軽井沢や小諸、嬬恋など、浅間山をぐるりと取り囲むエリアの5つの観光協会が一般社団法人「サイクリング・フェスティバルASAMA」を設立。浅間山麓を回るエリアの自転車イベント開催で連携し運営を効率化することで、これからのサイクリングイベントが抱える問題に一つの答えを示した。



中軽井沢駅直結のくつかけテラスにてサイクリング・フェスティバルASAMAの発足が発表された

今回発足が発表されたサイクリング・フェスティバルASAMAは、軽井沢、北軽井沢、嬬恋、小諸、御代田の各観光協会が参画する一般社団法人。加えて、信州とうみ観光協会もオブザーバーとして参加する。

浅間山麓を取り囲む各市町村が参加するサイクリング・フェスティバルASAMAが提案するのは、新たなサイクリングイベント運営のカタチ。サイクリングイベントでは運営費用や人員など、多くのコストがかさむもの。特に長大なコースを有するロングライドイベントは、その問題が顕著であり、運営スタッフの高齢化などがネックとなり開催を中断しているイベントも存在している。

代表理事を務める北軽井沢観光協会の福嶋会長

そんな問題を解決する一つのアンサーが、サイクリング・フェスティバルASAMAの示す広域連携だ。一つの開催主体が全ての運営コストを担うのではなく、より多くの主催者が連携することでコストを分担し、より持続可能な運営体制を構築することを実現した。

具体的な事例となるのがグランフォンド軽井沢だ。2010年に初開催されたグランフォンド軽井沢は、雄大な景観と変化に富んだ地形に敷かれた浅間山麓周遊コースで大勢のサイクリストを集める人気イベントとなった。

人気を博する一方で、最盛期には2,000人を越える参加者を集める大規模大会となることで運営コストが増大し、スタッフも不足しがちとなることで様々な問題が発生。一時は継続も危ぶまれていたという。

関東屈指の人気ロングライドの一つ、グランフォンド軽井沢

その中で、解決策となったのがコースを共有する複数大会開催という一手だ。2016年には浅間山麓を挟んで北側の嬬恋を発着するグランフォンド嬬恋、2017年にはサブカルチャーをテーマとしたグランフォンドKOMOROが発足。

コロナ禍での開催中止を挟みつつ、3大会で2022年に復活したのもつかの間、翌2023年にはヴィンテージバイクにフォーカスを当てたグランフォンド北軽井沢とE-BIKEフレンドリーなグランフォンドとうみ湯の丸が開催。そして今年にはビギナーも走りやすいグランフォンドMIYOTAが参加し、浅間山麓を取り囲む6つの自治体(軽井沢町、長野原町、嬬恋村、東御町、小諸市、御代田町)がそれぞれイベントを主催する体制が完成した。

浅間山麓を囲むコースを共有するイベントが開催されている

これらのイベントはそれぞれのスタート/フィニッシュ会場を持ちつつ、他のイベントのエイドステーションを兼ねている。他にも、コース誘導スタッフなども分担して対応することで、開催コストの大幅な圧縮を実現した。

また、開催地を分散することで参加者の一極集中を防ぎ、前泊時の宿泊施設不足といったいわゆるオーバーツーリズムを解決しつつ、各地の観光振興にも繋がっているという。

広域での連携がより持続可能なサイクリンイベントの運営に繋がるだろう

この運営体制は参加者にとってもメリットが大きいはず。運営側に余裕が生まれることは、より良いライド体験に繋がるだろう。また、同じコースでも、異なるスタート地点を選択することで新鮮な気分で走れるというのも面白い。それぞれの大会は異なるコンセプトを元に開催されているため、自分に合ったイベントを見つける楽しみも生まれる。そしてなにより、お気に入りのイベントが無くなってしまう悲しみを経験せずに済む。

このように、様々なメリットを生み出す広域連携という施策を具体化するサイクリング・フェスティバルASAMA。今後はサイクリングイベントを軸としつつ、エリア一帯の魅力を発信する取り組みを続けていくという。全国各地で似たような問題に直面するイベント主催者にとって、一つのモデルケースとなるのではないだろうか。

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