしょう。
「ミドルグレードとは思えない走りの軽快さが魅力」高木三千成(シクロワイアード編集部)
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「ミドルグレードとは思えない走りの軽快さが魅力」高木三千成(シクロワイアード編集部)
とにかく走りの軽快さに驚かされました。今どきのレーサーらしい加速感で、省エネな走りのつもりでも登りでスイスイ進んでいくので、ハイエンドモデルの試乗車が間違えて送られてきているのではないかと思って、確かめてしまいました(笑)。
重いギアを踏み込んだ時、軽いギアを高ケイデンスで回した時、どちらでも同じように軽やかにバイクが加速します。自分が入力したパワーから、これくらい進むだろう、という感覚をいい意味で裏切られるんです。例えるなら、E-BIKEに乗ってアシストを受けている時の感覚が近い。実際、それは言いすぎではありますが、それほど前へと出る感覚が強いんです。
確かにフレームに使われているカーボンはハイエンドのものより弾性率が低く、カーボン自体も肉厚で、持ち上げてみればフレームの重量感はあります。しかし、実際に乗ってしまうと、その肉厚な感じも重さも一切気にならなくなるんです。
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「誰でも扱いやすく、フレームの魅力に気がつける」高木三千成(シクロワイアード編集部)
この感覚は、どんなレベルのライダーが乗っても感じ取れると思いますし、登りでクルクルとペダルを回すだけでも気がつけるはずなので、一度乗って感じてみてほしいです。思い返せば、リドレーのミドルグレードではNoah Discをテストした際も似たようなフィーリングを感じたので、開発の狙いがしっかりと反映されているのだと思います。
スプリントの掛かりに関しても面白い特徴があって、重いギアでもフレームが押し出されるように加速します。力を込めるとBB周りとハンドルがそれぞれたわみ、タメがあった後にスピードが伸びていく独特のリズムがあるので、スプリンターは好みが分かれるかもしれませんね。
乗り心地の面でも、ベルギーの石畳での走行を想定して開発されているためか、シートステーが太くても快適さを備えています。オリジナルのハンドルはステム一体型でありながらしなやかな特性を持っており、手に伝わる衝撃も上手く処理してくれている感覚がありました。
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「楽しみ方の幅が広い一台」高木三千成(シクロワイアード編集部)
シートピラーは丸型なのですが、これがハイエンドモデルのRSになるとD型になってより乗り心地が良くなると思います。ただ、今の丸型でも十分な性能があります。もし更に快適性が欲しければ、よりしなやかなカーボンシートポストに換装することで対応できるでしょう。
試乗車のパーツはホイールがシマノ ULTEGRA C36で、タイヤがコンチネンタル GRANPRIX 5000が装着されていて、この印象です。このままレースに出ても十分通用するでしょう。クリテリウムなどエアロが欲しい時はC50でもいいですし、ホイール次第でどんなコースも対応できる素性の良いフレームですから、楽しみ方の幅も広いですね。
このバイクは、パワーをあまり必要とせず進んでくれるので、体重が軽めの方や女性ライダーにも扱いやすいと思います。一般ライダーにとっては、これ1台あれば自転車の様々な楽しみ方に対応できる、そんなバイクだと言えるでしょう。
リドレー FALCN
フレーム:30T / 24T HM UD カーボン
フレーム重量:946g(XS) / 956g(S) / 988g(M)
フォーク:フルカーボン
フォーク重量:421g(コラム長300m)
ハンドル/ステム:Forza Cirrus Pro Road Integrated Cockpit
ヘッドセット:1-1/4 - 1-1/2
シートポスト:27.2mm
最大タイヤ幅:34mm(700c) ※実測
サイズ:XS、S、M
価格:495,000円(税込、フレームセット)
インプレッションライダープロフィール
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小畑郁(なるしまフレンド) 小畑郁(おばたかおる)
圧倒的な知識量と優れた技術力から国内No.1メカニックとの呼び声高い、なるしまフレンドの技術チーフ。勤務の傍ら精力的に競技活動を行っており、ツール・ド・おきなわ市民210kmでは2010年に2位、2013年と2014年に8位に入った他、国内最高峰のJプロツアーではプロを相手に多数の入賞経験を持つ。2020年以来、ベルマーレレーシングチームの一員として国内レースを走る。
なるしまフレンド神宮店(レコメンドショップページ)
なるしまフレンド HP
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高木三千成(シクロワイアード編集部) 高木三千成(シクロワイアード編集部)
学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経て、さいたまディレーブでJCLに参戦し、チームを牽引。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位を獲得した。
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANO、Naoki Yasuoka
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現在のプロレースで用いられるバイクの中で、エアロダイナミクスが考慮されていないモデルは存在しない。1ワットでも走行抵抗を低減し、ライダーにアドバンテージをもたらすものとして、軽量バイクにも空気抵抗を低減するための設計は採用されるようになっている。
そんな中、ベルギーの名門ブランド、リドレーは着実な進化を遂げてきた。軽量モデルのHelium、エアロロードのNoah、エンデュランスバイクのFenixという定番の三本柱を軸に、各モデルの性能を磨き上げてきたリドレーだが、ついに新たなコンセプトを持つFALCNをリリースした。
コンセプトはヒルクライムでの扱いやすさを備えつつも、エアロダイナミクスを随所に取り入れたオールラウンドな性能。軽量性が際立ったHeliumを置き換える、新たな三本柱の一角としてラインアップに加わっている。
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優れたエアロダイナミクスを獲得するべく採用されたのは、CFD解析を経て生み出されたカムテールのチューブ。これによって前方からの風だけではなく、横風でもコントローラブルかつ低抵抗のエアロ性能と重量、剛性のバランスを整えた。
その上で風が最初に当たるフロントセクションのエアロ設計に力を入れている。まず1つ目のポイントはD型コラムを採用するF-Steererというテクノロジーでケーブル完全内装を実現。そしてヘッドチューブ周りも空気の流れを意識した造形とすることで空気抵抗の低減を狙っている。
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またフロントフォークのディフューザー設計はユニークなアイデアを具現化している。これはダウンチューブ側のフォーククラウンを薄く作ることで、フォーク内側に巻き込まれた風の流速を高め、ダウンチューブ周囲の抵抗を最小限に抑えているという。ディフューザー設計ではないフォークと比較して、50km/hで10%の空気抵抗低減に成功したとリドレーは言う。
ここまではトップグレードのFALCN RSと共通する設計だが、ミドルグレードのFALCNではコラムの上側を1-1/4(RSは1-1/8)としており、ヘッドが若干ボリュームアップ。さらに27.2mm径の丸型シートポストを採用し、シートチューブも若干丸みを帯びたデザインとなっている。
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さらにFALCNはFALCN RSと同様に2種類の弾性率の異なるカーボン素材を使用しているが、Falcn RSの60T/40T HM UDカーボンから30T/24T HM UDカーボンに変更。これにより、コストを抑えつつ上位モデルに迫る性能を発揮する。
フレーム重量はSサイズで140g増に抑えられており、高い剛性と快適性を両立している。また装着するタイヤ幅はレースシーンのトレンドでもある28Cを想定しつつ、最大34mmまでを許容するため、ワイドタイヤで快適性を高めるカスタマイズも可能だ。
リアディレイラーハンガーはスラムが提唱するUDH規格を採用。フロントディレイラーマウントは取り外し可能となっているため、フロントシングルでもすっきりとしたルックスで組み上げられる。
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販売パッケージはミズタニ自転車のバイククラフト(フレームセット+コンポーネント)とフレームセット。バイククラフトではDURA-ACE DI2、ULTEGRA DI2、105 DI2の三種類から選ぶことができる。
上位モデルの性能を受け継ぎながら、優れたコストパフォーマンスを実現した魅力的なミドルグレードロードバイクのFALCN。なるしまフレンドの小畑郁と、シクロワイアード編集部の高木三千成がインプレッションを行う。
ーインプレッション
「ロードレーサーらしい走りと、バランスの良い剛性感の一台」小畑郁(なるしまフレンド)
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第一印象としては乗りやすく、踏み心地も軽やかなバイクでした。数年前のディスクブレーキを採用したハイエンドフレームに近いペダリング感覚があります。カーボンの使い方も絶妙で、30T程度のグレードを採用しながら肉厚で剛性を調整することで、非常に良いバランスを実現しています。
ハイエンドフレームは少し前までは剛性過多の状態でしたが、時代が進むと少し軽量かつ乗りやすくした上で反応までも良好なバランスに整ったバイクが出てきました。FALCNも最新の乗り味になっていて、ペダリングの入力に対して一瞬のタメがあって軽く踏み抜けるような感覚があります。乗り手のリズムに合わせやすい特性を持った一台と言えるでしょう。
ペダリング時の踏み心地も程よい軽さがあり、登りでも軽快に回せます。これは現代のミドルグレードフレームの性能の高さを示していると言えるでしょう。実際、かつてのトップモデルと遜色のない性能を持っています。
スプリント性能について言えば、剛性感は乗りこなしやすいレベルに設定されています。スプリンターの好み次第ですが、極端な高剛性は必ずしもベストではありません。このバイクの踏みやすさは、最後までギアを踏み込んでスピードを伸ばしていけるような感覚があります。
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ジオメトリー面では、明確にレーシングバイクとしての意思を感じます。ヘッドアングルは73度、フォークオフセットは45mm(XSのみ50mm)で、クイックなハンドリングとなっています。平地巡航を重視したバイクなどから乗り換えるとなると、やや慣れる必要がありそうです。
ハンドルはステム一体型ですが、エアロが求められる部分はしっかりと扁平デザインで、全体的に剛性過多ではなく、フレアの角度もマイルドで乗りやすかったです。リーチが短めなので、ショップでポジションを出してもらうのがおすすめです。軽量モデルなどでユーザーがカスタムしやすい丸型シートポストを採用しているのも面白いポイントですね。
またホイール選択もユーザーの好みの走り方に合わせられます。軽快さを活かしたいのであれば40mm前後のリムハイトで軽量なモデル、平地の高速巡航を楽しみたいのであれば50mm程度のモデルというように、どのようなホイールも違和感なく収まります。タイヤも実測30mmのタイヤを低空気圧で運用すれば快適にもなりますし、足回りのセッティングでキャラクターを変えられそうです。
結論として、このバイクは幅広いユーザーに対応できる一台だと言えます。レースやイベントへの参加を考えている人はもちろん、かつてのリムブレーキ時代のような軽快な乗り味を求める人にも満足いただけるでしょう。
「ミドルグレードとは思えない走りの軽快さが魅力」高木三千成(シクロワイアード編集部)
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とにかく走りの軽快さに驚かされました。今どきのレーサーらしい加速感で、省エネな走りのつもりでも登りでスイスイ進んでいくので、ハイエンドモデルの試乗車が間違えて送られてきているのではないかと思って、確かめてしまいました(笑)。
重いギアを踏み込んだ時、軽いギアを高ケイデンスで回した時、どちらでも同じように軽やかにバイクが加速します。自分が入力したパワーから、これくらい進むだろう、という感覚をいい意味で裏切られるんです。例えるなら、E-BIKEに乗ってアシストを受けている時の感覚が近い。実際、それは言いすぎではありますが、それほど前へと出る感覚が強いんです。
確かにフレームに使われているカーボンはハイエンドのものより弾性率が低く、カーボン自体も肉厚で、持ち上げてみればフレームの重量感はあります。しかし、実際に乗ってしまうと、その肉厚な感じも重さも一切気にならなくなるんです。
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この感覚は、どんなレベルのライダーが乗っても感じ取れると思いますし、登りでクルクルとペダルを回すだけでも気がつけるはずなので、一度乗って感じてみてほしいです。思い返せば、リドレーのミドルグレードではNoah Discをテストした際も似たようなフィーリングを感じたので、開発の狙いがしっかりと反映されているのだと思います。
スプリントの掛かりに関しても面白い特徴があって、重いギアでもフレームが押し出されるように加速します。力を込めるとBB周りとハンドルがそれぞれたわみ、タメがあった後にスピードが伸びていく独特のリズムがあるので、スプリンターは好みが分かれるかもしれませんね。
乗り心地の面でも、ベルギーの石畳での走行を想定して開発されているためか、シートステーが太くても快適さを備えています。オリジナルのハンドルはステム一体型でありながらしなやかな特性を持っており、手に伝わる衝撃も上手く処理してくれている感覚がありました。
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シートピラーは丸型なのですが、これがハイエンドモデルのRSになるとD型になってより乗り心地が良くなると思います。ただ、今の丸型でも十分な性能があります。もし更に快適性が欲しければ、よりしなやかなカーボンシートポストに換装することで対応できるでしょう。
試乗車のパーツはホイールがシマノ ULTEGRA C36で、タイヤがコンチネンタル GRANPRIX 5000が装着されていて、この印象です。このままレースに出ても十分通用するでしょう。クリテリウムなどエアロが欲しい時はC50でもいいですし、ホイール次第でどんなコースも対応できる素性の良いフレームですから、楽しみ方の幅も広いですね。
このバイクは、パワーをあまり必要とせず進んでくれるので、体重が軽めの方や女性ライダーにも扱いやすいと思います。一般ライダーにとっては、これ1台あれば自転車の様々な楽しみ方に対応できる、そんなバイクだと言えるでしょう。
リドレー FALCN
フレーム:30T / 24T HM UD カーボン
フレーム重量:946g(XS) / 956g(S) / 988g(M)
フォーク:フルカーボン
フォーク重量:421g(コラム長300m)
ハンドル/ステム:Forza Cirrus Pro Road Integrated Cockpit
ヘッドセット:1-1/4 - 1-1/2
シートポスト:27.2mm
最大タイヤ幅:34mm(700c) ※実測
サイズ:XS、S、M
価格:495,000円(税込、フレームセット)
インプレッションライダープロフィール
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圧倒的な知識量と優れた技術力から国内No.1メカニックとの呼び声高い、なるしまフレンドの技術チーフ。勤務の傍ら精力的に競技活動を行っており、ツール・ド・おきなわ市民210kmでは2010年に2位、2013年と2014年に8位に入った他、国内最高峰のJプロツアーではプロを相手に多数の入賞経験を持つ。2020年以来、ベルマーレレーシングチームの一員として国内レースを走る。
なるしまフレンド神宮店(レコメンドショップページ)
なるしまフレンド HP
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学連で活躍したのち、那須ブラーゼンに加入しJプロツアーに参戦。東京ヴェントスを経て、さいたまディレーブでJCLに参戦し、チームを牽引。シクロクロスではC1を走り、2021年の全日本選手権では10位を獲得した。
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANO、Naoki Yasuoka
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