2024/12/17(火) - 15:35
サイパンで行われたヘル・オブ・マリアナを史上最速の走りで優勝した井上亮(Magellan Systems Japan)の参戦レポートをお届け。ツール・ド・おきなわ市民200の連覇を目指して仕上げた身体を持て余していたところでの急遽参戦は優勝&賞金1,000ドル獲得という最高の結果に。

ピックアップトラックに自転車を積み込んでスタート地点へ photo:Satoru Kato
レース当日朝は3:50頃に起床した。ところでヒマワリホテルは素晴らしいのだが、どうも近くにニワトリを飼育している場所があり、そいつらが一日じゅう「コケコッコー」と鳴き続けており、朝(というか深夜)も3時頃から鳴き始めるので、どうしても目覚めてしまい、眠りが浅い(笑)。サイパン在住の若杉さんにこの鶏について聞いたところ、野生化した鶏も多い上に、闘鶏をやるために飼ってる家もあるとのこと。
当日は晴れ予報ではあったが途中でスコールが降ってくる可能性も高いと思われ、空気圧は気持ち少し下げて前後3.9気圧ぐらいにしておいた。ボトルは950mlを1本(MAURTEN Drink mix320を2袋)と750ml(BCAA)を準備。ありがたいことに途中2ヶ所でボトル渡しをしていただけるとのことで、中味を水で2本お願いした。

空が明るくなり始め、スタートラインに向かう photo:Satoru Kato
補給食はたかだか3時間程度なのでMAURTENジェルだけでいいかとも思ったが、念のためいつもの井村屋スポーツようかんを3本持っていった(案の定食べなかったが、これがレース後に役に立つことになる)。
6:15スタートのためホテルを5:00に出発。若杉さんの運転するピックアップトラックにバイクを積載してもらい、サンブレイブの選手たちと一緒にスタート地点へ向かった。

夜明け前、ライトを灯してスタート前の準備 
セルフィーしながらスタートを待つ100km参加者
まだ真っ暗ななかスタート地点へ到着すると、出場者たちがわらわらと集まってきていた。出発まであまり時間がなく、大がほとんど出ていなかったのを懸念していたが、案の定こっちに来てから催してきた。とりあえず仮設トイレを探してみたが見当たらない。ひょっとして無いんじゃね?と不安になって大会スタッフに聞いてみたら「あっちにあるよ」とのこと。
サンキュー、と告げて向かっても見当たらない。もう少し探すと、広大な芝生の奥の方に暗闇の中2機ほどポツンと佇んでいるのを発見。紙があるのか不安だったが、紙はあったものの暗くてよく見えない。スマホで照らしながら何とか済ませて事なきを得た。

昨年1-2フィニッシュをしたさいたま佐渡サンブレイブのメンバーを先頭にスタートラインに揃った100km参加者 photo:Satoru Kato
少しアップしてからスタート地点へ。サンブレイブの鈴木道也君が「あいつツール・ド・熊野に来てたオランダのコンチの選手では」というので見てみると、身長190cmぐらいあって明らかに強そうである。マジかよと思い、とりあえずオランダをマークしておくことに決めた。
ちなみにこの選手はリック・ノベル(Rick Novel)選手で、レース後に調べたところ確かにオランダのコンチネンタルチームUniverseに所属しており、熊野にも出場していた。PCSのデータには身長195cm。体重78kgとある。
後は見たことのあるセブンイレブンのジャージや昨年のレポート記事に登場したグアムチームの黒ジャージの選手らがいるが、よくわからない。もう一つミスったのは、暗いうちのスタートなのにアイウェア(オークリーEncoder)のレンズを晴天用の透過度が低いものにしてしまったことだ。いつものお気に入りのPrizm Low lightにしときゃよかった。とりあえず明るくなるまではアイウェアをヘルメットに刺した状態で走ることに。

女子100kmにエントリーした鈴木友佳子(MIVRO)と並んでスタートする井上亮(Magellan Systems Japan) photo:Satoru Kato
カウントダウンの合図でスタート。ペダルがクルクル回りすぎてキャッチできず、あっという間に後方に。モタモタしている間にRick含め数名が少し抜け出しており、最初からマズイ展開かと思ったが、そこまでペースは上げてなかったようで問題なく追いつき、事なきを得た。

夜が明けたばかりのガラパンの街を抜けていく photo:Satoru Kato
とりあえず後半のレーダータワーまでは他の選手の様子を見ながら一緒に走ろうと思っていたので、適宜ローテを回しつつ選手達の様子を探る。Rickの後ろに入って様子を見るが、平坦もゴリゴリ踏んでいき明らかに強い。序盤は女子選手も混じるぐらいのペースで落ち着いたまま進んでいたが、15km地点ぐらいに出現した2分程度の急勾配でRickがシッティングのままゴリゴリと踏んでいく。自分もたぶん420wぐらい出ており、まあまあキツい。

左がRick。スタート直後から100kmプロ/エリートの選手を中心に先頭集団が形成される photo:Satoru Kato

ヘル・オブ・マリアナ初出場の井上亮(Magellan Systems Japan) photo:Satoru Kato
現時点では問題なく対処できるが、こいつひょっとしてこんなのを何発もジャブ程度に打てるぐらい強いのか?と軽い絶望感を感じる。この坂で集団はある程度バラけ、10〜20人ぐらいに。前に出てきて牽く選手もある程度決まってきている。

30km付近から単独で飛び出したMark John Lexer Galedo(セブンイレブン・クリック・ロードバイク・フィリピン) photo:Satoru Kato
アップダウンをこなしているうちに、セブンイレブンの赤いジャージの選手が1人抜け出していく。この選手は強そうだなとは思っていたが、この距離(まだ20km地点)で中盤〜終盤に多数の登りを残しており、Rickや私を含んだ集団から1人で逃げ切るのは厳しいだろうと考え、放置しておいた。それなりに差は開いていったが、遠くにまだ姿は捉えられるぐらいだったので問題ないだろうと思っていた。

20km付近、最初の登りを先頭で行くのは、元梅丹本舗のSeo, Joonyong photo:Satoru Kato

100km一般の分で出場した倉垣龍星(MIVRO) 
100kmプロ/エリートの集団に混じって走る鈴木友佳子(MIVRO)
空港からの小さめの丘でRickと私を含む何人かが先行する形となる。このままで差は開いていきそうだなと思っていたところ、どうもコースミスしたらしい。まじ?去年大会と同じコースをGarminに入れていて、間違ってないんだけど?と思ったけど、振り返ると交差点で誘導員も「あっちだ」とジェスチャーしてるので引き返して交差点を曲がる。自分はさらに少し進んで引き返すのが遅れてしまったので先に引き返したRickからも少し遅れてしまった。マズい。

100km一般の部の集団は男女混合 photo:Satoru Kato

カメラを向けるとポーズを取る余裕 まだコース序盤… 
サムズアップしながら行く地元チームの参加者
追いかけると幸いまだ見える距離に集団はおり、脚は少し使ったが何とか合流できた。サンブレイブの選手達が集団を抑えてくれたので助かった。ありがとう。
ちなみにレース後に確認したが、やはり公式HPで掲載されていたコースとは別のルートになっていた(笑)。しかしこれで少し詰めていたセブンイレブンの選手からはまた遅れてしまった。

井上亮らの追走集団 photo:Satoru Kato
無事合流してしばらく進むと、30km地点ぐらいから前半では長めの4〜5分の登りが出現。ガーミンでClimb Pro機能をonにしておくと、全く知らない登りでそのコースプロファイルが分かるので非常にありがたい。ここでもRickがシッティングでガシガシと踏んでいくが、どうも序盤ほどの勢いがなく苦しそうである。こりゃひょっとして暑さにやられてバテてきたかな、と期待。しめしめ。

登りでRik Nobel(ユニバースサイクリングチーム)がペースを上げて人数を絞っていく photo:Satoru Kato
登りの中盤から私が先頭に出て、無理のない範囲で軽めのギアをクルクルと回してスピードを維持していくと、終わった頃にはかなり人数が絞られて4、5人になっていた。サンブレイブも藤田君と鈴木君が2人残っており、日本勢として頼もしい。セブンイレブンの選手も目視できる距離に確認でき、差は詰まっている。

先行するMark John Lexer Galedo(セブンイレブン・クリック・ロードバイク・フィリピン)を4名が追走 photo:Satoru Kato
私は暑さでそれなり消耗しているものの、誰かが三味線を弾いてない限りはこの中ではもっとも力が残っていそう。Rickは身体がデカいので登りはキツそうであるが、まだ力は残していそう。登りでは私が前に出て、自分がキツくならない程度のペースを維持し、Rickを消耗させるしかない。

早朝の海を背に登る選手 photo:Satoru Kato
そうこうしているうちに暑さにやられて苦しそうだった藤田君が脱落して4人に。私とサンブレイブの鈴木道也君、Rickともう1人は黒いジャージの選手だ。この選手もかなり強く、レース後に話しかけてくれ、とても上手に日本語を話すなと思っていたら、「かつて梅丹本舗GDRエキップアサダに所属して、ユキヤ(新城幸也さん)やヤスハル(中島康晴さん)、シンイチ(福島晋一さん)と一緒のチームで走っていたよ」とのことだった。あとで調べてみたら韓国のトップ選手のSeo Joon Yong選手で、過去にナショナル選手権を2回優勝、ツール・ド・ランカウイやタイ、北海道のステージでも優勝していた。「もう十何年も前の話だ」と謙虚に語っていたが、そりゃ強いわ。

先行するMark John Lexer Galedo(セブンイレブン・クリック・ロードバイク・フィリピン)後方に追走集団の姿が見える photo:Satoru Kato
中盤以降それなりのペースで走っていて、登り区間ではセブンイレブンの選手との差は縮まるのだが、その後の下り区間でなどでまた差が開くようで、なかなか差を詰めきれない。まあ頑張れば明らかに追いつける範囲内なので「無理せず泳がしておいた方がええな」と思っていたわけだが、たぶんこのコースを熟知していて上手に走っているんだろうな、とも思っていた。我々はコースも初めてで、路面もスリッピーなので特に下りやコーナーではかなり慎重に走っている。先ほども浮いた砂利で少し後輪が滑る局面があった。

60km過ぎ、降り出した雨の中、井上亮(Magellan Systems Japan)と鈴木道也(さいたま佐渡サンブレイブ)が先行していた選手に追いつく photo:Satoru Kato
アップダウンを繰り返すうちにSeoはいつのまにか脱落しており、58km地点ぐらいから始まるキャピタルヒルへの最後の登り(6分程度)でついにRickが脱落。レース後に判明したことだが、どうやらDi2のトラブルでリアが変速しなくなっていたようである。登りが多いこのコースでこれは致命的。(鈴木)道也君は苦しそうであるがまだ粘っており、地力を感じさせる。

60km過ぎ、降り出した雨の中、井上亮(Magellan Systems Japan)と鈴木道也(さいたま佐渡サンブレイブ)が先行していた選手に追いつく photo:Satoru Kato
この登りでセブンイレブンの選手との距離はかなり詰まっており、このまま行けそうだったので少しペースを上げて、ちょうど頂上付近でジョインした。
下ってから北上し、いよいよレーダータワーへ向かっていく。今日は快晴だったが先ほどからスコールが降ってきて、この辺りから降りが強くなってきた。だがお陰で火照った身体を冷却してくれ気持ちがよかった。

早朝でも湿度の高い暑さ。ボトルの水をかぶる井上亮(Magellan Systems Japan) photo:Satoru Kato
セブンイレブンの選手が何か言っており、頑なに先頭へ出ることを拒否しはじめた。たぶんこちらは日本人2人だから(ワイを日本人と認識していたのか不明であるが)、「自分は逃げてたからローテしないよ」的なことを言ったんじゃないかと推察した。
「やかましいわ」と思ってジャスチャーしたが、どっちみちあと数kmでレーダー塔なので、まあどうでもいいやと、私と道也君で緩めにローテしていよいよ67km地点ぐらいからのレーダー塔の登りへ。
ガツンと上げていきたいところではあったが、繰り返すアップダウンと暑さで私もそれなりに消耗しており、とりあえず無理のないペースで上げて様子をみることに。割とすぐ、後ろから音がしないなと思って振り返ると2人とも千切れている。これならば、と淡々とペースを刻む。セブンがさっき言ってきたのは、逃げてたからもう脚がない、ということだったのか、などと考えていた。
ちなみにこのセブンイレブンの選手に関してもレース後に調べたところ、Mark John Lexer Galedo選手で、ツール・ド・フィリピンの総合優勝やナショナル選手権のロードとTTでどちらも2位に入っている。クソ強いやんけ。私より大分年上なのかと勝手にイメージしていたが、85年生まれでわたしが1歳年上だった。マジかよ(笑)。
雨はほぼ止んでいたが、路面はまだ濡れているので雑なダンシングをするとリアが滑ってしまう。基本シッティングで登りつつ、必要な際は丁寧なダンシングを心がける。ちなみに今回ギアはおきなわと同じ54-39(11S)だが、リアは練習用に使っているカセット11-30Tを入れておいた。沖縄ではいつも11-28Tだったが、少し勾配がキツそうだったので。結果これで十分対応できたが、もし30Tがなかったら少しシッティングでキツかったかもしれないので、結果的に良かった。
キツくなり過ぎない程度に抑えて頂上まで登って、レーダータワー手前で折り返す。このコースの良い点は折り返しで後続選手との差がわかることである。2番手で登ってきたのは道也君だ。苦しそうであったがやはり力がある。ここでは計測してなかったが、2分程度は差が開いていそうだった。
雨が上がって路面が少し乾いてきたとはいえ、まだ濡れていて危険なので、ここの下りはある程度差を失ってでも慎重に走りたい。直線が続く部分だけスピードを上げ、コーナーではしっかり減速してかなり慎重に下った。何とか無事に下り切って、いよいよ後は北上してスーサイドクリフを含む終盤の登りをこなすのみである。
力は残っているので普通に考えれば無理せず走るだけで差は開いていくだろうと思われたので、平坦を淡々とこなす。

スーサードクリフをバックに走る井上亮(Magellan Systems Japan) photo:Satoru Kato
いよいよ80km地点からのスーサイドクリフの登りへ。ここは途中少し下り区間なども含むが、それなりに勾配もキツく、トータル10分ちょいはある。これが終わると残りは厳しい登りはもう無い。登り始めで若杉さんたちから最後のボトル補給を受け取る。冷えているのでかけ水すると非常に気持ちがいい。

独走する井上亮(Magellan Systems Japan)がサポートスタッフから補給を受ける photo:Satoru Kato
無理のないペースで淡々と登り、頂上で折り返す。どのぐらい差が空いたかな?と思っていたら、予想外に道也君が早く登ってきた。レーダータワーからの下りと平坦でゆっくり走りすぎたかもしれない。こりゃあんまり油断したらマズイな、と気持ちを引き締める。とはいいつつも下りとその先のバードアイランドへは慎重に走る。

椰子の木並木の道を独走する井上亮(Magellan Systems Japan) photo:Satoru Kato
このバードアイランドへの道は試走のところで記したようにところどころ陥没や隆起が酷いので、そいつを避けながら走ることになるが、基本平坦なのでそれなりに出力を上げてプッシュしていく。折り返して道也君との差を確認すると3分ちょいになっていた。大丈夫と思われるが油断せずに無理のない範囲で走り、グロットへの往復をこなし、いよいよ最後の帰りの海岸線へ。
残りはバンザイクリフへの往復があるものの、ここはほぼ平坦であり、実質あと数kmは平坦しかない。日本の方角へと向けられている慰霊碑の前を折り返す。
折り返しから2分経過し、バンザイクリフへのルートの岐路に来ても道也君はまだ来てなかったので、どうやら差が4分以上は開いたらしい。

残り30kmを独走逃げ切りでフィニッシュする井上亮(Magellan Systems Japan) photo:Satoru Kato
もう後は3kmもない平坦を走るのみで大丈夫だろうが、今年最後のレースなので最後まで頑張っておくか! と力は緩めないようにして走る。ゴールが近づいて歓声が聞こえる。最後はガッツポーズでゴールした。
キツかったが、無事トラブルなく戻って来れて、思い描いていた展開で勝てたので嬉しかった。賞金がもらえるはずなので、今回の遠征が家計を圧迫することも免れ、ホッとした(笑)。
ゴールすると地元選手に写真を求められたり、インタビューを何件か受けたりで、私のプアな英語で答えた。厳しい受験英語を潜り抜けたはずであるが、英会話能力はまるでなくて情けない。いや、そもそも日本語も喋れてないんじゃないか?と思うこともありますが。

優勝した井上亮と鈴木道也が握手 photo:Satoru Kato
しばらくして道也君がゴールして、握手。序盤からかなり苦しそうにしていたが、あそこからこの粘りの走りは素晴らしい。3位にオランダのRick。前述のようにこの後少し話して、ツール・ド・熊野で日本を走ったことや、メカトラで変速出来なくなったことを聞いた。メカトラがなかったらどうなっていたのだろうか? かなりヤバかったのは間違いないだろう。

100km上位3名がフィニッシュ後の談笑「メカトラで変速できなかった」と言うRik Nobel(写真右) photo:Satoru Kato

梅丹本舗GDRエキップアサダで走ったというSeo Joon yong(韓国)
後続も続々とゴール。前年度優勝の藤田君はかなり暑さに苦しんだ模様だった。重田君はラストで2人でのゴールスプリントとなり、まるで優勝を争うシーンのようだった。

昨年覇者の藤田涼平(さいたま佐渡サンブレイブ)は6位でフィニッシュ 
重田倫一郎が最後のスプリントで競り合う

100km一般の部 倉垣龍星(MIVRO)がトップでフィニッシュ photo:Satoru Kato

女子100km 優勝は韓国のインフルエンサーKim Miso 
女子100km 鈴木友佳子(MIVRO)が2位
しばらくして鈴木友佳子さん(MIVRO)が女子2位でゴールした。どうも補給が受け取れず、脱水とエネルギー切れになってしまったようだった。塩が欲しいと言ってたので、こんなものでよければと、私が持参していたスポーツようかんを差し出したら受け取ってくれたのだが、私が背中のポケットに入れていたあんなものをレディに渡してしまって良かったのだろうか?と今でも自問自答している(たぶんダメ)。

フィニッシュ後、井上亮から補給食を貰う鈴木友佳子(MIVRO) photo:Satoru Kato

100kmプロ/エリートに出場した4名と、サポートしたマリアナ政府観光局のお2人、現地スタッフの若杉さんで記念撮影 photo:Satoru Kato
さてレースが終わっても、まだ9時台の朝である。表彰式のパーティは16時スタートなので、まだかなり時間がある。とりあえず自走でホテルまで帰ることにした。昼に現地のマクドでも食いに行ってみようかとも思っていたが、表彰式のパーティは豪華なビュッフェらしく、ついに本当のオフシーズンを迎えて食欲を解放することができる(いや、もう何度かしてたけど)。せっかくなのでヒマワリ1Fのスーパーで購入して軽く食べる程度にしておいた。ちなみにここのスーパーはかなり気に入っている。
今シーズン1番の目標だったツール・ド・おきなわは無くなってしまったが、少し前には全く頭になかったサイパンまで来ることになり、満足できる内容で無事レースを終えることができて良かった、と感じながら表彰パーティまでの間しばし休んだ。
アワードパーティは噂通り豪華で美味しいビュッフェ式ランチ付きで、たくさんの種目の表彰が延々と続く。勝者として表彰され、賞金1,000$もいただいた。ダンスコンテストでは無理やり壇上に上がらされて、ダンスも披露。素晴らしい雰囲気のなか楽しいひとときを過ごすことができた。来年も招待選手となって、またヘル・オブ・マリアナに戻ってきたい。でもその前にツール・ド・おきなわに勝つことができれば最高なのだが。

夕方から始まったアフターパーティーではポリネシアンダンスが披露された photo:Satoru Kato

100kmプロ/エリート上位3名がお互いを讃える握手 photo:Satoru Kato

優勝した井上亮(右)、2位の鈴木道也が賞金を手にした photo:Satoru Kato

井上亮も勝者として壇上に上がり、ダンスコンテストに参加 photo:Satoru Kato
text:井上亮(Magellan Systems Japan)

レース当日朝は3:50頃に起床した。ところでヒマワリホテルは素晴らしいのだが、どうも近くにニワトリを飼育している場所があり、そいつらが一日じゅう「コケコッコー」と鳴き続けており、朝(というか深夜)も3時頃から鳴き始めるので、どうしても目覚めてしまい、眠りが浅い(笑)。サイパン在住の若杉さんにこの鶏について聞いたところ、野生化した鶏も多い上に、闘鶏をやるために飼ってる家もあるとのこと。
当日は晴れ予報ではあったが途中でスコールが降ってくる可能性も高いと思われ、空気圧は気持ち少し下げて前後3.9気圧ぐらいにしておいた。ボトルは950mlを1本(MAURTEN Drink mix320を2袋)と750ml(BCAA)を準備。ありがたいことに途中2ヶ所でボトル渡しをしていただけるとのことで、中味を水で2本お願いした。

補給食はたかだか3時間程度なのでMAURTENジェルだけでいいかとも思ったが、念のためいつもの井村屋スポーツようかんを3本持っていった(案の定食べなかったが、これがレース後に役に立つことになる)。
6:15スタートのためホテルを5:00に出発。若杉さんの運転するピックアップトラックにバイクを積載してもらい、サンブレイブの選手たちと一緒にスタート地点へ向かった。


まだ真っ暗ななかスタート地点へ到着すると、出場者たちがわらわらと集まってきていた。出発まであまり時間がなく、大がほとんど出ていなかったのを懸念していたが、案の定こっちに来てから催してきた。とりあえず仮設トイレを探してみたが見当たらない。ひょっとして無いんじゃね?と不安になって大会スタッフに聞いてみたら「あっちにあるよ」とのこと。
サンキュー、と告げて向かっても見当たらない。もう少し探すと、広大な芝生の奥の方に暗闇の中2機ほどポツンと佇んでいるのを発見。紙があるのか不安だったが、紙はあったものの暗くてよく見えない。スマホで照らしながら何とか済ませて事なきを得た。

少しアップしてからスタート地点へ。サンブレイブの鈴木道也君が「あいつツール・ド・熊野に来てたオランダのコンチの選手では」というので見てみると、身長190cmぐらいあって明らかに強そうである。マジかよと思い、とりあえずオランダをマークしておくことに決めた。
ちなみにこの選手はリック・ノベル(Rick Novel)選手で、レース後に調べたところ確かにオランダのコンチネンタルチームUniverseに所属しており、熊野にも出場していた。PCSのデータには身長195cm。体重78kgとある。
後は見たことのあるセブンイレブンのジャージや昨年のレポート記事に登場したグアムチームの黒ジャージの選手らがいるが、よくわからない。もう一つミスったのは、暗いうちのスタートなのにアイウェア(オークリーEncoder)のレンズを晴天用の透過度が低いものにしてしまったことだ。いつものお気に入りのPrizm Low lightにしときゃよかった。とりあえず明るくなるまではアイウェアをヘルメットに刺した状態で走ることに。

カウントダウンの合図でスタート。ペダルがクルクル回りすぎてキャッチできず、あっという間に後方に。モタモタしている間にRick含め数名が少し抜け出しており、最初からマズイ展開かと思ったが、そこまでペースは上げてなかったようで問題なく追いつき、事なきを得た。

とりあえず後半のレーダータワーまでは他の選手の様子を見ながら一緒に走ろうと思っていたので、適宜ローテを回しつつ選手達の様子を探る。Rickの後ろに入って様子を見るが、平坦もゴリゴリ踏んでいき明らかに強い。序盤は女子選手も混じるぐらいのペースで落ち着いたまま進んでいたが、15km地点ぐらいに出現した2分程度の急勾配でRickがシッティングのままゴリゴリと踏んでいく。自分もたぶん420wぐらい出ており、まあまあキツい。


現時点では問題なく対処できるが、こいつひょっとしてこんなのを何発もジャブ程度に打てるぐらい強いのか?と軽い絶望感を感じる。この坂で集団はある程度バラけ、10〜20人ぐらいに。前に出てきて牽く選手もある程度決まってきている。

アップダウンをこなしているうちに、セブンイレブンの赤いジャージの選手が1人抜け出していく。この選手は強そうだなとは思っていたが、この距離(まだ20km地点)で中盤〜終盤に多数の登りを残しており、Rickや私を含んだ集団から1人で逃げ切るのは厳しいだろうと考え、放置しておいた。それなりに差は開いていったが、遠くにまだ姿は捉えられるぐらいだったので問題ないだろうと思っていた。



空港からの小さめの丘でRickと私を含む何人かが先行する形となる。このままで差は開いていきそうだなと思っていたところ、どうもコースミスしたらしい。まじ?去年大会と同じコースをGarminに入れていて、間違ってないんだけど?と思ったけど、振り返ると交差点で誘導員も「あっちだ」とジェスチャーしてるので引き返して交差点を曲がる。自分はさらに少し進んで引き返すのが遅れてしまったので先に引き返したRickからも少し遅れてしまった。マズい。



追いかけると幸いまだ見える距離に集団はおり、脚は少し使ったが何とか合流できた。サンブレイブの選手達が集団を抑えてくれたので助かった。ありがとう。
ちなみにレース後に確認したが、やはり公式HPで掲載されていたコースとは別のルートになっていた(笑)。しかしこれで少し詰めていたセブンイレブンの選手からはまた遅れてしまった。

無事合流してしばらく進むと、30km地点ぐらいから前半では長めの4〜5分の登りが出現。ガーミンでClimb Pro機能をonにしておくと、全く知らない登りでそのコースプロファイルが分かるので非常にありがたい。ここでもRickがシッティングでガシガシと踏んでいくが、どうも序盤ほどの勢いがなく苦しそうである。こりゃひょっとして暑さにやられてバテてきたかな、と期待。しめしめ。

登りの中盤から私が先頭に出て、無理のない範囲で軽めのギアをクルクルと回してスピードを維持していくと、終わった頃にはかなり人数が絞られて4、5人になっていた。サンブレイブも藤田君と鈴木君が2人残っており、日本勢として頼もしい。セブンイレブンの選手も目視できる距離に確認でき、差は詰まっている。

私は暑さでそれなり消耗しているものの、誰かが三味線を弾いてない限りはこの中ではもっとも力が残っていそう。Rickは身体がデカいので登りはキツそうであるが、まだ力は残していそう。登りでは私が前に出て、自分がキツくならない程度のペースを維持し、Rickを消耗させるしかない。

そうこうしているうちに暑さにやられて苦しそうだった藤田君が脱落して4人に。私とサンブレイブの鈴木道也君、Rickともう1人は黒いジャージの選手だ。この選手もかなり強く、レース後に話しかけてくれ、とても上手に日本語を話すなと思っていたら、「かつて梅丹本舗GDRエキップアサダに所属して、ユキヤ(新城幸也さん)やヤスハル(中島康晴さん)、シンイチ(福島晋一さん)と一緒のチームで走っていたよ」とのことだった。あとで調べてみたら韓国のトップ選手のSeo Joon Yong選手で、過去にナショナル選手権を2回優勝、ツール・ド・ランカウイやタイ、北海道のステージでも優勝していた。「もう十何年も前の話だ」と謙虚に語っていたが、そりゃ強いわ。

中盤以降それなりのペースで走っていて、登り区間ではセブンイレブンの選手との差は縮まるのだが、その後の下り区間でなどでまた差が開くようで、なかなか差を詰めきれない。まあ頑張れば明らかに追いつける範囲内なので「無理せず泳がしておいた方がええな」と思っていたわけだが、たぶんこのコースを熟知していて上手に走っているんだろうな、とも思っていた。我々はコースも初めてで、路面もスリッピーなので特に下りやコーナーではかなり慎重に走っている。先ほども浮いた砂利で少し後輪が滑る局面があった。

アップダウンを繰り返すうちにSeoはいつのまにか脱落しており、58km地点ぐらいから始まるキャピタルヒルへの最後の登り(6分程度)でついにRickが脱落。レース後に判明したことだが、どうやらDi2のトラブルでリアが変速しなくなっていたようである。登りが多いこのコースでこれは致命的。(鈴木)道也君は苦しそうであるがまだ粘っており、地力を感じさせる。

この登りでセブンイレブンの選手との距離はかなり詰まっており、このまま行けそうだったので少しペースを上げて、ちょうど頂上付近でジョインした。
下ってから北上し、いよいよレーダータワーへ向かっていく。今日は快晴だったが先ほどからスコールが降ってきて、この辺りから降りが強くなってきた。だがお陰で火照った身体を冷却してくれ気持ちがよかった。

セブンイレブンの選手が何か言っており、頑なに先頭へ出ることを拒否しはじめた。たぶんこちらは日本人2人だから(ワイを日本人と認識していたのか不明であるが)、「自分は逃げてたからローテしないよ」的なことを言ったんじゃないかと推察した。
「やかましいわ」と思ってジャスチャーしたが、どっちみちあと数kmでレーダー塔なので、まあどうでもいいやと、私と道也君で緩めにローテしていよいよ67km地点ぐらいからのレーダー塔の登りへ。
ガツンと上げていきたいところではあったが、繰り返すアップダウンと暑さで私もそれなりに消耗しており、とりあえず無理のないペースで上げて様子をみることに。割とすぐ、後ろから音がしないなと思って振り返ると2人とも千切れている。これならば、と淡々とペースを刻む。セブンがさっき言ってきたのは、逃げてたからもう脚がない、ということだったのか、などと考えていた。
ちなみにこのセブンイレブンの選手に関してもレース後に調べたところ、Mark John Lexer Galedo選手で、ツール・ド・フィリピンの総合優勝やナショナル選手権のロードとTTでどちらも2位に入っている。クソ強いやんけ。私より大分年上なのかと勝手にイメージしていたが、85年生まれでわたしが1歳年上だった。マジかよ(笑)。
雨はほぼ止んでいたが、路面はまだ濡れているので雑なダンシングをするとリアが滑ってしまう。基本シッティングで登りつつ、必要な際は丁寧なダンシングを心がける。ちなみに今回ギアはおきなわと同じ54-39(11S)だが、リアは練習用に使っているカセット11-30Tを入れておいた。沖縄ではいつも11-28Tだったが、少し勾配がキツそうだったので。結果これで十分対応できたが、もし30Tがなかったら少しシッティングでキツかったかもしれないので、結果的に良かった。
キツくなり過ぎない程度に抑えて頂上まで登って、レーダータワー手前で折り返す。このコースの良い点は折り返しで後続選手との差がわかることである。2番手で登ってきたのは道也君だ。苦しそうであったがやはり力がある。ここでは計測してなかったが、2分程度は差が開いていそうだった。
雨が上がって路面が少し乾いてきたとはいえ、まだ濡れていて危険なので、ここの下りはある程度差を失ってでも慎重に走りたい。直線が続く部分だけスピードを上げ、コーナーではしっかり減速してかなり慎重に下った。何とか無事に下り切って、いよいよ後は北上してスーサイドクリフを含む終盤の登りをこなすのみである。
力は残っているので普通に考えれば無理せず走るだけで差は開いていくだろうと思われたので、平坦を淡々とこなす。

いよいよ80km地点からのスーサイドクリフの登りへ。ここは途中少し下り区間なども含むが、それなりに勾配もキツく、トータル10分ちょいはある。これが終わると残りは厳しい登りはもう無い。登り始めで若杉さんたちから最後のボトル補給を受け取る。冷えているのでかけ水すると非常に気持ちがいい。

無理のないペースで淡々と登り、頂上で折り返す。どのぐらい差が空いたかな?と思っていたら、予想外に道也君が早く登ってきた。レーダータワーからの下りと平坦でゆっくり走りすぎたかもしれない。こりゃあんまり油断したらマズイな、と気持ちを引き締める。とはいいつつも下りとその先のバードアイランドへは慎重に走る。

このバードアイランドへの道は試走のところで記したようにところどころ陥没や隆起が酷いので、そいつを避けながら走ることになるが、基本平坦なのでそれなりに出力を上げてプッシュしていく。折り返して道也君との差を確認すると3分ちょいになっていた。大丈夫と思われるが油断せずに無理のない範囲で走り、グロットへの往復をこなし、いよいよ最後の帰りの海岸線へ。
残りはバンザイクリフへの往復があるものの、ここはほぼ平坦であり、実質あと数kmは平坦しかない。日本の方角へと向けられている慰霊碑の前を折り返す。
折り返しから2分経過し、バンザイクリフへのルートの岐路に来ても道也君はまだ来てなかったので、どうやら差が4分以上は開いたらしい。

もう後は3kmもない平坦を走るのみで大丈夫だろうが、今年最後のレースなので最後まで頑張っておくか! と力は緩めないようにして走る。ゴールが近づいて歓声が聞こえる。最後はガッツポーズでゴールした。
キツかったが、無事トラブルなく戻って来れて、思い描いていた展開で勝てたので嬉しかった。賞金がもらえるはずなので、今回の遠征が家計を圧迫することも免れ、ホッとした(笑)。
ゴールすると地元選手に写真を求められたり、インタビューを何件か受けたりで、私のプアな英語で答えた。厳しい受験英語を潜り抜けたはずであるが、英会話能力はまるでなくて情けない。いや、そもそも日本語も喋れてないんじゃないか?と思うこともありますが。

しばらくして道也君がゴールして、握手。序盤からかなり苦しそうにしていたが、あそこからこの粘りの走りは素晴らしい。3位にオランダのRick。前述のようにこの後少し話して、ツール・ド・熊野で日本を走ったことや、メカトラで変速出来なくなったことを聞いた。メカトラがなかったらどうなっていたのだろうか? かなりヤバかったのは間違いないだろう。


後続も続々とゴール。前年度優勝の藤田君はかなり暑さに苦しんだ模様だった。重田君はラストで2人でのゴールスプリントとなり、まるで優勝を争うシーンのようだった。





しばらくして鈴木友佳子さん(MIVRO)が女子2位でゴールした。どうも補給が受け取れず、脱水とエネルギー切れになってしまったようだった。塩が欲しいと言ってたので、こんなものでよければと、私が持参していたスポーツようかんを差し出したら受け取ってくれたのだが、私が背中のポケットに入れていたあんなものをレディに渡してしまって良かったのだろうか?と今でも自問自答している(たぶんダメ)。


さてレースが終わっても、まだ9時台の朝である。表彰式のパーティは16時スタートなので、まだかなり時間がある。とりあえず自走でホテルまで帰ることにした。昼に現地のマクドでも食いに行ってみようかとも思っていたが、表彰式のパーティは豪華なビュッフェらしく、ついに本当のオフシーズンを迎えて食欲を解放することができる(いや、もう何度かしてたけど)。せっかくなのでヒマワリ1Fのスーパーで購入して軽く食べる程度にしておいた。ちなみにここのスーパーはかなり気に入っている。
今シーズン1番の目標だったツール・ド・おきなわは無くなってしまったが、少し前には全く頭になかったサイパンまで来ることになり、満足できる内容で無事レースを終えることができて良かった、と感じながら表彰パーティまでの間しばし休んだ。
アワードパーティは噂通り豪華で美味しいビュッフェ式ランチ付きで、たくさんの種目の表彰が延々と続く。勝者として表彰され、賞金1,000$もいただいた。ダンスコンテストでは無理やり壇上に上がらされて、ダンスも披露。素晴らしい雰囲気のなか楽しいひとときを過ごすことができた。来年も招待選手となって、またヘル・オブ・マリアナに戻ってきたい。でもその前にツール・ド・おきなわに勝つことができれば最高なのだが。




text:井上亮(Magellan Systems Japan)
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