2024/11/30(土) - 16:30
ロード、グラベル、マウンテンバイクのイベントが同時に開催されたSPECIALIZED DAY 2024。充実したライドイベントやエンデューロレースや豪華なケータリングで、参加したサイクリストが皆笑顔となった1日をレポート。
ライドを楽しむだけではなく、会場の雰囲気が穏やかで、走り終わっても余韻に浸りたいという気持ちにさせてくれるイベントは珍しい存在かもしれない。今回取材でお邪魔したSPECIALIZED DAY 2024は、お世辞抜きでそういうイベントだった。
概要を説明すると、SPECIALIZED DAYはロードとグラベル、マウンテンバイク全てを同時開催する自転車フェスのような豪華なイベント。ロードは会場から飛び出して80kmのサイクリングを楽しみ、グラベルとマウンテンバイクは会場内でエンデューロ(時間耐久)を行うというものだ。
会場は千葉県のYOU PORT木更津。ところどころにキャンピングカーが停車していて、斜面にはカプセルグランピング用の部屋が立ち並び、園路は未舗装ながらしっかりと転圧されていて、電動カートで施設利用者は移動する。さながら海外とか沖縄のリゾートヴィラのよう。そんな場所を使いSPECIALIZED DAYは開催された。
この日会場に最も早く集合したのは80kmの旅路に飛び出すロードサイクリングの参加者と、メイン会場で行われるキッズレースとグラベルレースの参加者。めいめいに身支度を整える参加者だが、ロードとグラベルどちらの自転車も用意されているのは意外と新鮮だ。
ロード参加者はスーダル・クイックステップのチームキットに身を包んだり、TARMAC SL8やAETHOS、ROUBAIXユーザーだったりスペシャライズドのイベントらしさを感じる方は多め。それでも他のバイクブランドもいるし、E-BIKEの方もいるし、誰でもウェルカム。グラベル系はもっと他社ブランドは多めだし、スペシャライズドのバイクでなければならないという圧は感じない。
YOU PORT木更津に駆けつけたロードサイクリストは非常に多く、6つのグループと自由に走るフリーライド組に分かれて、房総半島を駆け巡る。グループには竹谷賢二さんやMihoCさんらスペシャライズドライダーたちがアテンダントとして参加。彼らは皆グループのメンバーとにこやかに談笑しており、これから出発するライドが楽しいものになるだろうなという期待を抱かせてくれる。
そしていよいよ開会式とライドのブリーフィングが終わり、グループごとの記念撮影を終えてからライドへと飛び出していく。今回はライドには帯同せず会場イベントを見て回ることにしたため、ライド参加者とはしばしのお別れ。撮影がてら「いってらっしゃーい」と声をかけると、「いってきまーす」と返してくれたり、カメラに向かってポーズを決めてくれる方もいて、アットホームな感じがして気分は上々。
ロードライドの各グループが出発している傍らで、特設グラベル&オフロードコースでキッズレースもスタート。子どもたちの目は真剣そのものだし、一生懸命オフロードコースを走る姿は自分の子どもでなくても応援したくなるもの。親御さんはその勇姿を残すためにカメラを構えていたり、優しく声をかけていたり雰囲気もかなり良い。
コースはフラットなグラベルやダートがメインだが、適度な起伏もあり、バランスの取れた設計になっている。一部、湿った泥が覆う区間もあったが、参加者たちは的確なラインを選んで走っており、安定した走りを見せていた。
キッズレースが完了する頃にSPECIALZED DAYは本格的に始動する。メイン会場のスペシャライズドブースではグラベルバイクやマウンテンバイクの試乗や、インストラクターの板垣奏男さんとスペシャライズドライダーの金子匠さんによるサスペンション設定相談会がスタートする。
チラリと顔を出したら、家に帰ってから実践できる実用的な内容で最初から最後まで通して聞けば、サスの初期設定には困ることはなさそう。マウンテンバイクレースがあるイベントでこのような初歩的な講座があると、初心者でも参加しやすくなるはず。
グラベルレースはありそうで意外と少ない、2時間耐久エンデューロレースとして開催される。本格的なバイクに乗る方ももちろんいれば、ミニベロで参加する方や、サイクルウェアではなくカジュアルなウェアで参加する方もスタートラインに集まった。ロードのエンデューロと同じように2時間をきっちりと一人で走り切りたい方向けのソロカテゴリーと、チームメンバーと交代しながらワイワイ楽しみたいチームカテゴリーの参加者が一斉にスタートした。
最初の一周はスペシャライズドライダーの辻浦圭一さんと、アンバウンドグラベルにも積極的に参加するRX BIKEの高岡亮寛さんを先頭にインスタレーションラップとして、ゆっくりとコースを周ってくる。大勢のグラベルライダーが一塊となって走る光景は圧巻だ。
コース設定も非常に絶妙で、YOUPORT木更津のオートキャンプ園路を使った転圧されたグラベルを主体とし、砂利が敷かれたアップダウンや草地が組み合わされており、イージーすぎない設定。コース幅も非常に広く、安心して走れる初心者フレンドリーなコースだ。
ソロで走る選手は淡々とペースを刻み、チーム参加の方はピットエリアで仲間の声援を受けながら力強くペダルを踏み込んでいる。ピットからの応援は本当に心強くなるから、エンデューロは初心者が最初に参加するイベントにうってつけ。コースも難しくないので、SPECIALZED DAYはグラベルに挑戦しているエントリーの方にはおすすめ。
グラベルレースが始まったタイミングでメイン会場ではフードエリアが開店。これが非常に豪華で、数多くのブースが出店しており、どれも無料で振る舞われるという太っ腹ぶり。どのようなものが振る舞われたか、ひとまず列挙してみる。
「香川県さぬき麺業の手打ちうどん」や「農園貞太郎の自然解凍握り寿司」、「君津のともちゃんラーメンと餃子」、「愛媛のみかん」、「北海道自然農園のりんごやブルーベリー」、「農家レストランCafeやさまるのパンナコッタとハンドドリップコーヒー」、「金精軒の信玄餅」、「平田牧場の肉巻きおにぎり」。全てを食べようとすると満腹間違いなし。
この大盤振る舞いはYOUPORT木更津のオーナーであり、今回のイベントを支えた株式会社裕源の提供。このサポートは裕源の社長が無類の自転車好きだった縁で実現したという。
その裕源も天然酵母無添加あんぱん、台湾ソーセージ、台湾バナナ、パイナップルケーキを振る舞っていた。ちなみにバナナは無数に用意されており、一房丸ごとプレゼント。しかも一房もスーパーで売っているような5本で一房ではなく、10本で一房というフルサイズ。結局イベントが終わる頃まで売り切れなかったので、ふた房でも持ち帰りOK。なんという大盤振る舞いなのかと、参加者全員が驚嘆したことだろう。
自然解凍にぎり寿司はいつの間にか売り切れ。どうやらロードライドのエイドでも振る舞われていたようで、帰ってきた参加者の方に聞くとかなり美味しかった模様。スペシャライズドライダーであり、日本最高峰のツーリングカーレース”SUPER GT”に参戦するジョアオ・パウロ・デ・オリベイラさんも気に入ったみたいで、みんなからの評価はかなり高め。機会があれば積極的に食べてみてもらいたい。
レースを走り切ったキッズたちが美味しそうにご飯を食べていたり、これからレースのマウンテンバイカーたちが会場内のテーブルでご飯をいただくため、会場のハッピーな空気がひとまとまりになっているのもかなりいい雰囲気を作り出していた。
会場横のスペシャライズドパークというプレイエリアで遊ぶキッズたちの笑顔も印象的なものだった。スペシャライズドのハンドルとステムがセットされた遊具や、木製パンプトラックを楽しむことができ、とてもいい笑顔で遊んでいたのが、こちらも優しい気持ちになった。
スペシャライズドパークで気になったのはコーンホールというアメリカ発祥のパーティーゲーム。手のひらサイズの座布団のような形の球を離れた場所の穴に投げ入れるという遊びなのだが、これがとても難しい。まずミニ座布団を投げたこともないので、狙った位置へのコントロールと距離感の調整がうまくいかなくて、かなりチャレンジングな遊びだ。
レースを見たり、ご飯を食べたり、子どもたちと一緒になって遊んだりしていると、時間はあっという間に過ぎていき、マウンテンバイクのエンデューロが午後イチからスタートした。コースの多くはグラベルレースと共通しながらも、常設のBMXコースや、斜面の脇を一気に登ったり、駆け降りたりするセクションが追加され、グラベルよりも3Dの動きを楽しめるクロスカントリーらしいコースに仕立てられていた。
このコースをガチガチに攻める方もいれば、マイペースで動きを楽しむ方もいたり、参加者は十人十色。E-BIKEカテゴリーも用意されていたので、電動アシストを活かしながらイベントを楽しむ方も。
午後になるとロードライドの方もちらほらと帰ってきて、メイン会場の活気がさらに高まっていく。彼らもケータリングをフィニッシュエイドとして楽しんでおり、中にはこんな至れり尽くせりのイベントは他にないと驚く方も。ライド自体も房総半島らしい起伏に富んだコースを自由に楽しんだようで、その顔には満足感が見てとれた。
ロードライドは見知った仲間が集まったグループもあれば、今回が初めましての方と一緒に走ったグループもあったよう。竹谷賢二さんのグループはフィニッシュ後にみんなでハイタッチをするくらい仲が深まっており、自転車を通じて見知らぬ者同士が打ち解けあっていく様子を見るのは何とも微笑ましい。
そして辻浦圭一さんのグラベルスキル講座、竹谷賢二さんと風花さんのペダリング講座、そしてスペシャライズドの3大ロードバイク「TARMAC」「AETHOS」「ROUBAIX」をテーマにしたトークショーなど、多彩なプログラムが用意されていた。SPECIALIZED DAYはライドイベントだけではなく、会場にいるだけで楽しめるコンテンツが充実しており、どのカテゴリーの参加者も飽きさせない。
会場の裏手ではナイトレースタイムアタックも開かれた。ガチガチのガチでタイムアタックを行うのだが、ミニ版のコーンホールで座布団を穴に入れてからスタートし、ルマン式で自転車に跨ってからが本番という遊び心に富んだ内容。
ミニオフロードコースは左右にバイクを切り返すようなテクニカルな設定で、タイムを出すのは中々難しいよう。キッズも大人も真剣にでも楽しく挑めるタイムアタックは非常に盛り上がりを見せた。
この頃にはすっかりと陽は落ちて、夜のイベントに様変わり。気温も下がってき、お腹もすくタイミングを見計らって豚汁と豚丼の提供が開始。これは本当にありがたかった。一日中自転車で遊び尽くした体に滋味深いお味が体に染み渡る。繰り返しになるが、このイベントの手厚いおもてなしは特筆すべきで、まるでVIPになったかのような体験ができる。
イベントのクライマックスを告げるのは表彰式と抽選大会。最後の最後の大目玉商品は、スペシャライズドのタイヤ1年分!具体的にはタイヤ4セット(8本)という大盤振る舞い。なんとモデルも当選者が選ぶことができ、かつロードやグラベル、マウンテンバイクタイヤを混ぜてもOK。そんなサプライズに参加者たちの目の色が変わったのは言うまでも無い。
イベントの最後はスペシャライズド・ジャパンの代表(木戸脇 美輝成さん)の言葉で締めくくられた。その中で最も印象に残ったのは「The Rider is the Boss」というスペシャライズドの行動指針だった。この言葉に込められた想いは、創業者のマイク・シンヤードや各エリアの社長が偉いのではなく、自転車を楽しむユーザーの気持ちに応えるためにスペシャライズドは行動するものだという。まさに、ライドイベントだけではなく、ケータリングまで至れり尽くせりで、参加者全員が笑顔となったのは、スペシャライズドの気持ちの表現だったのだろう。
朝8時から始まった1日がついに終わりを迎える。YOU PORT木更津には10時間ほど滞在したのだが、感覚的にはあっという間。それほどイベントが充実していたという証左だと思う。スペシャライズドが様々なイベントをサポートし、草の根のようなイベントとしてRACE DAYを開催してきたことが、ここで実を結んだ。来年もあるならば、ぜひ参加してもらいたいと思うようなイベントだった。
スペシャライズド・ジャパン マーケティングマネージャー板垣響さんに聞くSPECIALIZED DAY
スペシャライズド・ジャパンは今回のイベントを開催する前にもSPECIALIZED RACE DAYとして幾つかのイベントを開いてきた。その流れから、SPECIALIZED DAYへと繋がった背景と今回のイベントにかける思いを、スペシャライズド・ジャパンの板垣響さんに伺った。
板垣「東北や大阪で開催してきたSPECIALIZED RACE DAYは、今回よりもローカルに根付いたイベントで、地元のスペシャライズドストアをブランドがサポートという形で開いていたものでした。それに対して今回のSPECIALIZED DAYは、スペシャライズド・ジャパンが主催としてロード、グラベル、マウンテンバイクが一度に楽しめるイベントを作ろうという想いからスタートしたイベントでした。」
そして、ブランドが主導してイベントを作ることにも板垣さんは情熱を持っていた。
板垣「日本の自転車文化はまだまだ大きくなる可能性があると思っていて、それを担うのはブランドの使命だと感じています。実際にスペシャライズドは「革新と熱狂でライダーの生活を向上させる」というビジョンがあり、日常から離れた特別感のあるイベントを企画し、自転車を楽しめる機会を皆様に届けられたらと思い、今回のイベントが立ち上がりました。
ショップ単位やコミュニティライドの規模を超えたイベントで大勢の人に集まってもらえると、その場にいる人たち同士が仲良くなったり、イベントの雰囲気を共有できる仲間になってもらいたいと思っています。それは参加者同士だけではなく、アンバサダーの皆さんとも仲良くなることで思い出に残る1日にしてもらいたいと思っています。」
実際にロードライドは初対面の方が集まっているグループもあり、新しい親交ができていたり、グループにジョインするアンバサダーの人たちとの会話に華が咲いていたりと、スタート前からライダー同士の繋がりが結ばれていた。そして、フィニッシュ後はフードエリアで一つのテーブルを囲んで、思い出を語り合っていた姿も見てとれた。
板垣「オフロードのイベントもエンデューロにしたのはチームで参加できるからでした。チームで参加することで応援しあうことや、ピットで仲間を待つのも楽しいひと時になります。コースもビギナーが走り切れるように設定したので、仲間と一緒にオフロードへの一歩目にチャレンジできる瞬間になれば良いなと思っています。」
本格的なレースイベントはENSなどのスポンサードを通じて、ライダーたちに機会を提供するサポートを行なっている。今回はあくまでも仲間と一緒に肩の力を抜いて足を運べるイベントかつ、様々なジャンルのライドやコンテンツを開催したかったのだという。
板垣「レースやライドの体験だけではないという点は大事にしたいところでした。裕源さんの提供によるフードサービスももちろんそうですし、試乗体験や木製パンプトラックやコーンホールという遊び、ステージイベントもあるので、自分のイベントが終わった後も楽しんでもらいたいという気持ちがありました。
スペシャライズドはサイクリストに自転車を続けてもらいたいという気持ちがあります。だからこそどんなブランドの自転車に乗っていても、どのようなカテゴリーであっても、どんなレベルであっても、それらの垣根を超えて一緒にサイクリングを楽しんでもらいたいと思っています。実際に笑顔の参加者も多く見られたので、来年以降も続けられたら良いなと思います。」
photo: Jinya Nishiwaki, Nobuhiko Tanebe
photo&text: Gakuto Fujiwara
ライドを楽しむだけではなく、会場の雰囲気が穏やかで、走り終わっても余韻に浸りたいという気持ちにさせてくれるイベントは珍しい存在かもしれない。今回取材でお邪魔したSPECIALIZED DAY 2024は、お世辞抜きでそういうイベントだった。
概要を説明すると、SPECIALIZED DAYはロードとグラベル、マウンテンバイク全てを同時開催する自転車フェスのような豪華なイベント。ロードは会場から飛び出して80kmのサイクリングを楽しみ、グラベルとマウンテンバイクは会場内でエンデューロ(時間耐久)を行うというものだ。
会場は千葉県のYOU PORT木更津。ところどころにキャンピングカーが停車していて、斜面にはカプセルグランピング用の部屋が立ち並び、園路は未舗装ながらしっかりと転圧されていて、電動カートで施設利用者は移動する。さながら海外とか沖縄のリゾートヴィラのよう。そんな場所を使いSPECIALIZED DAYは開催された。
この日会場に最も早く集合したのは80kmの旅路に飛び出すロードサイクリングの参加者と、メイン会場で行われるキッズレースとグラベルレースの参加者。めいめいに身支度を整える参加者だが、ロードとグラベルどちらの自転車も用意されているのは意外と新鮮だ。
ロード参加者はスーダル・クイックステップのチームキットに身を包んだり、TARMAC SL8やAETHOS、ROUBAIXユーザーだったりスペシャライズドのイベントらしさを感じる方は多め。それでも他のバイクブランドもいるし、E-BIKEの方もいるし、誰でもウェルカム。グラベル系はもっと他社ブランドは多めだし、スペシャライズドのバイクでなければならないという圧は感じない。
YOU PORT木更津に駆けつけたロードサイクリストは非常に多く、6つのグループと自由に走るフリーライド組に分かれて、房総半島を駆け巡る。グループには竹谷賢二さんやMihoCさんらスペシャライズドライダーたちがアテンダントとして参加。彼らは皆グループのメンバーとにこやかに談笑しており、これから出発するライドが楽しいものになるだろうなという期待を抱かせてくれる。
そしていよいよ開会式とライドのブリーフィングが終わり、グループごとの記念撮影を終えてからライドへと飛び出していく。今回はライドには帯同せず会場イベントを見て回ることにしたため、ライド参加者とはしばしのお別れ。撮影がてら「いってらっしゃーい」と声をかけると、「いってきまーす」と返してくれたり、カメラに向かってポーズを決めてくれる方もいて、アットホームな感じがして気分は上々。
ロードライドの各グループが出発している傍らで、特設グラベル&オフロードコースでキッズレースもスタート。子どもたちの目は真剣そのものだし、一生懸命オフロードコースを走る姿は自分の子どもでなくても応援したくなるもの。親御さんはその勇姿を残すためにカメラを構えていたり、優しく声をかけていたり雰囲気もかなり良い。
コースはフラットなグラベルやダートがメインだが、適度な起伏もあり、バランスの取れた設計になっている。一部、湿った泥が覆う区間もあったが、参加者たちは的確なラインを選んで走っており、安定した走りを見せていた。
キッズレースが完了する頃にSPECIALZED DAYは本格的に始動する。メイン会場のスペシャライズドブースではグラベルバイクやマウンテンバイクの試乗や、インストラクターの板垣奏男さんとスペシャライズドライダーの金子匠さんによるサスペンション設定相談会がスタートする。
チラリと顔を出したら、家に帰ってから実践できる実用的な内容で最初から最後まで通して聞けば、サスの初期設定には困ることはなさそう。マウンテンバイクレースがあるイベントでこのような初歩的な講座があると、初心者でも参加しやすくなるはず。
グラベルレースはありそうで意外と少ない、2時間耐久エンデューロレースとして開催される。本格的なバイクに乗る方ももちろんいれば、ミニベロで参加する方や、サイクルウェアではなくカジュアルなウェアで参加する方もスタートラインに集まった。ロードのエンデューロと同じように2時間をきっちりと一人で走り切りたい方向けのソロカテゴリーと、チームメンバーと交代しながらワイワイ楽しみたいチームカテゴリーの参加者が一斉にスタートした。
最初の一周はスペシャライズドライダーの辻浦圭一さんと、アンバウンドグラベルにも積極的に参加するRX BIKEの高岡亮寛さんを先頭にインスタレーションラップとして、ゆっくりとコースを周ってくる。大勢のグラベルライダーが一塊となって走る光景は圧巻だ。
コース設定も非常に絶妙で、YOUPORT木更津のオートキャンプ園路を使った転圧されたグラベルを主体とし、砂利が敷かれたアップダウンや草地が組み合わされており、イージーすぎない設定。コース幅も非常に広く、安心して走れる初心者フレンドリーなコースだ。
ソロで走る選手は淡々とペースを刻み、チーム参加の方はピットエリアで仲間の声援を受けながら力強くペダルを踏み込んでいる。ピットからの応援は本当に心強くなるから、エンデューロは初心者が最初に参加するイベントにうってつけ。コースも難しくないので、SPECIALZED DAYはグラベルに挑戦しているエントリーの方にはおすすめ。
グラベルレースが始まったタイミングでメイン会場ではフードエリアが開店。これが非常に豪華で、数多くのブースが出店しており、どれも無料で振る舞われるという太っ腹ぶり。どのようなものが振る舞われたか、ひとまず列挙してみる。
「香川県さぬき麺業の手打ちうどん」や「農園貞太郎の自然解凍握り寿司」、「君津のともちゃんラーメンと餃子」、「愛媛のみかん」、「北海道自然農園のりんごやブルーベリー」、「農家レストランCafeやさまるのパンナコッタとハンドドリップコーヒー」、「金精軒の信玄餅」、「平田牧場の肉巻きおにぎり」。全てを食べようとすると満腹間違いなし。
この大盤振る舞いはYOUPORT木更津のオーナーであり、今回のイベントを支えた株式会社裕源の提供。このサポートは裕源の社長が無類の自転車好きだった縁で実現したという。
その裕源も天然酵母無添加あんぱん、台湾ソーセージ、台湾バナナ、パイナップルケーキを振る舞っていた。ちなみにバナナは無数に用意されており、一房丸ごとプレゼント。しかも一房もスーパーで売っているような5本で一房ではなく、10本で一房というフルサイズ。結局イベントが終わる頃まで売り切れなかったので、ふた房でも持ち帰りOK。なんという大盤振る舞いなのかと、参加者全員が驚嘆したことだろう。
自然解凍にぎり寿司はいつの間にか売り切れ。どうやらロードライドのエイドでも振る舞われていたようで、帰ってきた参加者の方に聞くとかなり美味しかった模様。スペシャライズドライダーであり、日本最高峰のツーリングカーレース”SUPER GT”に参戦するジョアオ・パウロ・デ・オリベイラさんも気に入ったみたいで、みんなからの評価はかなり高め。機会があれば積極的に食べてみてもらいたい。
レースを走り切ったキッズたちが美味しそうにご飯を食べていたり、これからレースのマウンテンバイカーたちが会場内のテーブルでご飯をいただくため、会場のハッピーな空気がひとまとまりになっているのもかなりいい雰囲気を作り出していた。
会場横のスペシャライズドパークというプレイエリアで遊ぶキッズたちの笑顔も印象的なものだった。スペシャライズドのハンドルとステムがセットされた遊具や、木製パンプトラックを楽しむことができ、とてもいい笑顔で遊んでいたのが、こちらも優しい気持ちになった。
スペシャライズドパークで気になったのはコーンホールというアメリカ発祥のパーティーゲーム。手のひらサイズの座布団のような形の球を離れた場所の穴に投げ入れるという遊びなのだが、これがとても難しい。まずミニ座布団を投げたこともないので、狙った位置へのコントロールと距離感の調整がうまくいかなくて、かなりチャレンジングな遊びだ。
レースを見たり、ご飯を食べたり、子どもたちと一緒になって遊んだりしていると、時間はあっという間に過ぎていき、マウンテンバイクのエンデューロが午後イチからスタートした。コースの多くはグラベルレースと共通しながらも、常設のBMXコースや、斜面の脇を一気に登ったり、駆け降りたりするセクションが追加され、グラベルよりも3Dの動きを楽しめるクロスカントリーらしいコースに仕立てられていた。
このコースをガチガチに攻める方もいれば、マイペースで動きを楽しむ方もいたり、参加者は十人十色。E-BIKEカテゴリーも用意されていたので、電動アシストを活かしながらイベントを楽しむ方も。
午後になるとロードライドの方もちらほらと帰ってきて、メイン会場の活気がさらに高まっていく。彼らもケータリングをフィニッシュエイドとして楽しんでおり、中にはこんな至れり尽くせりのイベントは他にないと驚く方も。ライド自体も房総半島らしい起伏に富んだコースを自由に楽しんだようで、その顔には満足感が見てとれた。
ロードライドは見知った仲間が集まったグループもあれば、今回が初めましての方と一緒に走ったグループもあったよう。竹谷賢二さんのグループはフィニッシュ後にみんなでハイタッチをするくらい仲が深まっており、自転車を通じて見知らぬ者同士が打ち解けあっていく様子を見るのは何とも微笑ましい。
そして辻浦圭一さんのグラベルスキル講座、竹谷賢二さんと風花さんのペダリング講座、そしてスペシャライズドの3大ロードバイク「TARMAC」「AETHOS」「ROUBAIX」をテーマにしたトークショーなど、多彩なプログラムが用意されていた。SPECIALIZED DAYはライドイベントだけではなく、会場にいるだけで楽しめるコンテンツが充実しており、どのカテゴリーの参加者も飽きさせない。
会場の裏手ではナイトレースタイムアタックも開かれた。ガチガチのガチでタイムアタックを行うのだが、ミニ版のコーンホールで座布団を穴に入れてからスタートし、ルマン式で自転車に跨ってからが本番という遊び心に富んだ内容。
ミニオフロードコースは左右にバイクを切り返すようなテクニカルな設定で、タイムを出すのは中々難しいよう。キッズも大人も真剣にでも楽しく挑めるタイムアタックは非常に盛り上がりを見せた。
この頃にはすっかりと陽は落ちて、夜のイベントに様変わり。気温も下がってき、お腹もすくタイミングを見計らって豚汁と豚丼の提供が開始。これは本当にありがたかった。一日中自転車で遊び尽くした体に滋味深いお味が体に染み渡る。繰り返しになるが、このイベントの手厚いおもてなしは特筆すべきで、まるでVIPになったかのような体験ができる。
イベントのクライマックスを告げるのは表彰式と抽選大会。最後の最後の大目玉商品は、スペシャライズドのタイヤ1年分!具体的にはタイヤ4セット(8本)という大盤振る舞い。なんとモデルも当選者が選ぶことができ、かつロードやグラベル、マウンテンバイクタイヤを混ぜてもOK。そんなサプライズに参加者たちの目の色が変わったのは言うまでも無い。
イベントの最後はスペシャライズド・ジャパンの代表(木戸脇 美輝成さん)の言葉で締めくくられた。その中で最も印象に残ったのは「The Rider is the Boss」というスペシャライズドの行動指針だった。この言葉に込められた想いは、創業者のマイク・シンヤードや各エリアの社長が偉いのではなく、自転車を楽しむユーザーの気持ちに応えるためにスペシャライズドは行動するものだという。まさに、ライドイベントだけではなく、ケータリングまで至れり尽くせりで、参加者全員が笑顔となったのは、スペシャライズドの気持ちの表現だったのだろう。
朝8時から始まった1日がついに終わりを迎える。YOU PORT木更津には10時間ほど滞在したのだが、感覚的にはあっという間。それほどイベントが充実していたという証左だと思う。スペシャライズドが様々なイベントをサポートし、草の根のようなイベントとしてRACE DAYを開催してきたことが、ここで実を結んだ。来年もあるならば、ぜひ参加してもらいたいと思うようなイベントだった。
スペシャライズド・ジャパン マーケティングマネージャー板垣響さんに聞くSPECIALIZED DAY
スペシャライズド・ジャパンは今回のイベントを開催する前にもSPECIALIZED RACE DAYとして幾つかのイベントを開いてきた。その流れから、SPECIALIZED DAYへと繋がった背景と今回のイベントにかける思いを、スペシャライズド・ジャパンの板垣響さんに伺った。
板垣「東北や大阪で開催してきたSPECIALIZED RACE DAYは、今回よりもローカルに根付いたイベントで、地元のスペシャライズドストアをブランドがサポートという形で開いていたものでした。それに対して今回のSPECIALIZED DAYは、スペシャライズド・ジャパンが主催としてロード、グラベル、マウンテンバイクが一度に楽しめるイベントを作ろうという想いからスタートしたイベントでした。」
そして、ブランドが主導してイベントを作ることにも板垣さんは情熱を持っていた。
板垣「日本の自転車文化はまだまだ大きくなる可能性があると思っていて、それを担うのはブランドの使命だと感じています。実際にスペシャライズドは「革新と熱狂でライダーの生活を向上させる」というビジョンがあり、日常から離れた特別感のあるイベントを企画し、自転車を楽しめる機会を皆様に届けられたらと思い、今回のイベントが立ち上がりました。
ショップ単位やコミュニティライドの規模を超えたイベントで大勢の人に集まってもらえると、その場にいる人たち同士が仲良くなったり、イベントの雰囲気を共有できる仲間になってもらいたいと思っています。それは参加者同士だけではなく、アンバサダーの皆さんとも仲良くなることで思い出に残る1日にしてもらいたいと思っています。」
実際にロードライドは初対面の方が集まっているグループもあり、新しい親交ができていたり、グループにジョインするアンバサダーの人たちとの会話に華が咲いていたりと、スタート前からライダー同士の繋がりが結ばれていた。そして、フィニッシュ後はフードエリアで一つのテーブルを囲んで、思い出を語り合っていた姿も見てとれた。
板垣「オフロードのイベントもエンデューロにしたのはチームで参加できるからでした。チームで参加することで応援しあうことや、ピットで仲間を待つのも楽しいひと時になります。コースもビギナーが走り切れるように設定したので、仲間と一緒にオフロードへの一歩目にチャレンジできる瞬間になれば良いなと思っています。」
本格的なレースイベントはENSなどのスポンサードを通じて、ライダーたちに機会を提供するサポートを行なっている。今回はあくまでも仲間と一緒に肩の力を抜いて足を運べるイベントかつ、様々なジャンルのライドやコンテンツを開催したかったのだという。
板垣「レースやライドの体験だけではないという点は大事にしたいところでした。裕源さんの提供によるフードサービスももちろんそうですし、試乗体験や木製パンプトラックやコーンホールという遊び、ステージイベントもあるので、自分のイベントが終わった後も楽しんでもらいたいという気持ちがありました。
スペシャライズドはサイクリストに自転車を続けてもらいたいという気持ちがあります。だからこそどんなブランドの自転車に乗っていても、どのようなカテゴリーであっても、どんなレベルであっても、それらの垣根を超えて一緒にサイクリングを楽しんでもらいたいと思っています。実際に笑顔の参加者も多く見られたので、来年以降も続けられたら良いなと思います。」
photo: Jinya Nishiwaki, Nobuhiko Tanebe
photo&text: Gakuto Fujiwara
Amazon.co.jp